ドイツは電力は外国、原発ではフランス、化石燃料発電ではロシアなどに依存してきた。そうした中、化石燃料が地球温暖化をもたらしたり、原発の大事故で、再生エネルギーにカジの方向をきりかえ、一時は大成功と思われたが、そうやすやすと問屋が卸すわけなかった。まず送電網が再生エネルギー配電のために全面的再構築が必要でこれの整備がされるのにはまだまだ時間とお金がかかるという。更には送電網を地下に埋設せよという世論の強い要求があって、再生エネルギー発電所の建設が思うように進んでいないという。そして再生エネルギーは多くは、発電時間帯の制約があり電気の蓄電が必要だがまだ、決定的な蓄電池は開発されていない。そのため、再生エネルギー発電所建設に携わる人たちが大量に失業せざるを得なくなっている。で結局、従来通り、ロシアから天然ガスをパイプラインをロシアからドイツまで引いて、CO2を出し続けざるを得ないという。完全に再生エネルギー時代にすべきと言うのはほぼ全国民の超えと思うがやはりその道のりは短銃ではなかった。
この状況をニューズウィークがレポートしていた。
ドイツは10年、今世紀半ばまでに電力の80%を再生可能エネルギーで賄うという野心的な目標を掲げた。さらに翌年には日本の福島第一原子力発電所の事故を受け、22年までに「脱原発」を達成すると発表した。
ドイツはいち早く固定価格買い取り制度を導入(17年に入札制度に移行)するなど、個人や企業による太陽光と風力発電事業をテコ入れしてきた。おかげで1990年には電力比率の3・6%にすぎなかった再生可能エネルギー(風力、太陽、水力、バイオガス)が、発電量の3割超を占めるようになった。
しかし高邁なビジョンは、厳しい現実に突き当たった。世界屈指の工業国ドイツが脱化石燃料・脱原発に舵を切るのは容易ではなく、当初の予想以上にコストがかかり、政治的にも困難を極めた。結局、政府はエネルギー政策を見直して化石燃料への依存度を高め、気候変動対策で世界をリードする役目もある程度返上せざるを得なくなった
問題は送電網にある。太陽光・風力発電を主役にすると、従来よりも複雑でコストも高い送電網が必要になる。ドイツが目標を達成するには、「送電網の全面的な再整備が必要だ」と、再生可能エネルギー推進政策に詳しいアナリストのアルネ・ユングヨハンは言う。
風力発電ブームがもたらしたのは、供給と需要のミスマッチという予期しない問題だった。ドイツでは風力発電所は常に強い風が吹く北部に集中しているが、大規模な工場の多くは南部にある(南部に集中する原発は次々と運転を停止している)。
北部の風力発電所から南部の工業地帯に電力を送るのは容易ではない。風が強い日には、風力発電所は大量の発電が可能になるが、電力はためておくことができない。供給過剰になれば送電線に過大な負荷がかかるため、電力系統の運用者は需給バランスを維持しようと風力発電所に送電線への接続を切断するよう要請する。こうなるとツアー客が眺めた巨大なブレードも無用の長物と化す。
一方で、電力の安定供給のためには莫大なコストをかけてバックアップ電源を稼動させなければならない。ドイツでは昨年、こうした「再給電」コストが14億ユーロにも達した。
解決策は、北部の風力発電施設から南部の工場にスムーズに電力を送れるよう送電網を拡張すること。そのための工事は既に始まっている。巨額の予算をかけて(事業費は電気料金に上乗せされて、消費者が負担する)、総延長約8000キロ近い送電線が新たに敷設される予定だが、今のところ工事が完了したのは2割足らずだ。
風力発電で大量の失業者
「壊滅的に工期が遅れている」と、ペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相は8月に経済紙ハンデルスブラットに語った。遅れた理由の1つは住民運動だ。4本の高圧電線が通る地域の住民は電磁波の影響を懸念し、地下にケーブルを埋設するよう要求。そのために工期は延び、コストは膨らんだ。
今の見通しでは工事が全て完了するのは25年。原発が全て運転を停止してから3年後だ。
