[香港/上海 17日 ロイター] - 中国で今年、民間企業の社債デフォルト(債務不履行)率が過去最高を記録した。米中貿易摩擦の影響で、中国の経済成長率が約30年ぶりの低水準に減速したことが背景にある。
中国当局は、中央・地方政府を後ろ盾として企業が暗黙の保証を受けているという市場参加者の思い込みを、躍起になって振り払おうとしている。この結果、一部の国有企業の財務状態が悪化しており、近くオフショア社債市場にも影響が波及する可能性がある。
もっとも、これによって社債利回りがより正確にリスクを反映するようになり、発行体の強弱に応じて利回りが異なる正常な姿に近づく可能性があるため、健全な動向だと見られている。
香港に上場する自動車メーカー、浙江吉利控股集団や、政府系の複合企業である華潤創業(チャイナリソーシズ)など強力な発行体には、ここ数週間も問題なく投資家の資金が流入を続けている、と銀行関係者らは指摘している。
<オンショア市場の状況>
格付け会社のフィッチによると、オンショアで債券を発行した中国の民間企業のうち、今年1─11月にデフォルトが発生した比率は過去最高の4.9%となり、2018年の4.2%から上昇した。フィッチはオンショア社債市場の規模を19兆元(2兆7000億ドル)と推計している。
S&Pグローバルのデータでは、国有企業と民間企業を合わせた1―10月のデフォルト額は1000億元(142億ドル)を超え、昨年1年間の1100億元に迫っている。
ロイターの試算では、今年デフォルトを起こしたのは国有企業6社と民間企業42社だ。
当局が今年5月、内モンゴル自治区の包商銀行を公的管理下に置き、一部投資家がヘアカット(元本削減)を受け入れたのをきっかけに、市場に緊張が広がった。
内モンゴルのフフホト市政府が所有するフフホト経済技術開発区の投資会社は今月、10億元の債券の一部を期限までに返済できなかった。
利回りが急上昇している社債もある。中国の省で2番目に債務の多い貴州省の紅果経済開発区が発行した3年物債券の利回りは、この夏の6%前後から足元で14%に跳ね上がった。
<オフショア市場の状況>
中国国有企業のデフォルトは珍しいが、国際市場で発行した社債のデフォルトとなると、さらに少ない。しかし、こうしたオフショア市場でも一部でリスクが意識されている。リフィニティブのデータによると、中国のオフショア債券市場の規模は現在760億ドル。
S&Pは、今後2年以内に満期を迎えるオフショア債は2000億ドル超と、今年の890億ドルから増えるため、リスクは増大するだろうと警告している。
問題を抱えた企業の1つが天津の資源商社、天津物産集団だ。ムーディーズ・インベスターズ・サービスによると、同社が11月末にオフショア債で返済期限を守れず債務再編を実施したのは、主要国有企業として過去20年間で最初の事例だった。
北京大学系の持ち株会社、北京方正集団は今月2日、オンショア債の返済を滞らせ、資金手当てに奔走中だ。ノムラによると、20日に終わる猶予期間内に返済できなければ、オフショア市場で29億5000万ドルの「クロスデフォルト」(同一の借り手が1つのデフォルトを起こすと他の債務もデフォルトと見なされ、期限前返済を迫られること)が起こる見通しだ。
この一件を受け、一部の大学関連債券の価格は急落した。
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