●サハリン2、シェルが露社に経営主導権…ロイター報道 (2006年12月11日23時18分 読売新聞)
【モスクワ=緒方賢一】ロイター通信は11日、ロシア・サハリン沖の資源開発事業「サハリン2」を主導する国際石油資本(メジャー)ロイヤル・ダッチ・シェルが、ロシアの天然ガス独占企業体「ガスプロム」に同事業の経営主導権を譲渡することで合意したと伝えた。サハリン2には日本の三井物産と三菱商事も出資しているが、主導権をロシア側が握れば事業計画や権益の配分などで大きな影響が出る可能性がある。同通信によると、事業主体「サハリン・エナジー」の株式の55%を持つシェルは、保有する株の一部をガスプロムに譲り保有比率を最低で25%まで下げるという。サハリン・エナジーの株は現在、三井物産が25%、三菱商事が20%を保有している。両社がそれぞれ10%をガスプロムに譲渡することで、ガスプロムが50%を握るとの情報もある。
シェルとガスプロムの最高経営陣は8日、モスクワでサハリン2について協議したが、双方は協議内容や株の譲渡に関する合意の有無については明らかにしていない。サハリン2は1994年、生産物分与協定に基づき、メジャーと日本商社という外国資本だけで事業が始まった。これに対し、天然資源の国家管理を強めるプーチン政権は、ロシア資本を排除する形で進む同事業に不満を強め、ガスプロムの事業参加を求めてきた。昨年には、ガスプロムがサハリン・エナジーに25%出資することで基本合意したが、その直後、サハリン・エナジーが2010年までの投資額を当初見積もりの2倍近い220億ドルに増額したため、その負担をめぐって有利な条件を引き出そうとするロシア側との協議が難航していた。ロシア天然資源省は今年9月、事業に伴い環境が破壊されたとして、事業の一部について許可を取り消すなどロシア側の圧力が強まっている。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20061211i114.htm
●シェルとの交渉近く決着 サハリン2でガスプロム 神戸新聞 2006/12/13 00:13
【モスクワ12日共同】ロシア政府系独占企業ガスプロムのメドベージェフ会長(ロシア第一副首相)は12日、極東サハリン州沖の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」に同社が参画するための交渉が間もなく決着すると述べた。会長は期限を明確にしなかったが、年内の決着を目指しているとみられる。
会長はサハリン2の事業主体「サハリンエナジー」へのガスプロムの出資比率については「50%よりも低い可能性があるが、それは重要ではない」と述べ、過半数にこだわらないと強調。経営主導権が国際石油資本(メジャー)のロイヤル・ダッチ・シェルからガスプロムに移るかどうかは不明だが、日本の商社も出資、外資主導で進んできた事業は、ロシア側の参画が決定的になった。
http://www.kobe-np.co.jp/kyodonews/news/0000190720.shtml
●サハリン2、ロシアのガスプロムが50%超の株式を要求 日経(2006年12月12日07:00)
【モスクワ=坂井光】ロシア国営の天然ガス独占企業ガスプロムが、サハリン沖の資源開発事業「サハリン2」について、最大株主である英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルに事業の主導権を譲るよう求めてきたことが11日明らかになった。株式の過半数取得を目指しているとみられ、三井物産、三菱商事にも保有株式を10%以上譲渡するよう求めているもようだ。
関係者によると、シェルのファンデルフェール社長が8日にモスクワでガスプロムのミレル社長と会談して提案を受けた。タス通信によると会談にはフリステンコ産業エネルギー相も同席した。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20061212AT1D110CH11122006.html
●日本などで提訴の可能性 サハリン2でロシア監督局 北海道新聞 2006/12/12 22:26
【モスクワ12日共同】インタファクス通信によると、ロシア天然資源監督局のミトボリ副局長は12日、環境破壊が指摘されている極東サハリン州沖の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」をめぐり、来年3月までに日本や英国を含む複数の国の裁判所に提訴するとの方針を示した。