こうした状況下で、ドイツは再生可能エネルギーへの転換のペースを見直さざるを得なくなった。与党キリスト教民主同盟(CDU)の広報担当ヨアヒム・ファイファーは本誌の取材にメールで応じ、「再生可能エネルギーの発電量を増やすことに注力し過ぎていた」と認めた。「発電量を増やすと同時に送電網を拡張する必要があるのに、後者が後回しになった」
再生可能エネルギー推進派は政策の後退に強く反発している。ドイツ風力発電連合のウォルフラム・アクセレムCEOによると、風力発電業界では大量の失業者が出ている。「19、20年にこの業界は苦境に陥るだろう」
一方、ノルド・ストリーム2の建設工事は着々と進んでいる。このプロジェクトの事業費110億ドルは、ロシアの国営エネルギー企業ガスプロムと5社の欧州企業が出資しており、ドイツの納税者には直接的な負担はない。パイプラインはドイツ、ロシア、フィンランド、スウェーデン、デンマークの領海を通過するが、通過を拒否するデンマークを除く4カ国は既に敷設を許可している。
今でもEUが消費する天然ガスの約3割はロシア産だが、予定どおり来年末にノルド・ストリーム2が稼働を始めれば、欧州のガス市場におけるロシアのシェアはさらに拡大する。欧州最大のガス田があるオランダは地震頻発のため30年までにガス田を全て閉鎖する予定で、EUのロシア依存は一層進む。
ドナルド・トランプ米大統領は7月、「ドイツは完全にロシアに支配されている」と発言。米政府はノルド・ストリーム2に投資する欧州企業に制裁を科す可能性があると脅しをかけた。
褐炭の採掘はフル操業
ドイツ政府もロシアへの過度の依存を警戒しているが、エネルギーの安定供給を求める産業界の要望は無視できない。現実問題としてロシア産ガスに頼らざるを得ないと、ドイツ国際安全保障問題研究所のエネルギー専門家クリステン・ベストファルは言う。「大きな需給ギャップを埋めるには、(ロシアの)ガスが必要だ」
再生可能エネルギー用の送電網整備が立ち遅れるなか、二酸化炭素(CO2)の排出量が最も多い化石燃料である褐炭の需要も伸びている。褐炭による火力発電はドイツの電力供給の25%近くを占める。化石燃料業界が逆風にさらされるなか、褐炭の採掘会社は稼げるうちに稼ごうと事業の拡大に余念がない。
石炭火力発電が大きく伸び、ドイツのCO2排出量は15、16年と連続で増えた(17年には微減)。ドイツは今なおヨーロッパ最大のCO2排出大国だが、アンゲラ・メルケル首相は汚名返上に努めるどころか、20年までに1990年比の40%という削減目標を撤回するありさまだ。
わずか数年前、パリ協定の採択に向けた議論が行われていたときには、ドイツはEUの気候変動対策のリーダーを自任していた。だが最近、ミゲル・アリアスカニャテ欧州委員会気候行動・エネルギー担当委員が30年までの削減目標を90年比40%から45%に引き上げようと提案すると、メルケルは渋い顔をした。
「既に決めた目標があるのだから、その達成が先だ。次から次に新しい目標を打ち出すのはいかがなものか」
再生可能エネルギー推進派は政策の後退に強く反発している。ドイツ風力発電連合のウォルフラム・アクセレムCEOによると、風力発電業界では大量の失業者が出ている。「19、20年にこの業界は苦境に陥るだろう」
一方、ノルド・ストリーム2の建設工事は着々と進んでいる。このプロジェクトの事業費110億ドルは、ロシアの国営エネルギー企業ガスプロムと5社の欧州企業が出資しており、ドイツの納税者には直接的な負担はない。パイプラインはドイツ、ロシア、フィンランド、スウェーデン、デンマークの領海を通過するが、通過を拒否するデンマークを除く4カ国は既に敷設を許可している。
今でもEUが消費する天然ガスの約3割はロシア産だが、予定どおり来年末にノルド・ストリーム2が稼働を始めれば、欧州のガス市場におけるロシアのシェアはさらに拡大する。欧州最大のガス田があるオランダは地震頻発のため30年までにガス田を全て閉鎖する予定で、EUのロシア依存は一層進む。
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