オレンジな日々

広島在住のシンガーソングライター&ピアニスト
三輪真理(マリ)のブログです。
音楽大好きな日常を綴っています。

映画『あん』(ネタバレあり)

2015-07-09 | おすすめ映画

全国的には5月30日に公開だったものの広島では7月4日(土)にようやく公開された河瀬直美監督、樹木希林主演の映画『あん』を観てきました。
映画のサイトと予告編を見て、これは見に行きたいと思った映画でした。
平日の八丁座。お昼の公演。開演の10分前に行くと座席はほぼ満席で一列目しか空いてなくて、生まれて初めて一列目のほぼど真ん中の席で映画を見ることに(笑)。
(映画館のスクリーンってつくづく大きいのね。)


そういう意味でも刺激的でしたが映画はこころが温まりジーンとする映画。観て良かった。 
ちょっと感想など書いてみたいと思います。
ここからネタバレ注意です。
まず『あん』公式HPよりイントロダクションとストーリーの紹介。


【転載開始】

ドリアン助川の同名小説「あん」を、世界を舞台に創作活動を続ける監督・河瀬直美が映画化。日本を代表する女優・樹木希林をはじめ、抜群の演技力で独特の存在感を放つ永瀬正敏、樹木の実孫である新星・内田伽羅(うちだきゃら)や、芸歴50年を超えようやく樹木との共演が実現した市原悦子など、豪華キャストで贈る、心揺さぶる作品がここに誕生した。

縁あってどら焼き屋「どら春」の雇われ店長として単調な日々をこなしていた千太郎(永瀬正敏)。そのお店の常連である中学生のワカナ(内田伽羅)。ある日、その店の求人募集の貼り紙をみて、そこで働くことを懇願する一人の老女、徳江(樹木希林)が現れ、どらやきの粒あん作りを任せることに。徳江の作った粒あんはあまりに美味しく、みるみるうちに店は繁盛。しかし心ない噂が、彼らの運命を大きく変えていく…


【転載終了】


ストーリーや役者さんたちの演技が良かったのはもちろんのこと、私はこの映画の映像と音の素晴らしさに感動でしたね。
桜の花がそよそよと風にそよいで花びらが散るシーン。花が終わって葉だけになった桜が風にそよぐシーン。小豆が煮えていくシーン、小豆の粒が収穫されるくシーン。。
どれも丁寧に撮られていて、とっても印象的な美しさを醸し出していました。 


そして音声(録音)がとても綺麗。
風の音、雨の音、カナリアのさえずり、小豆の煮える音など自然の音を始め、どら焼き屋に来るワカナはじめ女子中学生のキャピキャピした可愛い話し声の雰囲気、そして役者さんたちのセリフがとってもクリアだと思いました。


中心を固めるベテランの役者さんと買い物客や街の人などエキストラ役の一般の人たちの対照的な雰囲気も、この映画をフィクションなのにドキュメンタリーのように感じさせていて不思議でしたね。特にワカナ役は樹木希林の孫娘の内田伽羅だそうですが、役者としての経験があまりない彼女の独特の雰囲気がベテランさんと一般の人の間を上手に埋めているような気がしました。


一生背負わなければならない借金を負ったどら焼き屋の雇われ店長。その寂しい目をなんとかしてあげたくて求人募集に応募してきた老女。複雑な母子家庭で進路に悩む女子中学生。大切な人に伝えきれなかった言葉、誰にも言えない思いは月の言葉になり桜の言葉になり、小豆やカエデや小鳥の言葉になり、別の誰かに届く。


「私たちはこの世を見るために、聞くために、生まれてきた。
この世は、ただそれだけを望んでいた。
だとすれば、何かになれなくても、私たちには生きる意味があるのよ。」


この徳江さんの最後の言葉が印象的でした。
映画『あん』は広島では7月いっぱいの上映。
オススメです。

 


映画『雨に唄えば』(ネタバレあり)

2015-05-07 | おすすめ映画

 

