ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、グーグルやフェイスブックが後押ししている太平洋横断海底ケーブル敷設事業を、米司法省当局が国家安全保障上の見地から阻止しようとしている。
複数の省庁にまたがる通信審査委員会を率いる司法省は、中国通信サービス大手の鵬博士電信伝媒集団の参加と、この「太平洋光ケーブルネットワーク(PLCN)」が香港との直接の結びつきをもたらす点を警戒し、断固として反対する姿勢を示した。
アメリカの司法省が率いる「Team Telecom」という複数機関から有識者を集めた政府間パネルが、アメリカと中国をつなぎ両国で高速インターネットを提供するために開通が予定されている海底ケーブルのプロジェクトに反対しているとのこと。海底ケーブルは理論上、中国のスパイ活動に利用される可能性があると専門家の指摘に基づく物である。
Team Telecomが懸念を示している海底ケーブル開通プロジェクトは、GoogleおよびFacebook、そして中国で4番目に大きな通信事業者である鵬博士電信伝媒集団(Dr. Peng Telecom&Media Group)の3社により支援されています。Team TelecomはDr. Peng Telecomが中国政府と深いかかわりを持っている点が問題視されている模様。
ロサンゼルスと香港を結ぶこの8000マイル(約1万3000km)にもおよぶ海底ケーブルは建設がほぼ完了しており、2019年9月に建設に関する許可が期限切れになります。Team Telecomによる指摘の影響で海底ケーブルの開通に向けた動きが妨げられる可能性があると報じられています。
これに対して、香港のISPであるHKISPAが「技術的にいえば、 VPNやクラウド、暗号化などのテクノロジーを含む現代のインターネットの複雑さを考えると、香港のインターネット全体を大規模なファイアーウォールの監視下にでも置かない限り、インターネット上のサービスを効果的にブロックすることはできません」と指摘しています。
さらに、HKISPAは「オープンなインターネットに無理な制限を課すと、元の制限が有効にならず、最終的に香港のインターネットが大きなファイアーウォールの監視下に置かれることにつながる」と指摘。もしそのような状況に陥れば、より多くの制限が生じることとなるとも警告しています。加えて、アメリカ政府が海底ケーブルを制限しようとしていることは、香港におけるオープンインターネットの終えんへとつながり、国際的なビジネスが香港に投資する現状が潰える危険性すらあると指摘しています。
アメリカ政府は海底ケーブルプロジェクトを妨害することで、中国ユーザーが特定のインターネットサービスにアクセスできないようにすることを望んでいるわけですが、そのような状況にはならないとHKISPAは指摘。海底ケーブルプロジェクトを妨害しても、中国側が巨大なファイアーウォールを用いて中国ユーザーのインターネット状況を完全な監視下に置かない限り、「ユーザーはVPNなどを駆使してインターネットにアクセスすることが可能である」とHKISPAは指摘しています。
尚、IIJによると、インターネットにおける国際データ通信の99%は海底ケーブルによって運ばれている。19世紀半ばから敷設が始まった海底ケーブルは指数関数的な勢いで総容量が増えており、今日では総長100万キロメートルを超え、数百本のケーブルからなる複雑な網目構造が、世界のほぼすべての地域を結んでいます(下記図)。この中には、大手事業者のグローバルサービスの大容量運用バックボーンに加え、陸上接続の乏しい地域への接続を確保するためのケーブルがある。
TeleGeograpyによる海底ケーブル図(2018年7月)
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