15年前に大腸がんで亡くなったお友達がいる。
私より1歳下で、まだ50歳という若さだった。
当時一番仲良くしていた人で、生きていれば今でもそうだったろうと思う。
胃腸が丈夫で、胃の痛みがどういうものかわからないと言っていた。
一方私は、若いころから何かと言えば胃が痛み下痢をして、病院のお世話になっていた。
彼女は、お母さんと弟さんが脳梗塞を患っていたので、
「私に何かあるとしたらきっと脳だと思う」とよく言っていた。
それがある日、ここが痛いのと右のスカートのベルト下辺りを指して言った。
そこは私がよく痛くなっていたところだ。
ガンは痛くないと言われていたけれど、
「年齢的にもこの辺で一度検査しておいた方が良いでしょう」という医師の勧めで、
少し前に胃も大腸も内視鏡検査をしていた。
結果はやはり異常なしで、ガスが溜まるのだろうという診断だった。
彼女が痛いと言ったのは、まさにその辺りだったから、
私は深く考えもせず、「そこならきっとガスが溜まってるんじゃないの」と答えた。
彼女は「そうよね」と言って、安堵の顔をした。
なぜ、「早く病院へ行きなさい」と言わなかったのか、
この時の会話を、私はずうっと後悔していた。
それから1月ほどして、彼女は病院へ行った。
人生初めての内視鏡検査は、大腸がんの末期だった。
肝臓にも転移していて、
手術後、1年もしないで彼女は亡くなった。
今回、検便に血が混じっていて、もしやとの心配から少し調べてみた。
殆どの大腸がんは5年から10年という長い時間をかけて成長するのだそうだ。
そして、いよいよ末期になると痛みが出て来るのだそうだ
ということは、彼女のガンは随分前からあって、
痛みを感じた時点ですでに手遅れだったのだ。
不用意に返した私の言葉のせいで発見が遅れたのかも知れないという
私の後悔と罪悪感は安らいだ。
でも、それまでの過去5年間に、一度でも検査をしていたら
彼女は死なずに済んだかも知れない。
それが、残念で仕方がない。