副局長は訴訟相手や提訴の内容については明らかにしなかったが、サハリン2の事業主体の最大株主、国際石油資本(メジャー)ロイヤル・ダッチ・シェルによる環境破壊は「暫定値で100億ドル(約1兆1700億円)相当に上る」と指摘、シェルを訴訟相手にする可能性を示唆した。
副局長は、日本などのほか国際的商取引の係争を扱うストックホルム商業会議所仲裁裁判所やロシア、ベルギー、米国、イタリアを提訴の場所として挙げた。
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20061212&j=0026&k=200612122368
●サハリン2でロシア当局、下請け会社の水利用停止 日経(2006年12月7日21:58)
【モスクワ=古川英治】ロシア天然資源省は7日、三井物産と三菱商事が出資するサハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の下請け建設会社に対し、水を利用する権利を停止したと発表した。法律違反があったとして2カ月以内に改善がなければ免許を剥奪(はくだつ)すると通告した。同社はパイプライン敷設を請け負っており、工事がさらに遅れる懸念が出てきた。
水利用の停止措置を受けたのはイタリアとロシアの合弁企業。サハリン2の事業主体であるサハリンエナジーと下請け契約を結び、パイプライン工事にあたっている。天然資源省は法律違反の具体的な内容を説明していない。
ロシア政府はサハリンエナジーに対し、環境問題や開発費用の拡大などを理由に様々な圧力を加えている。背景にはロシア独占天然ガス会社ガスプロムを事業に参加させて国家による支配を拡大する狙いがあり、今回の措置も新たな圧力とみられる。
サハリンエナジーには三井、三菱と英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが出資している。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20061207AT1D070AP07122006.html
●サハリン2、決着は来年初めに・三菱商事社長 日経(2006年10月31日20:34)
三菱商事の小島順彦社長は31日、ロシア・サハリン沖の天然ガス開発事業「サハリン2」を巡るロシア当局との交渉は、決着が2007年初頭にずれ込むとの見通しを示した。一方で「工事の進ちょくは9月末で81%強」と説明、08年9月に予定しているLNG(液化天然ガス)の出荷開始は遅れないと強調した。
2006年9月中間決算の記者会見で述べた。三菱商事や三井物産、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが参加するサハリン2には、ロシア政府が環境破壊や事業費増大などを理由に圧力を強めている。
小島社長は環境問題について「指摘を受けた個所について真摯(しんし)に対応している」と説明。水野一郎副社長兼最高財務責任者(CFO)はロシアが事業費増大について年明けにも判断を下すとの見方を明らかにして、「どこまで認められるかで採算は変わるが、赤字事業にはならない」と述べた。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20061031AT1D3106K31102006.html
●日・蘭の経産相、サハリン2問題で対ロシア連携強化 日経(2006年10月24日22:09)
甘利明経済産業相と来日中のオランダのウェイン経済相は24日会談し、ロシア・サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」でロシアが環境問題を理由に工事差し止めを示唆している問題で、日蘭両国が連携を強化することで合意した。同事業には英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルも出資している。両相はロシアに対して「契約の信頼性は国家の信頼性につながる」ことを示し、近代国家としての対応を求めることでも意見が一致した。会談でウェイン経済相はロイヤル・ダッチ・シェルに対し、同事業に共同出資する三井物産と三菱商事に情報を逐一提供するよう指示したことを明らかにした。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20061024AT3S2401024102006.html
