ちょいと話は続きます。
先日のドラマを観ていた途中で、背の君がしみじみと大真面目に呟いた。
「やっぱり、僕らには見えへん別の世界が見えてはるんやろなぁ・・・。」
「うんっ♪」
応えた私の声は幾分はずんでいたと思う。
だって、やっぱりかぁちゃんだけじゃないんだって事が分かったから
ずっと以前にこちらにも書いた事があるけれど
かぁちゃんにも、やっぱり先に逝ってしまった人達が見えている頃があったのだ。
まだまだしっかり話も出来たし、完璧じゃなかったけど、文字だって書くことが出来た頃。
まだ隣に引っ越してくる前の話だ。
一番最初は、逝ってしまったばかりの“おばちゃん”との会話から始まった。
布団に寝かせると決まって「ねえちゃん!ねえちゃん!」って呼びかけていた。
そして、ず~っと顔だけを持ち上げて寝ている布団の足元を見つめて、
うつろな言葉で延々と何か喋り続けていたっけ・・・。
・・・これって、その後慣れるまで、何とも言えない気分でありましたよ。
おそるおそる“その場所”を見つめて「おばちゃん、おるん?」って聞いてみたりもして
もちろん返事はなかったけれど・・・って・・・あったらやっぱり・・・おばちゃんでもこわかろ~
伯母がいなくなった事は、かぁちゃんにとって、この世で生きることを諦めてしまったくらい衝撃的な事だったし
実際、かぁちゃんが誰の目から見ても“完全におかしく”なったのはその直後からだったので
それはまぁ仕方ない。と言うより、会えて良かった・・・くらいにも思えてどちらかと言えば冷静だったのだけれど
その後、やはり「うっそ~っ!!」と思う事は次々起きた。
ある日、私がかぁちゃんの夕食をテーブルに並べていると「おじちゃんと○○のおじさんの分は?」と聞くのだ。
おじちゃんというのは、かぁちゃんの叔父で随分世話になったが、かぁちゃんも懸命に世話をした人なので分かる。
けれど、もう一人の“○○のおじさん”というのは、オヤジさん方の親戚で、
随分と母の事を気にかけてくれていた人なのだが、その数日前に亡くなられたのを母には知らせていなかったのに・・・
・・・やっべ~・・・ほんとに見えてる~・・・・・・妙な確信・・・
「おじちゃんと○○のおじさんのご飯は持ってこんかったん?」ってかぁちゃんが怒るので
一応「どこにおんなるん?」って聞いてみると
「そこに!まぁっあんた見えれへんの?」って大きな声で怒り出す始末。
これは無下に否定は出来ないだろうなぁ・・・と、私もそこらを見つめて、それから言った。
「おじちゃん達、もうご飯は食べて来たからいらんのだって。」
「あら、そうなん。もう食べて来たって?」とかぁちゃんはすぐに納得して食べ始めてくれたけど・・・
それから時々かぁちゃんに会いに来てくれたのは、かぁちゃんが最も苦手だった筈のひいばぁちゃん。
かぁちゃんにとってはお姑さんの立場で、かぁちゃんがまだ40歳になる前から、足掛け5年間おしめの世話をした。
そのせいか自分が世話をしていた記憶が最も強いようで
「今、トイレに連れていってあげたのにいないわ。」だの
「買い物に行くって言いなったのに、まだ帰らないわ。道が分からないんよ。」だの
実際、かぁちゃんがふらりと家を出てしまったのは、このひぃばぁちゃんを探しに行くのが大半だった。
その度に私は心臓が凍りつく思いで、ひぃばぁちゃんを探しに行ったかぁちゃんを探しに行ったのだけど
幸い私が一緒に居る時には「ちょっと見て来るわ!」って私だけが外に出て、少し時間を置いてから
「帰らんなんってもう帰りなったよ~。」とのんびり言うと素直に納得してくれるようになった。
かぁちゃんには確実に見えて、私には全く見えない世界ってのがあるんだなぁ・・・
と、一応そういう理解をする事で、その頃は自分をごまかしていたけれど
今懐かしく思い出すと、あの時のかぁちゃんにはそれが現実だったのだし
無理やりそう思うのではなく、そういうのって有りだな♪な~んて微笑んでしまったりするのである。
あ・・・だからどうよ!って話じゃないのですよ。
去年、かぁちゃんの故郷に行った時(カニ食べに)
「かぁおばさん、どないなんだ?」と聞いた従兄弟の兄貴に
「相変わらず!・・・あんなぁ、お母さんなぁ、おばちゃんが見えとるみたいだで。」と言うと
兄ちゃんは、一瞬「え?」てな顔をしたけれどすぐに
「そうか、おばさんにはおふくろが見えとるんか・・・。」とつぶやいて、それから
「おふくろ、わしんとこには来んけどな。」と言って、にやっと笑った。
私もうへっ♪と笑った。
今でもかぁちゃんは時々ひょいっと顔だけ持ち上げて、じ~っと足元を見つめておりますよ。
そうそう、かぁちゃんが落ち着かなかった頃(玄関を開ける度にドキドキしてた頃)
ぺこちゃんのお迎えやなんかで、その場を離れなければならない時には必ず言っていた事がある。
「おばちゃんおんなるん?」かぁちゃんは大抵コクリと頷いていたので
「ほんなら、おばちゃんと一緒に留守番しといてぇよ!」私は完全に本気だった。
「分かった♪」と答えるかぁちゃんの声を聞きながら、心の中で
「おばっちゃん、かぁちゃん見とってぇよ!!。」ってつぶやいたりしてね
昔っから“立ってる者は親でも使え!”って言うけれど
まさしく“立ってる者は住む世界の違う人でも使え!”と言う罰当たりなお話でありました。
