国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ロシアはシベリアや極東を今後も維持し続けることが出来るか?

2013年08月09日 | ロシア・北方領土
●「中国軍がロシア極東に電撃侵攻する日」 フォーサイト 執筆者:名越健郎 2013年7月27日

 ロシア軍東部軍管区で過去最大規模の抜き打ち演習が行なわれていた7月17日、ロシア紙「独立新聞」が運営する「軍事観測」のサイトに、中国軍がある日、ロシア極東に電撃侵攻し、帝政ロシアによって19世紀までに奪われた固有の領土を全面奪還する――という恐怖の未来シナリオが掲載され、話題になっている。

 執筆者は「アレクサンドル・フラムチヒン」となっており、独立新聞は「編集部の意見とは異なる」としている。ロシアで中国の軍事的脅威が取りざたされる中、中国軍の対露軍事作戦シナリオがリアルに描かれ、細部も興味深い。軍の関係者や専門家が執筆に加わり、国内に警鐘を与える狙いで書かれた可能性がある。原文は、以下のサイトで読める。【http://topwar.ru/30913-a-chto-esli-22-iyunya-povtoritsya.html

「第2次6.22はどのような形になるか」と題したシナリオは、旧ソ連が1941年6月22日のナチスドイツ軍の電撃侵攻により、緒戦で壊滅的打撃を受けたことを想起し、「同様の状況が(中国によって)再発した場合、現ロシア指導部はどのように行動するだろうか」としている。ドイツ軍と違って成功に終わるという中国軍の極東電撃侵攻作戦のシナリオは――。

特殊部隊が要衝占拠
 ロシアが長い新年休暇に入った20XX年1月3日未明、20数機の軍用ヘリに分乗した中国軍特殊部隊が低空飛行でレーダーに察知されずにハバロフスクの広大なレーニンスタジアムに着陸。すぐ隣にある中国総領事館が着陸を誘導し、部隊は総領事館の敷地に用意されていた小型バスに分乗し、一部部隊は鉄道駅を占拠してシベリア鉄道の運航を切断。別の部隊は市内の東部軍管区司令部を制圧した。

 初期作戦成功の報が届くと、人民解放軍の大量の砲撃部隊が中国領内から、アムール州から沿海地方に至る地域のロシア軍施設に対し、無人偵察機を使用して一斉砲撃し、30分でロシア軍基地をすべて壊滅させた。ウラジオストクの太平洋艦隊の全艦船、潜水艦も砲撃で海に沈んだ。中国軍の第2陣は同時に、イルクーツクやノボシビルスクなどに対し、航空機や巡航ミサイルで大量攻撃を仕掛け、カムチャツカでは中国軍海兵隊の上陸作戦も始まった。

 2、3時間後、国境地帯に待機していた中国軍予備部隊は演習の名目で、氷結したアムール川、ウスリー川を100カ所で渡河した。越境部隊の装備は貧弱だったが、ロシア軍司令部と中核部隊は奇襲攻撃で壊滅しており、ロシア側の抵抗はなく、中国軍はロシア領土を次々に制圧。ロシア軍兵器貯蔵庫も支配した。中国軍は同時に、帝政ロシアに奪われたカザフスタン領にも侵攻し、首都アスタナを制圧。

ポーランドやバルトは中国支持
 モスクワでは何が起きているのか分からず、大混乱した。中国の駐ロシア大使は、「帝国主義国によって200年にわたり奪われていた偉大な中国民族の領土が奪還された。中国は不平等条約を拒否する。ロシアとの戦略パートナー関係はこの際考慮に値しない」と宣言した。

 ロシア指導者の一部は欧州で休暇を取り、政府に連絡しようとしなかった。西部やウラル周辺の部隊はまだ無傷だったが、通信網やシベリア鉄道網が中国の破壊工作によって切断され、増援部隊を輸送できなかった。中国軍はカザフからロシア欧州部進出を図ろうとしていた。

 ロシア政府は米国や北大西洋条約機構(NATO)に支援を要請。しかし、ポーランドやバルト3国は「中国はわれわれと同様、19-20世紀にロシア帝国主義の犠牲となった。中国の行動は正当だ」と宣言。このため、NATOはコンセンサスが得られず、対応できなかった。米政府は無力な欧州を横目に、ロシアを助けるべきか、その場合どのような形態と条件で――と議論した。

