国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

薄書記失脚、王立軍亡命未遂とイギリス人ビジネスマンの毒殺事件:

2012年03月29日 | 中国
●宮崎正弘の国際ニュース・早読み(重慶の事実はスパイ小説より奇なり) 発行日:3/27
★小誌通巻3600号突破記念第二弾! 増ページ
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
    平成24(2012)年3月27日(火曜日)
通巻第3602号 
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いかなるスパイ・スリラー小説より、重慶の事実は奇なり
  薄書記失脚、王立軍亡命未遂の裏にイギリス人の毒殺事件が隠されていた
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 英国政府が中国に正式に「調査」を依頼した。その「事件」から四ヶ月を経過した2012年3月26日になってからである。

 昨十一月、重慶のホテルで或るイギリス人ビジネスマンが死体で発見された。当局は検死も行わず「アルコール中毒」による突然死と発表した。ウェッブで噂が飛び交ったが、当時は薄―王コンビが完全に重慶の公安をおさえ、情報を秘匿できた。

 中国にいた他のイギリス人ら友人が英国大使館に連絡し、「かれは一滴の酒も飲まない人(Teetotaler=絶対禁酒者)だった」と伝えていた。
なぜか事件は伏せられた。

 突如、死体で発見された英国人の名はネイル・ヘイウッド。40歳代後半から50代前半。戦略的投資アドバイザーや年金運用のコンサルティングを務めており、重慶では英国ロンドンに本社を置く企業調査会社「Hakluyt&Co」に助言をしていた。「この会社はMI6の依頼で或る調査もしていた」(ウォールストリートジャーナル、3月27日)。

 ネイルは中国でちょっとした有名外国人で、その人脈の広さから、高級スポーツカー、アストン・マーチンの販売総代理企業顧問を務めたり、浙江省ギーリ・ホールディング社のボルボ買収でも、助言をした。
 それなりの戦略的コンサルティングだった。

 ネイルは北京言語文化学院卒業、中国語に堪能で妻は中国人女性。大連市長時代の薄き来と知り合い、深い交友関係にはいって、薄の二番目の妻・谷開来とのあいだに出来た息子・薄爪爪が英国オックスフォード留学のおり、背後で様々な面倒をみたという親密な関係だった。

 薄爪爪は父親を彷彿とさせるプレイボーイ、北京の米国大使館にフェラーリで乗り付け、当時の米国大使ハンツマンの娘に会いに行ったり、或るときは陳雲の孫娘とチベットへ旅行したり(その写真は多くの華紙がすっぱ抜いた)。陳雲はトウ小平最大の政治的ライバルで『鳥かご経済』論を主唱し、トウの改革開放に反対した。

 薄爪爪は最後に米国ハーバード大学へ「留学」した。乱痴気パーティを学生寮で開催したり、その破天荒な遊びぶりは米国留学中でも有名だった。
 薄には前夫人とのあいだに長男がおり、その子、李望知は米国コロンビア大学に留学している。

この話を聞いた折、1982年秋に日本留学中の魯迅の孫・周令飛が台湾女性と恋仲になって台湾へ『結婚亡命』したことを思い出した。翌年、筆者は周令飛のインタビューをしに台北へ飛んだが『わたしは亡命ではなく、台湾を旅行している』と発言し、驚かされた。ほかの亡命者は『あの人は北京で一番最初にバイクを乗り回した遊び人だ』と批判めいたことを言った。バイクを乗り回したくらいのこととフェラーリの大名旅行のぼんぼんとはえらい違いだ。


 ▼薄き来夫人は辣腕弁護士という表看板がある

さて薄夫人の谷開来は北京でオフィスを開く辣腕弁護士としても知られる。
ネイルはこの夫人とも親しく弁護稼業のアドバイスも請け負っていた。事件は2011年11月である。このおり薄ファミリーの腐敗を捜査する中央からの捜査は右腕だった王立軍(当時、公安局長兼副市長)の過去の汚職に及んでいた。王は薄に「家族、とくに夫人の醜聞を狙っている」と告げた。