【私のコメント】
サハリン2問題では一見、ロシア対日英蘭の対決が行われているように見える。日蘭の経産相がサハリン2問題で対ロシア連携強化を謳っていることもその証拠の様に見える。しかし、現実はかなり異なると見て良いだろう。
そもそも、日本の目と鼻の先の樺太の油田・ガス田の権益を英蘭資本が握る事自体に何の正当性もない。これは、中近東やアフリカの天然資源の利権を欧米資本が植民地時代同様に握り続けているのと同じ現象である。そして、英蘭両国は米国への影響力を失いつつあり、ロシアが油田・ガス田の利権を強制的に取得するとしてもそれに対抗できる力は持っていないでのある。
ロシアにとって、東アジアで唯一の高度先進国である日本はガス・石油を売り込むべき最大の市場である。ロシアは安定した需要を求め、日本は安定した供給を求めている。この日露両国の関係から搾取するロイヤル・ダッチ・シェルは日露両国にとって敵以外の何者でもない。つまり、現在の対立関係は日露vs英蘭という構図になっていると思われる。ロイヤル・ダッチ・シェルはロシアに対する交渉力確保のため日本に協力を求める以外の手段を持たない。それ故に対ロシア連携強化という声明を出すように日本に頼んだのだと思われる。それと引き替えに日本はロイヤル・ダッチ・シェルに対し事業関連の詳細な情報の提供を要求し、その情報の一部は日本からロシアに提供されることになると思われる。
更に、英蘭両国の国益も同一ではない。オランダはライン川の河口という重要な場所に位置しており、独仏連合が欧州の覇権を握るならばライン川の水運を通じて自動的に経済的繁栄を享受出来る立場にある。オランダは敗色濃厚な英国につくよりも、勝者である独仏露連合につく方が有利であろう。このような状況を利用すれば、オランダは英国と独仏露連合を天秤に掛けてより有利な条件を引きだすこともできると思われる。もう一つ注目すべき事は、オランダの王室は国際金融資本を通じて英国と非常に密接な関係があり、オランダの国益とは必ずしも合致しないことである。
まとめると、サハリン2問題は一見ロシアvs日英蘭の対決の様に見えるが、実際には日露vs英の対決であり、オランダは英国を見捨てて勝者である日露連合に味方している可能性もあると思われる。サハリン2問題で対ロシア連携強化を謳っているのが日英両国ではなく日蘭両国であることが重要なポイントである。恐らく、日本とオランダはサハリン2問題でロシアが株式の過半数を獲得することに賛成しており、英国は孤立した状態に追い込まれているのではないか。三菱商事社長の「ロシア当局との交渉は、決着が2007年初頭にずれ込むとの見通し」との発言は、2007年度の天然ガス購入価格交渉を巡る東欧諸国との対立によりロシアが今年正月と同様にガスの供給をカットし、その後東欧諸国がロシアに全面譲歩して欧州から英国の味方が消滅するというシナリオを想像させる。東欧諸国はドイツやロシアと綿密に打ち合わせてこのシナリオを演じ、表向きは反ロシア的姿勢で英国の味方の振りをして英国をロシアとの対決に直面させた後に梯子を外して英国を孤立させ敗北させる積もりかもしれない。ロシア革命・第一次世界大戦・第二次世界大戦・冷戦で大きな打撃を受けた東欧諸国は、それらを主導した英国と国際金融資本を心の中で深く恨んでいると思われるからだ。
英国の敗北という観点からは、50年前の1956年のスエズ戦争での英仏イスラエル連合の敗北が思い起こされる。しかし、当時の英国は米国をコントロールしていた。スエズ戦争での英国の敗北は英国の世界覇権の継続という実態を隠すための偽装工作であったのではないかと私は疑っている。スエズ戦争に干渉したダレス国務長官が同時に色丹歯舞の日本への返還による日露平和条約に反対して、沖縄を返還しないぞと日本を恫喝したのがその根拠である。田中宇の言うように、レーガン・ブッシュ父政権とゴルバチョフによる冷戦終結・ソ連崩壊は英国に大打撃を与えた。そして、ブッシュ息子政権による米国の世界覇権崩壊が近づいており、英国は米国を通じた世界に対する影響力行使が不可能になり真に敗北しつつあると言えるだろう。
【追記】
●ロシア、「サハリン2」めぐる賠償請求を3倍に増額も 2006年12月13日(水)07:26 (ロイター)