私の好きな映画ベスト5に入る映画です。
前にDVD持ってたはずなのにどっかいっちゃったのでゴールデンウィーク前に買いました。
自宅作業の合間を縫って映画鑑賞をしました。
つくづくほんとに素晴らしい映画です。


今回買ったスペシャル版は本編だけでなく出演者や監督などのインタビューの音声解説も入っているので映画製作の裏話もわかって余計に楽しめました。
この映画が撮影されたのは1952年。
まさに空前の映画ブームの頃。ゴールデンウィークという言葉の語源も映画から来てるそうで映画関係の仕事が花形職業だった頃です。 当時のMGMの撮影所には4000人もの人がいて俳優、監督、脚本家、大道具、小道具、衣装、音楽監督、作曲家、オーケストラも抱えていたといいます。


この『雨に唄えば』の時代背景は1920年頃。テーマはサイレント(無声映画)からトーキー(有声映画)に切り替わる時代の映画制作にまつわる裏話。ジーン・ケリー演じるドンは映画の中でも映画スターです。
当時からもう人気俳優だったベテランのジーンにひきかえヒロインを演じたデビー・レイノルズは撮影当時まだ19歳でこれが初ヒロイン作。撮影までにジーン・ケリーからダンスの猛特訓があったようなことを裏話で語られてました。
ジーンの相手役のドナルド・オコナーは子役時代からキャリアは積んでいたもののこれといった出世作がなく、この『雨に唄えば』の大ヒットでその後ひっぱりだこになったそうですね。


主役の3人を囲む脇役陣も個性的な俳優さんばかり。
映画の中で意地悪でしたたかでKY(空気読めない)な大女優をつとめるジーン・ヘイゲン、製作会社の社長役ミラード・ミッチェル、映画監督役のダグラス・フォーリー、キャラの立つ人たちが多くてどのシーンも楽しい。


涙あり笑いあり。
盛りだくさんの1時間43分です。


この映画の中で大好きな曲。
雨の中で歌われるジーン・ケリーの「雨に唄えば」。 
この映画のハイライト・シーンの1つです。 





当時は映画もテープ撮影の時代。
ミュージカル映画のセリフ、音楽、演技(ダンス)、歌、このスムーズなコンビンネーションプレーの素晴らしさ。
今見ても何の違和感も感じないこのシーンの1つ1つの製作がいかに大変だったことか・・。


iPhoneで動画を録って、それに自宅パソコンで編集したり音楽をつけたりはたまた音声を編集したりが当たり前の・・今の人たちには何ら珍しくもないことなんでしょうけど、それだけにこのスゴ技の数々の後ろにある当時の人たちの努力を感じます。
個人的にはこの映画の楽曲の素晴らしさ、編曲やオーケストレーションの素晴らしさ、そして俳優さんたちの歌とダンスの素晴らしさに改めて感動します。

私の大好きなドナルド・オコナーの『Make 'Em Laugh』。
このクライマックスの2回の壁の駆け上りバック転シーンは一歩間違えると首の骨を折ることにもなりかねないシーンで、本人も命がけの大チャレンジだったそうです。感動ですね。






雨に唄えば 50周年記念版 スペシャル・エディション [DVD]
ジーン・ケリー,デビー・レイノルズ,ドナルド・オコーナー
ワーナー・ホーム・ビデオ

映画『さらば、愛の言葉よ』(ネタバレあり)

2015-04-28 | おすすめ映画

『気狂いピエロ』や『勝手にしやがれ』で有名なフランスの映画監督ジャン=リュック・ゴダールの最新作で最後の作品と言われている『さらば、愛の言葉よ』を観に行きました。
ゴダールの3Dと聞いて急に行くことにしたので、あまり予備知識もないまま。


上映はお気に入りの映画館、八丁座。
「よし観るぞ」と勢い込んだものの、いざ見終わったあとの感想は、
「サパーリワカラナイ」(笑)。


「わからない」ビミョーな感覚をしばらく味わうためにすぐさま解説は読まずにいましたが、あまりにもわからなすぎるのでついにネットを検索(笑)。
ココとかココとかココを読んでちょっと納得。