 中央の政治局常務委員会で捜査を進めていたのは賀国強、捜査を妨害して薄をかばっていたのが周永康だった。周は江沢民派である。
北京との会話は盗聴されており、また薄側も北京の中央を盗聴していた。薄ファミリーの汚職は重慶における様々なプロジェクトや、『腐敗一斉』といって逮捕した共青団系列の人々の財宝の横領などが含まれていたといわれる。
 
薄は捜査が夫人の汚職に及んだ段階で「悪い部下をもった」と右腕の王立軍を切った。
そこで2月6日に王立軍が成都の米国領事館へ駆け込み亡命申請の取引として、薄の腐敗、汚職の証拠を提出し、盗聴記録やら薄との会話テープも提出したことは小誌でもたびたび伝えてきた。

じつはこの中に「ネイル・ヘイウッドの死は毒殺だ」という王立軍の証言が含まれていた。
いかなるスパイ・スリラー小説より、重慶の事実は奇なり。
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 重慶テレビが商業広告のコマーシャル番組を再開
  紅色番組一色で重慶テレビ視聴率は全国9位から34位に転落していた
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 紅色テレビ革命? なんせ薄き来前書記は「唱紅打黒」の毛沢東路線リバイバルで重慶に新政を敷いたのは良かったが、中国がすでに商業主義にどっぷりとつかっているという現実をあまりにも軽視したのだろう。

 2011年3月1日から重慶テレビは薄書記の号令一下、すべてのテレビコマーシャル番組が禁止された。そうそう、毛沢東時代の中国には広告がなかった。ワシントンポストの社長が周恩来に会ったとき、「そういう意見なら我が紙(WP)に意見広告を」と誘うと周恩来は何のことか分からず「中国には広告というものがありません」と言ったのは有名な逸話である。

 それがいまでは、新華社がNY市の象徴=タイムズ・スクエアの広告塔を買い取り、毎時毎秒、アメリカ人に中国の宣伝をしているほどに激変している。

 そういう時代変化を無視して、テレビの番組を真っ赤に統一して、革命歌を唱うだけの番組(天天紅歌会)を作らせて、黄金アワーの放映させたら、どうなったか?
 全国平均でも視聴率の高かった重慶テレビが、ドラマも外国映画の禁止となったうえコマーシャル番組が画面から消え、視聴率は全国9位から34位に転落していた。
 
 そのうえ広告収入は三億元から一億五千万元に急落(のこった広告は政府公報、党委員会のCMだけ)。職員は140名から四分の一、残れた職員も給与は10%カット、役員は四割カット。不満は鬱積し、「薄のバカ野郎が革命歌なんぞを強制的に唱わさせやがって」と不評サクサク、市民の怒りとともに燻っていた。

 2012年3月26日、およそ一年ぶりに重慶テレビには商業広告番組が復活した。第一号は地元の酒造メーカーだった。

 一方、薄き来の号令一下、農村戸籍の都市戸籍移転が命じられたが、じつは窓口で殆ど業務が進んでいない事実が分かった。近郊にばたばたと造成した低所得者住宅も、交通のアクセスが滅法悪く、殆ど入居者がおらず、ゴーストタウン化している。重慶の「ギリシア化」も時間の問題とされ、考えてみれば後任の張徳平は、貧乏くじを引いたことになる。
http://melma.com/backnumber_45206_5524346/






●薄熙来氏と親交の英男性が不審死、英政府が調査を要請  薄熙来氏と親交の英男性が不審死、英政府が調査を要請【大紀元日本3月28日】

重慶市元トップの薄熙来氏が解任された事件は外交問題にまで発展した。薄氏一家と深い親交があったとされるイギリス人男性が昨年、同市で死亡した事件について、英政府は疑問点があるとして、中国当局に調査を要請したという。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版、WSJ)が26日に伝えた。

 死亡したのはビジネスマンで中国に在住していたニール・ヘイウッド氏。昨年11月、重慶のあるホテルで死亡したのが発見された。記事によると重慶市警察は当時、死因は「過度のアルコール摂取」による事故と発表し、検視を行わず火葬したという。ヘイウッド氏が堅く禁酒している人物だと知る知人は、警察の発表に疑問をもち、イギリス大使館に通報した。