北方領土は日本に返還
 中国軍は、兵士が凍傷にかかり、兵器が故障しても、ロシア領奥深くへ進撃を続けた。ロシア少数民族のブリヤート人部隊が激しい抵抗を見せ、中国軍にも多数の犠牲が出たものの、中国軍はバイカル湖を経てイルクーツクも制圧。ロシア東部の居住可能地域をすべて支配下に置いた。モスクワは総動員体制に着手したが、総動員体制はかなり前から機能していなかった。休暇中のロシア人は帰国せず、多くの出国者が出た。

「核の選択」も検討されたが、米露の情報機関は中国中部に800基以上の移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)が配備されているのを察知。中国のメディアも、中国の核戦力が従来考えられていたよりはるかに多いことを報じた。これに伴い、米政府は中露戦争への不介入を表明した。

 こうして、平和条約が2月23日、ボリ(旧ハバロフスク)で調印され、中露の国境は1689年のネルチンスク条約締結以前に戻され、中国は帝政ロシアに奪われた広大な領土を回復した。中国はサハリン島も獲得し、南クリール(千島)は日本に返還された。「中国は常に、北方領土は日本に属するとみなしてきた」という――。

31%が中国の脅威を警戒
 奇襲に成功したナチスドイツはロシアの冬将軍にてこずり、逆転負けしたが、中国は周到に準備し、大成功を収めるというシナリオ。このレポートが東部軍管区での大演習中に公表されたことは、16万人参加の抜き打ち演習が、中国の奇襲攻撃を想定した演習であることを暗に示唆している。中露は2004年に国境協定を結び、両国国境は画定したはずだが、中国はなお失地回復の野心を持つとロシア側はみなしているようだ。

 この悪夢のシナリオに対して、短期間で多くの書き込みがなされ、「1つの可能性として読むに値する」「中国はグルジアと違う。中国人は愚かだが手堅い」といったロシア人のコメントが100本以上掲載され、反響を呼んでいる。

 レバダセンターの世論調査によれば、「中国の拡張主義がロシアの安全保障に大きな脅威となっている」と答えたロシア人は、1998年の3%から2013年には31%に増えた。ロシアにとって、巨大化する不気味な隣国への恐怖感が確実に高まっていることが分かる。
http://www.fsight.jp/18576





●【新帝国時代 第5部(1)の1】中国化するシベリア 狙われた「極東の食糧庫」 - MSN産経ニュース 2013.8.1 07:49

 かつて中ソ国境紛争の舞台だったアムール川(中国名・黒竜江)。ロシア全土の大豆生産の50%を占めるアムール州は「極東の穀倉地帯」と称される。国境が画定された大河を越え、中国人が広大な農地を求めて続々とロシアに渡っている。アムール州政府が今年から出稼ぎ中国人による農業を禁じたにもかかわらずだ。

 ■名義はロシア人

 「後ろめたいことは何もしていません。何でも聞いて下さい。お答えします」

 真っ黒に日焼けした身長160センチの丸顔小太り。せり出した腹をピンクのポロシャツに包んだ中国人農場経営者、蘇少苑(50)は自信たっぷりだ。

 蘇は対岸の中国・黒河市出身。州都ブラゴベシチェンスクから車で3時間半のロムニンスキー地区ベルヒネベーレで2000ヘクタールの農場を運営する。黒河でも300ヘクタールの農場で大豆を生産する。ロシアで農場経営を始めたのは3年前。「ロシア人パートナーに恵まれ、水源に近い黄金の肥沃な土地を探し当てた」からだった。

 パートナー名義で会社を設立し、農地を安価で借り受けた。農場は形式上、共同経営だがロシア人は実務に関与しない。パートナーと組むのはロシア人の方が農地を借りやすく、税負担も少ないうえ、国からの補助金も受けられるためだ。

 初期投資として中国の政府系銀行から低利で約350万ドルの融資を受け、米国の農業機械メーカーのコンバインやトラクターを購入し持ち込んだ。

 約10人の中国人を使って昨年までは1000ヘクタールで大豆を栽培。1ヘクタールあたり1・5トンの収穫があった。獲れた大豆はロシア市場に出荷しているが、1キロあたり1ドルで取り引きされるため、年間1500トンの収穫で約150万ドルを売り上げた。

