国際情勢の分析と予測

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ルトワック、ハンチントン、奥山真司の地政学論から見たアフガニスタンからの撤兵後の米国の行方

2021年08月03日 | 米国
7/3に米軍は最大の拠点であった首都カブール近郊のバグラム空軍基地から突如全面撤退している。上海協力機構は7/14にアフガニスタン連絡グループの外相会談で和平案を提案し米国傀儡政府の外相がそれに同意している。今後上海協力機構が中心となって中東を安定化させる体制が開始しているのだ。「バックパッシング」を行うならば、タリバンと対立する勢力に米軍の代わりにアフガニスタンで戦争をさせなければならないが、中国もロシアも和平を求めており、タリバンの最大の支援国の筈のパキスタンも中国と親密でインドとともに上海協力機構の一員となっていること、アフガニスタン本国に加えてトルコやイランも上海協力機構のオブザーバーや対話国であり今後正式加盟が予想されることから、「バックパッシング」は無理だと思われる。 ベトナム戦争末期の西側は苦境にあったが、それを挽回して1989年のソ連圏崩壊という勝利を掴めたのは、繰り返しになるが1970年代の米中国交回復による中国の米国陣営への寝返りが重要である。その背景には1969年のダマンスキー島事件などの中ソ対立があった。アフガニスタンでの敗北の後に米国が最大の敵である中国を崩壊させるには、ルトワックが言うとおりロシアを米国陣営に寝返らせることが重要だろう。しかし、1969年とは異なり現在の中露関係は安定しておりロシアの寝返りは考えにくい。そう考えると米国の勝利は絶望的と思われる。 もう一つ興味深いのが6/23と7/30の奥山真司氏の「アメリカ通信」動画。米国の「批判人種理論」の『ホワイト・フラジリティ』を取り上げた上で、アメリカの白人はこれを言われるとびびる、このロジックを突き詰めると米国は本当に分裂するとコメントしている。ベトナム敗戦当時と異なり、米国の白人人口比率は減少を続け現在は6割を切っている。子供の人口では過半数が非白人となっている。近未来に予測される「少数派転落」という事態は米国史初めてであり、白人の危機感は強いと思われる。大胆に言えば、ベトナム戦争は大坂冬の陣であり、そこで米国は「白人文明という自己のアイデンティティ」や「有色人種移民禁止」という堀を埋められてしまった。現在のアフガニスタン戦争は大坂夏の陣である。ベトナム戦争末期と異なり中露関係は良好で分断も難しい。米国の内戦突入は避けられないように思われる。 . . . 本文を読む
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