 同記事によると、薄熙来氏の腹心で同市の元公安局長だった王立軍氏は、ヘイウッド氏が、薄氏と妻との間でビジネス上のトラブルがあり、毒殺されたことを知った。ヘイウッド氏の死をめぐって、薄氏と王氏は激しく口論し、仲間割れした。王氏が米総領事館に駆け込む際に渡した機密文書の中にも、ヘイウッド氏の死に関する資料も含まれている。

 ヘイウッド氏は英諜報機関に情報提供していたとも報じられている。ヘイウッド氏は、イギリス情報局秘密情報部(MI6)の元幹部が創立した諜報戦略情報会社、ハクルート(Hakluyt)に非常勤として勤めていた。同社はヘイウッド氏の死に「深い悲しみを表す」とコメントしているが、同氏がどのような情報を提供していたかは明かしていない。

 今回の事件についてよく知るヘイウッド氏の知人は、同氏が死亡した当時、中国人の同氏の妻は重慶にいなかったと、WSJの取材に対して答えている。

 ヘイウッド氏は40代~50代の中年男性。戦略的投資アドバイザーや年金運用のコンサルティングを務めており、英自動車会社アストン・マーチンの販売総代理企業顧問でもあった。浙江省ギーリ・ホールディング社のボルボ買収も助言をしたとされ、中国では有力なアドバイザーだったと伝えられている。

 記事によると、同氏の中国人の妻は大連出身で、薄氏が大連市長在任中、妻との繋がりで薄一家と付き合うようになった。薄氏は3月15日、市党委書記の職から解任された。理由は公表されていない。
http://www.epochtimes.jp/jp/2012/03/html/d80031.html




 
●重慶市トップの更迭は「天安門事件時の趙紫陽失脚以来の衝撃... 2012年3月19日 レコードチャイナ

2012年3月17日、中国・重慶市トップの薄熙来(ボー・シーライ)党委書記が更迭されたニュースは西側メディアも強い関心を示している。米華字サイト・多維新聞が伝えた。

英紙フィナンシャル・タイムズは米シンクタンク、ブルッキンズ研究所の中国政治問題専門家、李成(リー・チョン)氏の話を引用し、「1989年に趙紫陽(ジャオ・ズーヤン)元総書記が失脚した天安門事件以来の大事件」と報道。3月15日の重慶市幹部大会に姿を見せなかったことから、「国外逃亡しないよう、自宅軟禁されている」とみている。

多くの西側メディアは、今回の更迭で薄氏の政治生命は終わった、との見方を強めている。米紙ニューヨーク・タイムズは「これで秋の第18回中国共産党全国代表大会(18大)で決まる中国の最高指導部入りメンバーが分からなくなってきた」と報道。ロイター通信も匿名の情報筋の話として、「薄氏の最高指導部入りはほぼ絶望的」と伝えた。

ロイター通信は最高指導部9人のメンバーについて、「確実に残るのは、習近平(シー・ジンピン)国家副主席と李克強(リー・コーチアン)副首相だけ」と予測。残る7人は全員退き、新たに汪洋(ワン・ヤン)広東省委書記、王岐山(ワン・チーシャン)副首相、劉雲山(リウ・ユンシャン)党中央宣伝部長、李源朝(リー・ユエンチャオ)中央組織部長、張徳江(ジャン・ダージアン)副首相、張高麗(ジャン・ガオリー)天津市委書記、兪正声(ユー・ジョンション)上海市委書記が入る、としている。(翻訳・編集/NN)
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=59696





●薄煕来氏失脚 妻、側近ら相次ぎ拘束 重慶で“粛清”始まる - MSN産経ニュース 2012.3.28 00:54

 【北京=矢板明夫】中国共産党中央に重慶市党委書記を解任された薄煕来氏は汚職や職務怠慢などの疑いで共産党機関の調査を受け続けており、結論はまだ出ていない。しかし、その妻と側近たちは27日までに次々と汚職などの名目で拘束されている。薄氏の影響力を排除するための“粛清”が始まっているもようだ。