[モスクワ 12日 ロイター] ロシア環境監視当局は12日、英蘭国際石油資本(メジャー)、ロイヤル・ダッチ・シェル<RDSa.L>が主導する大規模資源開発プロジェクト「サハリン2」をめぐる賠償請求額について、西側の弁護士の見解を基に当初の3倍の300億ドルに増額する可能性があることを明らかにした。同当局の幹部は記者団に、3月をメドに法的措置をとる態勢が整う、との見込みを示した。三井物産<8031.T>や三菱商事<8058.T>も出資している「サハリン2」をめぐっては、11日に業界筋がロイターに対し、シェルがロシアのガス独占企業ガスプロム<GAZP.MM>に権益を譲渡することで原則合意した、と述べている。
http://news.goo.ne.jp/article/reuters/world/JAPAN-239439.html
もはやロイヤル・ダッチ・シェルと英国はサンドバック状態のようだ。最終的には損害賠償訴訟でシェルを破産させた後にガスプロムが買収、油田採掘技術者ごと手に入れるというシナリオかもしれない。
【モスクワ=緒方賢一】ロイター通信は11日、ロシア・サハリン沖の資源開発事業「サハリン2」を主導する国際石油資本(メジャー)ロイヤル・ダッチ・シェルが、ロシアの天然ガス独占企業体「ガスプロム」に同事業の経営主導権を譲渡することで合意したと伝えた。サハリン2には日本の三井物産と三菱商事も出資しているが、主導権をロシア側が握れば事業計画や権益の配分などで大きな影響が出る可能性がある。同通信によると、事業主体「サハリン・エナジー」の株式の55%を持つシェルは、保有する株の一部をガスプロムに譲り保有比率を最低で25%まで下げるという。サハリン・エナジーの株は現在、三井物産が25%、三菱商事が20%を保有している。両社がそれぞれ10%をガスプロムに譲渡することで、ガスプロムが50%を握るとの情報もある。
シェルとガスプロムの最高経営陣は8日、モスクワでサハリン2について協議したが、双方は協議内容や株の譲渡に関する合意の有無については明らかにしていない。サハリン2は1994年、生産物分与協定に基づき、メジャーと日本商社という外国資本だけで事業が始まった。これに対し、天然資源の国家管理を強めるプーチン政権は、ロシア資本を排除する形で進む同事業に不満を強め、ガスプロムの事業参加を求めてきた。昨年には、ガスプロムがサハリン・エナジーに25%出資することで基本合意したが、その直後、サハリン・エナジーが2010年までの投資額を当初見積もりの2倍近い220億ドルに増額したため、その負担をめぐって有利な条件を引き出そうとするロシア側との協議が難航していた。ロシア天然資源省は今年9月、事業に伴い環境が破壊されたとして、事業の一部について許可を取り消すなどロシア側の圧力が強まっている。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20061211i114.htm
●シェルとの交渉近く決着 サハリン2でガスプロム 神戸新聞 2006/12/13 00:13
【モスクワ12日共同】ロシア政府系独占企業ガスプロムのメドベージェフ会長(ロシア第一副首相)は12日、極東サハリン州沖の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」に同社が参画するための交渉が間もなく決着すると述べた。会長は期限を明確にしなかったが、年内の決着を目指しているとみられる。
会長はサハリン2の事業主体「サハリンエナジー」へのガスプロムの出資比率については「50%よりも低い可能性があるが、それは重要ではない」と述べ、過半数にこだわらないと強調。経営主導権が国際石油資本(メジャー)のロイヤル・ダッチ・シェルからガスプロムに移るかどうかは不明だが、日本の商社も出資、外資主導で進んできた事業は、ロシア側の参画が決定的になった。
http://www.kobe-np.co.jp/kyodonews/news/0000190720.shtml
●サハリン2、ロシアのガスプロムが50%超の株式を要求 日経(2006年12月12日07:00)
