『あざみの歌』は まだ歌えますか

泣いて、笑って、歌って介護!!そんな日常の過去の記録と
新たに今一度自らを見つめてぼちぼちと戯言なりを綴ります。

“べ”は「別世界」の“べ”

2014年10月31日 20時41分49秒 | 日々の出来事
古いアパート沿いのアスファルトの歩道の上、
一面に金木犀の花が散っていた。
吹く風に微動だにしないのは、少し前に降った雨のせい。

ぴたりと地面に張り付いて、じっと見ているとそこだけが淡いオレンジ色の別空間。
車椅子でその上を通ることが少しはばかられたけれど他に反れる道もなし。
ふっと、少し緊張して息を吐き、オレンジ色の空間に足を踏み入れる。
ただそれだけの事なのに、そのまま別世界へ吸い込まれるような不思議な一瞬。

その数日後、夜中中唸っていた雷は激しい雨を伴って朝は急激に冷え込んだ。
・・・木枯らし一号。
一気に空気がぴんと張り詰める。
これもまた別世界への入り口。






もう25歳になったから、一度は家を出ないといけないかなぁ・・・
半年前にそう呟いていたろんが、一昨日初めての独り暮らしを始めた。
テーブルの上に、愛らしいパッケージの入浴剤と一緒に一筆箋に躍る文字。
「おばちゃんへ
 いつも美味しいご飯をありがとう。
 たくさん起こしてくれてありがとう。助かってました。
 がんばります!」

・・・だってさ。

不覚にも涙がこぼれる。
ほんっとにあんたときたら、寝起きの悪い一之介よりもずっと寝起きが悪くて
学生時代から6年間、毎日毎日何度も起こしにいったっけね。

おうっ!がんばれっ!!


はぁ・・・晩御飯の用意・・・6人分になっちゃった。
はぁ・・・しばらくは感覚がつかめずに作りすぎちゃうんだろうなぁ。
うん。しばらくは、きっと、かぁちゃんを起こしに行くついでに、あんたの部屋を覗くだろうなぁ。
おばちゃんにとっては、ちょっと別の生活が始まるって事だわ。
これもまた別世界への旅立ちかもしれないね。

出会って、別れて
出会って、別れて

形はそれぞれ違っても、そんなこんなの繰り返し。
自分がここに在る限り、果てなく続く出会いと別れ。
悲しい別れもあるけれど、嬉しい別れもあるって言うのが救いだな。



はぁ・・・

え?寂がっている?私が?
まぁ、ちょっとは・・・?


ない!ない!ないっ!!
自転でも1時間もかからずに行ける距離ですから~っ!!
それに・・・それに・・・
忘れ物があって、昨日は帰ってきましたから~っ!!!

おい!しっかりがんばれよ!



明日からとうとう11月。
おばちゃんもがんばるし~っ、まぁ、ぼちぼちなぁ





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“ぶ”は「無事を祈って・・・」の“ぶ”

2014年10月15日 11時50分54秒 | 日々の出来事
生きている間には、何度か、誰かの為に苦しいほどに無事を祈る事が誰にでもあると思う。

様々にその理由は違っても「どうか無事で・・・」と祈り続ける事は
己の手が何の役にも立たない事を痛感した上で
せめてその祈りが届いてくれと、胸の痛みと共に目に見えない力にすがる。
そうでもしないと、じっと立つことも座る事も出来やしない。



穏やかなお山が突然に牙を剥いてからもう二週間以上が過ぎてしまった。

未だ麓に降りる事が出来ない方々の御家族のお気持ちを思うと胸が痛くなる。
せめて御家族の元に帰れますようにと言う思いと共に、
自らの危険と隣りあわせで救出作業を行ってくださっている方々に深く頭を下げる思いでいっぱいになる。

思いは当事者でない限りその重さは格段に違う。申し訳ないという思いが付き纏う。


その日、背の君は彼の山に30年以上の付き合いの山の仲間と一緒に登る予定だった。
しかし、結果的に仕事の遣り繰りがつかず、悔しい涙を呑んでいたのだ。
お昼過ぎ「手が震える。」と言いながら彼が震える声で仕事場から電話をかけてくるまで、
私はその予定の事すら忘れてしまっていた程のんびりしていた。
・・・「え?みなさんは?」・・・ぐるぐると知り合いのかたがたの顔が浮かんだ。

幸いにして、お仲間20数名は幾つかの偶然が重なって全員が無事に下山された。
それが分かるまでの耐え難い時間。


背の君が親しい友人と電話で話すことが出来たと言うところですっかり安心して、夜中の逃避行を決行したのだけれど、
帰宅してからのニュースで、私の想像など遥かに超えた実情を知って愕然としてしまった。
幸いにして・・・と言う言葉を使ってしまった事への罪悪感は少なからずある。


