国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

水を支配する企業が世界経済の死命を握る??エネルギー・水資源産業を巡る欧州金融資本家の暗躍

2006年10月25日 | 欧州
●今日のぼやき 会員および会員予定者用ページ 「797」 冒頭加筆。北朝鮮の核実験を受けて、急いで今後の予測を書きました。副島隆彦。  世界大企業家シリーズ(1) “ヨーロッパのウォーレン・バフェット” の異名を取る、ベルギー人金融家・アルベール・フレールとは何者か?2006.10.09

アルルの男・ヒロシです。今日は、2006年10月9日です。

自宅で購読している、新聞「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」(IHT)の9月30日付記事に、欧州の金融資本家、アルベール・フレール男爵 Baron Albert Frère という人物をフィーチャーしている記事を見つけました。フレール氏の名前は、同じくベルギー人の産業資本家である、エティエンヌ・ダヴィニオン子爵(ビルダーバーグ会議現議長)と同様に日本ではほとんど知られていない。しかし、この二人は、欧州を代表する巨大エネルギー・水資源産業(ユーティリティー産業)であるスエズ社 SUEZ に大きな資本的基盤を持っている。ウォーター・ビジネス(水道ビジネス、汚水処理、廃棄物処理)は、現在発展しつつある超大国中国の未来の成功の鍵を握る重要なビジネスである。たとえていうならば、19世紀は石炭・蒸気機関の時代、20世紀は石油の世紀であり、今21世紀は、「水の世紀」である。水を支配する企業が世界経済の死命を握る。水関連の企業には十分注意を払う必要がある。
http://snsi-j.jp/boyakif/wd200610.html#0901




●ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報 : スエズ・GDF買収問題が、ファッション業界のライバル戦争に波及か? 2006年10月12日

 私が個人的に注目してきた、フランス・ベルギーのエネルギー・環境大手のスエズ社によるフランス・ガス公社の民営化・買収問題ですが、おもしろい展開になってきたようです。そもそもスエズの前身である、ベルギーの総合商社、ソシエテ・ジェネラル・ド・ベルジク買収をフランス勢と争って破れたのもイタリア勢のでした。今回のフランス・ベルギーのコングロマリット誕生に異論を唱え、EUに仲裁を求めているのもイタリアの電力大手Enel社です。エネルはスエズ傘下のベルギーの電力会社エレクトラベルに特に関心を寄せているが、同会長は「エレクトラベルを切り売りするつもりもない」という展開になっているわけです。

 ここで今日のFTによると、なんとこのエネル側にたって、フランス・ファッション業界大手のフランソワ・ピノー François Pinault が参戦すると表明したと出ています。ここでおもしろいのは買収を仕掛けられる側になっている、スエズ側の大株主がアルベール・フレールという「欧州のウォーレン・バフェット」といわれる有名投資家なのですが、この80歳のフレール氏ですが、ピノー氏と犬猿の仲と言われる、ベルナルト・アルノーと親交があるのですな。最近のIHT紙にも匿名の情報として、フレール氏とアルノー氏がジョイントベンチャーを始めるという話が出ていました。ここでピノー氏が参戦したしたのは、この情報と関係があるでしょう。この二人はアルノー氏はファッション業界最大手LVMH(ヘネシーやルイ・ヴィトンを抱える会社)のトップであり、対するピノー氏は、PPRという、イタリアブランド・グッチやフランスのイヴ・サンローランなどを支配するファッション業界の帝王。まさに虚栄心同士のぶつかり合い!

 最近もこの二人は、フランス国内に現代アートの美術館を作るという同じようなプランを打ち上げて、シラク大統領と関係の深いアルノー氏には役所の側の許可が得られたのに、ライバルのピノー氏にはフランス国内での美術館建設の許可が下りなかったという因縁があります。結局、ピノー氏はイタリアのフィアット社が所有するPalazzo Grassiとい宮殿に自分のコレクションを移してしまったそうです。しかも、この二人は、イタリアブランドのグッチの買収でも、オークション会社の買収でも常に互いを意識しあっているライバル同士。しかも、スエズの大株主のフレール氏がアルノー氏との提携について新聞紙上で報じられた。ピノー氏の虚栄心はさぞ刺激されたことでしょう。それで今回、ピノー氏は、もしエネル社がスエズ社に対する対抗する買収提案を正式に出した場合、自分はスエズ社の環境ビジネス部門を買収してやると言い始めたわけです。これは事実上のスエズ社の再解体を意味します。