【モスクワ=坂井光】ロシア国営の天然ガス独占企業ガスプロムが、サハリン沖の資源開発事業「サハリン2」について、最大株主である英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルに事業の主導権を譲るよう求めてきたことが11日明らかになった。株式の過半数取得を目指しているとみられ、三井物産、三菱商事にも保有株式を10%以上譲渡するよう求めているもようだ。
関係者によると、シェルのファンデルフェール社長が8日にモスクワでガスプロムのミレル社長と会談して提案を受けた。タス通信によると会談にはフリステンコ産業エネルギー相も同席した。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20061212AT1D110CH11122006.html
●日本などで提訴の可能性 サハリン2でロシア監督局 北海道新聞 2006/12/12 22:26
【モスクワ12日共同】インタファクス通信によると、ロシア天然資源監督局のミトボリ副局長は12日、環境破壊が指摘されている極東サハリン州沖の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」をめぐり、来年3月までに日本や英国を含む複数の国の裁判所に提訴するとの方針を示した。
副局長は訴訟相手や提訴の内容については明らかにしなかったが、サハリン2の事業主体の最大株主、国際石油資本(メジャー)ロイヤル・ダッチ・シェルによる環境破壊は「暫定値で100億ドル(約1兆1700億円)相当に上る」と指摘、シェルを訴訟相手にする可能性を示唆した。
副局長は、日本などのほか国際的商取引の係争を扱うストックホルム商業会議所仲裁裁判所やロシア、ベルギー、米国、イタリアを提訴の場所として挙げた。
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20061212&j=0026&k=200612122368
●サハリン2でロシア当局、下請け会社の水利用停止 日経(2006年12月7日21:58)
【モスクワ=古川英治】ロシア天然資源省は7日、三井物産と三菱商事が出資するサハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の下請け建設会社に対し、水を利用する権利を停止したと発表した。法律違反があったとして2カ月以内に改善がなければ免許を剥奪(はくだつ)すると通告した。同社はパイプライン敷設を請け負っており、工事がさらに遅れる懸念が出てきた。
水利用の停止措置を受けたのはイタリアとロシアの合弁企業。サハリン2の事業主体であるサハリンエナジーと下請け契約を結び、パイプライン工事にあたっている。天然資源省は法律違反の具体的な内容を説明していない。
ロシア政府はサハリンエナジーに対し、環境問題や開発費用の拡大などを理由に様々な圧力を加えている。背景にはロシア独占天然ガス会社ガスプロムを事業に参加させて国家による支配を拡大する狙いがあり、今回の措置も新たな圧力とみられる。
サハリンエナジーには三井、三菱と英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが出資している。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20061207AT1D070AP07122006.html
●サハリン2、決着は来年初めに・三菱商事社長 日経(2006年10月31日20:34)
三菱商事の小島順彦社長は31日、ロシア・サハリン沖の天然ガス開発事業「サハリン2」を巡るロシア当局との交渉は、決着が2007年初頭にずれ込むとの見通しを示した。一方で「工事の進ちょくは9月末で81%強」と説明、08年9月に予定しているLNG(液化天然ガス)の出荷開始は遅れないと強調した。
2006年9月中間決算の記者会見で述べた。三菱商事や三井物産、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが参加するサハリン2には、ロシア政府が環境破壊や事業費増大などを理由に圧力を強めている。
小島社長は環境問題について「指摘を受けた個所について真摯(しんし)に対応している」と説明。水野一郎副社長兼最高財務責任者(CFO)はロシアが事業費増大について年明けにも判断を下すとの見方を明らかにして、「どこまで認められるかで採算は変わるが、赤字事業にはならない」と述べた。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20061031AT1D3106K31102006.html
