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<マヨラナ粒子>京大グループが実証,ノーベル賞もの?

2018年07月12日 11時32分38秒 | 日記

 

 


 

 毎日新聞が報道していた:::80年以上前にイタリアの物理学者マヨラナ教授が予言していた幻の「マヨラナ粒子」が実際に存在することを世界で初めて実証したと、京都大などのグループが12日付の英科学誌ネイチャーに発表した。電気を通さない固体の中で、電子があたかもマヨラナ粒子のようにふるまう現象を観測したという。将来的には量子コンピューターなどへの応用が期待される。

 マヨラナ粒子は、粒子とも反粒子とも区別のつかない「幻の粒子」と言われ、1937年にイタリアの物理学者、エットーレ・マヨラナが理論的に存在を予言した。電気を帯びず極めて質量の小さな素粒子「ニュートリノ」がその本命と考えられているが、証明には至っていない。一方、特殊な条件下の超電導体などでは、電子がマヨラナ粒子のようにふるまう可能性が指摘され、その決定的証拠をつかもうと各国で研究が本格化している。

 笠原裕一・京大准教授(物性物理学)らは、東京工業大のチームが合成した磁性絶縁体「塩化ルテニウム」を用い、その内部を伝わる熱の流れが磁場によってどの程度曲がりやすくなるかを、磁場を変化させながら測定した。

 その結果、ある範囲の磁場では、磁場や温度を変えても、曲がりやすさの値が普遍的な値の2分の1で一定になった。熱を運ぶ粒子が電子の半分の自由度を持っていることを意味し、そのような性質があるマヨラナ粒子が現れたと考えないと説明が付かないという。

 マヨラナ粒子は外部からの影響に対して強く、粒子が持つ情報を安定的に保てるため、量子コンピューターの素子としての応用に期待がかかる。笠原准教授は「これが普遍的な現象なのか、他の物質でも確かめたい。量子コンピューターの実現につながるか今は全く分からないが、その基盤を発見したと言えるのではないか」と話す。【菅沼舞、阿部周一】
 ◇ノーベル賞級の成果

 木村昭夫・広島大教授(物性物理学)の話 世界で発見レースが繰り広げられる中、大半の研究がターゲットにしていた超電導体とは別の物質、別の方法を用いてマヨラナ粒子の存在を直接的に示したインパクトは大きい。液体ヘリウムで冷却可能な温度(5ケルビン)で観測できたことも、今後の実験や応用に期待を広げる。ノーベル賞に値する重要な成果だ。

 【ことば】粒子と反粒子

 電子に対する陽電子、陽子に対する反陽子のように、物質を構成する粒子には質量は同じだが電荷が正負逆の反粒子がある。両者は出合うと消滅する。宇宙誕生時は粒子と反粒子が同数できたはずだが、今の宇宙は粒子ばかり。もし宇宙で最も数が多いニュートリノが粒子と反粒子の区別がつかないマヨラナ粒子だとすると、粒子と反粒子の数が非対称になった謎に説明が付くと期待されている。

 

