ピアニッシモをベースに色彩豊かな音楽の実り
フランスの大御所ピアニスト 兼 指揮者 = アントルモン の『ピアニスト』としての来日公演の初日と2日目。初日は 同じく フランス大御所ピアニストである タッキーノ との「1台連弾だけの演奏会」であった。 2日通して聴き、「アントルモンの音楽観」について、随分と深く感じることができた。
- 「ピアニッシモをベース」に音作りする
- 「繰り返し」の時に鮮明に聴き取れるが「色彩感」が豊穣
- 作曲家の名作中の名作を全力で演奏し、作曲家毎の「作風」の違いが、「音」になり現れる
の3点が充実した演奏会であった。
- モーツァルト
- ベートーヴェン
- シューベルト
- ショパン
- ブラームス
- ビゼー
- ドビュッシー
- ラヴェル
が2日で演奏された作曲家だが、『作曲家の個性』が前面に表出されて来る。特に
ビゼーのピアノ曲がこれほどの名作! と初めて知った
ことを明記しておきたい。
デュオでパートナーを務めた タッキーノ の技巧と音楽の柔軟性も卓越しており、シューベルト,ラヴェル,ビゼー の魅力を最大限に聴かせてくれた!
アントルモン は「マイクでは、魅力の全てを収録し難いピアニスト」であった。 ん?、どんなところか? ですか???
- 音量の巾(ダイナミクスレンジが巾広い)
- 音量が「ピアニッシモ方向」に軸足を置いており、フォルティッシモでも ペトロフ や 小川典子 や ポゴレリチ の「フォルティッシモ」とは質が異なり、柔らかである
「録音では音が大きいほど、技術的に処理し易い」ことが明確であり、この方向で録音は進められることが多い。その結果、アントルモンのピアニズムは「録音では映えることが少ない」のである。
ppp~mp の間で アントルモンの音楽は、基盤が作られる。そして、「パッ」と ff や fff が、スビト や クレッシェンド で突然訪れ、すぐに 元の「色彩 = ppp~mp」に戻る。
シューベルトの 幻想曲ヘ短調D940(連弾) の素晴らしさに初日の前半に目を見張ったが、続く ラヴェル & ビゼー はさらに素晴らしかった上、2日目の ラヴェル & ドビュッシー の充実ぶり は言葉では言い表せないほど。唯一残念だったのは、初日1回、2日目2回「アントルモンのド忘れ」が起こったことだけ。できることならば「譜面を見て、弾いてほしかった」次第である。
- 5月11日(火)19:00 神戸市/神戸新聞松方ホール
- 5月13日(日)15:00 金沢市/石川県立音楽堂コンサートホール
- 5月18日(金)18:45 愛知県/東郷町民ホール
- 5月19日(土)18:30 茅ヶ崎市/茅ヶ崎市民文化会館
で アントルモンの公演は行われる。是非是非、聴いて欲しい。