 ところが、肝心のベルギー政府とEUは、どうやらスエズ社のフランス・ガス公社の買収については、ベルギー国内の電力市場がスエズ(エレクトラベル社)の独占にならないように注意することという条件付きで、買収にゴーサインを出すことを決めたようです。今年のビルダーバーグ会議でダヴィニオン子爵(スエズの取締役)と膝詰めで話し合ったEUの競争政策担当のコミッショナーNeelie Kroes女史が言明したとFT紙に報じられました。(10月7日付け記事)
 あとはフランス議会がガス公社の民営化を容認するかどうかというだけに問題が集約されてきました。インフラ組織を民営化会社にゆだねるのか、どうなののか。その決定が、欧州最大のエネルギー・環境大手の誕生の運命を左右すると言うことになります。
http://amesei.exblog.jp/3991843/





●ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報 : 世界の水を支配するもの 2006年07月13日

 20世紀は「石油の世紀」で、ロックフェラー1世は「石油王」(Oil baron)などと言われましたが、21世紀は「水の世紀」だと。このシンクタンク(TCPI)は主張します。このシンクタンクは、どうしてここまで大企業の批判ができるのかという位に、日本では出版できそうにない本を多数でしていますが、私が注目したのは、The Water Baronというレポートです。ネット上で全文が読めるようになっています。この本は「水ビジネス」研究本ですが極めて具体的な本であると見受けました。
 水ビジネスというのは石油業界と一緒のやり方で分析できますし、ヨーロッパ系の企業の独占傾向が強い。ベクテルなどの目ざとい企業は手がけていると言うことですね。
 なんだか非常に分かりやすい話だったんですね。日本は水道が国営で良かった、良かったという話です。しかし、「財界展望」によると、外資は水ビジネスを日本でもやろうとしているので、うかうかはしていられないようですが。
http://amesei.exblog.jp/3380322/




●国営フランス・ガス 民営化と合併計画 修正案14万、審議難航か FujiSankei Business i. 2006/9/8

【パリ=山口昌子】フランスの国民議会(下院)は7日、国営フランス・ガスの民営化とそれに伴うエネルギー大手・スエズとの合併計画を審議する特別会期を開始した。だが民営化に反対する野党・社会党ら左派は約14万の修正案を提出しており、審議は難航しそうだ。修正案の数としては第五共和制開始以来、最多だ。

 両社の合併、民営化問題は2月にイタリアの大手エネルギー、エネルがスエズ株の公開買い付け計画を表明したのが発端だ。これに対し、外国資本によるスエズ買収を嫌ったドビルパン首相が、「エネルギーの第一線の世界的グループの1つを目指す」と述べ、フランス・ガスとスエズの合併を発表。同時にフランス・ガスの民営化計画を明らかにした。

 しかし、合併や民営化による人員整理などを恐れた両社の労組をはじめ野党・社会党らが反対。加えて与党・国民運動団体(UMP)の一部議員も反対している。

 その結果、政府はフランス・ガスの民営化を目指す法案の審議を当初の7月から9月に延期した。しかし、社会党ら野党は約14万の修正案を提出し、法案審議の長期化による事実上の廃案を狙っており、主要労組は12日に大規模デモなどを予定。社会党も10日にデモを予定している。

 一方、首相は、今春の野党や肝心の若年層から猛反対を受けた若年対象の雇用政策CPE法案が議員投票を経ずに首相特権で採決した結果、猛烈な反発を受け、廃案になったことが後遺症になり、今回は首相特権の行使はないとみられる。

 しかし、欧州連合(EU)欧州委員会は来年7月1日からガスと電気の欧州市場での自由競争開始を予定しているため、フランスとしてはエネルギー分野での足腰を強くする必要にも迫られている。ドブレ下院議長(UMP)は首相が特権を行使しない場合は、議長特権によって採決する可能性を示唆している。
http://www.business-i.jp/news/world-page/news/200609080016a.nwc




●エンロン社が暗示する、ブッシュ政権と軍産複合体の末路
◆姫のお楽しみ袋:『エンロン-米国最大の経営破綻』の全貌
  一番印象に残っているのは、資産や売り上げを公表する書類の改ざんと、「カリフォルニア大停電」の話しです。<中略>
  そして、カリフォルニアの大停電に関しては、電気の値段を吊り上げてもっと利潤を増やすために、電気の供給を止めてしまうという、考えられないことをしてしまうのですが、これをしてしまった従業員達が電話で話しているところを聴くと、電気が止まったために困っているお年寄りをネタにして笑ったりしており、全く罪の意識を感じていないのがわかる。

値段を吊り上げるために、「大規模なメンテナンス」を装って配電を停止したり、積極的に「電力輸出」を行っていた不正である。この辺の背景は、YouTube:「Enron & The California "Rolling Blackouts" Conspiracy」 (10分49秒)でも取り上げられている。

