国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

TPPの本質

2011年02月07日 | 米国
●地政学を英国で学ぶ : スエズ運河とエジプト危機

Commented by えんき at 2011-02-05 01:10 x
電波な仮説ですが、アメリカの国際戦略家は全世界を一時動乱状態にする事によって、世界をリセットしたいようです。世界をリセットすることによって、世界を幾つかのブロックとして棲み分ける国際戦略のようです。ですから、今話題のTPPとは、ブロック化した世界の内の一つなのだと認識しなけらばならないと思います。TPPを損得勘定で論じている限り本質は見えてこないと言えますね。

サミュエル・P・ハンティントンによる『文明の衝突』では、文明に着目して冷戦後の世界秩序を論じているのですが、TPPの組み合わせは文明という枠だけではなく地理的条件を加味した物のようです。つまりTPPの目的は、太平洋国家と中国大陸国家との対峙を形成するためのように思えるのです。ですから今の中東での騒乱は、ブロック化した中東世界を明確化するために行っているように観えるのです。

何の為に新しい構造を創るのかと言うと、生存環境悪化に際して、人類人口70億人を削減する方法として世界を幾つかのブロックに隔絶し、お互いが棲み分け、ブロック内でまずは人口削減を行わせるためであるし、やむを得なければブロック同士の衝突で人口削減を行わせるためだと私は考えます。

Commented by ぱんだ at 2011-02-05 01:28 x
えんき様
面白い仮説をご披露下さり、ありがとうございます。えんき様のおっしゃるブロック化とは、世界をいくつかの勢力圏に分ける、いわばハウスホーファーのパンリージョンのような考えと理解してよろしいでしょうか?世界は、地域ごとに、それぞれ覇権勢力に色分けされ、最終的に世界覇権勢力によって統一されていくという感じです。

Commented by えんき at 2011-02-05 17:56 x
>ハウスホーファーのパンリージョン

どちらかと言えばドゥーギンの考えに近いです。世界統一政府というのは人類の存続のためには害でしかないので、未だに本気でそれを目指している人は現実的な戦略家の中には居ないのではないでしょうか。

本来、それぞれの地理的環境的民族文化的な条件に根ざした各国家社会が自立してやって行くのが理想なのですが、まだそれを為すには準備不足であって、取り敢えずはブロック圏に分かれてその中で自給生産力を構築する必要があります。つまりブロック化は、さらなる棲み分けに至る二段構えの前段階なのです。日本としては海洋国家連合であるTPPに入るのが現実的な選択となります。

Commented by Risako at 2011-02-05 19:41 x
今のところTPPによる自由化は、金融や医療、法律サービスなどを含み、とても広範囲なものになるようです。具体的に条文をきちんと読んでから判断する必要があります。
http://geopoli.exblog.jp/14862037/




●医療・介護の生産性低く 全産業の6割止まり  :日本経済新聞 2011/2/6

 菅政権が成長の要として期待している医療・介護サービスの生産性が低迷している。同分野の生産性の水準は全産業平均の6割にとどまり、様々な業種の中でも低い部類だ。しかも効率化や適切な設備投資が進んでいないため、生産性は年々低下。医療・介護の需要は今後ますます拡大し、成長産業としての期待も大きい。だが供給側の生産性が低いままでは、国全体の成長を後押しする産業にはなり得ない。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E2E0E2E1818DE2E1E2E0E0E2E3E39797EAE2E2E2




●自民 TPPは慎重に意見集約 NHKニュース 2月6日

自民党は、早期の衆議院の解散・総選挙を目指す立場から、来月中に政権公約を取りまとめることにしていますが、TPP=環太平洋パートナーシップ協定への対応については、党内の意見対立が先鋭化するおそれがあるとして、慎重に意見集約を進めることにしています。

