そうか! そんな男にぶち当たるとは運がいいぞ! そのおかげで僕も名士の仲間入りだ。しかもトップクラスの……。見てろ、奴さん夜はたっぷり眠るがいい。が、朝一番にコスタールとセルピオンが訪れる。彼らには飛び切りエレガントな装いで驚かせてやるように言うつもりさ。セルピオンは何と言っても決闘の立会人として彼の右に出る者はいないんだ。パリで誰かが平手打ちを喰らうような事件があれば、彼は必ずそこにいる。彼に任せれば物事は完璧にうまく行く! まずもって、彼は誰も知らないような良い場所を知ってるんだ。相手が武器を持っていなければ貸してやる。医者の手配もしておく。新聞記者たちとも仲が良いから、彼の行動の正式な記録を新聞で発表してくれるというわけさ」
今までド・コラルト氏はウィルキー氏がどの程度の人間か、正しく把握していると思っていたが、今やそれがいかに過大評価であったかを知って愕然としていた。
「くだらんことを言うのもいい加減にしろ」と彼は相手の言葉を遮って言った。「そんな決闘なんてあるわけがない……」
「誰が止められるのか、是非知りたいもんだね……」
「私だ! もし君がそんな馬鹿げた考えに固執するなら、私はもう君のことなど知らん。よく考えてみろ。トリゴー男爵はセルピオンとやらを相手にせず、叩き出すだろう。で君らは笑いものになるだけだ。というわけだから、決闘を取るか、私の助けを取るか、どっちか決めるんだ。ぐずぐずするな」
確かにトリゴー男爵のもとに立会人を差し向ける、というのはウィルキー氏にとって思わず笑みがこぼれる図であった。が、ド・コラルト氏の助けなしでやっていけるものだろうか……。
「だって男爵は僕を侮辱したんだよ」と彼は反論を試みた。
「それじゃあ……君が相続財産を手にしたら、そのとき償いを要求したらどうだ? この時期、スキャンダルを起こすのは事を危うくする元だぞ……」
「なら仕方ない、このことはしばらく置いておくか」とウィルキー氏は溜息を吐いて言った。「でも少なくとも忠告だけは頼むよ。今の僕の状況をどう思う?」
ド・コラルト氏は一分間ほど考えを巡らしているように見えた。それから重々しく言った。
「私が思うに、君は一人だけでは何も出来ないだろう。君には頼れる親戚も支持者もいない。市民としての身分もない。フランス人でさえないんだから……」
「ああ、そうなんだよな!僕もそう思っていたところなんだ」
「しかし、誰か後ろ盾となってくれる人がいれば、君の母上の抵抗や、父上の主張すらも退けることが出来る筈だ……」12.11
今までド・コラルト氏はウィルキー氏がどの程度の人間か、正しく把握していると思っていたが、今やそれがいかに過大評価であったかを知って愕然としていた。
「くだらんことを言うのもいい加減にしろ」と彼は相手の言葉を遮って言った。「そんな決闘なんてあるわけがない……」
「誰が止められるのか、是非知りたいもんだね……」
「私だ! もし君がそんな馬鹿げた考えに固執するなら、私はもう君のことなど知らん。よく考えてみろ。トリゴー男爵はセルピオンとやらを相手にせず、叩き出すだろう。で君らは笑いものになるだけだ。というわけだから、決闘を取るか、私の助けを取るか、どっちか決めるんだ。ぐずぐずするな」
確かにトリゴー男爵のもとに立会人を差し向ける、というのはウィルキー氏にとって思わず笑みがこぼれる図であった。が、ド・コラルト氏の助けなしでやっていけるものだろうか……。
「だって男爵は僕を侮辱したんだよ」と彼は反論を試みた。
「それじゃあ……君が相続財産を手にしたら、そのとき償いを要求したらどうだ? この時期、スキャンダルを起こすのは事を危うくする元だぞ……」
「なら仕方ない、このことはしばらく置いておくか」とウィルキー氏は溜息を吐いて言った。「でも少なくとも忠告だけは頼むよ。今の僕の状況をどう思う?」
ド・コラルト氏は一分間ほど考えを巡らしているように見えた。それから重々しく言った。
「私が思うに、君は一人だけでは何も出来ないだろう。君には頼れる親戚も支持者もいない。市民としての身分もない。フランス人でさえないんだから……」
「ああ、そうなんだよな!僕もそう思っていたところなんだ」
「しかし、誰か後ろ盾となってくれる人がいれば、君の母上の抵抗や、父上の主張すらも退けることが出来る筈だ……」12.11
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