ドニゼッティ オペラ・ブッファの代表作「ビバ!ラ・マンマ」捧腹絶倒ぶりを見事に描き出した東京オペラプロデュース
2008年2月ワーグナー「妖精」公演以来、10年弱『日本初演のみ』(オッフェンバック「青ひげ」のみ「原語日本初演」だった)を続けて来た東京オペラプロデュースが前回の100回記念公演オッフェンバック「ラインの妖精」を1つの機に、101回から103回はこれまで繰り返し上演して来た「手駒」を再演してくれることとなった。本日の「ビバ!ラ・マンマ」は20年ぶりの公演。私高本は初めて聴く演目である。
ドニゼッティは、オペラ・ブッファ と オペラ・セリア を両方作曲した作曲家。「愛の妙薬」もブッファだが、それ以上に笑いを畳み掛けて来るのが「ビバ!ラ・マンマ」である。R.シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」がおそらく手本にしたであろう作品であり、モーツァルト「劇場支配人」を手本にしただろう、「オペラ内面暴露ブッファ」である。
ブッファの難しさは、「歌える喜劇役者」を必要数揃えられるか否か、が大きい。この日の
翠千賀、羽山晃生、上原正敏 は、アリアに重唱に大活躍
さらに笑い取りに重点が置かれるが歌唱も重要な役に
羽山弘子、米谷毅彦、白井和之、岡戸淳、佐藤泰弘 はアンサンブルで外向的な歌唱を披露
と「歌える喜劇役者」を揃えることが出来たのである。
次に、馬場紀雄演出について。「オペラ舞台の舞台上」と言う設定通り。シャンデリアを序曲&間奏曲中に釣り上げる以外は、大道具は全く動かさない。動くのは「役者」である。チョコマカとユーモラスに動く動く。合唱団もユーモラス。女声合唱が4名、と信じられない最少構成(各パート2名以上いないと「合唱」と呼ばない)だったが、きちんと混声合唱で最上声をリードしていながら、ソリストを引き立たせるために大袈裟な所作の連続。
衣裳は、1幕と2幕 で交換するだけで、2枚。但し、ユーモラス優先だが、優美に見える衣裳を揃えていた。見応え充分。
最後に、飯坂純指揮について。8型オケ(8-6-5-4-3)と言う小型編成だったが、きびきびした演奏で歌手陣を盛り上げていた。ピッコロパートを1番奏者に吹かせていたが、ドニゼッティの指示なのか? 飯坂純の指示なのか? は不明。確かに、上声を吹くのだから1番奏者の方が安定している!
東京オペラプロデュースは「プロンプター無し」でここ20年(もしかするとそれ以上!)公演を続けているので、ドニゼッティが「プロンプターを皮肉った」箇所の応対は、何と「指揮者=飯坂純」が全て対応した。ドニゼッティも想定していないほど、恵まれた環境 = 東京オペラプロデュース
ベルリオーズが「ドニゼッティのオーケストレーションは、大型のギター」と揶揄したことは有名。ベルリオーズほど多彩では無い(イングリッシュホルンを使わない など)が、「ビバ!ラ・マンマ」を聴くと、木管楽器の音色の多彩さを浮かび上がらせている。充分に楽しめる!
プログラムノートを読むと、「ビバ!ラ・マンマ」の呼称が使えるのは今回公演まで、とのこと。権利関係、しかも外国、のことは全くわからないが、原題の「劇場的都合・不都合」の名称では、集客出来ない、と思われる。
東京オペラプロデュース「ビバ!ラ・マンマ」を鑑賞したい人は、明日11/12公演を絶対に聴いて欲しい。
私高本が「ダブルキャスト(以上)」の公演で、「差」があることを教えてくれたのは、東京オペラプロデュースである。猫頭評論家の私高本を両日とも招待して頂いて観せて頂いたおかげ様である。新国立劇場イーグリング新振付チャイコフスキーバレエ「くるみ割り人形」の『立体批評』の元も、東京オペラプロデュースのお蔭様である。感謝感謝。
明日の楽日公演が本日公演と同じ水準で演奏されることを祈ります。