You Tubeに予告編と解説があったので以下にご紹介しますね。




【転載開始】

これはゴダールの遺言である ――― ル・モンド紙

今年のカンヌ国際映画祭でも話題の中心だった、83歳のヌーヴェルヴァーグの巨匠、ジ­ャン=リュック・ゴダールが初めて“3D”で長編を描いた野心作に、カンヌ国際映画祭­審査員特別賞のほか、ゴダール(とそのパートナーであるアンヌ=マリー)の愛犬、ロク­シー・ミエヴィルに “パルムドッグ審査員特別賞”が授与された。半世紀以上も前、スタジオ撮影が当たり前­の時代に、『勝手にしやがれ』(59)でカメラを屋外に持ち出し、街の空気感をそのま­まスクリーンに映し出して世間を驚かせ、カメラワークや編集、演出、台詞、俳優の扱い­など多くの革命を起こしたゴダールが今、新旧の技術を斬新に組み合わせた“映画芸術”­として、3Dの可能性に挑み、遊び心たっぷりに3Dという手法を変革する衝撃作!60­年代から半世紀以上、既存の手法にとらわれず、常に斬新な(新しい)表現で映画界を牽­引し続ける巨匠が今度は、3Dで未来の扉を開いた。「常に処女作を作る」と公言するゴ­ダールの“新しい波(=ヌーヴェルヴァーグ)”の進化形と呼ぶべき本作は、フランスの­みならずニューヨークでも大ヒットし、若い世代の熱い視線が注がれている。

【転載終了】

なるほどねーー。


「ヌーヴェルヴァーグ」というのは特定の時代の作品を指すわけではなくひとつの「生き方」なんですね。83歳のゴダール恐るべし。


個人的には、枯れた切り花とか洗濯物とか足の裏とか血液とかトイレの排泄シーンとか、普通映画ではあえて撮らないであろうシーンがこれでもかと出てくるところとか、ずっと傾いたままの画面とか、思わず3D眼鏡をかけ直したくなる奇妙な3Dの合成とか、バチっと寸断される音声とか音楽とか・・・始終落ち着かないままの69分にハラハラ・ドキドキ・オロオロさせられっぱなしでした。


『さらば、愛の言葉よ』は原題をタイトル通りに訳すと『さらば、言葉よ』らしいです。
言葉というものが概念付けた「美」と「醜」、あるいは「正」と「誤」、「2D」と「3D」。 
その人の概念そのものに揺さぶりをかけてくるゴダールの映像は観客を不安の渦に巻き込みます。およそ「映画とはこういうもの」というルールや概念に真っ向から戦いを挑んだゴダールのチャレンジ精神に驚くばかりです。


音楽の使い方ではレオス・カラックスの『汚れた血』(1986)を思い出しました。
繰り返し登場する印象的な弦の曲はチャイコフスキーのスラブ行進曲の冒頭の音楽らしいです。
スラブ人キリスト教徒の追悼演奏会のために書かれたというこの曲を何度も使用した意図はゴダール流のメタファ(隠喩)なんですかね。
この辺りはあまりにも知識がないのでもうちょっと勉強します。


あっという間の69分。映画を見終わった後に狐につままれたような感じで無言で席を立つ気分。このめったにできない感覚を味わいたい方はぜひ映画館へ(笑)。


「想像力を欠くすべての人は現実へと逃避する」ーージャン=リュック・ゴダール


ぜひ想像力を総動員してご覧下さい。 
 


映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』

2015-04-09 | おすすめ映画

今日は久しぶりにセイウのakiちゃんとmassくんを我が家に招いて一緒に食事をしました。
お料理を食べながら音楽談義。


セイウの2人は私がバンドをスタートした頃からの友人で、私の歩みをずっと見てきてくれた大事な友人。最近の曲作りやライブやレコーディングの裏話などいろんな話に花が咲きました。


今日のBGMは『Crimson Thread』という鶴谷智生さんのソロアルバム。

crimson thread
ZAZZY
ZAZZY


家にいる時はテレビをつけない代わり何かしら音楽をずっとかけているけど、これも何回聴いたかわからないヘビーローテーションアルバム。この中の「Reason」という曲が特に好き。もちろん全体通してもすごくいいアルバムです。


