1817年に作曲されたと推定される「ピアノソナタ楽章」がある。
ここまでを整理すると、自筆譜と筆写譜が無いために作曲時期が特定できない「ピアノソナタ 並びに ピアノソナタ楽章」は以下が残ることが判る。
自筆譜が残っていないので断定はできないが、
が有力。「ソナタ D459A/3」は、稿が2つ以上あることが確定している曲。D459A/3 + D459A/1 + D459A/2 は「さすらい人幻想曲」D760 ほどは明瞭ではないが、「循環ソナタ」になっており、D459A/1 は D349 よりも(個人的感想だが)出来の良い楽章だと感じる。
もう1回まとめると
となる。
最少に言って「第1楽章の作曲時期が特定できないピアノソナタは D664 のみ」である。1825年説や1819年説がこれまで敷衍して来たが、「D664 = 1817年説」にすると、全てが氷解する。読者の皆様はどのように感じますか?
- Allegro patetico ホ長調 D459A/3
自筆譜断片(98-105小節、ウィーン市立地方図書館蔵)が D41 の空白に作曲されており、この時期の作品と学者の意見が一致している。第1楽章である。完成。
- Adagio ハ長調 D349
上記D459A/3 に続いて書かれた自筆譜があり、第2楽章である。ハ長調で開始され終結部と推測される箇所まで作曲されているが、ロ長調であり、この後主調(=ハ長調)にどのように戻るのか? が不明。未完成。
- Andantino ハ長調 D348
上記D459A/3, D349 から少し離れて、同じ D41 の後方に作曲されている。「3部形式の再現部に入った箇所」まで作曲されており、主要主題を変奏するつもりが無い時はシューベルトは記譜を省略した。「ほぼ完成した」と考えられる。D349 と同じ調性なので、D459A/3 の第2楽章第2稿の可能性もあるが、随分飛んだ頁に作曲されているので、D459A/3よりも後の作品の第2楽章の可能性も極めて高い。
- Allegretto ホ長調 D506
1816年12月作曲「人生の歌」D508 の第1-18小節の余白に、D506 の第57-87小節が作曲されている。(シカゴのロジャー・バレット・コレクション蔵)D506 は290小節の曲。完成。
D566 か D459A/3 の終楽章と考えられるが、バドゥラ=スコダがヘンレ版楽譜で「D566 の終楽章」説を唱えて以来、ロンドン王立音楽院版、ウィーン原典版と(ベーレンライター新シューベルト全集を除く)「全ての原典版楽譜」がバドゥラ=スコダ説に従ってしまった。元を糺すと 1948年に出版された "Dale : British and Continental Music Agencies"版に起因している。尚、曲想が「人生の歌」D508 からインスピレーションを得て作曲された、と考えられる。
ここまでの4楽章は「1817年作曲」が学者間でほぼ統一されている!(どのソナタに属するかは全く別の話なのでご注意を)
- (テンポ指示無し) イ長調 D604
この楽章は緩徐楽章であることは間違い無いが、1816年説と1817年説が激しく対立している楽章。ウィーン市立地方図書館蔵。
この楽章の自筆譜は「1816年9月作曲 序曲 D470」の「弦楽四重奏曲用草稿の第102-133小節」の余白に作曲されている。D470 は229小節の曲。1816年9月前と言えば、ホ長調ソナタD459(現在2楽章は確定)が1816年8月作曲なので、ピタリ合致する。
D459A/3、D349、D348、D508 の例からすると、「1817年6月以降楽譜用紙不足になったシューベルト」が余白に書いた可能性も否定はできない。バドゥラ=スコダがヘンレ版楽譜で出版して以来、ロンドン王立音楽院版とウィーン原典版がバドゥラ=スコダ説を支持しているので「楽譜上」では1817年説が圧倒的優勢。この時は「D571の第2楽章」が定位置である。
ここまでを整理すると、自筆譜と筆写譜が無いために作曲時期が特定できない「ピアノソナタ 並びに ピアノソナタ楽章」は以下が残ることが判る。
- ピアノソナタ イ長調 D664(3楽章)
- Adagio ハ長調 D459A/1
- Scherzo イ長調 D459A/2
自筆譜が残っていないので断定はできないが、
D459A/1 と D459A/2 は「ピアノソナタ ホ長調 D459A/3 の緩徐楽章とスケルツォ楽章の最終稿」と推定
が有力。「ソナタ D459A/3」は、稿が2つ以上あることが確定している曲。D459A/3 + D459A/1 + D459A/2 は「さすらい人幻想曲」D760 ほどは明瞭ではないが、「循環ソナタ」になっており、D459A/1 は D349 よりも(個人的感想だが)出来の良い楽章だと感じる。
もう1回まとめると
作曲時期が不明なピアノソナタは、イ長調ソナタD664 1曲のみ
となる。
最少に言って「第1楽章の作曲時期が特定できないピアノソナタは D664 のみ」である。1825年説や1819年説がこれまで敷衍して来たが、「D664 = 1817年説」にすると、全てが氷解する。読者の皆様はどのように感じますか?