珊瑚の時々お絵かき日記

夫と二人暮らし、コロナ自粛するうちに気がついたら中国ドラマのファンになっていました。

母の入院 7

2014年08月12日 | 母のこと

先々週息子が帰って来てくれて、母も喜んでいたようだったけれど、

母が息子を憶えていたことが、私も嬉しかった。

先週は娘が帰って来てくれた。

娘は息子より6年先に生まれている。

自然、孫としては娘のほうが馴染が深い。

成人式の着物も母が買ってくれた。

母が元気な頃も帰省する度を訪ねてくれた。

 

娘を連れて病院へ行ってみると、母は胸の静脈から点滴を入れる処置をしているそうで、

ベッドにいなかった。

毎日針を刺すのは苦痛だろうと、針を入れっぱなしにするのだそうだ。

15分くらいで戻りますよということだったけれど、帰ってこない。

看護師さんが何度か、「もうすぐですからお待ちください」と言いに来てくださったけれど、

1時間過ぎても帰ってこない。処置が難航しているようだ。

部分麻酔を使っているそうだから痛くはないだろうけれど、こんなに時間がかかっては、

帰って来ても疲れ切っているだろう。

どうなっているのか気になったけれど、出直すことにした。

翌日出直すと、母は無事ベッドにいた。

点滴の針は手の甲に刺さっている。

結局胸の静脈には入れられなかったのだろう。

手足の細い血管がもうボロボロだそうだけれど、

胸の太い血管も同じくらい傷んでいるのかも知れない。

「先生に訊いてみる?」と娘が言ったけれど、聞いたところでどうなるものでもない。

できるものならしているだろう。

気配を感じたのか、母が目を開けた。ぼんやりと私たちのほうを見る。

「おばあちゃん、〇〇だよ。おばあちゃんに会いたかったよ」

と娘が耳元で呼びかけると、少し間があってわずかだけれど目に力がこもったような気がした。

少しの間は、記憶を呼び覚ますのにかかった時間かも知れない。

そして、娘のほうを見て何か呟いた。

何?と娘が耳を近づけると、

「ばあちゃんも会いたかった」と小さなかすれ声で言う。

私たちに聞こえるように言葉を発するために、必死の努力が必要だったろうと思う。

「うん、ありがと」と言ったきり、娘は涙ぐんで言葉に詰まってしまった。

そうよね、何を言えばいいのかわからないよね。

母は娘への一言で力を使い果たしたのか、目を閉じている。

でも、少しすると目を開ける。

娘への気遣いがわかる。

もっといて欲しいかも知れないと思うけれど、その分疲れることも確かだ。

枯れ木のようになった母に無理はさせたくない。

母の手を取って「お昼寝してね、また来るから」と言うと、頷いた。

病院を出るまで無言だった娘が、「9月に来れたら来るよ」と言った。

「うん、できればそうして」と返しながら、思う。

母の血管がそれまでもつだろうか・・・