これを聴いてたら何故か思い出した劇場版アニメ『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』。
ところで音楽は誰だっけって話になってYou Tubeで検索。


音楽は川井憲次さんという作編曲家。
この印象的なテーマは謡(うたい)が入っているところが特に素晴らしいです。
現在放送中の大河ドラマ『花燃ゆ』のテーマ音楽もこの人らしいですね。
この人の曲はとても好きです。


『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』は押井守監督の1995年の作品。
かのウォシャウスキー兄弟の監督作品のマトリックスシリーズにも影響したと言われるアニメ。
音楽もさることながらストーリーもいいし絵も綺麗。
独特の雰囲気があって何度も見たくなる名作です。
 


映画『ショーシャンクの空に』

2015-04-04 | おすすめ映画

人生の転機っていうのってその渦中にいるときにはあんまりわからないもの。
少し時間が経ってから「あれが転機だった」ってわかる。
そして多くの場合、自分で一番苦しい時期にもがきながらやったことが次のステップのための大きなギフトになっている。


ある程度人生を重ねてくるとそういう人生の「しくみ」みたいなものもわかってくるものだけど、若いうちはそれがわからないから「自分はもうダメかもしれない」って絶望してしまうんだって思う。


多くの偉人たちは(たとえ偉人じゃなくても)、その人生の苦難から抜けて光を見いだした時に、その苦難がいかに自分にとってギフトだったかってことを感謝してそれを同じような境遇の人にもなんとか伝えたいんだと思う。


もしあなたがどんな状態であっても希望だけは失ってはいけない。
希望は外から与えられるものではなくて自分の内側に見いだすもの。


私のとっても好きな映画。
スティーブン・キング作『ショーシャンクの空に』 

ショーシャンクの空に [DVD]
ティム・ロビンス,モーガン・フリーマン,ウィリアム・サドラー,ボブ・ガントン,ジェームズ・ホイットモア
ワーナー・ホーム・ビデオ


この映画は語るよりも映画館かDVDで観てもらった方がいい映画です。
1994年の作品なのでもう公開は20年前。
若い人で観たことのない人は多いかもね。必見の映画です。


そしてストーリーもさることながら扱ってるテーマは奥深い。
犯罪、えん罪、厚生、正義とは、罰される罪と罰されない罪、etc・・いろいろ考えさせられる映画です。
久しぶりにもう一回観てみようかな。


映画『ゼロ・グラビティ』(ネタバレあり)

2014-01-13 | おすすめ映画

映画『ゼロ・グラビティ』観てきました。
いやーーー、すごかった。
内容云々よりとにかく無重力の再現にこだわった監督とスタッフ陣の努力にひたすら感服という感じ。




ということで感想を書いてみます。
ここからはネタバレがありますので、まだ観てない方はご注意を。
・・・・


実はこちらのメイキングムービーを観ていたので、撮影シーンについては予備知識はあったんですね。
でもストーリーその他については全く知らなかったのでなんか感慨深いものがありました。


見終わった後はほんとにグッタリ脱力感。
宇宙旅行から地球に戻って来たような感覚ってこんなかな。


今日のひと言「身体って重いのね(笑)」。


出演はサンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーのほぼ2人のみ。
酸素も重力も、そして音もないという世界。


「(宇宙は)神秘的で大好き」と言っていたサンドラ・ブロック演じるライアンが、たった一人で宇宙空間に取り残された時には「宇宙なんて大嫌い!」って言うシーンが人間的でちょっとおかしかったですね。





宇宙空間で生きることに比べればこの地球で生きることなんて容易いことに思えてしまいます。
酸素、重力、音があるってほんとにありがたいですね。


ところで、映画の中で経った1人宇宙船で今にも死にそうになってるライアンが、奇跡的に通じた無線の向こう側にいる中国人(とおぼしき人)と通信するシーンがあるんですが、実はそのシーンにはもう1つの裏のストーリーがあり、こんなショートストーリーが隠されていたというスピンオフムービーが話題になってるそうです。





