国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ネオコンが夢見たイスラム圏民主化の進展

2011年01月27日 | 中近東地域
●中東TODAY: NO・1869「チュニジア大衆革命の経緯と今後」 佐々木良昭 2011年01月23日

 チュニジアのベン・アリ元大統領は、1987年にブルギバ大統領を無血革命で追放し、後継の大統領に納まった。当初彼はイスラミストに対しても、穏やかな対応をし、国民一致の政府実現を考えていたようだ。
しかし、その後、1989年に選挙をしてみると、ナハダ党は国会議員選挙で、17パーセントの票を集めたのだ。このためベン・アリ大統領は、ナハダ党の対応に、著しく危機感を抱いた。この年の選挙のショックから、ベン・アリ大統領はイスラム組織に対して、厳しい対応を採り始め、ナハダ党は禁止されることになった。
多くのナハダ党の幹部が、外国に逃れ逮捕を免れた。このチュニジアでのベン・アリ大統領の動きは、エジプトの故サダト大統領の経緯と、非常に似通っている。サダト大統領も大統領に就任して以来、イスラム組織(ムスリム同胞団)に対し、緩やかな対応を採った。
しかし、その後、暴動が起こり、サダト大統領はムスリム同胞団を禁止し、イスラム勢力に対する敵対姿勢を、鮮明にしていった。そして、1981年サダト大統領は、ムスリム同胞団の分派のメンバーによって、第4次中東戦争の勝利を祝う、軍事パレードの中で殺害された。
経緯は異なるものの、アラブの国ではイスラム組織に対して、好意的な対応をした者が、最終的には殺害されるか、追放される運命にあるのかも知れない。
さて、それでは今回のチュニジア大衆革命の後、チュニジアではイスラム勢力が、どう動いてくのであろうか。チュニジアのイスラム組織の中で、最大規模と思われるナハダ党の場合、現段階では「穏健なイスラム組織」であることを強調し、政治に参加していく、方針を明らかにしている。
しかし、同時にナハダ党は、「十字軍やユダヤ教徒と戦っていく」とも宣言している。つまり、ナハダ党が語った穏健イスラム組織というのは、あまり信用できないのではないか。
ナハダ党の幹部たちの多くが、イギリスに逃れ、その他の多くは、20年前後、チュニジアの刑務所に、閉じ込められていたのだ。従って彼らには、現在のチュニジアの大衆の意向が、あまり分かっていないのではないか。そうであるとすると、今後予測されるのは、チュニジアの一般大衆と、ナハダ党メンバーとの、意見の食い違いが、鮮明になってくるということだ。
もちろん、これから活発化してくる、チュニジアの各政党との軋轢も、強まっていこう。そうなると、非合法手段がナハダ党や、その他の政党メンバーによって、実行される危険性が、高まるということだ。
http://www.tkfd.or.jp/blog/sasaki/2011/01/no_958.html





●チュニジアで起きた民主化革命が、エジプトやその他のアラブ諸国に波及し始めた。 株式日記と経済展望 2011年01月26日
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/e61fcbe5d0f01fa3dd145e88e05fce5a




 

【私のコメント】
 チュニジアで親欧米的な独裁政権が倒れた。同様の独裁打破を叫ぶ動きがエジプトやアルジェリアなどに拡大している。ウィキリークスやフェイスブックなどのインターネットメディアがこれらの動きに深く関与しているという情報がある。しかし、常識的に考えればウィキリークスやフェイスブックは国際金融資本を含む欧米支配階層の強い影響下にあり、その意向を反映していると思われる。欧米支配階層はかつてウクライナやグルジアでカラー革命を扇動したのと同様に、現在は中近東・北アフリカで革命を扇動しているのだ。かつてネオコンはイスラム圏を民主化すべきとの主張を掲げてイラク侵略を行ったが、現在行われているのはそのイスラム圏の民主化そのものであり、ネオコンが深く関与している可能性がある。ただ、民主化されたイスラム圏は脱宗教化しておらず、欧米型の民主政治ではなく現在のイラクと同様の宗教指導者による統治に移行するのではないかと想像する。その目的はよく分からないが、アラブ諸国を混乱させ弱体化させること、サウジアラビアなどの君主制非民主主義産油国を脅迫して欧米の国際戦略に従わせることなどが考えられるだろう。

 中近東や北アフリカでは出生率が高い状態が続いており、人口の多くが若年層で占められる不安定な状況である。彼らは失業やインフレに苦しんでおり、革命の温床となる不満は鬱積していた。欧米支配階層はこれに火をつけたのだ。今後最も注目されるのは、アラブ圏最大の国家であるエジプトと、聖地メッカの支配者であり世界最大の石油輸出国であるサウジアラビアに革命が波及するか否かである。エジプトの混乱は海運の大動脈であるスエズ運河の運行に影響を与える。サウジアラビアの王政転覆は湾岸諸国の石油輸出を減少させる可能性が高い。どれも世界経済への影響は非常に大きいが、どちらもインフレ促進要因である。両国の今後が注目される。







