国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ロシアの余剰電力の韓国・北朝鮮への供給案が挫折、韓国生き残りのための韓露同盟も実現困難か?

2006年11月14日 | 韓国・北朝鮮
●ロシア、韓国資本で北朝鮮に電力販売か 朝鮮日報 2006/11/13

 ロシア国営電力会社の統合エネルギー・システム(UES)のドラチェフスキー副社長(64)は12日、「ロシアが極東地域の余剰電力を韓国と北朝鮮に供給する案を、南北双方と協議中」と語った。

 同氏はAP通信とのインタビューで、「具体的な内容はまだ決まっていないが、ロシアが北朝鮮に電力を供給し、その後南北をつなぐ高圧線で韓国にも電力を供給できる」と述べ、この案は韓国側から提案されたもので、20億ドル(約2352億円)が必要だと付け加えた。

 これに対してロシア駐在の韓国大使館関係者は「ロシアは極東の余剰電力を北朝鮮に売却したいが、それに必要な資本は韓国に要請するということだ。これはロシアの希望であるだけで、具体的な進展はまったくない。電力難の北朝鮮としては興味を引かれるだろうが、現金がなく電力の導入ができない。韓国は電力需要は国内でまかなっており、ロシアの案に大きな関心はない」と語った。
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/11/13/20061113000016.html





【私のコメント】
 「ロシアが極東地域の余剰電力を韓国と北朝鮮に供給する案」について、ロシア国営電力会社は「この案は韓国側から提案されたもの」と発言している。その一方で、ロシア駐在の韓国大使館関係者は「これはロシアの希望であるだけで、具体的な進展はまったくない」「韓国は電力需要は国内でまかなっており、ロシアの案に大きな関心はない」と発言している。この案は韓国側の提案なのか、それともロシア側の提案なのかという点で明らかに両者の発言が矛盾している。妙な話である。以下の3つのシナリオが考えられる。

・シナリオ1:ロシア側が提案
 ロシアが電力販売利益と朝鮮半島への影響力行使を狙って提案したが、北朝鮮への制裁が実行中であるため韓国からの提案という嘘をついた。

・シナリオ2:韓国側が提案
 韓国が北朝鮮への影響力行使を狙って提案したが、北朝鮮への制裁が実行中であるためロシアの希望であるという嘘をついた。

・シナリオ3:北朝鮮が提案
 北朝鮮が生き残りをかけてロシアと韓国に提案したが、北朝鮮への制裁が実行中であるため、韓国はロシアの希望であるという嘘を、ロシアは韓国側からの提案という嘘をついた。



 本来ならば韓国が北朝鮮に直接電力を供給すれば良いのだが、対北朝鮮制裁に消極的であることを日本や米国に非難されている現状で更に電力も供給するのは危険が大きすぎると考えた韓国がロシアと北朝鮮に提案したというシナリオ2の可能性が一番高いだろう。そして、嘘をついて提案を誤魔化さねばならないような計画は秘密が漏れた時点で実行はまず不可能である。

 韓国としては、中国の脅威に対抗する為に韓国・北朝鮮とロシアが同盟を組むことを最終目標にしていたのかもしれない。これは地政学的に見てそれなりに妥当性のある同盟である。しかし、ロシア側が電力供給案を公表したということはロシアはこの案の協議に参加しながらも乗る気は全くなかったと考えられる。中国・日本・米国という三大国との関係が悪化している韓国にとってロシアとの同盟は唯一の生き残り策とも言えるが、現状では韓国とロシアの同盟は成立しない可能性が高いように思われる。この記事は短い記事だが、韓国の戦略にとってダメージは非常に大きいのではないだろうか?
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