世界最大の電子機器製造請負会社である台湾の海精密工業は、その子会社のシャープとともに、中国に1兆円規模の半導体製造工場を作るという。現在中国には半導体製造部門は無く、、アメリカから輸入していたが経済戦争で、半導体の入手が困難になっている。そこに台湾の海精密工業が解決の方法を提示したというわけ。日経の報道に依った。
台湾・鴻海精密工業と子会社のシャープは、中国に最新鋭の半導体工場を新設する方向で地元政府と最終調整に入った。広東省の珠海市政府との共同事業で、総事業費は1兆円規模になる可能性がある。米国との貿易戦争が過熱する中、中国は外資に頼る半導体の国産化を強力に進めており、新工場も多額の補助金などで誘致する。中国の先端分野に圧力を加える米国が批判を強める可能性がある。
鴻海の郭台銘董事長
鴻海グループで唯一、半導体生産を手がけるシャープの技術を工場建設に活用する。生産規模の拡大に合わせて段階的に複数棟の工場を建設する。「我々は必ず半導体を生産する」。郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は5月に北京の清華大学での講演でこう表明。鴻海と珠海市政府は8月に半導体分野で戦略提携を結び、具体策の検討を進めていた。
珠海市政府の当局者は日本経済新聞の取材に「鴻海と半導体の設計と製造設備で提携しているが、それ以外の内容はコメントできない」としている。鴻海は取材に対してコメントをしなかった。
「世界一の製造強国」を目指す習近平(シー・ジンピン)指導部は産業政策「中国製造2025」の中で、半導体産業の育成を掲げている。半導体の自給率を20年に40%、25年には70%に引き上げる構想だ。だが現状は10%台とされ、17年には2600億ドル(約29兆円)を輸入した。目標との落差は大きい。
イラン問題の制裁で一時、米企業からの半導体調達を断たれた中国通信機器大手、中興通訊(ZTE)は経営危機に直面、自国内の産業基盤の弱さを露呈した。今月には通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の首脳がカナダで逮捕され、同社製品を排除する動きが日本やオーストラリアに広がる。
「保護主義が中国に自力更生の道を歩むよう迫っている」。習国家主席は9月、自力で困難を克服すると強調した。
ただ半導体は米中のハイテク分野の覇権争いを左右する敏感な分野だけに、鴻海と珠海市の計画は波乱も予想される。
国際半導体製造装置材料協会(SEMI)の調べでは、半導体の製造に必要な装置の中国市場の規模は82億ドルと日本を上回る世界3位。18年には台湾を抜き世界2位になる見通しだ。ただ同分野では日本や米国など海外メーカーが圧倒的に強く、中国の地場企業は育っていない。
世界最大手のアプライドマテリアルズ(AMAT)などの米装置大手が中国向けの販売に及び腰となれば、工場立ち上げに支障がでかねない。台湾の半導体大手幹部は「日欧の装置メーカーは今は中国に協力的だが、米国から圧力がかからないか懸念している」と話す。稼働にこぎ着けても米顧客が中国産の半導体の導入を拒む恐れもある。
今回の計画で製造品目については検討中だが、すべてのモノがネットにつながる「IoT」機器向けのロジック系半導体の生産が主体となるもようだ。鴻海やシャープが外部委託している半導体の製造を新工場に移す。シャープが8Kテレビに搭載した自社開発の画像処理用チップなども対象になる。自社生産でグループ内に収益を囲い込むとともに、他社から半導体を受託生産するファウンドリー事業も展開する見通しだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます