そうは言っても、マルグリット嬢がどうなったのか、様子を知ることは大事なことであった。パスカルは一心に考え、突然叫んだ。
「ヴァントラッソン夫人ですよ! 彼女がいる。彼女を利用しましょう。何か口実を見つけて彼女をド・シャルース邸にお使いに遣るのは、そう大して難しいことではないでしょう。彼女は召使たちとお喋りをする筈です。僕たちは後で彼女に話をさせるんです。そしたらあそこで何が起こっているか、手に取るようにわかりますよ」
パスカルの頭に閃いた解決法は勇気の必要なものであった。ほんの昨日なら、とても取り上げようとは思わなかったであろう……。
しかし心に希望を持つ者にとって勇気ある決断は難しくはない。彼はだんだん、言わば一時間ごとに成功の可能性が膨らんで行くのを感じ、最初はとても乗り越えられないと思われた障壁もなぎ倒せるように思えていた。
母親に反対されることすらも、最初はとてつもない不幸に思えたのに、今は彼を悩ませなくなっていた。というのも、この厳格なブルジョワ女性である母が、偽手紙である証拠を挙げることでマルグリットの公正さを示してくれたではないか。すなわち彼女がパスカルを見捨てたという疑いを一掃してくれたのだ。こうなれば、何を気に病むことがあろうか。
しかしこの夜彼はよく眠れなかったし、次の日も一日中家から出ず、固く口を閉ざしていた。彼はド・ヴァロルセイ侯爵に対する攻撃の計画を練っていたのである。
あの十万フランを好きに使っていい、と言ってくれたトリゴー男爵のおかげで、彼はかなり有利な立場にあった。重要なのは、この大金を利用していかに侯爵の信頼を得、彼を降伏させるように持って行くかである。
パスカルの熟考は無駄にはならなかった。いよいよ敵のもとに赴くという日の朝、彼は母に言った。
「考えは固まりました。男爵が僕の思うように行動させてくれるなら、ヴァロルセイはもうこっちのものです!」6.21
「ヴァントラッソン夫人ですよ! 彼女がいる。彼女を利用しましょう。何か口実を見つけて彼女をド・シャルース邸にお使いに遣るのは、そう大して難しいことではないでしょう。彼女は召使たちとお喋りをする筈です。僕たちは後で彼女に話をさせるんです。そしたらあそこで何が起こっているか、手に取るようにわかりますよ」
パスカルの頭に閃いた解決法は勇気の必要なものであった。ほんの昨日なら、とても取り上げようとは思わなかったであろう……。
しかし心に希望を持つ者にとって勇気ある決断は難しくはない。彼はだんだん、言わば一時間ごとに成功の可能性が膨らんで行くのを感じ、最初はとても乗り越えられないと思われた障壁もなぎ倒せるように思えていた。
母親に反対されることすらも、最初はとてつもない不幸に思えたのに、今は彼を悩ませなくなっていた。というのも、この厳格なブルジョワ女性である母が、偽手紙である証拠を挙げることでマルグリットの公正さを示してくれたではないか。すなわち彼女がパスカルを見捨てたという疑いを一掃してくれたのだ。こうなれば、何を気に病むことがあろうか。
しかしこの夜彼はよく眠れなかったし、次の日も一日中家から出ず、固く口を閉ざしていた。彼はド・ヴァロルセイ侯爵に対する攻撃の計画を練っていたのである。
あの十万フランを好きに使っていい、と言ってくれたトリゴー男爵のおかげで、彼はかなり有利な立場にあった。重要なのは、この大金を利用していかに侯爵の信頼を得、彼を降伏させるように持って行くかである。
パスカルの熟考は無駄にはならなかった。いよいよ敵のもとに赴くという日の朝、彼は母に言った。
「考えは固まりました。男爵が僕の思うように行動させてくれるなら、ヴァロルセイはもうこっちのものです!」6.21