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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2011-01-27 11:41:08
イスラム圏での出生率を抑えるために、厳格な宗教で締め付け、若者にセックスさせないようにすることで対策しようとしているのではないか。すなわち世俗的な政権よりはイスラム原理主義による暗黒国家が望ましい。
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アマゾン油田が背景になっているのでは (名無しの経営者)
2011-01-27 11:43:46
【ブルームバーグ1月24日】アマゾン川流域に軽質原油の「極めて巨大な」油田が眠っている可能性があることを、HRTパルチシパソンエス・エン・ペトロレオのマルシオ・メロ最高経営責任者(CEO)が明らかにした。 ブラジルが開発を開始する。

メロCEOは24日、ニューヨークでブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じ、同社はアマゾン川本流のソリモンエス川流域の油井で6月にも生産を開始する予定であることを明らかにした。2月に掘削を開始し、5月には油層に達する見通しだという。

HRTは昨年10月に新規株式公開(IPO)を通じて約15億ドル(約1240億円)を市場から集めた。この資金はアマゾン川流域やナミビア沖の探鉱資金に充てる。ソリモンエス川流域で21鉱区、ナミビア沖では5鉱区で権益の過半数を保有する。アマゾン川流域では今年、油井12カ所を掘削する予定だ。

メロCEOは「ソリモンエス川流域の原油は南米全体で最高だ。アマゾン川流域は完全な未開発地域だ」との見方を示した。 http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aigLQBU_1HKI

このアマゾン油田は以前から知られており、qazxブログでは、2chによく知る人が現れて、次のような解説をしています。

742 :地球の裏側 ◆/lYVcP7um2 :2011/01/25(火) 13:44:22 ID:cmDF6XzC
あ~あ、とうとう出ちゃった・・・これ、7姉妹健在なりし頃、鉱区を買い占めてまで秘匿してきた油田なんだけどね。ここが開発できると世界の石油枯渇までの時間が30年単位で変わる、って言われてた。知ってるのは7姉妹とシュランベルジュとペトロブラスだけだった。

昔、アマゾンの熱帯雨林が地球の酸素供給地って戯言が広がったのを覚えていますでしょうか?実はあれはアメ政府と環境団体が結託して、この油田開発に着手させないための手だったんです。環境会議リオ92はその為にあった、と言って間違いないくらい。以下略

ーーーーー
このブルンバーグの記事以降に、「チュニジアで親欧米的な独裁政権が倒れた。同様の独裁打破を叫ぶ動きがエジプトやアルジェリアなどに拡大している」事態となっています。

恐らく、「秘匿してきた油田」の公表は、その油田開発に目処がついていることを意味し、中東から手を引けるのだぞとの、脅しにこの情報を使っているものと考えられます。

中東は、自分たちで、混乱状態から脱出し西側に協力しないない限り、西側諸国は知りませんよ、という西側の苛立ちを示しているのではないでしょうか。
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Unknownさんへ (princeofwales1941)
2011-01-28 01:03:29
>イスラム圏での出生率を抑えるために、厳格な宗教で締め付け、若者にセックスさせないようにすることで対策しようとしているのではないか。すなわち世俗的な政権よりはイスラム原理主義による暗黒国家が望ましい。


エマニュエル=トッドによれば、出生率は女性の識字率と反比例します。女性の地位が低いイスラム諸国では、厳格な宗教で締め付けると出生率が上昇すると想像されます。従って、今後もしアラブ諸国がイスラム原理主義化するならば、出生率が上昇してますます青少年の失業問題が悪化し、社会不安が悪化することでしょう。
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名無しの経営者さんへ (princeofwales1941)
2011-01-28 01:20:22
御指摘のアマゾン油田が関係している可能性もありそうですね。

一方、田中宇氏は1月27日の拙速分析で、エジプトとヨルダンの政権が近い将来に転覆し反イスラエル色の強い新政権が樹立されることによりイスラエルがまた一歩滅亡に近づくと予想しています。最近パレスチナ自治区を国家承認する方針を発表する国が相次いでいる(例えばロシアなど)ことも合わせると、反イスラエル勢力が力を合わせてイスラエルを滅亡に追い込もうとしている様に思われます。こちらが本筋かもしれません。モスクワ空港のテロ事件がイスラエルによる反攻であるという仮説も現実味があります。
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