オレンジな日々

広島在住のシンガーソングライター&ピアニスト
三輪真理(マリ)のブログです。
音楽大好きな日常を綴っています。

養老孟司『養老先生のさかさま人間学』(ぞうさん出版)

2021-06-10 | おすすめ本

あの「ぞうさん出版」から養老先生の本が出る!!って聞いて、とっても心待ちにしていた本。
早速読み終えました!!


「考えないと楽だけど、楽をするとあとで損しますよ」
「バカの壁」の著者であり解剖学者の養老孟司先生が、自分の頭で考えるための85個の視点を伝授。
身の回りの風景、社会のありかた、心の持ちかた…いろんなことを「さかさま」に見てみよう。子どもから大人まで楽しめる優しい一冊。(Amazon 書籍紹介文より)


さかさまに見る、ってどういうことだろう?

この本は、ほぼ10年間にわたり養老先生が新聞の連載に書かれた文章をまとめた本です。85の視点ということで、85項目に渡ってそれぞれ1つの漢字が当てられ、それに対して著者が見開き2ページの短いエッセイを書くという方法でまとめられています。


耐、草、毒、寛、本、枝、熱、庸、情、流、人、雑、排、明、健、加、、、、


当てはめられた漢字に対しての養老先生の視点がとっても面白い。
猫の「まる」とのやり取りが漫画で途中に挟み込まれているのもCMみたいでホッとできるし、何より読んでいてリズミカルで楽しい。


「本離れ」が叫ばれているけど、こんな本なら紙媒体として手元に置いておいて、時々引っ張り出して読んでみるのにいいと思います。
「今日の一言」って感じで、パッと開いたところを読むっていう読み方もきっといい。


ちなみに、私の今日の一言は「雑」。


「ピカピカ」と「乱雑」

「雑」という文字には、あまり良いイメージがありません。「仕事が雑だ」なんて言いますからね。雑念、乱雑など、どれも良い意味を持つ言葉ではありません。
 雑然としているというのは、整っていない、つまり秩序があるようには見えない、ということです。ここは注意が必要です。自分に見えていないだけなのか、本当にバラバラなのか。
 (中略)
 雑草という言い方がありますが、実はそんな植物はありません。昭和天皇はよくそう言われたようです。植物学的にいうなら、全ての草には、きちんと名前があります。なければ新種です。「あんたが不勉強で草の名前を知らないだけでしょ?」へいかはそういう乱暴な言葉は使われないので「雑草なんてありません」と丁寧に言われたんでしょうね。
 自然界では秩序が生じると、それと同じ量の無秩序がどこかに生じる、ということです。この話は難しいから、またの機会に。(本書41ページより)


ダイエットと部屋の掃除をしている私にピッタリの「お言葉」(笑)。
高校物理で、そういえば「エントロピー」というのがあったよなあ。
ピカピカがいいのか雑がいいのか。
私なんかは雑草が思い思いに生えている草原なんてとっても好き。
養老先生は「自然は答え」だと書かれている。


「問い」を発するのは人間。
学校の問題は「問い」を先生が出して生徒が「答える」。
世の中のことは「答え」を見てから「問い」を発見しなくてはいけない。
上から見たり、横から見たり、下から見たり、ひっくり返して見たり、、、


「あたりまえ」のことも観察すればするほど、示唆に富んだ「答え」だということに気づく。
そうすると、人間は一生「問い」を発見しながら生きることができるんだね。


最後まで読んだ後、もう一回初めに戻って読み直してみたくなる本。
特に7章の福島県立浪江高校での震災後の2012年3月の特別講演「変化するとき」の記録は全ての高校生に読んでほしい。
ぜひオススメです。


ちなみに私の「問い」を歌った曲はこちら。
「スベテハココニアル〜永劫回帰」(三輪真理 w/白鶴山)



聴いていくうちにだんだんエントロピーが拡大していくこの曲の、
無秩序の中にある秩序を発見したあなたはエライ!!



『Retrospective』(三輪真理 w/ 白鶴山)