 共産党筋などによると、薄氏の妻で、弁護士事務所を開業している谷開来氏は薄氏と同じ頃に党中央規律検査委員会から実質の拘束となる「双規」(規定の時間、場所で疑いのある問題に関して説明を求めること)を通告された。

 同筋は「容疑が固まれば、今秋の党大会直前に開かれる第7回中央総会で、薄氏の政治局員の資格が剥奪される可能性がある」と指摘する。

 27日付の重慶日報によると、薄氏を支えた重慶市議会議長にあたる陳存根・市人民代表大会常務委員会主任は26日に同市党委員会の常務委員を解任された。

 この人事は陳氏が兼務していた同市の党組織部長をまもなく解任されることを意味する。薄氏一派は重慶における人事権が奪われた。後任には重慶と全く関係のない寧夏回族自治区の幹部が起用された。

 薄氏の遼寧省時代の部下で腹心の一人として知られる呉文康・重慶市党委員会副秘書長は薄氏が解任された後、同市の重要会議をすべて欠席し行方がわからなくなった。当局に拘束された可能性が高い。

 さらに、薄氏のマフィア一掃キャンペーンを推進した王鵬飛・渝北区副区長や夏沢良・南岸区党委書記らも相次いで党の規律検査委員会関係者に汚職などの名目で連行されたことは中国メディアの報道で確認された。

 関係者によると、重慶市では5月に市の主要人事を決める党代表会を開く予定。薄氏に近い幹部の多くはこの会議で更迭されるとみられる。薄氏と良好な関係にありながら、事件後、党中央への忠誠を誓い、事態の収拾に尽力した黄奇帆・重慶市長の処遇が注目を集めている。
http://sankei.jp.msn.com/world/print/120328/chn12032800550003-c.htm






●時事ドットコム:薄氏解任で「革命歌」番組縮小=夜のドラマ放映も解禁-中国重慶TV 時事通信 (2012/03/26-16:43)

 【北京時事】中国の薄熙来前重慶市共産党委員会書記(解任)の指示の下、毛沢東時代の革命歌「紅歌」を重視してきた市政府系の衛星テレビ局・重慶衛視は、毎日放映してきた紅歌専門番組を週末の45分間に縮小する方針だ。26日付の重慶日報が同テレビ局関係者の話として伝えた。
 重慶衛視は昨年3月以降、「英BBC」を目指すという薄前書記の号令で、商業広告(CM)を禁止。夜のゴールデンタイムのドラマも自粛してきた。薄氏は今月9日の記者会見で「テレビは価値ある思想や知識を民衆に提供するものだ」と説明していた。
 しかし薄氏の解任を受け、26日からゴールデンタイム時のドラマ放映は解禁される。一方、商業広告に関しては解任当日の15日夜に酒類のCMが放送され、「解禁か」と話題になったが、関係者は「まだCM放映を検討していない」と述べた。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012032600640






●東京新聞:重慶「薄王国」文革を想起 党、大衆動員を禁止:国際(TOKYO Web) 2012年3月29日

【北京=安藤淳】重慶市トップだった薄熙来(はくきらい)共産党委員会書記(62)の解任で、「薄王国」化した重慶の人事ばかりか政治活動、市民生活にも余波が広がっている。一方で、薄氏の解任について党中央から公式な説明はなく臆測が噴出。秋の党大会前に社会の安定が絶対条件の党指導部は、難しい対応が迫られている。

 重慶市党委の何事忠宣伝部長は二十六日、「集中的な舞台演出を減少させ、(政治)運動式のやり方を断固として回避しなければならない」と述べ、独裁的手法で薄氏が展開してきた毛沢東時代の革命歌「紅歌」を熱唱するキャンペーンなど、大衆を動員して行う運動の中止を指示した。

 背景には、党内の政治闘争を発端に法治主義を無視し、多くの国民に被害が及んだ文化大革命(一九六六~七六)の悲劇を繰り返さないとの党中央の強い意志の影響があるとみられる。重慶衛星テレビも毎日放送していた「紅歌」番組を週一回に減らし、ドラマとコマーシャルを再開した。