 土地の賃貸料やパートナーへの分配金、人件費などを差し引いても100万から120万ドルは残る。借入金350万ドルは3年間で返済した。

 ■州政府にコネ

 蘇には土地の所有権も賃貸権もない。投資した農機具の所有権もない。パートナーとトラブルにならないのだろうか-。

 「絶対に裏切られない信頼関係を築き、崩壊しない“スキーム”を作ったから大丈夫」と話す。黒河市農業局幹部でもある蘇は10数年にわたり、州政府と密接な関係を築いてきたという。州政府の強力な支援があることをうかがわせた。

 出稼ぎ中国人による農業が禁止されたため、種まきはロシア人労働者が担当したものの、農機具の技術担当として労働ビザを取得した中国人は「派遣社員」として、電気もガスもトイレもないソ連時代の作業小屋に5カ月間寝泊まりしながら、昨年までと同様寸暇を惜しんで働き続けている。

 その中の一人は「ロシアでの収入は中国の5倍から10倍になる。ウォッカを飲む暇もない」と話す。

 極東では違法農薬を使用したり、不法滞在している中国人の摘発が相次ぐが、蘇のように「合法的」に大規模農業経営を続ける中国人は少なくない。アムール州だけでも10人はいるという。違法農薬は一切使用していないと強調する蘇はこう言い切った。

 「私の成功をみて、同様に積極投資する中国人は100%増えます。この大地は魅力的だから」





 中国が「世界の食」を席巻している。13億人の胃袋を満たすための食糧などの確保の問題に加え、食ビジネスでの摩擦が激しさを増している。「新帝国時代」第5部は食糧と水資源に焦点を当てる。(敬称略)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130801/chn13080107510000-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130801/chn13080107510000-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130801/chn13080107510000-n3.htm




●T【新帝国時代 第5部(1)の2】中国化するシベリア 露は日本と両天秤も「中国抜きでは…」 - MSN産経ニュース 2013.8.1 11:00

 「エッ、まだ中国人がいたのですか」

 中国人農場経営者、蘇少苑が経営する農場からわずか5キロ、ロシア極東アムール州ロムニンスキー地区ノボラシカで、北海道銀行が開設した日本農場を訪れた同行アグリビジネス推進室の上席研究員、内山誠一は驚きを隠せなかった。州政府からは中国人を排除したと聞いていたからだ。

 道銀は北海道と気候が似ている極東で、農業など日本の先進技術を生かした寒冷地ビジネスが展開できると判断。耕作放棄地での農業に参入した。

 極東の各地方政府は農業発展に日本が参加することを望んでいる。中国からの投資が増えすぎたことへの警戒感が背景にある。

 4月末に首相、安倍晋三の訪露に同行した頭取、堰八(せきはち)義博はアムール州政府と農業の協力で覚書を交わした。現地の農業企業(ウラジミール農場)と大豆、ソバを生産する共同プロジェクトだ。今年は土地100ヘクタールに大豆、300ヘクタールにソバの種を蒔いた。

 農場を開設したのは5月中旬。6月下旬から7月初旬まで再訪した内山は「種が予想していた以上に生育していた。土地のポテンシャルが高い。大豆生産に適していることがわかった」と手応えを感じた。

 今年中に出資会社を設立。ロシア企業と合弁で現地法人を設立して来年は耕作地を千ヘクタールに拡大する。

 ただ、州政府は日本にラブコールを送る一方で、蘇のような有力な中国人起業家に農場経営を続けさせている。“二枚舌”ともいえるロシア側の対応には、人口減少による荒廃への苦悩が垣間見える。

■手荒い収奪方法

 ソ連崩壊で国家指令に基づく集団農業体制が壊滅、極東住民への割り増し給与も支給されなくなり、集団農業をしていた人たちは次々と離れた。極東連邦管区の住民は628万人でソ連末期から2割減少。極東はロシア全体の面積の36%を占めるにもかかわらず、人口は全体(1億4200万人)の4・44%しかない。国連の人口報告書によれば、2025年には470万人まで減少する。

 極東ではソ連崩壊後、大量の耕作地が放棄された。それに目をつけたのが隣国の中国人だった。人口約4千万人の黒竜江省には大量な労働力があまっている。

 中国人農民がロシアに出稼ぎするようになったのは中露関係が改善した1990年代ごろから。ロシア政府も中国農民による土地賃貸を認め、中国人労働力に期待をかけた。

 中国人に農業の門戸を開放し続けるユダヤ自治州では、休耕地の約4割で中国人が農業を営む。このまま進めば、中国人自治州に名前が変わるのでは、とまでいわれる。ロシア在住中国人は急増しており、公式には45万人だが、一説には500万人ともいわれる。

