迂闊に不謹慎な記事を掲載することは差し控えるべきだと思いますが、現在最も深刻な状況になりつつある福島原発の状況についてコメントします。
まず今回のトラブルの原因ですが、下記写真を見ると判るとうり周辺設備がそっくり津波にさらわれています。 (上から6枚目の写真、カーソルを左右に振って見てください。)
http://www.abc.net.au/news/events/japan-quake-2011/beforeafter.htm
これでは崩壊熱の徐冷サイクルを回すことは無理だとわかります。恐らく配管系も全て持っていかれているので、電源車をつないだところで冷却は出来ないでしょう。
現在、対策として耐圧容器をベント開放状態にして海水を注入して冷却しようと試みているようですがうまく行っていないようです。恐らくですが、内部圧力を急激に下げると水が沸騰して一瞬で空焚き状態になりますし、中途半端に圧力が残っていると消防ポンプごときでは海水注入は無理なのでしょう。また、大気開放となると放射性物質を大量に含んだ水蒸気を放出することになるので問題です。しかし、メルトダウンによる水蒸気爆発、若しくは最悪のケースとして再臨界による核反応を起こすリスクを考えるなら水蒸気放出は次善の策といえるのではないでしょうか。
仮に水蒸気を大気圧開放で放出した場合海水を追加注入して崩壊熱の冷却が可能かどうかですが下記のサイトでざっくりとした必要水量の計算をしています。これによると3号炉で8.1L/Sの水を注入できれば冷却は可能なようです。(1号炉はこの約半分)この程度の量であれば注入には問題ないと思います。 ちなみに、現地で決死的な作業をされている皆さんの努力と勇気には心から感謝します。
http://slashdot.jp/~Led/journal/526677
ただ、特に3号炉はプルトニウムを含むMOX燃料を使っているので水蒸気開放は周辺地域に汚染を引き起こします。また、1号炉の水素爆発の際に同建屋プールで保管していた使用済み核燃料も吹き飛んだという情報もありますのですでに深刻な汚染が広がっている可能性はあると思います。ただ、福島原発が太平洋に面している事と偏西風の卓越で主な汚染エリアは海洋になると思います。(下記参照)
しかし、なぜ命綱とも言えるバックアップ電源設備を地下に設置するくらいの知恵が無かったのでしょうか、想定外では済まされない、想像力の欠如としか言いようがありません。
追記:午前11時ごろ3号機で水素爆発が起こりました。それに関する東京電力の報告では爆発後の圧力容器内圧:0.18Mpa 格納容器内圧:360KPa と有りました。1MPaが約10気圧なので各々1.8気圧、3.6気圧ということで気圧保持が出来ている事と圧力が大気圧に近い低いものなので海水注入は継続できそうですね。ちなみに、1.8気圧での水の沸点温度は約120℃で家庭用圧力鍋程度です。不幸中の幸いですが、うまくすると徐冷に成功するかもしれません。あと2-3日が勝負です。本当に神に祈るような気持ちです。
追記2: 2号機で海水注入ポンプの燃料切れで燃料棒全露出によるメルトダウンの可能性がありましたが、危うく回避できました。三日くらい寝ていない人がオペレーションしている感じですね。なんとか峠が見えてきた感じですが最後の最後で2号機水素爆発による格納容器破損、なんていう事にならないよう最後までしっかりお願いしたいものです。