エミール・ガボリオ ライブラリ

名探偵ルコックを生んだ19世紀フランスの作家ガボリオの(主に)未邦訳作品をフランス語から翻訳。

2-IX-7

2023-09-21 21:00:46 | 地獄の生活
しかし彼の皮肉な笑いの下に激しい怨嗟のエネルギーが蠢いているのが感じられたので、フォルチュナ氏は全く不安を感じることはなく、この憎悪から派生した意志が、いわゆる『ロハで』働いて貰うよりずっと自分の助けになるだろうと確信していた。本来この手の手助けは最も高価なものにつくのだが……。
「そうか、そうか、それは結構だ」と彼は言った。「なら、お前を当てに出来るな、ヴィクトール……」
「もっちろんでさぁ。ご自分の分身だと思ってくださいよ。いつでも、どこへでも行きますよ」
「で、火曜日には確かな情報を持ってきてくれるというわけなんだな?」
「それより前かも……もし何も邪魔が入らなかったら」
「ようし。では私の方は専らパスカル・フェライユール氏に掛かることにするよ。ヴァロルセイの企みについては、彼より私の方がよく知っている。我々としてはマルグリット嬢の訪問の前にいつでも戦闘態勢に入れるよう準備しておかねばならない。彼女が何を教えてくれるのか、それ次第で我々がどう行動するか決めるのだ……」
シュパンはもう帽子を被っていたが、出て行こうとする瞬間、叫んだ。
「おっとー!肝心なことを忘れてた……コラルトはどこに住んでるんです?」
「残念ながら私も知らないんだ……」
厄介な状況に陥ったときの常として、シュパンは自分の黄色い髪を猛烈な勢いで引っ掻き始めた。
「こりゃ困ったな……」と彼はもぐもぐ呟いた。「あの程度の子爵じゃ紳士録には載らないだろうし……いや、しかし、何とかして見つけてやるぞ……」
そうは言っても、出て行くときの彼は非常に困惑していた。
「めくら滅法探しても埒は明かねぇし」と彼は速足で家への道を辿りながら彼は思った。「今夜はあの野郎の住所を探すので潰れそうだ……誰に聞いたら良いかな? マダム・ダルジュレの門番?……彼なら知っているだろうか?……ウィルキーの召使いに聞くか?……それは危険だな」
ド・ヴァロルセイ侯爵邸の周りをうろついて、彼の従者の一人を捕まえて言葉巧みに尋ねてみることも考えたが、大通りを横切り、ブレバンのレストランが見えるとそれまで思いつかなかった考えが頭に閃いた。
「よし、これだ!捕まえたぞ!」と彼は言った。
そしてすぐに、計画を実行すべく一番近くのカフェに飛び込んだ。9.21
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