●日・蘭の経産相、サハリン2問題で対ロシア連携強化 日経(2006年10月24日22:09)
甘利明経済産業相と来日中のオランダのウェイン経済相は24日会談し、ロシア・サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」でロシアが環境問題を理由に工事差し止めを示唆している問題で、日蘭両国が連携を強化することで合意した。同事業には英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルも出資している。両相はロシアに対して「契約の信頼性は国家の信頼性につながる」ことを示し、近代国家としての対応を求めることでも意見が一致した。会談でウェイン経済相はロイヤル・ダッチ・シェルに対し、同事業に共同出資する三井物産と三菱商事に情報を逐一提供するよう指示したことを明らかにした。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20061024AT3S2401024102006.html
【私のコメント】
サハリン2問題では一見、ロシア対日英蘭の対決が行われているように見える。日蘭の経産相がサハリン2問題で対ロシア連携強化を謳っていることもその証拠の様に見える。しかし、現実はかなり異なると見て良いだろう。
そもそも、日本の目と鼻の先の樺太の油田・ガス田の権益を英蘭資本が握る事自体に何の正当性もない。これは、中近東やアフリカの天然資源の利権を欧米資本が植民地時代同様に握り続けているのと同じ現象である。そして、英蘭両国は米国への影響力を失いつつあり、ロシアが油田・ガス田の利権を強制的に取得するとしてもそれに対抗できる力は持っていないでのある。
ロシアにとって、東アジアで唯一の高度先進国である日本はガス・石油を売り込むべき最大の市場である。ロシアは安定した需要を求め、日本は安定した供給を求めている。この日露両国の関係から搾取するロイヤル・ダッチ・シェルは日露両国にとって敵以外の何者でもない。つまり、現在の対立関係は日露vs英蘭という構図になっていると思われる。ロイヤル・ダッチ・シェルはロシアに対する交渉力確保のため日本に協力を求める以外の手段を持たない。それ故に対ロシア連携強化という声明を出すように日本に頼んだのだと思われる。それと引き替えに日本はロイヤル・ダッチ・シェルに対し事業関連の詳細な情報の提供を要求し、その情報の一部は日本からロシアに提供されることになると思われる。
更に、英蘭両国の国益も同一ではない。オランダはライン川の河口という重要な場所に位置しており、独仏連合が欧州の覇権を握るならばライン川の水運を通じて自動的に経済的繁栄を享受出来る立場にある。オランダは敗色濃厚な英国につくよりも、勝者である独仏露連合につく方が有利であろう。このような状況を利用すれば、オランダは英国と独仏露連合を天秤に掛けてより有利な条件を引きだすこともできると思われる。もう一つ注目すべき事は、オランダの王室は国際金融資本を通じて英国と非常に密接な関係があり、オランダの国益とは必ずしも合致しないことである。
まとめると、サハリン2問題は一見ロシアvs日英蘭の対決の様に見えるが、実際には日露vs英の対決であり、オランダは英国を見捨てて勝者である日露連合に味方している可能性もあると思われる。サハリン2問題で対ロシア連携強化を謳っているのが日英両国ではなく日蘭両国であることが重要なポイントである。恐らく、日本とオランダはサハリン2問題でロシアが株式の過半数を獲得することに賛成しており、英国は孤立した状態に追い込まれているのではないか。三菱商事社長の「ロシア当局との交渉は、決着が2007年初頭にずれ込むとの見通し」との発言は、2007年度の天然ガス購入価格交渉を巡る東欧諸国との対立によりロシアが今年正月と同様にガスの供給をカットし、その後東欧諸国がロシアに全面譲歩して欧州から英国の味方が消滅するというシナリオを想像させる。東欧諸国はドイツやロシアと綿密に打ち合わせてこのシナリオを演じ、表向きは反ロシア的姿勢で英国の味方の振りをして英国をロシアとの対決に直面させた後に梯子を外して英国を孤立させ敗北させる積もりかもしれない。ロシア革命・第一次世界大戦・第二次世界大戦・冷戦で大きな打撃を受けた東欧諸国は、それらを主導した英国と国際金融資本を心の中で深く恨んでいると思われるからだ。
