「断る勇気」と云う文章を新聞の声欄で読んだ。同感である。その時に「勇気ある貿易マン」のことを思い出した。私のチケットはツーリスト・クラスだったので、当時の荷物の重量制限は22キロだった。而し、何処の空港でも25キロ程までは何とか黙って通してくれた。その時の荷物(スーツ・ケース)は27キロもあったように思った。出張を何度も繰り返すうちに、手に持った感触でほぼ何キロかの判断がつくようになっていた。
タイのバンコクの空港でチェック・インをする前に、辺りに日本人がいないかと探すと、おとなしそうな日本人が居た。然も私と同じ貿易屋の匂いがした。綺麗に梱包された銘木のサンプルを相手に見せて「この分が重量オーバーなので、なんとか引き受けて頂けないでしょうか?」と丁寧にお願いしたところ、「断ります」と全く付け入るスキのない調子で拒否された。同じ日本人なのに非人情な奴だと思ったが、超過した重量分は料金を払えばいいと諦めた。だが、幸いなことに追加料金なしで受け入れてくれた。それを通してくれたフロントのお嬢さんは私を見てニヤニヤしていた。私が断固断られたシーンを見ていたのだろうか?
帰国してから、その話を航空会社に勤めている友人にすると、「当たり前だ。頼んだお前が悪い。その中に麻薬が入っていたらどうする?いいか、お前が逆の立場だったら絶対に断れよ!」と強く云われた。それから何十年もその友人の忠告を守り続けた。
クアラランプールからモーリシャス経由でマダガスカルに行くべく、ボーディング・パス(搭乗券)をもってゲートを通ろうとしたとき、係員に「これがあなたの新しいボーディング・パスです」と別のパスを渡された。見るとファースト・クラスのものだった。私の乗る予定だったビジネス・クラスが満員で、私が選ばれてファースト・クラスに行かされたのだ。オーバー・ブック(過剰予約)でツーリスト・クラスの客がビジネス・クラスに移され、幸運な私がそこから押し出されてファースト・クラスに行かされたのだ。
モーリシャスの空港が近づいた時、隣の席のフランス人から「このコニャック(ブランディー)を持って税関を通って頂けないか」と頼まれた。私は友人の忠告を思い出して断った。密閉された新品のコニャックだったが、麻薬が入っていないとは限らない。相手は恨めしそうな顔をしていたが、意思は変えなかった。ファースト・クラスに乗るゆとりのある人間がコニャックの関税をけちるなどとは考えられない。
この日は朝早く起きて暑くなる前に撮り終えようと、裏の団地の花壇に行った。而し、夏の太陽は容赦なく、私の期待を裏切った。朝の清々しさなど感じる術もなかった。その上、これぞという花は花壇になかった。今の時期は致し方ないとは思うが、やはり残念だった。

下の二枚の花だけが花壇にあった花だった。





タイのバンコクの空港でチェック・インをする前に、辺りに日本人がいないかと探すと、おとなしそうな日本人が居た。然も私と同じ貿易屋の匂いがした。綺麗に梱包された銘木のサンプルを相手に見せて「この分が重量オーバーなので、なんとか引き受けて頂けないでしょうか?」と丁寧にお願いしたところ、「断ります」と全く付け入るスキのない調子で拒否された。同じ日本人なのに非人情な奴だと思ったが、超過した重量分は料金を払えばいいと諦めた。だが、幸いなことに追加料金なしで受け入れてくれた。それを通してくれたフロントのお嬢さんは私を見てニヤニヤしていた。私が断固断られたシーンを見ていたのだろうか?
帰国してから、その話を航空会社に勤めている友人にすると、「当たり前だ。頼んだお前が悪い。その中に麻薬が入っていたらどうする?いいか、お前が逆の立場だったら絶対に断れよ!」と強く云われた。それから何十年もその友人の忠告を守り続けた。
クアラランプールからモーリシャス経由でマダガスカルに行くべく、ボーディング・パス(搭乗券)をもってゲートを通ろうとしたとき、係員に「これがあなたの新しいボーディング・パスです」と別のパスを渡された。見るとファースト・クラスのものだった。私の乗る予定だったビジネス・クラスが満員で、私が選ばれてファースト・クラスに行かされたのだ。オーバー・ブック(過剰予約)でツーリスト・クラスの客がビジネス・クラスに移され、幸運な私がそこから押し出されてファースト・クラスに行かされたのだ。
モーリシャスの空港が近づいた時、隣の席のフランス人から「このコニャック(ブランディー)を持って税関を通って頂けないか」と頼まれた。私は友人の忠告を思い出して断った。密閉された新品のコニャックだったが、麻薬が入っていないとは限らない。相手は恨めしそうな顔をしていたが、意思は変えなかった。ファースト・クラスに乗るゆとりのある人間がコニャックの関税をけちるなどとは考えられない。
この日は朝早く起きて暑くなる前に撮り終えようと、裏の団地の花壇に行った。而し、夏の太陽は容赦なく、私の期待を裏切った。朝の清々しさなど感じる術もなかった。その上、これぞという花は花壇になかった。今の時期は致し方ないとは思うが、やはり残念だった。

下の二枚の花だけが花壇にあった花だった。