 ところが、急増した中国人の一部は短期間で収穫を上げようと大量の化学肥料や禁止殺虫剤、殺菌剤などを使用する「収奪農法」を繰り返した。アムール州やクラスノヤルスク地方などは今年から出稼ぎ中国人による農業を禁止、違法農薬使用や不法滞在の中国人摘発に乗り出したのだった。

 ■リベートは基本

「自分勝手なやり方で土地を荒らす中国人に飲み込まれる危機感がある。しかし極東は中国なくして開発出来ない。そこでバランスを取るため日本に投資と技術移転を求めている」

 シベリアの現状について地元有力紙「アムルスキー・プラウダ」の解説委員、アンドレイ・アムヒノンはこう説明する。

 中国人経営の農場が増える背景にロシア地方政府当局者が受け取るリベートがあるとの見方も少なくない。中露ビジネスのコンサルタントを行うロシア人、ヴィタリー・コワリョフは「中国人は川(国境)を渡る前から誰にどのくらいリベートを贈るか準備している。リベートは基本中の基本。ロシアの役人は中国人に貸した方がいいと考える」と指摘する。

 道銀に続き、7月下旬、極東で農場開設を検討する日本企業が現地を視察した。日本では極東の農業開発に参加する機運が広がりつつあるが、ソ連時代から日露経済協力に関わってきた関係筋は、こうした動きに釘を刺す。

 「ロシアが望む極東開発に参加することは日露関係を好転させ、北方領土交渉の環境整備にもつながる。しかしロシアは日本だけを頼っているわけではない。あまり深入りするべきではない」(敬称略)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130801/erp13080111090004-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130801/erp13080111090004-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130801/erp13080111090004-n3.htm




●ロシア語も話せず、チャイナタウンを形成する…中国人不法移民を徹底取り締まりへ―ロシア (XINHUA.JP) - Yahoo!ニュース 8月5日(月)21時24分配信

ロシア警察が大規模な移民取り締まりを実施し、すでに数百人の中国人不法移民が摘発された。ロシア政府は、「チャイナタウンの形成は絶対に許さない」と話している。5日付で人民網が伝えた。

ロシア経済開発貿易省の国際関係担当部署、国家政策局のジュラフスキ局長は「中国人移民が形成するチャイナタウンは、地方行政法規に従って徹底的に取り締ま る。移民たちはロシアの風習に馴染むべき。まずはロシア語ができなければ、ロシア社会には溶け込めない。だが、一部の中国人はロシア語を使わなくても済む 環境で生活している」と指摘。

その理由として、「文化的な素養が低すぎる」とした上で、「犬を殺す、ハトを食べるなど、ロシアの風習に反する行動が社会問題となっている。ロシアにはロシアの国情がある。ロシア人向けの中華レストランを除き、チャイナタウンを徹底的に取り締まる」との意向を示した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130805-00000031-xinhua-cn




●中露国境の町ブラゴベッシェンスクからアジアを眺める - 国際情勢の分析と予測 2007年09月11日
http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/73019d666f2576fcfd76956158e8ed96



●ロシア極東旅行記:ブラゴベッシェンスク編 - 国際情勢の分析と予測 2007年09月12日
http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/20e8c1ff1d143852dfcaa39ce5fa6973


●江東六十四屯 - Wikipedia

江東六十四屯(こうとう・ろくじゅうしとん)は、かつてアムール川(黒竜江)の左岸(東側)に広がっていた広さ3,600平方キロメートルに及ぶ中国人居留区である。中国・黒竜江省黒河市の対岸にあるロシアの都市ブラゴヴェシチェンスク(海蘭泡)の南側(ゼヤ川より東)の一帯に64箇所の村落があったためこう呼ばれる。清朝とロシア帝国の間で1858年に締結されたアイグン条約では、清の領土だったアムール川左岸の外満洲はロシアに割譲されたが、黒河の対岸の「江東六十四屯」と呼ばれる地域には大勢の中国人居留民がいたため、アムール川左岸でもこの部分だけはロシア領ながら清の管理下に置かれることになった。

