国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ジョセフ・ナイのソフトパワー論と米国の国際戦略

2012年03月21日 | 米国
米国のリベラル派の国際政治学者であるジョセフ・ナイは「ソフト・パワー」という軍事力・経済力以外の力による対外影響力の行使を主張している。日本では、米国は食文化や芸術などのソフトパワーに優れた国であるという主張も行われている。しかしながら、日本や欧州などの先進国では米国の食文化は不健康なジャンクフードと見なされており、米国風の食事でフランス料理や日本料理・中国料理のような高級料理と世界的に評価されるものは存在しない。芸術もマスコミのプロパガンダの力を借りた大衆音楽や映画などが関の山である。米国は絶望的にソフトパワーの低い国なのだ。韓国人が「自尊心」や「偉大な歴史」を繰り返し主張するのが自国の歴史が余りに惨めであることの裏返しであるのと同じく、米国のソフトパワーは極端に低く、米国の対外影響力行使は軍事力と金融力というハードパワーにほぼ100%依存している。それ故に「ソフトパワー」を強調せねばならないのだ。 イラク戦争以後米国の国際的な人気が下落してソフトパワーが注目されるようになったとwikipediaには書かれている。しかし、ナイがソフトパワーを主張し始めたのはイラク戦争のずっと前である。どんなに米国が自国の文化を宣伝しても、パレスチナを侵略し先住民を虐殺し核兵器で周辺国を脅迫し続けるイスラエルを強固に支援し続けている時点で米国の国際的評判は地に落ちている。軍事力と金融力(両者はともに石油ドル体制に依存しており一蓮托生である)を失ったら米国の主張に従う国は皆無となることだろう。 現在、米国のリアリスト達はユーラシア大陸への直接的軍事関与を中止して周囲の島嶼まで軍隊を撤退させることを主張している。これはオフショアバランシングと呼ばれ、ユーラシアからの完全な撤退である孤立主義とは全く異なるとされる。しかし、一度米軍が撤退したらその地域は永遠に反米地域化し、米国の対外影響力と国力は劇的に低下することになる。これは事実上孤立主義と同じ結果を生む。 . . . 本文を読む
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