自民党の谷垣総裁は、速やかな衆議院の解散・総選挙を目指す立場から、ことし6月としていた政権公約の取りまとめの時期を、3月中に前倒すよう指示しました。ただ、菅総理大臣が交渉参加に意欲を示す、TPP=環太平洋パートナーシップ協定を巡っては、党内に、「国内産業の国際競争力を維持するために参加すべきだ」という意見の一方、「農林水産業に深刻なダメージを与える」として反対する意見が根強くあります。さらに、地方議員の間からも「春の統一地方選挙を前に、国論を2分するような課題で方向性を示すのは得策ではない」という意見が寄せられています。このため、執行部は、菅政権との対決姿勢を強めなくてはならない時期に、党内の意見対立が先鋭化するような事態は避けたいとして、政府・与党の議論の推移を見ながら、慎重に意見集約を進めることにしています。
http://www.nhk.or.jp/news/html/20110206/t10013882501000.html



●TPP交渉参加へ試金石、日豪がEPA交渉  読売新聞 2011年2月7日

 日本と豪州の経済連携協定(EPA)締結に向けた政府間交渉がきょう7日から10日まで都内で開かれる。

 豪州は、日本が参加の是非を検討している環太平洋経済連携協定(TPP)の主要交渉国でもある。日豪EPA交渉の進展は、日本がTPP交渉への参加を決断できるかどうかを占う試金石になりそうだ。

 2007年に始まった日豪のEPA交渉は、豪州が求める農産品の関税引き下げに日本が難色を示したため暗礁に乗り上げ、過去11回の会合を経ても妥結の見通しが立たない「異例のロングラン交渉」(交渉筋)となっている。

 10か月ぶりの交渉再開は、政府が昨年11月に決めたEPAに関する基本方針が「締結推進」を盛り込み、農産品を含めた全品目を交渉対象に含めたことで実現した。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110207-OYT1T00219.htm




【私のコメント】
ブログ「地政学を英国で学ぶ」のコメント欄が興味深い。米国の推進するTPPを、太平洋ブロック国家と指摘している。EUというブロックの登場に続き、米国も自国の主導するブロックの結成を目指し始めたということなのだろう。私は日本は東アジアブロックを主催し主導すべきだと考えているが、アメリカを敵に回すべきではないので、一時的にTPPに加盟するのは悪くない選択枝だと考えている。2008年のリーマンショックをきっかけに全世界は事実上大恐慌時代に突入しており、ブロック経済化は避けられないのかもしれない。

日本経済新聞が日本の医療の生産性の低さを指摘している。日本の医療の生産性が低いのは、医療費が安いことが原因であり、それは国民福祉から見て好ましいことである。医療費の大部分は老人が消費していること、老人は貧富の格差が大きいことを考えれば、安価で高レベルの医療が供給される日本の現在のシステムをある程度維持していくことが必要不可欠だろう。それにもかかわらず日経が日本の医療の生産性の低さを批判するのは、恐らくTPPで米国から日本に対し医療分野での要求があったためと考えられる。同様に米国が強みを持つ金融や法曹などの分野でも要求があるのだろう。医療・金融・法曹や農業を含め、日本にとって重要な産業やシステムを米国からの理不尽な要求から守りつつ、日本の国益を実現していくことが求められている。

野党である自民党がTPPへの意見決定を先延ばしにしているのも注目される。「国論を2分するような課題で方向性を示すのは得策ではない」とあるが、国論を二分するような重要な課題で方向性を示せない政党に存在価値があるとは思えないのだ。恐らく、TPPについて真剣に議論すれば反対派が勝利してしまうので、議論を避けるべきだという判断を日本支配階層が行ったためだと思われる。

現在の世界は、米国一極体制から多極体制への移行期という不安定な時期にある。米国のどの様な勢力がどの様な意図でTPPを推進しているのかを見極めることが必要だ。そして、その勢力の今後の推移を予測した上で日本は戦略を組んでいくべきだろう。もちろんその最終目標は、米国からの独立と東アジアブロックの支配権確立である。





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8 コメント

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面従腹背?あえて虎口に入る?? (CatShitOne)
2011-02-08 08:30:19
>アメリカを敵に回すべきではないので、一時的にTPPに加盟する
>TPPについて真剣に議論すれば反対派が勝利してしまう
>もちろんその最終目標は、米国からの独立と東アジアブロックの支配権確立である。

