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黒の水引とんぼ  その9

2007-08-06 08:07:29 | ある被爆者の 記憶
この界隈に男がいないわけもないが、その男たちは、女たちに追従を言い、追随することが仕事でもあった。少なくとも私にはそうみえた。
 時には旦那と称する男たちの姿を私も見ている。しかし、この旦那衆も、結局は、あまり頭もよくない女たちの手玉に、馬鹿々々しいとは思っているにちがいないのだろうに、上機嫌そうに、ほいゝとのってる顔つきは、どう見直しても淫らで汚らしいものでしかなかった。だのに、旦那衆は、その緊まりない顔を改めようともしない。思わせぶりな表情を先にして、そのあとで、やおら言葉が、口の奥で、何か二言、三言、ゆっくり声になるのが、大旦那の特徴のようであった。
 私は、この芸者にはどの程度の旦那がつくか、もちろん子ども心の直観だから資財力に関することではないが、新しい芸者が抱えられてくると、その芸者のこの土地での売れ行きの予想も含めて、なぜだか、これからの運勢をひとり勝ってに思いやったりした。ひとり勝手にといっても、このことは私にとって、決していたずらやわるさ遊びに似たものではなかった。私は今でも、仕込みっ子から売れっ子の芸者、年増芸者のそのいずれにも共通して、その横顔のどこかにある翳りを思い出すことができる。その翳りがあるから芸者なのだ。私はこの翳りのために、この土地での渡らいの安全を願ってやっていたように思う。
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