このようなエネルギー独占企業の不正体質は、アメリカの軍産複合体の体質や、強権的政治体制にそのまま直結するものに違いない。
http://www.mypress.jp/v2_writers/hirosan/story/?story_id=1511158



【私のコメント】
 『20世紀は「石油の世紀」で、21世紀は「水の世紀」だ』、「水を支配する企業が世界経済の死命を握る」という主張に納得行かないものを感じるのは私だけだろうか?石油は産出地域が偏在しており、その輸送にはユダヤ金融資本が米英の海軍力を通じて支配する海洋を利用せねばならなかった。しかし、水資源は降水量の差はあるものの全世界に広く分布しており、基本的に地域内の供給で賄われている。中国の華北平原などに水不足で悩む地域が存在するのは事実だが、それは単なる局地的問題に過ぎない。更に、石油は重要なエネルギー資源であったが、21世紀は原子力や核融合、天然ガスなどにエネルギー源が移行すると考えられており、水は石油ほどの戦略的重要性は持たないことは明らかである。常温核融合(核変換)も日本やロシアで研究が進んでおり欧米による技術独占は不可能だし、そもそも欧州金融資本家達はそれらの先端技術とは無縁の水道やガスに関心を示している。

 ユダヤ系から非ユダヤ系まで含めた欧州の資本家達は水道・電気・ガスなどの公共サービス企業の民営化や買収にやっきとなっている。これらのビジネスは一般消費者が生存のために購入せざるを得ないものである。更に独占的供給が行われていることから、値上げによる膨大な収益も期待できる。米国のエンロン社の膨大な収益、あるいは電気値上げのための人為的なカリフォルニア大停電は、公共サービス企業が大きな収益を上げる為のテクニックであろう。利潤を追求する資本家達は、欧州版のエンロンや大停電を作り出すことを狙っているのではないだろうか?

 日本における国鉄分割民営化や郵政民営化を含め、1980年代以降の世界では国有企業の民営化が大々的に推進された。それは資本主義国よりも共産圏諸国でより顕著であり、国有地を外国企業に売却して膨大な利益を挙げた中国臨海地域の腐敗官僚、あるいはロシアの国有企業を安く買い叩いて大儲けしたかつての新興財閥企業などが典型的である。このような動きは、従来のユダヤ的国際金融資本(非ユダヤ人だがタルムード的思想を持つ経営者によるものを含む)の収益性が低下してきたこと、新たな収益の核となりうるビジネスを開発できなかったことに由来すると考えられる。ユダヤ金融資本型の資本主義の行き詰まりと言い換えてもよいだろう。

 米国の工場を閉鎖して人件費の安い中国に移す、あるいは米国のホワイトカラーの仕事を電子的に人件費の安いインドに持ち込んで稼ぐといった「グローバリズム」として喧伝されている現象も、先進国内のビジネスで儲からなくなったから途上国との人件費の格差で儲けているに過ぎない。これは先進国の国民所得水準を低下させて先進国の経済を衰退させるダメージが大きいし、将来先進国と途上国の人件費の格差が縮小すればビジネスそのものが消滅することになる。

 現在進行中の欧州の水道・電気・ガスなどの公共サービス企業の民営化や買収がどうなるかは分からないが、少なくともそれはユダヤ金融資本型資本主義の行き詰まりとユダヤ的国際金融資本の世界覇権の消滅という現象を変化させるものではないだろう。
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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2006-10-28 02:38:07
私はユダヤ系金融機関は産業振興を図っていたから、支持され大きく勢力を伸ばしてきたと思います。しかし、最近彼らのやることはおかしいですね。郵政とかといい目先の金を動かすだけです。やっぱ産業が充分に発展してきて、ネタ切れになったのでしょうか?
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Unknownさんへ (princeofwales1941)
2006-10-28 15:44:44
>私はユダヤ系金融機関は産業振興を図っていたから、支持され大きく勢力を伸ばしてきたと思います。しかし、最近彼らのやることはおかしいですね。郵政とかといい目先の金を動かすだけです。やっぱ産業が充分に発展してきて、ネタ切れになったのでしょうか?





ユダヤ系を含む国際金融資本は、自らの覇権を維持できる範囲でのみ産業振興を図ってきたと思います。逆に言うと、彼らの覇権を崩しかねない核転換などの技術革新は抑制されてきたのだと思います。そして、彼らの覇権の基礎であった石油ドル体制がピークオイルによって揺らぎ、それにとってかわる新たな覇権システムを彼らは作り出せなかったということでしょう。ロシアの天然ガス資源と天然ガスパイプライン網を乗っ取ることに失敗した時点で、彼らの敗北が確定したのです。
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