一週間の終わり、夜の深い時間。終電間際の電車は、乗客のうたた寝を促すように心地よい振動を伴って運行する。
「巨人がどうなったか、その小せえテレビで見てくれ」
お願いにしては、大きすぎる音量と威圧的な物言いに車内の空気が凍る。イヤホンを差したスマホで動画を見ていた女性の前で、仁王立ちのおやじがゆらゆらと揺れながら絡んでいる。周囲に助けを求める怯えた視線を女性は泳がせる。
様子をうかがっていた博士と目があう。博士は静かにうなずくと、自分の腕時計のボタンを押した。するとどうだろう。内容のよく聞き取れない言動を繰り返していた酔っぱらいが静かになった。瞳に宿る感情は恐怖に上書きされている。
「すいません。すいません。すいません」
おやじは小さくなり、小走りに女性の前から逃げて、隣、また隣の車両へと行ってしまった。
訳も分からず、驚異から解放された女性は、安堵からSNSに自分の感情を報告しだす。
女性の両隣に座っていた男が同時に立ち上がる。大学生風の若者とスーツを着た中年だった。二人は同時に口を開く。
「すいません。すいません。すいません」
あっけにとられる女性を残して、二人は小さくなって隣の車両へ移動していった。
博士は自分の開発した腕時計を満足そうにみた後、ノートを取り出した。
ペンを走らせる。
発明機器名
血中アルコール反応型・人間ラジコン腕時計
評価
アルコールで麻痺している脳を利用する。指向性電波を用いて、人体をあたかもラジコンの様に動かす。
おおむね良好。
欠点
ある程度の指向性は担保されたが、酔っぱらいが多数存在する状況下では、ピンポイントでのコントロールが難しくなる。(周囲の酔っぱらいを多数巻き込む)
「巨人がどうなったか、その小せえテレビで見てくれ」
お願いにしては、大きすぎる音量と威圧的な物言いに車内の空気が凍る。イヤホンを差したスマホで動画を見ていた女性の前で、仁王立ちのおやじがゆらゆらと揺れながら絡んでいる。周囲に助けを求める怯えた視線を女性は泳がせる。
様子をうかがっていた博士と目があう。博士は静かにうなずくと、自分の腕時計のボタンを押した。するとどうだろう。内容のよく聞き取れない言動を繰り返していた酔っぱらいが静かになった。瞳に宿る感情は恐怖に上書きされている。
「すいません。すいません。すいません」
おやじは小さくなり、小走りに女性の前から逃げて、隣、また隣の車両へと行ってしまった。
訳も分からず、驚異から解放された女性は、安堵からSNSに自分の感情を報告しだす。
女性の両隣に座っていた男が同時に立ち上がる。大学生風の若者とスーツを着た中年だった。二人は同時に口を開く。
「すいません。すいません。すいません」
あっけにとられる女性を残して、二人は小さくなって隣の車両へ移動していった。
博士は自分の開発した腕時計を満足そうにみた後、ノートを取り出した。
ペンを走らせる。
発明機器名
血中アルコール反応型・人間ラジコン腕時計
評価
アルコールで麻痺している脳を利用する。指向性電波を用いて、人体をあたかもラジコンの様に動かす。
おおむね良好。
欠点
ある程度の指向性は担保されたが、酔っぱらいが多数存在する状況下では、ピンポイントでのコントロールが難しくなる。(周囲の酔っぱらいを多数巻き込む)