 一方、党中央は二十七日、陳存根・重慶市党委常務委員を解任、後任に寧夏回族自治区の徐松南組織部長を充てる人事を承認した。薄氏に近い陳氏は人事を握る市党組織部長も兼任しており、薄氏一派は人事権を奪われた形だ。

 このほか、重慶市内の区トップや副区長らも汚職などの容疑で当局に調査を受け、暴力団摘発を推進した市検察院幹部三十八人も一斉に異動した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2012032902000027.html






●▼唸声の気になる映像/中国:王立軍失脚、亡命失敗!これにて薄熙来もアウトか!:イザ! 2012/02/09

王立軍の亡命失敗で注目は薄熙来へ、このまま薄熙来も失脚となるか?ドロドロの国の共産党の戦いはぬるま湯国家と大違い。明日は何が起きてもおかしくない。

以下はこの問題に早くから着手していた宮崎正弘氏のニュースより引用

【宮崎正弘氏の国際ニュース・早読み2/9-やはり失脚だった王立軍(重慶市副市長)。当局は「長期休暇」と発表、これは暗黒の権力闘争の一環、薄き来の政治生命に赤信号】

 ライジング・スターだった薄熙来(重慶市書記)は、政治生命を絶たれる懼れがある。
 党大会を控えて中国は熱い政治の季節を迎えた。

 薄熙来の主唱した「唱紅打黒」(毛沢東の原点に返り腐敗一斉)は共産党中央から疎まれたのだ。特権を長期に維持しようというのが共産党高官の合意だから、この秩序を党内から動揺させた薄熙来は邪魔となったのだろう。

 薄が王立軍とともに、重慶にはびこったマフィア、腐敗幹部を一網打尽として、トップの7名を死刑にした功績は、庶民から喝采され、共産党幹部からは畏怖された。
 07年に薄熙来が重慶市書記に赴任したとき、遼寧省で活躍した公安畑の王立軍をともなった。王は公安局長兼副市長として豪腕を振るった。薄はこれらの実績をバックに今週の第十八回党大会でトップ政治局常務委員会入りする野心に溢れていた。
 
 舞台は暗転する。
 その右腕の王立軍が同市公安局長のポストを解かれたのが2月2日、そして7日に「長期休暇」に入ったと重慶市スポークスマンがアナウンスし、理由を「長年の過労による極度の緊張で体調を崩したため治療に専念する」としたが、中国のネット世論は一斉に「失脚」と解析した。

 また「微博」サイトには王立軍の米国亡命失敗という噂が広まった。
 げんに7日の四川省成都、米国領事館付近は異様な緊張に包まれ、夥しいパトカーが領事館付近に配置され、ものものしい警官隊が領事館を囲んだため、王立軍は領事館で亡命を申請したが断られたのでは?とする噂となった。
 
 NYタイムズは北京発として、「王立軍は米国亡命を試みた」(9日付け電子版)と報じたが、同時に「誰も王立軍がどうなろうと興味は薄い、これで薄熙来がどうなるか、という次の展開に多くが関心を持っている」と冷徹に解析したのだ。

 北京の米大使館はメディアの取材に沈黙。ただし「米国領事館が中国当局に警備の増強を要求したことはない」とした。

 博訊新聞網(8日)は、「王が米国領事館へ逃亡しようとしため黄奇帆(重慶)市長は、緊急に70台のパトカーを米国領事館周辺に派遣させた」と報じた。
 薄熙来自身、この件でひとことのコメントも出していない。

 ▼権力中枢のどろどろした抗争はつねに藪の中だ
 多維新聞網(2月8日)は「おりからチベット僧侶の焼身自殺が連続して四川省は騒然としており、警戒を強めている一環だろう」と分析した。

 しかし同紙は「腐敗分子追放以後、敵のいなくなった重慶で、やりたい放題の汚職、腐敗をやったのは薄熙来であり、海外への資産移動や放蕩息子のハーバード留学など、かずかずの汚点が指摘されている。その右腕だった王立軍自身も腐敗の共犯だった噂が絶えず、喬石ら元老は『その後、重慶の治安が悪化しており、王立軍の退陣を要求』していた」という報道もしている。

