今までの人生で2度、犯罪者になりかかったことがある。
1度目は30代前半の頃。
よく行くスーパーへ一人で買い物に行った。
息子が幼稚園から戻ってくるまでに家に帰ろうと、多少急いでいたかもしれない。
そそくさと食料品や日用品をカートに入れながら店内を回った。
買い物が終わって車に戻り、さて買ったものを後ろの座席に乗せようとしたら、
なんだか変だ。いつもと違う。
押してきたカートの中に、買った品物がゴロゴロとむき出しで入っている。
え?次の瞬間血の気が引いた。
清算をしていない!
私は、レジを通らず悠々と外の駐車場までカートを押してきたのだ。
大変だ!見つかる前に戻らなければ。
慌てて引き返してレジに並んだけれど、お金を払うまでドキドキもの。
「あの、お客様」と店員さんに声をかけられるのではないかと、生きた心地がしなかった。
その後、木の実ナナさんのドラマで「万引きGメン」なる存在を知って、
私は運が良かったと胸を撫でおろした。
当時はまだこの辺のスーパーにはそんな人はいなかったかもしれないが、
店員さんにもし声をかけられていたら、完全に万引き犯にされていたと思う。
「うっかりしてお金を払うのを忘れました」なんて言い訳は通らないだろう。
しかも、悠々とカートごと持ち出すという大胆な犯行だ。
初犯ということで、警察にまでは通報はされないかもしれないが、
夫の職場に連絡が行き、早退した夫が店まで私を引き取りに来る。
お店の人に頭を下げる夫、すすり泣く私、家に帰ったら修羅場だったろう。
想像しただけで背筋が凍る。
2度目はそれから数年後、やはり一人で中心街までお買い物に行った。
デパートで買い物をしていたらお昼時になったので、
今はもうないが、地下街の小さな喫茶店でケーキセットを食べた。
満足して店を出、しばらく歩いたら、
買った品物を入れたデパートの紙袋がないことに気がついた。
お店に忘れてきたらしい。
急いで戻って座っていた席を見ると紙袋はちゃんとあった。
そして、テーブルには伝票が載っていた・・・
なんと、私はお金を払わず店を出て来てしまったのだ。
さーっと血の気が引いて、手がわなわな震えるのを隠しながら、
さりげなさを装って紙袋と伝票を取り、レジでお金を払う。
そして、店を出ると走り出したいのを我慢してゆっくり歩いた。
ほっとできたのは、しばらく行ってから。
席にデパートの紙袋を忘れたことはラッキーだったと思う。
それを置いて出て行ったので、お店の人も不審に思わなかったのだろう。
トイレにでも行ったように見えたのだと思う。
何も置いていなかったら、追いかけられたかもしれない。
そして、食い逃げ犯になっていただろう。
その二つのうっかりを思い出すと、
ほんの紙一重で犯罪者になっていたかもしれないと、今でも冷や汗が出る。