前号で列挙した指揮者の中から、「4月からの来シーズンで任期を終える スダーン」と「全力疾走中の カンブルラン」について、感じるところを述べたい。レパートリーが重複していないように見える2人だが、私高本の目には、いろいろと重なり合う点もあるからだ。
オーケストラトレーナーが兼ね備えているポイント
「得意分野」に超越している
体力が漲っている「指揮者として元気溌剌」年代
オケ団員から信頼を得る風格
「言うは易し、行うは難し」。このポイントをクリア出来ている指揮者は数少ない。スダーン & カンブルラン は、共に「数少ない極めて有能な指揮者」であり、招聘されたオケ(スダーンは東響、カンブルランは読響)との相性も抜群に良かったのである。「相性の機微」と言うのは、他人には解り難いモノである。2回も離婚されている私高本は言及できない鴨><
スダーン は、『13年間にわたるザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の音楽監督を経て、2004年9月に東京交響楽団の音楽監督に就任』が東響公式ページの紹介である。東響も「10年間の音楽監督」になったので、腰を落ち着けてじっくりとオケと向き合う指揮者であることがお分かり頂けるだろう。東響音楽監督就任して真っ先に目についたのは
モーツァルトの協奏的作品で、東響オケメンバーを起用しての公演
であった。これは、好評だったようで4月1日に「リニューアル・オープン」する
川崎ミューザ主催の「モーツァルト・マチネ」シリーズ に発展
したほど! オケのコンサートマスターや首席奏者は「ソロパート」を演奏することが多い。だが、「定位置で座って演奏する」のと「指揮者のすぐ脇」で(基本的に)立って演奏するのでは、「張り合い」が相当に違うのは人情。
「スダーン X 東響 のモーツァルト」は、新国立劇場「モーツァルト:皇帝ティートの慈悲」で絶賛され「年間ベストオペラ」に選ばれた! ほど
「スダーン の モーツァルト」は小細工は無く、真正面からモーツァルトを捉える。(「カンブルラン の モーツァルト」は『あざとさ』があるのと対照的!) 来シーズン定期演奏会オープニングは「モーツァルト:レクイエム」である!!! これだけでも、音楽監督招聘の恩恵抜群だが、「モーツァルテウム音楽監督時代以上の成果」を挙げた作曲家もあった。
「スダーン X 東響 の シューベルト交響曲」は、現在東京で聴ける最高!
『佐伯周子 の シューベルトピアノソロ曲完全全曲演奏会』実行中の私高本が責任を持って断言する。演奏会には勿論足を運んだし、ライブCDも購入した。「真正面からシューベルトに取り組んだ スダーン X 東響」は忘れられない。スダーン自身も同じ思いのようで、
音楽監督最終公演の最後の曲 = シューベルト交響曲第2番D125(← 「糸を紡ぐグレートヒェン D118」直後の名曲)
に据えた。もうチケットは購入したよ。
スダーン が「最終シーズン」を意識した時に、「取り上げて置きたい!」と熱望した形跡のある作曲家が(少なくとも)もう1人いる。
「スダーン X 東響 のブルックナー」であり、第4番、第9番、「テ・デウム」
を取り上げる。スダーン は(おそらく)バス・チューバが入った第4番最終稿以降の作品のみに興味があるように思う。その為、ブルックナー交響曲全曲演奏会はついに実施されなかった。だが、重心の低い響きは、とても魅力的で全ての曲を聴きに行く。
私高本の視点では、
スダーン は、「得意のドイツの交響曲作曲家(特に、モーツァルト、シューベルト、ブルックナー)」にて 東響 の演奏水準を9年間で飛翔させた!
と感じる。
「正攻法のスダーン」とは カンブルラン は全く異なる。
常任指揮者就任演奏会の「モーツァルト:交響曲第41番ジュピター」で「意表を突く(楽譜にない)休符」を入れて聴衆に「深々と挨拶」
が実績。オケメンバーもぶっ飛んだだろうな(爆
メシアン、ストラヴィンスキー などで、読響 を引っ張って行く、と予想していた評論家も多かったが、「就任インタビュー」通り、「普通のプログラム」を中心に据えた。ベルリオーズ までは、想像していた人も多いだろう(CDも既にある)が、
マーラー交響曲第6番 のオケ配置と響きのステレオ効果の見事だったこと! これは予想外!!!
私高本は「カンブルラン X 読響:マーラー交響曲全曲演奏会 & CD発売」が来年4月から開始される予感がする。
「マーラー」と言う作曲家は、「知っているようで、まだまだ(モーツァルトやベートーヴェンと比較して)知らないところだらけの作曲家
である。カンブルラン は「マーラー」を題材に 読響 に「響きを聴き合う」を呈示した様子。左から 1st Vn, Va, Vc, 2nd Vn って「隣り合うパート」が聴き難いことこの上ない><
カンブルラン の特徴の1つに「翌日の演奏会で、さらに付け加えることがある」も新鮮。ベートーヴェン「第9」も、後の公演を聴いたら、前の公演とは打って変わったことがあった><
4月からの来シーズンプログラムを見ると、「フランス物」「ロシア物」と「ドイツ物」「ドイツ周辺国物(バルトーク とか)」とのバランスを絶妙に取っていく方針の様子。これが、どれもが「一癖も二癖もある」演奏なんだよなあ(爆
3/24 今シーズン最終公演 = モーツァルト交響曲第39番メインプログラム も「何かやらかしそう!」
なのである。
カンブルラン は「スダーン とは真反対」で、創意工夫を凝らしたい!! が前面に出るタイプ。聴き手の好みに合えば「最高!」になるし、合わなければ下手すると「ブーイング」もあり得るタイプ。
カンブルラン は「自己主張」以外は、「作曲家のスタイル」を遵守する。だからこそ「自己主張点」が誰の耳にも明らかになる
スダーン と カンブルラン は、「音楽作り」は全く異なる。だが
新鮮な視点で音楽を捉え、オケメンバーに伝え、聴衆に伝える。基本的に「誰でも知ってる名曲中の名曲で」
が共通点。これが「オーケストラトレーナー」としての資質であり、根気よく続ける必要があり、スダーン はそろそろ年齢の上限に来たことをみずから察知したように感じる。「スダーンの残りのシーズン」「カンブルランのまだまだ先が長いシーズン」のどちらも聴きまくるぞ!!!