◎リモコン

時間を操るリモコンを開発した。
二倍速、早送り、巻き戻し、思いのままだ。
あまり時間をさかのぼると、さかのぼった時間分は余計に生きることになる。
ちょこちょこと時間をさかのぼる。
大勝しない。
競輪、競馬、ボート。
１日３レースずつさかのぼり、１００万程度勝たせてもらう。
１００万使い果たしたら、他県の競馬場を訪れ、また１００万程度勝たせてもらう。
そんな暮らしをしていた。

後ろに視線を感じる。
次のレース「３ー５」確認済みの当たり馬券。
購入しようと並んでる。
視線を感じるが購入した。
レース終了後、換金した。
「あの、すみません。」
声をかけられた。
「えっ」
「私、毎日ここに通っていますが、お宅はすごいね。ふらっと来て、必ず当てている・・・」
まずい確信に近しいところだ。
この男に会わなかったことにしよう。
そして二度とここに来ないようにしよう。
めんどくさいことになる前にポケットのリモコンをまさぐった。
今日一日分の時間を戻す。
ポチッ
押した瞬間気づいた。
しまった！
頭出しボタンを押した。
人生の頭出し
つまり次の瞬間、赤ん坊として誕生した。
やれやれ、今の記憶をどれくらい覚えていられるか・・・

◎本日の発見（タッチペン）

タッチペンのペン先。
フィルムカメラの強制巻上げボタンを押すのに丁度よい。

◎溺れるものはワラをもつかむ

あれは２年前。
張り込みの刑事に捕まり、死刑が確定した。
刑の執行が行われる場合、朝１０時に呼び出しがやってくる。
朝１０時が過ぎるまでの恐怖。
１０時を過ぎた瞬間、今日１日生き延びたと安堵する。
その繰り返しだ。

朝１０時・・・
廊下を歩く足音に心臓が締め付けられる。
俺の部屋の前で止まる。
ガチャ、扉が開く。
終わりだ。
白衣の男が入ってきた。
「あるプロジェクトに協力しないか。」
白衣の男にそう告げられた。
「命まではとらない。
自由の身になるわけではないが、減刑の無期懲役というところだ。」
考えるまでもない。
この状況から逃げられるのなら、どんな話にだってのる。

赤黒いカプセルを飲むように指示された。
意識が遠のく・・・

何もない部屋で目が覚める。
特に体調の異常はない。
着ている服がなんだかごわごわで縫製の腕もあまりよろしくない。
それ以外は快適だった。
どんな実験だ。
用心しながらドアをあける。
同じ服を着た男が同じようにドアから首だけをだし、辺りを見回していた。
「あんたも同じ境遇かい？」
ビクッと驚きながら男はこちらを見た。
「そうだ」

２週間が過ぎた。
結果からいうと、何もない。
本当になにもない。
快適な普通の暮らしだ。
閉鎖された空間であることは間違いない。
閉鎖といっても敷地は５０ｋｍ程度の大きさがあり、敷地内は電動トランスポーターのボタンを押して移動する。
ただ、不思議な事は、電化製品および目にする機械が普通の大きさの５倍程度ある。
そしてもう一つ不思議なことは山が動くという事だ。

白衣の男たちがジオラマの周囲に集まっている。
「囚人たちの様子はどうですか？」
「問題ありません。」
「人体の細胞の大きさを１／１００にする実験は成功ですな。」
ジオラマの中では小さな人間が活動していた。
「人間の大きさを１／１００にすれば、食料もエネルギーも極わずかしかいらなくなります。不要な人間は小さくしてエコに協力してもらいます。」
「技術的には可能ですが、服装及び生活道具のリアリティは二の次になっています。まあ何が起こっているのか分からないでしょう。」
山がたまに動くのは、観察している研究者の人影だった。