 新幹線を五年間で8300キロも作り上げた劉志軍(前鉄道部長)にしても、副官とともに二兆円もの賄賂、収賄の関与があって昨年二月に失脚したが、劉は江沢民派であり、団派の巻き返しと言われた。

であるとすれば、今回の薄熙来を揺るがす大事件は、かれを政敵と位置づけた守旧派と太子党の多数派の共同作戦により、薄熙来の次期政治局常務委員会入りを阻止する決定打となる。

 ▼習近平訪米直前のタイミングで仕組まれた
ウォールストリート・ジャーナルは「習近平の訪米直前に、政治スタイルのまったく異なる太子党の薄熙来がポピュリズム重視の新しい政治スタイルで重慶市民の圧倒的支持をえていることに何らかの関係がある」と分析した(同紙、2月9日)。

 同じ日に明るみに出た報道は江沢民の父親の日本特務機関協力の過去をあばいた歴史学者の呂加平が、昨秋に「国家政権転覆扇動罪」で懲役十年の判決が秘密裁判で出され服役しているという事実だった。

 習近平が次期総書記兼国家主席に確実視されるのも江沢民派が推挙し、上海派と太子党が連合した人事抗争の結果である。
 そして習は訪米の最終準備にはいった。

 なお今回の中国の「ミニ政変」を欧米各紙は大きく伝えているが、日本の諸紙は黙殺か、ゴミ記事、例外は産経新聞だけのようである。

【IZA2/9-.“失脚”報道の重慶副市長と接触認める 米国務省】
 【ワシントン=犬塚陽介】米国務省のヌランド報道官は8日の記者会見で、中国・重慶市の王立軍副市長が米総領事館に保護を求めたとの報道について、面会の事実を認める一方、王氏は「自分の意思で総領事館を出た」と述べ、米国側に追い返されたなどとする報道内容を否定した。

 ヌランド報道官によると、王氏は(7日に)四川省成都の米総領事館を「副市長」として訪れた。面会は王氏の求めに応じて設定されたという。

 保護を求めた可能性については「答えられない」と言及を避け、総領事館を出た後の王氏の足取りも把握していないという。

 王氏は昨年まで、同市公安局長として黒社会(暴力団)一掃キャンペーンを主導し、メディアで英雄扱いを受けていた。

 しかし、今月2日に兼任していた公安局長を突然はずされ、失脚説が浮上。英BBC(電子版)などは、王氏が米総領事館に保護を求めたが拒否され、中国当局に拘束されたとの情報があると伝えている。
http://datefile.iza.ne.jp/blog/entry/2593486/





●薄熙来失脚? 両極端に振れる中国内政のパターン JBpress
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/34620



●黒社会化する地方政府 薄熙来失脚後の中国の行方 WEDGE infinity
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/1766



●「黒」を制し「赤」を煽る中国・重慶市 WEDGE infinity
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/1440



●薄熙来解任 文革の再来恐れた中国共産党 WEDGE infinity
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/1763




【私のコメント】

王立軍が失脚し米国総領事館への亡命を計ったが失敗した。その後上司の薄書記が失脚し、薄書記の一族が次々と拘束されている。そして、昨年11月にイギリス人ビジネスマンのネイル・ヘイウッドの毒殺事件があり、それから4ヶ月も経過した3月26日になってから英国政府が中国に調査を要請した。この政変と暗殺劇は何を意味するのだろうか?

重要なのはネイル・ヘイウッドが戦略コンサルタントで英国の情報部であるMI6の依頼も受けたことがあり、中国に深い人脈を有していたことである。更に、薄書記が統治していた重慶市では汚職追放運動・暴力団狩り運動が人気を集め、文化大革命を彷彿とさせる毛沢東時代の革命歌「紅歌」を熱唱するキャンペーンが行われていた。

