全国的には5月30日に公開だったものの広島では7月4日(土)にようやく公開された河瀬直美監督、樹木希林主演の映画『あん』を観てきました。
映画のサイトと予告編を見て、これは見に行きたいと思った映画でした。
平日の八丁座。お昼の公演。開演の10分前に行くと座席はほぼ満席で一列目しか空いてなくて、生まれて初めて一列目のほぼど真ん中の席で映画を見ることに(笑)。
(映画館のスクリーンってつくづく大きいのね。)
そういう意味でも刺激的でしたが映画はこころが温まりジーンとする映画。観て良かった。
ちょっと感想など書いてみたいと思います。
ここからネタバレ注意です。
まず『あん』公式HPよりイントロダクションとストーリーの紹介。
【転載開始】
ドリアン助川の同名小説「あん」を、世界を舞台に創作活動を続ける監督・河瀬直美が映画化。日本を代表する女優・樹木希林をはじめ、抜群の演技力で独特の存在感を放つ永瀬正敏、樹木の実孫である新星・内田伽羅(うちだきゃら)や、芸歴50年を超えようやく樹木との共演が実現した市原悦子など、豪華キャストで贈る、心揺さぶる作品がここに誕生した。
縁あってどら焼き屋「どら春」の雇われ店長として単調な日々をこなしていた千太郎(永瀬正敏)。そのお店の常連である中学生のワカナ(内田伽羅)。ある日、その店の求人募集の貼り紙をみて、そこで働くことを懇願する一人の老女、徳江(樹木希林)が現れ、どらやきの粒あん作りを任せることに。徳江の作った粒あんはあまりに美味しく、みるみるうちに店は繁盛。しかし心ない噂が、彼らの運命を大きく変えていく…
【転載終了】
ストーリーや役者さんたちの演技が良かったのはもちろんのこと、私はこの映画の映像と音の素晴らしさに感動でしたね。
桜の花がそよそよと風にそよいで花びらが散るシーン。花が終わって葉だけになった桜が風にそよぐシーン。小豆が煮えていくシーン、小豆の粒が収穫されるくシーン。。
どれも丁寧に撮られていて、とっても印象的な美しさを醸し出していました。
そして音声(録音)がとても綺麗。
風の音、雨の音、カナリアのさえずり、小豆の煮える音など自然の音を始め、どら焼き屋に来るワカナはじめ女子中学生のキャピキャピした可愛い話し声の雰囲気、そして役者さんたちのセリフがとってもクリアだと思いました。
中心を固めるベテランの役者さんと買い物客や街の人などエキストラ役の一般の人たちの対照的な雰囲気も、この映画をフィクションなのにドキュメンタリーのように感じさせていて不思議でしたね。特にワカナ役は樹木希林の孫娘の内田伽羅だそうですが、役者としての経験があまりない彼女の独特の雰囲気がベテランさんと一般の人の間を上手に埋めているような気がしました。
一生背負わなければならない借金を負ったどら焼き屋の雇われ店長。その寂しい目をなんとかしてあげたくて求人募集に応募してきた老女。複雑な母子家庭で進路に悩む女子中学生。大切な人に伝えきれなかった言葉、誰にも言えない思いは月の言葉になり桜の言葉になり、小豆やカエデや小鳥の言葉になり、別の誰かに届く。
「私たちはこの世を見るために、聞くために、生まれてきた。
この世は、ただそれだけを望んでいた。
だとすれば、何かになれなくても、私たちには生きる意味があるのよ。」
この徳江さんの最後の言葉が印象的でした。
映画『あん』は広島では7月いっぱいの上映。
オススメです。