アメリカのトラップに嵌ると見せかけてスリ抜け、自己利益の拡大(=米国の利益の削り落とし)を図る。
非常に困難な外交政策ですね。
唯一の付け入りどころは、米国がこれから衰退し、北米大陸に引きこもっていくであろうというかなり確度の高い予測があることですか。
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CatShitOneさんへ (princeofwales1941)
2011-02-08 10:48:14
>アメリカのトラップに嵌ると見せかけてスリ抜け、自己利益の拡大(=米国の利益の削り落とし)を図る。非常に困難な外交政策ですね。


日本はこれまで、その困難な外交政策を成功させてきました。明治維新の時は英仏が朝廷・幕府を内戦に追い込んで日本を植民地化することを狙っていましたが、日本はそのトラップにはまると見せかけて江戸城無血開城で内戦を回避しました。第二次世界大戦の時は、憲法第9条で戦争を放棄することで米軍の手先となってアジア侵略の尖兵となるという役割を逃れることに成功しています。

今回は米国や国際金融資本の勢力が弱体化しつつあることから考えて、日本独立・東アジアブロック主催はそれほど困難ではないのではないかと楽観的に考えています。
返信する
Unknown (kenji)
2011-02-08 15:47:30
>。私は日本は東アジアブロックを主催し主導すべきだと考えているが、アメリカを敵に回すべきではないので、一時的にTPPに加盟するのは悪くない選択枝だと考えている。

 甘いね、消極的にTPPに参加することである。アメリカは太平洋を日本とオーストラリアと三国で支配しようとしている。そのプランに乗らないかだろう。
 中共の海軍は潰すということである。
 亜米利加か中共かを考えればそれはアメリカである。
 前回の恐慌の時満蒙へといったがそれは駄目であった。それよりも国内の中国人の増大を防ぐことだろう。
 TPPは先が長いから、一応考え見ることだろう。
国内の穀物生産はたしか自給率が30パーセントであったはずで、その穀物を供給できるのは亜米利加とオーストラリアとカナダくらいだろう。そこには中共は無い。したがって東アジアブロックなど虚構に過ぎない
 その上石油が必要である。中共には石油は無い。
何処を見ても中共と利害関係が同じになる要素は無い。
いつか来た道をあゆまないようにするだけである。
 
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経済を売り軍事を買おうとしているのでは (名無しの経営者)
2011-02-08 16:12:26
【ワシントン共同2011/02/07 17:39】前米高官、日本に憲法改正促す 「普通の同盟」訴え
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011020701000610.html
オバマ米政権で情報機関を統括する国家情報長官(閣僚級)を昨年5月まで務めたデニス・ブレア退役海軍大将(64)が7日までに共同通信と単独会見、米軍が軍事力を提供する一方、日本が米軍駐留経費を負担する日米安全保障体制をよりバランスの取れた「普通の同盟」に変えていくため、政府解釈で集団的自衛権の行使を禁じている憲法9条の見直しを促した。

最近まで米政権の要職に就いていた人物が日本の憲法改正に言及するのは極めて異例。ブレア氏の発言は、北朝鮮の核・ミサイルの脅威が高まる中、「非対称」とされる日米安保体制の在り方をめぐり、米側に不満がくすぶっている現状を浮き彫りにした。

ブレア氏は1999年から約3年間、アジア太平洋地域を統括する太平洋軍(司令部ハワイ)の司令官を務め、日米関係に精通している。

ブレア氏は日米同盟を両国外交の「基軸」と位置付けた上で、軽武装・経済重視の吉田茂元首相の路線は「長年、少し不健全だと思っていた」と指摘。「米国がすべての軍事面を請け負い、日本が駐留経費を払う関係は(冷戦期の)55年ならともかく、2011年の同盟関係としてはふさわしくない」と語った。
ーーーーー
環太平洋連携は、日本が東南アジアに輸出基地を作り、そこから欧米に輸出攻勢を仕掛けるという、日本の経済戦略を、攻撃するものであると、小生は考えています。

その一方で日本は、軍事戦略として、憲法9条を利用して、「米がすべての軍事面を請け負い、日本が駐留経費を払う関係」を築いてきました。これについてもいよいよ、見直しが、求められています。