いつも、いつも、いつも、本当にいつだって自然の破壊力は凄まじく人間は太刀打ちできない。
そして、それらは突然に起きるのだと、こんな時にしか改めて考えられない自分が情けなくもある。
いつ起きるか分からないその時の為に、自分はやはり“生きねばならない”のだと再認識する。
生きる時間は全ての人にその長さの違いはあっても必ず限りがある事には間違いない。
その時間を「しっかり生きているか?」と聞かれたら残念ながら今の私には「いいえ。」としか答えられない。

家族の、友人達の、お知り合いの無事を祈りつつ、己がしっかり生きなければ。
突然にその方達を失われた沢山の人達の悲しみや辛さは
その経験のない者には到底分かり得るものではないけれど、どうかご無事でと言う思いは決して忘れてはいけないのだ。


一昨日、列島台風直撃でまたしても自然は牙をむいて襲い掛かって来た。
そして大小様々な各地での地震の情報はさほど日を空けずに、緊急ニュースがテロップで飛び込んで来る。

一方で、台風一過の青空に目を奪われ急に冷たくなった空気の中で深呼吸する自分もいる。
何よりも恐ろしい相手に心癒されているのも事実。



やはり、しっかり生きねばね。






コメント (4)
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“び”は「びっくり!」の“び”

2014年10月01日 16時08分03秒 | 日々の出来事
かぁちゃんのショート先から電話があった。
よだれかけを一枚入れ忘れてこちらにあるので持って行きますとの事。
わざわざ持って来て頂かなくても、また来月お世話になる時まで預かっておいてくださいとお断りした。

一応丁寧な言葉で話すようにしているけれど、その実「えへへ~♪」といったニュアンスで、である。
・・・そうなるまでに、何年もかかったなぁ、と、生真面目すぎるお兄ちゃん担当者の顔を思い浮かべて、ふふっ♪

その二日後に、かぁちゃんの担当者会議があり、かぁちゃんがお世話になっているデイサービスやショート先の担当者さん達とリハビリをしてくださっている先生、そして
ケアマネさんと、途中からかぁちゃんも加わって、実に充実した、実に賑やかに?楽しい・・・?時間を持つことが出来た。
ここまで勢ぞろいするのは今回が初めてで、徐々に気分も高揚してついジョークを飛ばす回数も増え
予定時間を軽く二倍はオーバーして久々に満ち足りた気分。

天疱瘡の処置の仕方や移動の方法など、気にかかっていた事がじっくりと説明出来たのが一番ありがたかった。
会議の参加者の中で、かぁちゃんを最初から知ってくださっている方は三名。
その頃を色々思い出して、しみじみしてしまった。

あの頃と比べて、今の何と穏やかな事よ・・・

かぁちゃんが沢山の人達に支えられて“今”にたどり着いている事を深く感謝。
ありがとうございます。


で、びっくりしたのはその日の夕方である。
玄関チャイムが鳴ったので出てみると、ショート先の例の生真面目な兄ちゃんが立っていた。
手には、忘れていたよだれかけ。
「わぁ、わざわざ持って来てもらっちゃってすみません。」と恐縮していると
兄ちゃんがじ~っとこちらを見た後で一言。
「今日ね、びっくりする事があったんです。」
「・・・ん?」
「いや、かぁさんの事じゃないんです
 あのね、デイサービスの担当の○○さんて、旧姓◎◎さんですよね?」
「そうそう、確かに。以前はかぁちゃんも◎◎ちゃんって呼んでた!」
・・・かぁちゃん、一番のお気に入りのスタッフさんだよ。

「あのね、僕、高校のときの同級生なんです!!!」
「え~っ!?

そんな事ってあるのねぇ  って、私もびっくりしたけれど、
え?兄ちゃん!それを言いに来たの?
いや、でも分かるよ。誰か共通の知り合いに話したいほどびっくりしたんだよね

会議の後もそうだったけれど、気持ちがほっこりした一日になった。




***********************************

さてさて、随分日が開いてしまいました。
かぁちゃんの担当者会議の数日後にはぺこちゃんの懇談会と、何かと忙しく日が過ぎ行き
ついに10月に足を踏み入れてしまったではないか・・・と、少なからずそこにもびっくり。

そんな中で、自分でも一番びっくりしたのが、こ~んな所に出没してしまった事



あ、いや・・・何故こうなったのかは、いつかまた。

ぺこちゃんがお風呂に入って寝床に行くのを見守って、かぁちゃんを寝かせてから電車に飛び乗り
終了後は夜中のファミレスで時間を潰して始発で帰るという強行軍。
一生に一度の事だと思うので、結果的には行く事が出来て本当に良かったのだけれど
・・・まぁ、事の顛末はなかなかに穏やかではありませなんだ

びっくりする事は、突然やってくるもの。
いや、突然やってくるからびっくりするのでしょうね。







ただ、楽しいびっくりはそれだけで幸せ度は増すものだけれど
そうでないびっくりは・・・悲しい事ですね。辛い事ですね。


コメント (8)
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