日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎目が合うシリーズ

2020年06月13日 | ◎これまでの「OM君」
目が合うシリーズ

マリオさん

ポンセさん

デニス・植野行雄さん 
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◎本日の想像話「ミスター・ボーン」

2020年06月13日 | ◎本日の想像話
 人々が気づいた時には宇宙船は地上に降りたっていた。宇宙船の大きさはベースボールスタジアムに匹敵した。 不思議な事に、巨大な宇宙船が着陸した事実を人類の誰もが、気づかなかった。宇宙人のテクノロジーに科学者たちは恐怖を感じていた。
 宇宙船のタラップは下りていて、ドアは開いていた。
 誰が人類を代表して対応に当たるのか、世界のトップたちの間では揉めていたが、そんな事を知らない、地元警察の駐在さんが対応に当たっていた。
「ごめんください。誰かいますか」 
 来年定年を迎える駐在さんは勇気を振り絞り、出来るだけ失礼の無いよう、慎重に船内へと足を踏み入れる。
 長い廊下が続いている。壁全体が発光していた。どうやら電力は生きているらしい。突き当たりには扉があり、やはり開いていた。
 駐在さんは首だけを差し込んで室内を確認する。何もない部屋の真ん中にイスが一つ。
 イスには人類と同じ体躯を持つものが、目を閉じて座っている。着衣は半透明のつなぎのようなものを身につけている。唯一の外見的相違点は額に角が一本生えている事だ。
 駐在さんは自分の経験を総動員して外宇宙からの来訪者に話しかけた。話しかける内容にも変化を加えた。
「あなた一人ですか?」
「好きな食べものは何ですか?」
「好きなスポーツは何?」
「休みの日は何をしている?」
 あらゆる呼びかけに反応は無かった。
 駐在さんはトランシーバーで応援を要請しながら小さな声でつぶやく
「これは大変なことになるぞ」


 対応のレベルは村から町へ、市から国へと変わっていった。相変わらず、呼びかけに反応は無かった。
 宇宙人には体温があり、自発的呼吸も行われていた。
 宇宙人は生きていると判断したが、人類はどうすることも出来ずにいた。 


 何の進展も無いまま十年の月日が過ぎた。
 宇宙船は観光スポットとして人を集める存在になっていた。宇宙まんじゅう、宇宙漬け物、宇宙タオルなどがお土産として売られていた。
 宇宙人は相変わらず座ったままだったが、動物園のパンダを観察するように、宇宙人を観察するモニターが出来ていた。
宇宙人は角の外見的特徴から「ミスター・ボーン」と呼ばれた。


 いつもと変わらない朝。宇宙船の前で、宇宙温泉卵を用意していた土産物屋のミチコは空模様を気にしていた。
「今日は雨、降るのかしら」
ミチコはミスター・ボーンを常時映し出す街頭モニターに何気なく目をやった。 ミスター・ボーンが立ちあがろうとしていた。
「これは大変」
 ミチコは組合長に電話をかけるために走り出していた。 


 ミスター・ボーンは早口で話し始めていた。
「俺ひとりだ」
「地球の好きな食べ物はバナナだ」
「ベースボールだな。エナツの二十一球がレジェンドだ」
「休みの日は朝から酒を飲む」
 ミスター・ボーンは十年前の駐在さんの質問に忠実に答えていた。
「俺の発明した、ワープ航法はどうやら成功したようだ。しかし、時間の流れがおかしくなるらしい」
 ミスター・ボーンは端末を取り出してなにやら読み下しながら、打ち込む。
「なるほど、俺としたことが、初歩的ミスをしたようだ。ロケットエンジンで十年かかる宇宙旅行の時間を縮める目的のワープ。移動自体は一瞬で終わるが、移動終了直後、時が止まってしまう結果になった。よし、わかったぞ。ここを訂正して。もう一度ワープだ」
 宇宙船は音もなく浮き上がった瞬間、一瞬で消えた。


 ミスター・ボーンロスに人々は涙した。

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