◎縁あって「ファントム」作成中

縁あってパトレイバーより「ファントム」作成中。

◎本日のラッキー７×３

ゲームボーイミクロで楽しむ「ドラゴンクエストモンスターズ　キャラバンハート」
ゴールド残金が「７７７」

◎消えない違和感

自分の部屋で目が覚めた。
違和感を感じた。
窓の外が真っ暗だ。
夜という意味ではない。（夜でも街灯は点いている。）
起きあがって部屋の蛍光灯を点ける。
パッ
眩しさに目が目がくらむが、たしかに自分の部屋だ。
窓に近づき開ける。
開かない。
窓のロックは外しているが開かない。
外から固定されているような手応えだ。
なに？
慌てて玄関に走る。
玄関のドアも開かない。
どういうことだ・・・

携帯電話、テレビ、インターネット
不通。
水道、電気は来ている。
趣味でエアチェックしている短波放送を聞く。
短波放送は運が良ければ地球の裏側の電波も聞ける。
一切受信出来ない。
「ザ・ブザー」も受信出来ない。
（「ザ・ブザー」とは、旧ソビエト圏よりブザー音だけが４０年以上発信されている。このブザー音が７２時間とぎれると、首都モスクワが核攻撃を受けたと判断され、各基地が独自の判断で攻撃出来るというまことしやかな噂として、マニアの間ではチェックすべき放送として有名。）
どういうことだ。

メールが来た。
妻からだった。
「地球外ウイルスがその地域を汚染したの。
私は県外にいたので隔離されていない。
でも自宅周辺半径３０ｋｍが隔離地区になり、施設、人員とも幽閉状態にあるのよ。
食事は政府が届ける手はずになっているの。」


このやりとりを監視カメラでながめる、巨大昆虫型エイリアン。
このメールは嘘である。
エイリアンが送信した。
精巧なジオラマのなかで生き物を飼う。
そんな感覚だ。
唯一残された通信手段の疑似メールで地球人と遊ぶつもりだ。
前に飼っていた地球人は、地球時間でそうだなあ、５０年は飼っていたか。
こんどの地球人はどのくらい飼うかな～。

外では太陽が３つ輝いていた。

◎デカ魂

俺は四角四面なデカ、ロボットデカだ。
まあ、刑事（デカ）といっても、実状はデカではない。
制服組のパトロール。
日夜（ロボットなのでメンテナンス以外の２４時間）一般市民の安全及び快適さを守っている。

おっと、そんな時でも仕事だ。
人気ショップ。
レジには長蛇の列。
商売繁盛おおいに結構。
レジの横に陣取る。
取り締まりだ。
あーチミチミ、１０５円の買い物をカードで買わない。
暗証番号打ち込んでいる間に２、３人会計が終わる。
速やかに現金を出しなさい。
逮捕するぞ！

あーチミチミ、ぼーっとバーコードを読み終わるのを待たない。
だいたいの会計金額は分かっているだろう。
財布から現金を出して手に持って待たないか。
「いくらになります。」という声を聞いてから財布をかばんから取り出すなんてのはもってのほかだ。
逮捕するぞ！

まあ、こんな感じだ。

後日、クレームの多さにロボットデカのＡＩは上書き更新された。

◎にゃんフォン

我が家の愛猫「ちゃま」と話したい。
その一心で同時猫語通訳機械「にゃんフォン」を開発した。

にゃーん（お話ができてうれしいにゃん）

そうかそうか、私もうれしいぞ。

にゃにゃーん（早速ですがお腹が空きましたにゃん。
本日は乾いたご飯ではなく生タイプのご飯が食べたいですにゃん）
そうか、そうか、生タイプ食べさせてやるぞ。
でも毎食というわけにはいかないぞ。
私のおこずかいに関係してくるでな。
でも、最大限努力するぞ。

にゃーん（どうも、ごちそうさまにゃん。
いいあんばいだったにゃん。
そうかそうか。私もうれしいぞ。

にゃーにゃー（あれ、お客様ですか。こんにちわにゃん）
え、私一人しかおらんぞ。
にゃにゃにゃーん（だって、髪の長い女の人がすぐ後ろに立っているにゃん）
私の後ろを見る愛猫

後ろを恐る恐る振り返る。
誰もいない。
うぁ～知りたくなかったな。
そういえば誰もいない方をよく見ていたな。