アムール川(黒龍江)事件
中国東北部とロシア極東部の国境地図。ブラゴヴェシチェンスク(海蘭泡)の南にある赤い色の地域が「江東六十四屯」1900年(明治33年)、義和団の乱(中国側の呼称:庚子拳乱)が発生した際、義和団員の一部が黒龍江対岸のブラゴヴェシチェンスク(海蘭泡)(現ロシア・アムール州州都)を占領した。かねてから満洲全域への進出を計画していたロシアは、義和団と列強とを相手にしている清国側は満洲情勢に関わる余裕がないと考えた。

そこで、1900年7月13日、ロシアの軍艦ミハイル (Михаил) 号は河上より銃撃を開始し戦端が開かれた。7月16日のブラゴヴェシチェンスク(海蘭泡)事件でコサック兵が混住する清国人約3,000名を同地から排除するために虐殺して奪還。さらに8月2日から3日にかけての黒龍江・璦琿事件では、義和団に対する報復として派兵されたロシア兵 約2,000名が黒河鎮に渡河上陸し、清国人を虐殺。その結果、この時期に 清国人約二万五千名がロシア兵に虐殺されてアムール川に投げ捨てられ、遺体が筏のように川を下って行ったという。

これらの事件によって江東六十四屯から清国人居留民は一掃され、清の支配は失われることとなる。

これらの事件と、これに続くロシアの東三省占領は、三国干渉以来高まっていた日本での対ロシア警戒感を一層高めることとなった。アムール川から南下の機会を狙うのは、ナポレオン・ボナパルトをも征した世界最大最強のロシア陸軍。日本の世論は緊張し、反ロシア大集会が日本各地で開かれるに至った。弁士が憤激し、聴衆も同調して床を踏み鳴らした。ロシアは次に朝鮮を蹂躙して日本へ侵略してくるに違いない、というのが世論の見方であった。江東六十四屯の崩壊は『アムール川の流血や』という題名の旧制第一高等学校の寮歌にも歌われることとなった。

その後の領土問題

中華民国の成立後、北洋軍閥や北京政府も、南京国民政府も、ロシアの江東六十四屯占領の合法性を承認しない点では一致していた。以後中華人民共和国の時期も、ロシアの占領は合法的ではないとしながら問題を棚上げにしていた。1991年以降、中国とロシアが長年の領土紛争に終止符を打つべくアムール川沿いの国境画定を行った際、江沢民主席とボリス・エリツィン大統領による条約の中で、中華人民共和国は正式にこの地に対する主権を放棄すると承認した。

なお、中華民国(台湾国民政府)は法律上は江東六十四屯に対する主権をまだ放棄していない。中華民国の政府が認める地図の中には、この場所は今でも中国領として表示されている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E6%9D%B1%E5%85%AD%E5%8D%81%E5%9B%9B%E5%B1%AF





●Buryatia - Wikipedia, the free encyclopedia
ブリヤート共和国の民族別人口統計、それぞれ1989年、2002年、2010年の国勢調査による

ブリヤート人:249,525 24.0% 272,910 27.8% 286,839 30.0%
ロシア人:726,165 69.9% 665,512 67.8% 630,783 66.1%
http://en.wikipedia.org/wiki/Republic_of_Buryatia


●Sakha Republic - Wikipedia, the free encyclopedia 
サハ共和国の民族別人口統計、それぞれ1989年、2002年、2010年の国勢調査による

ヤクート人:365,236 33.4% 432,290 45.5% 466,492 49.9%
ロシア人: 550,263 50.3% 390,671 41.2% 353,649 37.8%
http://en.wikipedia.org/wiki/Sakha_Republic


●Tuva - Wikipedia, the free encyclopedia

トゥーバ共和国の民族別人口統計、それぞれ1989年、2002年、2010年の国勢調査による

トゥーバ人:198,448 64.3% 235,313 77.0% 249,299 82.0%
ロシア人:98,831 32.0% 61,442 20.1% 49,434 16.3%
http://en.wikipedia.org/wiki/Tuva


●Kalmykia - Wikipedia, the free encyclopedia

カルムイク共和国の民族別人口統計、それぞれ1989年、2002年、2010年の国勢調査による

カルムイク人:146,316 45.4% 155,938 53.3% 162,740 57.4%
ロシア人:121,531 37.7% 98,115 33.6% 85,712 30.2%
http://en.wikipedia.org/wiki/Kalmykia