イギリスとそれを支配する国際金融資本は、敵国が台頭するたびに共産主義的な革命運動を敵国で扇動して敵を倒してきたと私は想像している。例えば、18世紀後半に欧州大陸の大国であるブルボン家のフランス王国とハプスブルグ家のオーストリア王国(神聖ローマ帝国の皇帝も兼任)がマリーアントワネットとルイ16世の婚姻により親密化すると、なぜかフランス革命が起きて両名はギロチンで殺された。この革命で最も利益を受けたのは明らかに英国である。19世紀後半にロシアやドイツなどの東欧諸国が台頭すると、なぜか第一次世界大戦が起こり、ユダヤ人がロシア革命やドイツ海軍の反乱を実行して両国は王政が倒れ、ロシアはハザール系ユダヤ人に乗っ取られた。革命思想の扇動による敵国の体制打倒は英国・国際金融資本のお家芸なのだ。1989年の東欧革命や天安門事件も、反国際金融資本勢力に支配された旧ソ連圏や中国を乗っ取るための国際金融資本の陰謀だろう。

ネイル・ヘイウッドも恐らく英国政府=国際金融資本のスパイであり、重慶市で薄書記や王立軍をそそのかして文化大革命を再来させて中国を混乱させその隙に乗っ取ることが目的であったのだと私は想像する。そして、その動きを見抜いた中国政府がネイル・ヘイウッドを暗殺したのだろう。英国領事館は重慶市にあるがなぜか王立軍はそこには向かわず、重慶に最も近いが何百キロか離れた四川省成都市の米国領事館への亡命を図った。これは王立軍と英国政府の関係が悪化したことを示しているのか、あるいはあるいは英国政府との親密な関係を隠蔽するためか、いずれかであろう。






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10 コメント

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Unknown (Unknown)
2012-03-30 21:05:00
国際金融資本の別動隊ことコミンテルンのことか。
個人的にはミヤケン掌握前の日本共産党やその残党である新左翼各派も国際金融資本の影響下にあったと思います。
返信する
Unknown (Unknown)
2012-03-30 21:24:01
英HSBC:日本の個人富裕層事業から撤退-店舗閉鎖を顧客に通知
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LZSRVI1A1I4H01.html

この「撤退」のタイミングは、英国が大陸内で画策している権力闘争とは無関係である、などとは考え難いのでは?
なにしろ名前も「香港上海銀行」ですし。
返信する
Unknown (こんなのもある)
2012-03-30 22:10:35
>薄書記が失脚し、薄書記の一族が次々と拘束されている

リチャードコシミズによると江沢民・習近平派の追い出しを胡錦濤派が行っている様です。ロシア同様に中国でもユダヤ排除が始まりました。

http://richardkoshimizu.at.webry.info/201203/article_136.html
返信する
マルキシズム (読書貧乏)
2012-03-31 11:34:58
資本主義の発祥(発症?)はイギリスですし
社会主義の祖マルクスの亡命の地ですし。
国際金融資本の方々がマルクスに
資本論を書かせたのかも。

イギリスは思想や情報を武器にしてきたのかも
わかりませんね。
返信する
Unknown (Unknown)
2012-03-31 13:02:37
 左派革命を煽る薄一族の多くが国際金融資本の
本拠地である英国、米国に留学していることからも何らかのつながりがあるのは確かだと思います。資本主義の本拠地が左派革命を煽るというのは実に矛盾していますねw
返信する
Unknown (Unknown)
2012-03-31 23:24:13
沖縄の反基地活動家も国際金融資本の匂いが。
北朝鮮のミサイルはわざとPAC3を沖縄に配備させて統一後予想される対中脅威への抑制が目的だから。
返信する
Unknown (Unknown)
2012-04-01 13:33:32
平昌冬季五輪決定は、それまでは南北統一ないってことだよ。
いくら朝鮮が憎くても…今後の世界のシナリオは日本人が決める訳では
ないので…
返信する
Unknown (Unknown)
2012-04-01 14:19:53
平昌での冬季五輪はないのでは?
返信する
Unknown (Unknown)
2012-04-01 14:32:11
平昌は統一後のメモリアル大会になるな。

統一、いいテーマだ。
返信する
Unknown (Unknown)
2012-04-01 21:11:01
>北朝鮮のミサイルはわざとPAC3を沖縄に配備させて統一後予想される対中脅威への抑制が目的

統一後というより今も尚、追い込まれている中国の逆切れが予想されますな。
中国政府はいつ暴発しても可笑しくない状態ですよ。
返信する

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