C/NETと言うIT系雑誌が『ANA、羽田空港内で“大型”自動運転バスの実証実験--2020年内にも試験運用目指す』とのニュースを出していたが、それを読むと、日本の自動車メーカーは実現できておらず、中国のBYD製と言う。やはりじわじわ、日本は後進国入りをしつつあると思わざるを得なくなった。
ANAが、羽田空港の制限区域内において「大型自動運転バス実用化」に向けた、自動運転レベル3相当の実証実験を実施する。実施期間は、2020年1月22日から31日。初日には自動運転バスお披露目の式典および試乗会を開催し、2020年内に羽田空港の利用客および従業員の空港内移動手段として試験運用を目指すことを発表した。左から、先進モビリティ代表取締役社長の青木啓二氏、全日本空輸代表取締役専務執行役員の清水信三氏、中華人民共和国駐日本国大使館 公使の郭燕氏、SBドライブ代表取締役社長兼CEOの佐治友基氏、BYDアジア太平洋地域自動車販売事業部総経理 兼 ビーワイディジャパン代表取締役社長の劉学亮氏
中国BYD製の大型EVバスを使用、実用化を見据える
ANAは近年、自動運転技術の活用に積極的だ。
前回の使用車両は、やや小型な日野ポンチョ(ディーゼル)で、定員は28名。今回採用した中国BYD製の電気バス「K9RA」は、定員57名で約2倍の輸送能力となった。バッテリーは、リン酸鉄リチウムイオン電池で、容量324kWh、航続距離は250km以上。
式典に登壇した全日本空輸代表取締役専務執行役員の清水信三氏は、「BYDはグローバルで大型電気バスの運用実績を持つ」と採用した理由を説明。ビーワイディジャパン代表取締役社長の劉学亮氏も、「BYDの車両は、50の国と地域、300都市で走行し、日本でも京都、沖縄、福島などでスマートなまちづくりに貢献している。今後、日本向けバスの販売予定もある」と明かし、日本市場への意欲を示した。
空港制限区域内を走行するANAの大型自動運転バス
自動運転走行の要素技術にはSLAM採用
K9RAをベースに、自動運転車両への改造を担ったのは、先進モビリティ。前回の実証実験では自動運転技術に磁気マーカーを用いたが、今回はSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を採用した。
SLAMとは、自己位置推定と周囲環境地図作成を同時に行う技術で、GPS受信が不安定になる建屋沿いの走行に備えた。実証実験開始前に、予定ルートを約1ヶ月弱、繰り返し走行して基準マップを作成。それに沿ってSLAMを活用し、自動運転を実現している。
レーザーレーダー(LiDAR)を搭載したセンサー。40本のレーザー光を照射し、物体に当たり跳ね返ってくるまでの時間を計測して物体までの距離や方向を測定する
先進モビリティ代表取締役社長の青木啓二氏は、「SLAMは、道路にマーカーを設置するなどのインフラ工事が不要で、設備投資全体で見るとコストを抑えられる反面、暗所や周囲に何もない場所では信頼性に課題がある。将来的には、GPS、磁気マーカー、SLAMなど複数の技術を組み合わせて信頼性向上を図りたい」と語った。
日本メーカーとの違い--BYDからは多くの制御情報の開示が
自動運転バスの遠隔監視を担ったのは、前回の実証実験と同じくSBドライブ。自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」とバスを連携させ、車内や走行状況の見守り、危険時の乗客への注意喚起、扉の開閉などを行なった。
SBドライブ 佐治氏によると、今回の取り組みで「Dispatcher」は機能改善が大幅に進んだ。実際の業務フローに合わせて、システムでコントロールできる領域を増やすことに成功したという。
その背景にあるのは自動車メーカーであるBYDからのオープンな情報共有だ。佐治氏は、「これまで日本の自動車メーカーからはなかったような、車両制御情報をBYDからはたくさん開示いただけた」と明かし、各社の連携が機能改善、拡充には欠かせないことを印象づけた。
ちなみに式典には、春節直前という多忙な時期にも関わらず、中華人民共和国駐日本国大使館公使の郭燕氏も登壇。BYDと日本企業とのパートナーシップを歓迎したうえで、「さらなる中日の業務協力」に積極姿勢を示した。
10年後には労働生産人口が1割減少する日本。他方、インバウンドは右肩上がり。ANAは、自動運転技術を活用し、人と技術の融合および役割分担を進めることで、労働集約型のグランドハンドリング業務領域をシンプルかつスマートな働き方にシフトする構えだ。レベル3では監視人員が必要となり、当面はコストがかさむことを認めつつも、「いずれ複数の自動運転車両を1人で監視できれば、省力化・省人化を実現できる」と中長期的な意義を強調した。
乗客が全員乗り込むと、扉を閉めるようにアプリで遠隔監視者へ連絡する
遠隔監視者に通知が届き、扉の開閉を遠隔で行う
運転開始すぐ、ドライバーはハンドルから手を離せるが、レベル3では有事の際に人間が対応する必要がある
走行ルート周辺は航空機や様々な特殊車両が行き交っていたが、車両前方のミリ波レーダーで障害物を検知する
基準マップに沿って走行しながら、リアルタイムで点群による周囲環境地図を作成する
乗客の走行中の車内移動はAIが検知し、遠隔監視者へアラートを上げ、車内事故防止に努める。車内と遠隔監視者とで通話も可能
車両外側にも、左右前方後方にそれぞれカメラを搭載している
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