映画を観ている時は、燃料切れで冷えきっている宇宙船と、温かく暖房の効いた犬も飼っている裕福な家での通信というイメージがあったんですけど、まさか相手も氷の上にいるとは予想もしなかったですね。
通信やインターネットで何でもわかるわけじゃないんだ、っていう風刺みたいなものも感じます。


とにもかくにも「凄い」映画。
本年度のアカデミー賞候補にもなってるそうですけどぜひ賞を取ってもらいたいですね。


ところで主演のサンドラ・ブロックはなんと49歳。
まるで30代にしか見えない顔と身体がうらやましい。


きっとあの米国で一番有名なサプリメントと化粧品を使っているはず。
わかった方はマニアですね。
私も努力しようっと!!


最後に予告編を貼っときます。





ネットでとある方のネタバレのレビューを見つけました。
とっても詳しかったのでこちらに載せておきます。


 


映画『風立ちぬ』(ネタバレ注意)

2013-07-26 | おすすめ映画

イラストレーターのSHIEちゃんに誘ってもらってジブリの最新作『風立ちぬ』を観にいきました。
なんだか『零戦』を設計した人の半生を描いた映画らしいということ以外ほとんど前情報を得ないで観た映画でしたが、とってもとっても良い映画でした。

とにかく映像が美しい。大正時代から昭和の日本がこれほど美しく描かれた映画があるかなと思うほど。震災シーン、戦争シーン、家族の死、悲しいシーンはたくさん出てくるのにそれらはあくまでさらりと描かれ、主人公の二郎は人生を淡々と生きているように見えました。

「生きねば!」

ジブリがこの映画に添えるコピーを何故このキャッチコピーにしたのか。 
東日本大震災とまだ収束する気配すらない原発事故で多くの人が命を失って行く中にあって、この映画に添えるメッセージを「生きろ」でもなく「生きよう」でもなく「生きねば」とした意味は大きいと感じます。

以下HPより宮崎駿監督の「覚え書き」を転載します。

【転載開始】 

大正から昭和前期にかけて、みどりの多い日本の風土を最大限美しく描きたい。空はまだ濁らず白雲生じ、水は澄み、田園にはゴミひとつ落ちていなかった。一方、町はまずしかった。建築物についてセピアにくすませたくない、モダニズムの東アジア的色彩の氾濫をあえてする。道はでこぼこ、看板は無秩序に立ちならび、木の電柱が乱立している。
 少年期から青年期、そして中年期へと一種評伝としてのフィルムを作らなければならないが、設計者の日常は地味そのものであろう。観客の混乱を最小限にとどめつつ、大胆な時間のカットはやむを得ない。三つのタイプの映像がおりなす映画になると思う。
 日常生活は、地味な描写の積みかさねになる。
 夢の中は、もっとも自由な空間であり、官能的である。時刻も天候もゆらぎ、大地は波立ち、飛行する物体はゆったりと浮遊する。カプローニと二郎の狂的な偏執をあらわすだろう。
 技術的な解説や会議のカリカチュア化。航空技術のうんちくを描きたくはないが、やむを得ない時はおもいっきり漫画にする。この種の映画に会議のシーンが多いのは日本映画の宿痾である。個人の運命が会議によって決められるのだ。この作品に会議のシーンはない。やむを得ない時はおもいきってマンガにして、セリフなども省略する。描かねばならないのは個人である。
  リアルに、
   幻想的に
    時にマンガに
     全体には美しい映画をつくろうと思う。

2011.1.10

宮崎 駿

【転載終了】

実際にはこの映画は零戦設計者堀越二郎と同時代に生きた作家堀辰雄 の二人の人物を統合させた青年「二郎」を主人公にしたフィクションだそうです。だからこそこの映画のテーマでもある「風立ちぬ、いざ生きめやも」というメッセージが淡々と観る人の心に訴えてくるんだと思います。

