共産党の志位和夫委員長は26日の記者会見で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめる中国の王毅国務委員兼外相の発言を厳しく非難し、合わせて茂木敏充外相の対応も批判した。

 王氏は24日の日中外相会談後の共同記者発表で「一部の真相が分かっていない日本漁船が釣魚島(魚釣島の中国名)周辺の敏感な水域に入る事態が発生している。これに対して中国側としてはやむを得ず必要的な反応をしなければならない」などと主張した。

 志位氏はこの発言をめぐり「尖閣諸島周辺の緊張と事態の複雑化の最大の原因は、日本が実効支配している領土に対し、力ずくで現状変更をしようとしている中国側にある。中国側の覇権主義的な行動が一番の問題だ」と指摘。「日本側に責任を転嫁する、驚くべき傲慢不遜な暴言だ。絶対許してはならない暴言だ」と強調した。

 さらに、王氏と並んで共同記者発表した茂木氏について「王氏の発言に何ら反論もしなければ、批判もしない。そういう対応をした」と指摘し、「中国側の不当で一方的な主張だけが残る事態になる。極めてだらしがない」と批判した。

 志位氏の記者会見での王氏批判部分の要旨は次の通り。

 「24日に日中外相会談が行われた。これにかかわって大変見過ごせない事態があったので、コメントしておきたい」

 「会談後の共同記者発表で、中国の王毅外相がこう言った。『ここで一つの事実を紹介したいと思います。この間、一部の真相をよく知らない日本の漁船が絶え間なく、釣魚島の周辺の敏感な水域に入っています。これに対して中国側としてはやむを得ず必要な反応をしなければなりません。これが一つの基本的な状況です』」

 「これは非常に重大な発言だと、許しがたい発言だと、暴言だと思う。結局、日本側の責任にしているわけだ。しかし、尖閣諸島周辺の緊張と事態の複雑化の最大の原因がどこにあるかといえば、日本が実効支配している領土、領域に対して力ずくで現状変更しようとしている中国側にある。中国側の覇権主義的な行動が、一番の問題だ」

 「にもかかわらず、王毅外相のこの発言は日本側に問題があった。だからやむを得ず中国としてはこういう対応をしているんだと日本側に責任を転嫁する、驚くべき傲慢不遜な暴言だ。絶対許してはならない暴言だ」

 「海上保安庁のデータを見てみると、中国の公船の尖閣諸島の接続海域への入域日数は、今年すでに24日までで304日。昨年1年間の282日を大きく上回っている。さらに中国の公船が日本の漁船を追い回すという非常に危険な事態も起こっている。私たちとしては中国のこのような覇権主義的な行動をただちに中止することを重ねて強く求める」

 「そしてここで重大なのは、茂木氏が共同記者発表の場にいたわけでしょ? それを聞いていながら、王氏のこうした発言に何らの反論もしなければ、批判もしない、そういう対応をした。そうなると、中国側の不当で一方的な主張だけが残る事態になる。これはだらしがない態度だ。極めてだらしがない」

 

日経も、着々と進む、中国の東太平洋侵略の状況を伝えている。

■中国公船、太平洋へ 信号途絶で隠密工作疑い


 海洋は人類全体で共有し、守っていくべき「国際公共財(グローバルコモンズ)」の1つだ。しかし実際は海中に眠る貴重なデータ資源を巡って、新たな綱引きも始まっている。日本経済新聞が中国公船の動きを分析すると、国際ルールに反する形で太平洋進出を強める例が複数見つかった。
 利用したのは、世界中の船舶情報を提供するサイト「マリントラフィック」だ。船が位置や針路などを発信する船舶自動識別システム(AIS)の公開データを集め、11月4日までの過去1年間にわたる中国政府の海洋調査船の挙動を追った。
 情報が確認できる中国調査船34隻(総排水量307~2万トン)のうち、4割にあたる13隻が太平洋方面に進出していた。中国が領有権を主張する南シナ海はすでに軍事拠点化が進んでおり、次の標的として太平洋の海洋権益に狙いを定めているとみられる。なかには南極大陸周辺に約3カ月半とどまる船もあった。
世界の船舶情報を公開するマリントラフィックで中国の海洋調査船「向陽紅01号」が過去1年間にたどった航跡を追った

世界の船舶情報を公開するマリントラフィックで中国の海洋調査船「向陽紅01号」が過去1年間にたどった航跡を追った

 「中国公船は同じ任務を頻繁に共有し、様々な方法で世界中のデータを収集している」。米戦略国際問題研究所(CSIS)のグレゴリー・ポーリング氏は語る。資源調査か軍事目的か、海上からは実際の調査内容を正確には把握できない。
 考えられる狙いの1つが潜水艦の航路開拓だ。中国軍は戦略原潜を含む潜水艦部隊の運用強化に動いているとされ、そのためには各地の海底地形や海流などのデータ収集が欠かせない。表向きは資源調査船の看板を掲げながらも、隠密裏にこうした軍事データを収集している可能性がある。
 実際に米軍拠点があるグアムや北マリアナ諸島の周辺で、格子状に何度も海域を往復する船が確認できた。
 マラッカ海峡を経てインド洋に向かう船も複数あった。桜美林大の佐藤考一教授は「中国が提唱する広域経済圏『一帯一路』政策と航路が重なる」と指摘する。
 航路を順にたどっていくと、AISの信号が急にとぎれ、数日後に別の海域にこつぜんと姿を現す――。そんな不可解な動きをする船が少なくとも10隻見つかった。その多くは台湾海峡や南シナ海での出来事だが、いずれも当時は通信が不安定になる荒天でもない。
AISは衝突防止や運航管理を目的とした国際条約で、世界を航行する300総トン以上の船舶や全ての旅客船に搭載が義務付けられている。航路を伏せるために意図的にAISのスイッチを切った可能性がある。
 中国漁船も不審な動きを見せる。IHIジェットサービスによると、4月には尖閣諸島沖に32隻の漁船団が出没した。いずれも遭難時用の識別コードを持っていたが、中には全く別のタンカーなど約150隻の中国船と同じ番号を使い回している例もあった。「このような使い方は通常ありえないルール違反」(政策研究大学院大学・海保大学校の古谷健太郎氏)だ。
 欧米が中心となって育んできた海の秩序に公然と挑み始めた中国。なすすべはないのか。「気候変動や海賊問題など地域共通の課題を掲げ、周辺諸国を一枚岩にしていくしかない」。古谷氏は語る。自由主義陣営の揺らぎは中国のさらなる増長を招きかねない。