「2羽の白鳥」をアンサンブルで最重視した 吉田都芸術監督
2021年10月ライト振付「白鳥の湖」日本初演初日を観て素晴らしいと感じた 私高本。他キャストも観たい、と思い、追加チケット購入しようとしたら、好みの座席が売り切れていたw
再演時は万端に座席を確保し、6/11昼、6/11夜、6/14、6/17昼、6/17夜 計5公演観た。
最も感動したのは、6/11昼。他の公演は、主役=オデット&オディール が登場しない第1幕は、王子も第2幕以降ほどは力入れないのだが、6/11昼 は 王子=井澤 と ベンノ=速水 が競演で魅せ合い、第2幕オデット登場以降も第1幕のハイテンションが第4幕の最後まで維持された。他の回は、第2幕以降はハイテンションだったのだが、第1幕の差が出た。
白鳥の湖ソロは、登場順に
- 王子
- クルティザンヌA
- ベンノ
- クルティザンヌB
- オデット
- ハンガリー王女
- ポーランド王女
- イタリア王女
- オディール
である。9役にソロがあり、華のある振付。
第3幕オディール登場から、オディールと王子のデュオ、オディールのソロ、王子のソロで、最も目を引くシーンとなる。「こどものための白鳥の湖」が第3幕を取り上げるのは、豪華絢爛の大道具+衣裳で見応え最高だからであろう。背後に高い位置でオデットが羽ばたくシーン(2回ある)は舞台を左右だけでなく、前後にも上下にも自在に駆使しており、鮮やか!
衣裳を1人1着製作したことは、詳細に報道したが、
大道具は、吉田都が初の主役を踊った バーミンガムロイヤルバレエ「白鳥の湖」からの借り受け
は、プログラム誌の隅に小さな級数で記載されただけなので、ここに改めて記載する。豪華である。これまでの新国立劇場バレエは、「チャイコフスキー3大バレエ」は「自前の大道具路線」だったので、違う方向へ大きく舵を取ったのが、印象深い。今後20年以上この豪華な舞台&衣裳を用いてくれるのは有り難い限りである。
第2幕&第4幕のコールドバレエを進化させた 吉田都芸術監督
ピーター・ライト振付「白鳥の湖」は、オデット登場シーン以外は、
オデットシーン=24名の白鳥群舞 + 2羽の白鳥 + 4羽の白鳥
である。いつも「2羽の白鳥」が先導している。今回「2羽の白鳥」は
花形悠月が9公演中7公演出演、中島春奈が9公演中事前は3公演予定出演だったが、結果は5公演出演
となった。
特に、花形の脚の蹴り上げが「速く、高く」が素晴らしい。中島も負けずに競う。
4幕で王子が伏している白鳥の環を時計回りに走る場面の、白鳥の体を起こすタイミングは映える。
花形&中島の今後の活躍に期待する。
「良いところ取り」のピーター・ライト版「白鳥の湖」
ライト版「白鳥の湖」について、序曲中「前王の葬儀シーン」が紗幕越しに映し出される開始の創意工夫が物語られるが、第2幕は「2羽の白鳥+4羽の白鳥」(← ライト版設定)と「4羽の大きな白鳥+4羽の小さな白鳥」の両版の「良いところ取り」である。共同演出のガリーナ・サムソワ が選び抜いたのだ。第3幕3人の王女はチャイコフスキー作曲時は無い設定。ピーター・ライトが初めて設定したのか、他の振付師が既に設定していたのかは説明が全く無い。音楽はチャイコフスキー作曲の別の作品(作品72 「18のピアノ小品」から)をオーケストレーションしている。ピーター・ライト版初出ならば、「編曲者」明記されると思うので、これも「良いところ取り」と思われる。見どころたっぷりのライト版「白鳥の湖」は楽しめる振付である。