英国の敗北という観点からは、50年前の1956年のスエズ戦争での英仏イスラエル連合の敗北が思い起こされる。しかし、当時の英国は米国をコントロールしていた。スエズ戦争での英国の敗北は英国の世界覇権の継続という実態を隠すための偽装工作であったのではないかと私は疑っている。スエズ戦争に干渉したダレス国務長官が同時に色丹歯舞の日本への返還による日露平和条約に反対して、沖縄を返還しないぞと日本を恫喝したのがその根拠である。田中宇の言うように、レーガン・ブッシュ父政権とゴルバチョフによる冷戦終結・ソ連崩壊は英国に大打撃を与えた。そして、ブッシュ息子政権による米国の世界覇権崩壊が近づいており、英国は米国を通じた世界に対する影響力行使が不可能になり真に敗北しつつあると言えるだろう。
【追記】
●ロシア、「サハリン2」めぐる賠償請求を3倍に増額も 2006年12月13日(水)07:26 (ロイター)
[モスクワ 12日 ロイター] ロシア環境監視当局は12日、英蘭国際石油資本(メジャー)、ロイヤル・ダッチ・シェル<RDSa.L>が主導する大規模資源開発プロジェクト「サハリン2」をめぐる賠償請求額について、西側の弁護士の見解を基に当初の3倍の300億ドルに増額する可能性があることを明らかにした。同当局の幹部は記者団に、3月をメドに法的措置をとる態勢が整う、との見込みを示した。三井物産<8031.T>や三菱商事<8058.T>も出資している「サハリン2」をめぐっては、11日に業界筋がロイターに対し、シェルがロシアのガス独占企業ガスプロム<GAZP.MM>に権益を譲渡することで原則合意した、と述べている。
http://news.goo.ne.jp/article/reuters/world/JAPAN-239439.html
もはやロイヤル・ダッチ・シェルと英国はサンドバック状態のようだ。最終的には損害賠償訴訟でシェルを破産させた後にガスプロムが買収、油田採掘技術者ごと手に入れるというシナリオかもしれない。
地下資源の国家管理化を進めるロシアは1日までに英国際石油資本(メジャー)BP社が参加する東シベリアのコビクタ・ガス田開発の事業会社から開発ライセンスを剥奪(はくだつ)する方針を固めた。経営権を露政府系天然ガス独占企業体ガスプロムに移すのが狙いで、6日からの主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)後に正式決定される見通しだ。日本企業が出資していた「サハリン2」に続く強引な国有化方針には、サミットでも批判が出そうだ。
コビクタ・ガス田は14兆立方メートルの埋蔵量が確認されているロシアで最大級のガス田。事業会社にはBPの現地合弁会社が63%を出資し、1992年からライセンスに基づいて開発を進めてきた。ところが、露天然資源省が今年1月に開発・生産状況を調査した結果、ライセンスでは2006年に90億立方メートルのガス生産が義務づけられていたにもかかわらず、生産量が3300万立方メートル以下にとどまっていたとして、ライセンス剥奪の方針が事業会社に伝えられた。
生産能力があるにもかかわらず規定量に届かなかったのは、ガスの独占輸出権限を持つガスプロムが新たなパイプライン敷設や輸出を認めないため、当初計画していた中国などアジア向けの輸出ができず、生産縮小を余儀なくされたのが実態だ。
BP社は、ガスプロムを事業に参画させて水面下での交渉を開始したが、両者の交渉がまとまらない場合は、競売によって権益がガスプロムに移行するのは確実とみられている。(モスクワ 遠藤良介)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/55006/
【私のコメント】
コビクタ・ガス田はイルクーツク近郊にあり、日本や中国へのガス供給源として期待されている地域。英国資本が追放されることは日露両国にとって非常に有益である。米国支配を通じた英国=国際金融資本の世界支配終焉を象徴する事件と言える。
最新の江田島孔明先生の論文は、長幼の掟を守れ!だ。日本の兄は常にアメリカンだよ。
http://klingon.blog87.fc2.com/blog-entry-241.html
これを守らないと松岡農水のようになるぜっという警告だな。