メディアが、一方的に、連携を仕掛けているところから、綿を売って縄を買う行為、つまり憲法改正はせず、軍事面での現状維持を買うために、経済を売ったのではないかと、考えているのですが。
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Unknown (Ho)
2011-02-10 20:21:24
TPPの恐ろしい点は法体系までかの国に合わせなければならないことだ。一度締結してしまったらそれを覆すことはどれほどの労力がかかることか、明治時代を思い出すが良い。戦争でも起こさない限り脱却できないのではないか?
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Unknown (たかちゃん)
2011-02-11 03:02:24
名古屋で民主が惨敗しましたな。もう無理でしょう。民主の農村部の惨敗は確実な上、都市部でも確定しました。農村部圧勝で政権奪回の自民党にTPP加入は不可能。民意だと言えば、アメリカも黙るしかない。プリンス氏の言われる日本の奥の院が実在するなら、凄いですわ。民主惨敗後に官僚から、農業以外のTPP加入の危険性が、メディアにリリースされるんでしょうね、きっと。
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連投失礼 (kenji)
2011-02-11 09:00:07
>Unknown (Ho)

 TPPに対してよく知ることだが、実を言うと良く知らない。
 しかしtppがわが国に当てるであろう問題は多分TPPがなくても、国内において何らかの対策をする必要があるものばかりではないか。すべてではないが。 
 まるで黒船が来たみたいである。
これは多分判断が難しいことで、突きつけると、生活スタイルを変えよと言う事になるだろう。
 農業に従事する人の平均年齢が66歳では、もはやいかんともしがたい。66歳ですよ。
 亜米利加はそこまで見て、わが国の弱みをついてきている。
 現代において66歳で生産して、飯が食える人はよほどの人である。
 難しく考える必要は無い。
自衛隊を国防軍にシテ、終戦後に起きた不都合なこと、具体的にはポツダム宣言に違反したことを、その宣言どうりに連合国(国連)にさせることで、その連合国は中共ではなく中華民国であることを、外交政策に反映させることである。
 ロシアとの国交断行も視野に入れることだろう。
TPPは経済問題ではない。

もう一つは人口減少に対処することで、史那人朝鮮人を追いだすことである。時に不法滞在者で既に三世四世までいる、在日朝鮮人を調べて、本国へ送還することである。
 これができなければ、TPPに対抗できない。
仮にTPPに加入しなくてもTPPが提起した問題はわが国には直面するからである。
 そのケースとして、農業問題で、我国企業の平均年齢の高齢化はやがて農業と同じ問題をもたらす。具体的には形は違うだろうが。
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言わせて (紫煙)
2011-02-16 00:02:14
あの頃と違い、虎穴に入らずんば・・・でやれるほどの人材があるのだろうか?缶やマエハラの顔から想像も出来ない。
またあの頃と違うのは官僚組織の腐敗では無いだろうか?国を憂う役人がどれほどいるのか、今や東大中央に合格できる貧乏人の小倅はほとんどあるまい。目に見えぬ貴族階層が熟しきって腐り落ちる時に思えてならない。よって役人もあてにならない。
ペリーが浦賀に来てからこの方ぬらりくらりと交わしてきたが、やはり徐々に包囲網は狭くなっている。憲法9条と引き換えにした犠牲はあまりに大きすぎないか?
TPP支配の植民地には宗主国の義務さえ無い。
TPPは全部で24あり関税は3~4項目に過ぎない。
いずれもその中身は官僚が抱きかかえて表に出していない。農業VS国益の構図も官僚の知恵だろう。郵政民営化の特定郵便局と同じ構図。今世論調査をやればTPPは一気に前に進められる。
で、逆らえるのかは別問題。虎穴に入らずんば・・ならあまりにもキャスティングがお粗末。アメリカの後ろにいるイギリス系の連中を念頭に置かないと。
穀物自給率は25%、レアアースと同じ手口で止められたらどうする?前回は石油、スズ、ゴムで真珠湾に行かされた。穀物自給率を120%程度まで上げるのが吉かと。人生50年と言われた頃、人は30~40でバタバタ死んでいた。
中東は戦争をさせられるだろう、石油はヤバイ、コスト高になればようやくメタンハイドレートにも本腰が入ろう。技術は進む、畑もGPSで自動に耕せるだろう。アメリカ崩壊の断末魔のあがきは、半端じゃないよう思える。プラザ合意が外堀ならTPPは内堀。



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