後は細かい事ですけど、映画の中で子供時代の二郎の家族の言葉遣いがとっても美しいこと、二郎と菜穂子がとても礼儀正しいこと、二郎を取り巻く人々が心優しいこと、それらがこの映画にさらに清々しさを与えていてとても気持ちのいい映画でした。
家族間で敬語を使うってなんだかいいなって思えました。

あとSHIEちゃんと盛り上がったのは「水の描き方」。
ジブリ映画ではいつも水の描き方が気になる私ですが、この映画で水は(汗や涙)は、かなりあっさりと描かれていましたね。
いままでの水の描き方で思い出すのは、「千と千尋」の現実世界と神さまの世界を分つ水、彼岸を思わせる銭婆(ぜにーば)の家へ行く途中の湖(海)の水、「アリエッティ」の質量と粘度を感じる水、「ポニョ」の意思や生き物を思わせる水。全てを飲み込んでしまうが命を奪うわけではない水・・。

今回「風立ちぬ」の汗や涙はぽろぽろと、まるで質量を感じさせない泡のように描かれていました。
水は命を与え命を育み、そして命を奪う・・。
311の大津波の後、私たち日本人は水にある種の恐怖を覚えました。
そういう私たちに配慮してのこの描き方なのかなと勝手に解釈してみたり。
深読みし過ぎですかね(笑)。 

映画の後はSHIEちゃんイチ押しのお店「あんべえ」に行きました。
たくさん呑んでたくさん食べてたくさんおしゃべりしました。 
もうね・・・嬉しくて美味しくて、、言葉にできない。
また行こうと思います。 

 


映画『きっとうまくいく』(ネタバレあり)

2013-07-18 | おすすめ映画

 

『きっと、うまくいく』は2009年公開のインド映画。
日本では今年5月に公開以降どこでもロングランヒットしてるという話題の映画。
ずっと観に行きたかったんですけど、昨日八丁座でやっと観れました。 

シネマトゥデイによれば、「インドで製作された、真の友情や幸せな生き方や競争社会への風刺を描いたヒューマン・ストーリー。入学したインドのエリート大学で友人たちと青春を謳歌(おうか)していた主人公が突然姿を消した謎と理由を、10年という年月を交錯させながら解き明かしていく。主演は、ボリウッド映画の大スターであるアーミル・カーン。『ラ・ワン』のカリーナー・カプールがヒロインを務める。抱腹絶倒のユーモアとストレートな感動を味わうことができる。」という内容です。

インド映画の面白さは映画『ロボット』で体験済み。
とにかく笑いあり、涙あり、アクションあり、友情、恋愛、ダンスあり、音楽ありの盛りだくさんな内容。
大体3時間はあるんだけど全然飽きずにあっという間です。
まあ、とにかくてんこ盛りな感じなんです。

期待いっぱいに観に行った『きっと、うまくいく』でしたが、答えは期待以上!!!
いやーー、ほんとに良い映画でした。
『ロボット』の時のようなCGやダンスシーンを無理矢理入れこんだような感じはなくて、音楽やダンスの入れ方も往年のミュージカル映画の傑作『サウンド・オブ・ミュージック』 や『雨に唄えば』を思わせるような自然な流れ。
しかもストーリーも編集も過去と現在を同時進行させるような作り方で結構凝ってましたね。
しかもインドの教育問題に対してメッセージ性もあって、作者の意図もちゃんと伝わってくる。
ほんとにいい映画でした。

インド映画って人生そのもの、人生のすべてを扱う感じがいいですね。死と誕生が必ず出てくる。『ロボット』の時と同じく、やっぱり今回も感動的な出産シーンがありました。

私が好きだったシーンは、ラスト近く、主人公のランチョが小学校の先生になってるところ。
その小学校はいっぱいランチョーの発明品があって、その中で子供たちが生き生きと過ごしてる日常が描かれててとっても好きなシーンでした。こんな夢のような学校がほんとにあればいいなあって。それでしかも、彼はただの学校の先生じゃなかったってところも笑えましたね。
あと、どうでもいいことですが、ヒロインのピアがどうしてもアンジェラアキに見えて仕方がなかったのは私だけ?(笑)

