昨日「高須博ピアノリサイタル」の演奏会紹介をしたら、高須得意の分野である「ピアノ編曲モノ」のCDを聴きたくなり、高須自身の演奏を含め、数枚立て続けに聴いてしまった。いいぞ!
J.シュトラウス2世のオペレッタ「こうもり」は、ベートーヴェン「第9」と並ぶクラシック音楽の大傑作である。両曲ともに年末になると、演奏頻度が抜群に上がる! J.シュトラウス2世は、ピアノ曲を作曲しなかったので、純粋なピアノ曲としては、取り上げることが難しい?
・・・と思ったが、意外に多くのピアニストが録音しているモノだ。今日は、「こうもり」ピアノ編曲モノを紹介したい。
J.シュトラウス「こうもり」ピアノ編曲
できる限り「違うタイプ」を紹介したい。大きく分けて
- ピアニスト自身が編曲&演奏を1人で行うピアニスト
- 他の作曲家が編曲した楽譜を弾くピアニスト
の別がある。これは非常に大きな差である。大作曲家で「編曲モノ」と言えば
- リスト
- ラフマニノフ
は異論ないことだろう。共通点は
ピアニストの腕が超絶技巧 + ロマンティズムの極地!
である。同時代の作曲家の シューマン(リストより1才上)やスクリャービン(ラフマニノフより1才上)などは、この手の音楽に不向き。まずは、自分の技巧をひけらかす『ショーマン・シップ』が必要なのである。
第1位 シフラ (HUNGAROTON HCD31569)
1,786円(税込)
- 演奏 :☆☆☆☆☆
- 資料価値:☆☆☆☆☆
- 音質 :☆☆☆☆
1955年録音。
昨日が50周年記念日だった「ハンガリー動乱」。その影響で ハンガリー → フランス に亡命したのが、シフラ。亡命前から「大ピアニスト」であり、ハンガリーの国営レーベル = フンガロトン に多量の録音を残している。その1枚。
- リスト 超絶技巧練習曲(1851年版)抜粋 4曲
- シフラ自身の編曲に拠る「編曲モノ = パラフレーズ」集 4曲
- ガーシュイン「ラプソディインブルー」(通常程度のカットあり)
と言う構成。編曲自体も「手に入ったロマンティズム」である。
リスト → ラフマニノフ → シフラ
と言う「編曲モノ王道路線」だと私高本は感じる。「ケレン味あふれる」感触。極めて「ロマンティック」なのだ。(高須博 もこの路線である。)1枚だけ聴くのであれば、迷わずこのシフラ盤をお薦めする。
音質もモノラルだが、とても良い!
第2位 グルダ (ソニー・クラシカル SICC-335)
1,680円(税込)
- 演奏 :☆☆☆☆☆
- 資料価値:☆☆☆☆(← J.シュトラウス「こうもり」編曲モノとして)
- 音質 :☆☆
1990年録音。
グルダ自身の編曲&演奏。原曲の和声などは基本的にいじらずに編曲して「正統な編曲」を目指している。
グルダ自作自演が最も聴きごたえがあり
やはり 作曲家本人の演奏は説得力ある!
ことをつくづく感じる1枚。グルダ作曲「メヌエット」が最高の聴きモノの1枚。
ウィーン生まれ & ウィーン育ち のグルダ
らしいと言える。「原曲に忠実なピアノ編曲」を好む人にはコチラがお薦め。録音は相当音をいじっているので、新しい録音の割には映えない。
第3位 田村響 (ACCUSTIKA/芸術教育企画 PPCA-602)
2,800円(税込)
- 演奏 :☆☆☆☆
- 資料価値:☆☆☆(← J.シュトラウス「こうもり」編曲モノとして)
- 音質 :☆☆☆☆
2003年録音。
ゴドフスキー編曲版 J.シュトラウス「こうもり」の代表盤
である。ゴドフスキーは作曲家として、また編曲家として有名だが、私高本の聴いた限りでは、リスト や ラフマニノフ に比べるには相当無理がある水準。また、「編曲家」としてだけ見た時も、シフラ や グルダ に比べても優れているとは言い難い。(← 明言してしまえば、シフラやグルダよりも「下」である。ハイ!)
- 作曲技法的には「2ヶ所の場面を同時に鳴らす」などの工夫は、シフラやグルダよりあるのだが
- 「聴衆を楽しませる」視点からは、「音の詰め込み過ぎ」に感じるので
- 「たっぷりと、ゆったりと楽しむ」瞬間がほとんど感じられない、に起因する
これは、「こうもり」に限らず、ゴドフスキーの作曲&編曲全てに関して感じる点である。
田村響の演奏は素晴らしい。いくら演奏が良くても、曲が今1つモノ足りないと、なかなか映えないモノである。
現在20才。録音当時は17才のハズである。上記、シフラもグルダも10台から才能を高く評価されていたピアニスト。田村も同等以上になってほしいと大いに期待している。
・・・で、編曲モノを聴いて「原曲が聴きたい!」と思った方向けには、オペラなのでDVDが良いだろう。
原曲 J.シュトラウス:喜歌劇《こうもり》/グシュルバウアー、ウィーン国立歌劇場 (TDK Collection TDBA-0089)
4,032円(税込)
1980年12月31日 ウィーン国立歌劇場(ライヴ)録音
おそらく「史上最高の顔合わせ」と思う人が最も多いだろう1枚。豪華キャストについては、リンク先で確認して下さい。
ウィーン国立歌劇場が総力を挙げて「大晦日」を楽しませてくれた!
と言って良い。