固体中で電子がマヨラナ粒子のようにふるまうイメージ=笠原裕一・京都大准教授提供


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5 コメント

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マルテンサイト千年 (グローバルサムライ)
2024-04-22 02:13:20
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタインの理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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マルテンサイト千年への付記 (白熊)
2024-04-22 17:07:59
マルテンサイト千年さんのコメント、知識の羅列で主張が把握できない。①相対性理論と現在のAIとの対比がしてあるが、前者は宇宙の物質間の相互作用を記述するもので、後者は、宇宙のある瞬間に誕生した特殊な生命の思考の大胆で雑なモデル化で、自然界やビジネスなどの色々な事象を、2値の巨大空間に投影、その現象を決めるであろうパラメーターを導入し、Pythonといった数値解析ソフトでその事象の次に起こりうべき姿を推測するものである。2値の巨大空間であるが故に、それまでゲームで主に使われていたGPU(GraphicProcessor)がAIマシンとして重要視されることとなった。で、実際の人間の思考は、処理する量は限られているが、今のAIよりはるかに複雑で、一つの頭脳で、学習することで色々なことが出来る。AI学(ニューラルネットワーク論)でも深層学習が研究されて、色々なモデルが開発されたが、人間の学習・認識の仕組みを追求しきれていない。それでも今のAIは、文書生成AI.DX /AI、植物育成AIといったように対象とする仕事専用の夥しいAIが開発されている。今のAI は人間の頭脳活動を模しているといっても極めて小さな領域でしかない。②AI が直接イデオロギーに影響するか?それはあり得ないが、色々な分野で専用のAIが開発され、社会・ビジネス活動の改善がされており、社会が大きく変化しつつある。そのことがイデオロギーに影響するのは確かだろう。③経済学と関数接合論?全く知らないが、統計学に接続関数なるものがありリスク管理に使われているが、AI学の基盤には統計学があり、統計学をより直接的に社会生活に生かそうとするデータサイエンスなる分野が出来て、大学にもデータサイエンス学科なるものが誕生している。コメントの冒頭にデータ駆動型世界が切り開かれたという記述があり、慧眼かも。これが主張か?
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AI学はデータ駆動型で進む? (白熊)
2024-04-22 20:04:56
今のAI モデルは、この10年か20年に確立され、事象を2値空間にマッピングし、Pythonなどの数値解析ソフトで判断推論するもので、それなりの大きなインパクトを社会生活に与えていて、今後10年や20年はこのデータ駆動のAIが続くと思う。しかし、現代AIの最初のブームは、90年代の中、PC が普及し始め、それまでの大型やミニコンの機能が変わり始めた時で、膨大な知識を分類・蓄積し、高速に検出しアプリで利用しようとするものであった。しかし知識の蓄積には大きな記憶容量がいるし、検出にも高速処理がいるというような状況で、データ駆動型Ai が普及したというわけ。データを加工すると、本来の特性は失われるが故、開発・研究者は、最初のムーブメントを追求したいと思うであろう。
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宗教学的な歴史から見ると (政治哲学関係)
2024-08-16 04:26:07
一神教はユダヤ教をその祖とし、キリスト教、イスラム教が汎民族性によってその勢力を拡大させたが、その一神教の純粋性をもっとも保持し続けたのは後にできたイスラム教であった。今の科学技術文明の母体となったキリスト教は多神教的要素を取り入れ例えばルネサンスなどにより古代地中海世界の哲学なども触媒となり宗教から科学が独立するまでになった。一方っでキリスト教圏内でも科学と宗教をむしろ融合しようとする働きにより、帝国主義がうまれた。宗教から正当化された植民地戦争は科学技術の壮大な実験場となり、この好循環により科学と宗教を融合させようというのである。その影響により非キリスト教圏で起きたのが日本の明治維新という現象である。この日本全土を均質化した市場原理社会する近代資本主義のスタートとされる明治維新は欧米などの一神教国が始めた帝国主義的な植民地拡張競争に危機感を覚えたサムライたちが自らの階級を破壊するといった、かなり独創的な革命でフランス革命、ピューリタン革命、ロシア革命、アメリカ独立戦争にはないユニークさというものが”革命”ではなく”維新”と呼んできたのは間違いない。しかしその中身は「革命」いや「大革命」とでもよべるべきものではないだろうか。
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関数接合論 (文系数学好き)
2024-08-20 09:32:32
「材料物理数学再武装」なつかしいな。番外編の経済学のアダムスミス国富論(神の見えざる手)における、市場原理による価格決定メカニズム(競争原理)の話面白かった。学校卒業して以来ようやく微積分のありがたさに気づくことができたのはこのあたりの情報収集によるものだ。ようはトレードオフ関係にある比例と反比例の曲線を関数接合論で繋げて、微分してゼロなところが上に凸のところの最高峰となり全体最適だとする話だった。

まあ簡単に言うとシナジーということで
 1+1=2  だけではなく
 1+1=3  という世界を
数理的に表現しようとしたもののように受け止められる。
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