最後に映画.comから映画解説を転載します。

【転載開始】

喜怒哀楽のすべてを詰め込み娯楽の限りを尽くすインド映画のなかで、歴代ナンバーワンヒットのすごいコメディだ。
なんたって濃い。170分、中身の面白さ、ギッシリ加減が半端ないのである。
基本は学園青春グラフィティ。若きエリート候補たちの通う工科大学で、動物好きなファルハーンと極貧家庭育ちのラージューは、破天荒で陽気なランチョーと意気投合する。この“3バカトリオ”(=原題「3 Idiots」)のエピソードにはドリフ的なギャグも満載だが、高度成長期にある現代インドの勢いと同時に、そこに潜む問題もしっかりと描いている。競争社会では勝つことだけが大事だと主張する鬼学長は、過熱する学歴競争の虚しさを体現する存在なのだ。さらに、鬼学長の娘とランチョーのラブストーリーがあり、ミュージカルシーンも雄弁。
しかも、大学での物語と同時に、その10年後、友人たちが姿を消したランチョーの謎を追うというサブストーリーが同時進行。ミステリー&ロードムービーという要素まで加わり、オチの爽快さはもう最高!
なんといっても最大の魅力は、“3バカ”、とくにランチョーのキャラクターがめっぽう魅力的だということ。坂本龍馬を思わせる自由人で、自分に正直な楽天家。「うまーくいーく(All is well)」と言いながらピンチを乗り切る姿は日本の高度成長期ヒーロー、「ニッポン無責任時代」の植木等にも通じる。この3人の友情には胸を熱くさせられ、何度も涙。自分が4人目の“バカ”になったような気分になって希望がわき、一瞬一瞬が心から愛おしくなるのだ。(若林ゆり)(映画.com)

【転載終了】

最後の最後に鑑賞後はヘビロ間違いなしのテーマソングを貼っておきます。
 
 

 


映画『小さな命のゆくえ』上映会 in 花Club

2013-05-18 | おすすめ映画

今日は呉の花Clubで映画『小さな命のゆくえ~名もなき犬・猫たちのこと』の上映会がありました。
花ClubのRyoさんからこの上映会でライブをしてもらえないかと依頼があり、せっかくの機会なのでミニライブをさせていただきました。
呉在住の方や広島や廿日市からわざわざ来て下さった方などたくさんの方がご来場下さいました。ありがとうございました。

監督のはまの省蔵さんからのご挨拶の後、映画の上映。
映画を見るのは今日で2回目でしたが、はまのさんから撮影の裏話なども聞いていたので、やはり見るたびにすごいなあと思います。役者さんもスタッフさんも皆さん仕事を持ちながらの方たちで、休みの日に撮影や編集を重ねて完成にこぎ着けられたそう。
CDでも映画でも作品を1つ作るという後ろには人に言えない苦労があるものです。
でも何かそれで誰か1人でも喜んでくれたら、やった甲斐があったなって思うんですよね。

映画上映後、キャストの方のご挨拶があって、その後ライブをさせていただきました。
ソロライブということで、セットリストも迷ったんですが、今日はこんな感じ。

1.夜明けの星
2.海の色に染まる午後
3.六月の雨
4.きっとあなたを
5.私のテディベア
6.オレンジの朝焼け
7.心の手を繋ごう

アンコール
天使の翔ぶ街


映画の主題歌でもある『オレンジの朝焼け』は初のソロ披露。
良かったと言ってもらえてやっぱり嬉しかったですね。
特に映画のキャストの方に聴いていただけたのも嬉しかったです。

曲についてはまのさんが驚かれてたのは、打ち合わせだけで曲を作ったのに、途中の間奏や全体の長さが映画のエンドロールにピッタリな構成になっていたこと。挿入歌の『夕暮れ』という歌もちょうど夕焼けのシーンを撮っていたのでピッタリだったこと。
こういうときは何かの力が働いたんだなあと思うしかないですね。
ドラムトラックを入れてくれた石田賢治くんやギターを入れてくれた藤井晴稔さんにも今更ながら感謝です。小さな奇跡が少しずつ重なって1つの作品って完成するんだなあって改めて感無量ですね。