【私のコメント】

フォーサイトの記事「中国軍がロシア極東に電撃侵攻する日」が興味深い。中国が仮にロシアに侵攻すれば、ロシア軍は対抗不可能。バルト三国やポーランドなどの反対により欧州諸国は動かず、米国も中立を守るとする。日本は米国の保護領という立場上か意思を表明しないが、中国の意思により北方領土返還を受けるという予想は、日本も中国の潜在的味方ということになる。周囲を敵国に囲まれた危機的状況でどのように事態を打開すべきかという点を国民に問いかけたものであろう。

産経新聞の連載記事で取り上げられているロシア極東アムール州の穀倉地帯は、かつてアイグン条約でロシアに割譲されたが中国人居住者が多いため清の管理下に置かれた江東六十四屯に近いと思われる。北清事変でこの地域の中国人が虐殺され一掃されたことは石光真清の著書や旧制一高の寮歌で有名である。北京政府は1991年の中露国境画定時にこの地域の主権を正式に放棄したが中華民国(台湾)は放棄していない。今後もし中国が動乱・内乱を経て新体制に移行すればこの地域の国境問題は常に蒸し返されるだろう。

シベリアでもう一つ注目すべきなのはロシア人の減少とアジア系少数民族の増加である。20世紀になってモンゴルから奪われたトゥーバではソ連崩壊後にロシア人が半減、先住民は増加しておりロシア人は16%まで減少している。北カフカスのカルムイクでも同様の傾向あり。17世紀からロシアの支配下に置かれたサハ共和国でもソ連崩壊後にロシア人の減少とヤクート人の増加が起きて人口割合が逆転した。かつてロシア人が過半数であったが今やヤクート人が過半数。広大な領土と豊富な資源を有し東シベリアの中核を成すこの地域が今後分離独立に動けば、ロシアの受ける打撃は計り知れない。シベリア鉄道が通過しシベリアの中核地域の一部であるブリヤート共和国でもロシア人が徐々に減少、ブリヤート人が増加して30%に達している。

今後もシベリアではロシア人が減少し出生率の高い先住民が増加していくと思われる。ロシアが実効支配を維持するにはウラジオストクかユジノサハリンスクに遷都して極東に繁栄するロシア人居住地区を建設するしかないだろう。それが出来ても、数十年後以降には極東のロシア人はアフガニスタンのモンゴル系住民であるハザラ族や、現在のオーストラリア・ニュージーランドの白人の様に異人種の中で孤立した少数派として困難な運命を辿ると予想する。

日本としてはこれらのシベリア先住民と友好関係を維持し、シベリアに強い影響力を行使するべきであろう。ただ、中国を牽制する目的からはロシアを弱体化・分裂化させることは賢明でないと思われる。少なくとも今後数十年はロシアを支援しつつ先住民と緊密に交流してシベリアの利権を確保していくべきだ。





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32 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-08-09 01:06:02
北方領土も中国に取られそうな。
返信する
Unknown (Unknown)
2013-08-09 07:39:33
管理人もロシアから中国へシフトしたのかな?
返信する
自業自得 (kashin)
2013-08-09 08:05:15
アコギな侵略虐殺行動をアジアで東欧で、やりたい放題やってきたツケなのだ。仕方ないね。自業自得だね。
返信する
Unknown (フール)
2013-08-09 09:43:48
中国人に対してロシア人もイライラが募ってきてるようです
他の有色人種もロシアに集まってきて良く思ってないようです
返信する
Unknown (Unknown)
2013-08-09 10:09:03
アメリカの中国包囲網が本気になったから持論を変更です!
返信する
Unknown (Unknown)
2013-08-09 10:55:54
中国は、『ブリヤート人、
トゥバ人、ヤクート人などは中華民族だ!』と宣伝するだろう(もう、始めてるかも)。
返信する
Unknown (Unknown)
2013-08-09 10:59:42
ロシアは、アイグン条約や北京条約の有効性を確固としたいなら、同時期の下田条約の有効性を認めるべき。1745
返信する
Unknown (Unknown)
2013-08-09 11:01:29
中国は、シベリアをチベット化したいのだろう。
返信する
Unknown (Unknown)
2013-08-09 11:05:19
中国は、軍事力を行使する前に、中国系住民に暴動を起こさせるだろう。
返信する
Unknown (Unknown)
2013-08-09 12:32:38
ロシアの独立新聞は、ご丁寧に中国軍に『作戦』まで教えちゃって、バカじゃねぇの?
返信する

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