国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ロシアのネオ・ユーラシア主義者であるアレクサンドル・ドゥーギンの説く多極世界

2009年11月16日 | ロシア・北方領土
前回の記事で取り上げたロシアのネオ・ユーラシア主義者であるアレクサンドル・ドゥーギンに関する書評があったので重要部分を掲載する。 興味深い点は、ロシアとの提携を呼びかける国としてドイツ・日本・イランが挙げられていることだ。ロシアと日独両国は、前者の資源・軍事力と後者の経済・技術力で理想的な補完関係にあるパートナーになるという。日独をロシア側に引き寄せるためには、両国に領土間題で譲歩することも容認され、第二次世界大戦後にソ連がドイツに割譲させたカリーニングラードや北方領土の返還が提案されている。「クリル諸島は日本に返還されるべきだが、これは、ユーラシア極東の再編成の全般的プロセスという枠組みにおいて実現されるべき」と述べ、返還の条件として日米安保条約の破棄が暗示されるなど、実現性の薄い内容である、と著者は述べているが、沖縄の基地問題を巡って日米同盟が暗礁に乗り上げている今日の視点から考えると、日米安保破棄を前提とした日露同盟締結と北方領土返還は現実味を帯びてきたと言えるだろう。パックスアメリカーナが日独を衛星国として取り込むことで成立したように、日独を友好国として取り込むことでパックスロシアーナを作り出そうというのがドゥーギンの考えであると思われる。 ドゥーギンの示す多極化した世界像も興味深い。中央アジア諸国だけでなく、イラン・アフガニスタン・パキスタン・インドもロシア圏のパン-ユーラシアンゾーンに含まれている。一方で日本は東アジア共同体にインドを含めている。インドがロシア圏と日本圏のいずれを選択するかは未確定の部分が大きい。現在のインドはロシア製武器に依存しているが、日本の技術への欲求も大きいと思われる。場合によっては、インドはロシア圏と日本圏の両方に所属することになるかもしれない。 もう一つ興味深いのは、オーストラリアとニュージーランドもアングロ-アメリカンゾーン(アメリカ圏)に含まれていることだ。オーストラリアとニュージーランドは東アジア共同体に含まれており、特にオーストラリアはインドネシアの脅威に対抗するためにも日本圏に入る可能性が高いと思われる。 . . . 本文を読む
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