先日のドラマを観ていた途中で、背の君がしみじみと大真面目に呟いた。
「やっぱり、僕らには見えへん別の世界が見えてはるんやろなぁ・・・。」
「うんっ♪」
応えた私の声は幾分はずんでいたと思う。
だって、やっぱりかぁちゃんだけじゃないんだって事が分かったから
ずっと以前にこちらにも書いた事があるけれど
かぁちゃんにも、やっぱり先に逝ってしまった人達が見えている頃があったのだ。
まだまだしっかり話も出来たし、完璧じゃなかったけど、文字だって書くことが出来た頃。
まだ隣に引っ越してくる前の話だ。
一番最初は、逝ってしまったばかりの“おばちゃん”との会話から始まった。
布団に寝かせると決まって「ねえちゃん!ねえちゃん!」って呼びかけていた。
そして、ず~っと顔だけを持ち上げて寝ている布団の足元を見つめて、
うつろな言葉で延々と何か喋り続けていたっけ・・・。
・・・これって、その後慣れるまで、何とも言えない気分でありましたよ。
おそるおそる“その場所”を見つめて「おばちゃん、おるん?」って聞いてみたりもして
もちろん返事はなかったけれど・・・って・・・あったらやっぱり・・・おばちゃんでもこわかろ~
伯母がいなくなった事は、かぁちゃんにとって、この世で生きることを諦めてしまったくらい衝撃的な事だったし
実際、かぁちゃんが誰の目から見ても“完全におかしく”なったのはその直後からだったので
それはまぁ仕方ない。と言うより、会えて良かった・・・くらいにも思えてどちらかと言えば冷静だったのだけれど
その後、やはり「うっそ~っ!!」と思う事は次々起きた。
ある日、私がかぁちゃんの夕食をテーブルに並べていると「おじちゃんと○○のおじさんの分は?」と聞くのだ。
おじちゃんというのは、かぁちゃんの叔父で随分世話になったが、かぁちゃんも懸命に世話をした人なので分かる。
けれど、もう一人の“○○のおじさん”というのは、オヤジさん方の親戚で、
随分と母の事を気にかけてくれていた人なのだが、その数日前に亡くなられたのを母には知らせていなかったのに・・・
・・・やっべ~・・・ほんとに見えてる~・・・・・・妙な確信・・・
「おじちゃんと○○のおじさんのご飯は持ってこんかったん?」ってかぁちゃんが怒るので
一応「どこにおんなるん?」って聞いてみると
「そこに!まぁっあんた見えれへんの?」って大きな声で怒り出す始末。
これは無下に否定は出来ないだろうなぁ・・・と、私もそこらを見つめて、それから言った。
「おじちゃん達、もうご飯は食べて来たからいらんのだって。」
「あら、そうなん。もう食べて来たって?」とかぁちゃんはすぐに納得して食べ始めてくれたけど・・・
それから時々かぁちゃんに会いに来てくれたのは、かぁちゃんが最も苦手だった筈のひいばぁちゃん。
かぁちゃんにとってはお姑さんの立場で、かぁちゃんがまだ40歳になる前から、足掛け5年間おしめの世話をした。
そのせいか自分が世話をしていた記憶が最も強いようで
「今、トイレに連れていってあげたのにいないわ。」だの
「買い物に行くって言いなったのに、まだ帰らないわ。道が分からないんよ。」だの
実際、かぁちゃんがふらりと家を出てしまったのは、このひぃばぁちゃんを探しに行くのが大半だった。
その度に私は心臓が凍りつく思いで、ひぃばぁちゃんを探しに行ったかぁちゃんを探しに行ったのだけど
幸い私が一緒に居る時には「ちょっと見て来るわ!」って私だけが外に出て、少し時間を置いてから
「帰らんなんってもう帰りなったよ~。」とのんびり言うと素直に納得してくれるようになった。
かぁちゃんには確実に見えて、私には全く見えない世界ってのがあるんだなぁ・・・
と、一応そういう理解をする事で、その頃は自分をごまかしていたけれど
今懐かしく思い出すと、あの時のかぁちゃんにはそれが現実だったのだし
無理やりそう思うのではなく、そういうのって有りだな♪な~んて微笑んでしまったりするのである。
あ・・・だからどうよ!って話じゃないのですよ。
去年、かぁちゃんの故郷に行った時(カニ食べに)
「かぁおばさん、どないなんだ?」と聞いた従兄弟の兄貴に
「相変わらず!・・・あんなぁ、お母さんなぁ、おばちゃんが見えとるみたいだで。」と言うと
兄ちゃんは、一瞬「え?」てな顔をしたけれどすぐに
「そうか、おばさんにはおふくろが見えとるんか・・・。」とつぶやいて、それから
「おふくろ、わしんとこには来んけどな。」と言って、にやっと笑った。
私もうへっ♪と笑った。
今でもかぁちゃんは時々ひょいっと顔だけ持ち上げて、じ~っと足元を見つめておりますよ。
そうそう、かぁちゃんが落ち着かなかった頃(玄関を開ける度にドキドキしてた頃)
ぺこちゃんのお迎えやなんかで、その場を離れなければならない時には必ず言っていた事がある。
「おばちゃんおんなるん?」かぁちゃんは大抵コクリと頷いていたので
「ほんなら、おばちゃんと一緒に留守番しといてぇよ!」私は完全に本気だった。
「分かった♪」と答えるかぁちゃんの声を聞きながら、心の中で
「おばっちゃん、かぁちゃん見とってぇよ!!。」ってつぶやいたりしてね
昔っから“立ってる者は親でも使え!”って言うけれど
まさしく“立ってる者は住む世界の違う人でも使え!”と言う罰当たりなお話でありました。