超小型人工衛星「宇宙マグロ」の模型を手にする近畿大の前田佳伸教授(左)と学生たち
クロマグロの完全養殖に成功した近畿大(東大阪市)が、日本近海を回遊する太平洋クロマグロの生態を、人工衛星を使って宇宙から追跡しようという研究を進めている。その第一歩となる実証実験用の超小型衛星を2019年度にも打ち上げる目標に向け、チームは18日からインターネットを通じた研究資金の募集を始めた。詳しい回遊ルートや産卵場所が分かれば、保護にもつながると期待される。
前田佳伸教授(光エレクトロニクス)と光永靖准教授(漁業情報学)の両研究室の学生らの取り組み。太平洋クロマグロは国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種に指定。前田教授が16年、「近大といえば養殖マグロだが、天然マグロを未来に残すことも大事だ」と持ち掛けて始動した。
魚の生態解明では従来、捕獲した個体に記録装置を埋め込んで放流し、再捕獲して装置を回収・分析する手法などが用いられてきた。しかし回収には手間がかかり、魚への負担も大きい。時間がたつと装置の一部が自動的に外れて海面に浮き、その記録を人工衛星が読み取る手法もあるが、電源の寿命から追跡期間に限界があった。
そこで研究チームはレーザー光線を用いた手法を考案。魚の背に薄い反射材を張り付け、上空からレーザーを照射し、反射した光を測定して行動把握を試みた。昨年3月、和歌山県の同大水産研究所で予備実験をし、地上500メートルの航空機から海中のイサキの観察に成功した。地上300キロの宇宙空間からだと、水深10~25メートルより浅い場所なら直径約100メートルの広い範囲で測定できると分析。クロマグロは1日の約7割を海面近くで過ごすため、観測は十分期待できるという。
まずは外面に反射材を張り付けた10センチ角の超小型衛星を打ち上げ、地上から放ったレーザーの反射光が返ってくるか確かめる。衛星の名は「宇宙マグロ」。国際宇宙ステーションからの放出を想定し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと今後交渉する。
ネット上の募金は1口3000円から。打ち上げ費用は未定だが、目標額190万円は全て衛星製作費に充てる。修士1年の高本采実(あやみ)さん(22)は「産卵場所を特定できれば、漁協などに呼びかけて保護対策が取れる」と話した。
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