というわけで、撮影でも使われた呉アニマルパークのある呉市での映画の初の上映会も無事に開催できて本当に良かったと思います。
ご来場下さった皆さま、ありがとうございました。
次の上映会も予定されているようなので、ここをお読みの方で上映会情報を知りたい方や上映会を開催したいと言われる方ははお気軽にはまのさん(hustlekarnあっとまーくgmail.com)まで問い合わせてみて下さい。(注:あっとまーくは@にしてください)

はまのさん、キャストの皆さん、花ClubのRyoさん、スタッフさん、お疲れさまでした。お世話になりました。

これからもこの『小さな命のゆくえ』がいろんなところで上映されて、動物の命をことを本気で考えるきっかけになってくれたらと思います。

「誰かの都合で簡単に 壊れてく世界 それでもぼくは諦めない」

(『オレンジの朝焼け』三輪真理作詞・作曲より)


 


映画『小さな命のゆくえ』~名もなき犬・猫たちのこと

2013-03-03 | おすすめ映画

今日は以前からこのブログでも何度か紹介させていただいていた、映画の完成披露上映会がありました。
その映画は「『小さな命のゆくえ』~名もなき犬・猫たちのこと」というタイトル。
ペットの殺処分を扱ったちょっと重いテーマの映画。

監督のはまのさんが「重いテーマでぜひ多くの人に考えて欲しいことだけれどあまり暗くしたくない」という思いを持って作られただけあり、本編40分という短い時間の中に大切なメッセージをさらりと盛り込まれて、全体的には明るく楽しいムードの映画でした。
 
動物の命をどうやって守っていくのか。
人間の命も動物の命も、命は命。
全ての命が大切と言えば、ブラッドピットが主演の映画『セブンイヤーズ・イン・チベット』でチベットの僧侶たちが、工事現場の土の中にいるミミズを一匹一匹大事に移動させていた場面を思い出しますが(笑)、やっぱり突き詰めていけばどの命は大切でどの命は大切ではないというのは本当はないんだと思います。
 
一般論を話すときっと「それは無理」になってしまうので、 私はその場その場で考えていきたいと思っています。
今、目の前にある命を大切にする。
私が関わる、私が向き合う、私に責任のある命を、尊いものとして尊重する。
それだけしかできないし、それでいいのかなって思います。

犬・猫の殺処分の背景にはペットショップの生体販売の問題や繁殖ビジネスの問題が関わっています。 そしてもう一つはペットを飼う人のモラル。「殺処分の事実を知らない」ということから引き起こされる問題をこの映画で少しは払拭できたらという思いもあるのかなと思いました。
 
「知る」ことから問題意識が生まれ、意見や自分なりの選択が生まれる。
今すぐにすべてを解決することはできなくても、きっとそういう人が増えていけば世界は変わっていけると信じています。

上映会終了後、はまの監督さん、キャストの皆さんと記念撮影。
     

最後にエンディングテーマの『オレンジの朝焼け』の歌詞を載せます。
みなさんありがとうございました。

『オレンジの朝焼け』(三輪真理作詞・作曲)

  歩き始めたばかりだよ 僕らこの町で
  同じ時代を旅しに来たんだ
  世界の地図もわからないまま 願い続けた
  夢は君にもう一度会うこと

  誰かの都合で簡単に壊れて行く世界
  それでも僕はあきらめない

  ※オレンジの朝焼けを 君とここから見たい
  誓った約束僕は叶えたい
  いつか僕らが大人になったその日がきたら
  世界中の戦いをすべて終わらせてみたい

 
  図書館の本をすべて読んでも 解けないことが
  広い世界に隠れているんだ 

  明日もし朝焼けがたとえ見れないとしても
  誓った約束決して忘れない
  いつか僕らが大人になったその日がきたら
  世界中の悲しみをすべて終わらせてみたい

  ※くりかえし