ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

宮崎駿監督の"The Rock And The Hard Place"(四面楚歌)

2013-08-17 | 日本のこと

皆さん、スタジオジブリ制作、「風立ちぬ」ご覧になりました?
収益的にはもののけ姫に続くヒットであるとのことで、ネットではすでに
感想やら批判やら影響を報じるニュースが飛び交っています。

宮崎監督が零戦設計者の堀越二郎をモデルにした映画を制作中、
というニュースを知ったとき、わたしは「少しだけ」期待しました。

これまでのジブリ作品、特に「紅の豚」に見られる「戦い」・・・・・、
空中戦をしながら誰も死なない、海賊なのに人を決して殺さない、悪役が悪人ではなく皆善良、
最後の決着は「女を取り合って殴り合い」・・、
おとぎ話としては設定が穏やかでなく、飛行機で戦うという題材の割にはおめでたすぎる。

しかもこういう配慮がありながら、子供に向けたものというわけでもなく、
大人向けのアニメであると制作者自らがいう立ち位置。
底意地の悪い目で見れば、あざとい甘さがにつくのが宮崎作品の特徴です。

わたしは作品としての「紅の豚」を決して嫌いではなく、むしろ好きといってもいいほどですが、
この世界観を設定した宮崎駿監督という人の戦略だけに限って焦点を当てると、
映画を観終わった後の文句なしの「後味の良さ」が、まるで人工甘味料の甘さのように
時間がたつと次第に変質して妙な「エグ味」になるのを感じていました。
 

しかし、零戦製作者の堀越二郎という実在の人物を取り上げたということは、

多くの宮崎作品に共通する、「飛ぶことへの憧れ」に少しは現実を加味したものになるのではないか、
という期待をつい感じさせずにはいられないニュースであり、
この映画の公開を(というかこの映画に対する評価を)心待ちにしていたのも事実です。

いよいよ公開となった注目のこの映画ですが、
わたくし、いまだに観ておりません。(爆)
なぜなら観ようにも日本にいないからで、にもかかわらずわざわざエントリを挙げて
話題にしようとしたのには訳があります。

それは監督の宮崎駿氏が、この映画に先立って「政治的発言」をし、
それがインターネット世論に舌禍をして捉えられたことと、
それが故に氏が陥った「The Rock And The Hard Place」について、
少し述べてみたいと思ったからです。

以下、宮崎監督の書いた問題の「論文」から要約します。

1.戦後の自虐的な文章でいろいろと知るうちに日本が嫌いになった
ただし、自分は思い込むタイプなのでもう少し早く生まれていたら軍国少年になっていたはず

父親は軍需工場の工場長だった
大局観のない人間だった


半藤一利の昭和史でいかに日本がひどい国であるかを知った
親の話を聞いてさらに日本人が嫌いになった
政界のトップは歴史観がなく、勉強もしていない
そんな連中が憲法改正するなんてとんでもない

ヨーロッパから帰ってきたときに日本を見直した
ただしそれは自然が豊かだという点に対してであり日本と日本国民に対してではない

2.いまの政治家は本音を漏らして大騒ぎになると「そんなつもりではない」などという
これも彼らに歴史観がないせいだ

こんな考えのない連中が憲法を改正するのは反対だ
アベノミクスも根拠はないが早晩ダメになるに違いない

3、9条と自衛隊は矛盾するが、職業軍人なんて役人の大群でくだらなくなるものだ
どこにいっても一発の銃弾を打たずに帰ってきた自衛隊は素晴らしい
だから国防軍など反対だ


もし戦火が起こるようなことがあったら、ちゃんとその時に考えて、
憲法条項を変えるか変えないかはわからないけど、
とにかく自衛のために活動しようということにすればいい
立ち上がりは絶対に遅れるけど、自分からは手を出さない、過剰に守らない、
そうしないとこの国の人たちは国際政治に慣れていないから
すぐに手玉にとられてしまう

もし戦争になるにしてもその方がまだましだ

4.「(日本は)悪かったんですよ。
慰安婦の問題も、それぞれの民族の誇りの問題だから、
きちんと謝罪してちゃんと賠償すべきです」

領土問題は、半分に分けるか、あるいは両方で管理すべき

5、かつて日本が膨張したように膨張する国もあるが、そのたびに戦争するわけにいかない
中国の矛盾は中国の問題だから日本が軍備を増強しても関係ないことだ
だから日本の軍備拡張は反対である


マーケット中心の日本の産業構造からは、必ず徴兵制をやれという馬鹿が出てくる
そういうやつはまず自分が行くべきだ
あるいは自分の息子、いなければ娘を兵隊に行かせろ


こんな日本のような立て込んだところで戦争などできない
だから徴兵制は反対である


とほほ・・・・そうではないかと思っていたら、宮崎監督ったら典型的な団塊左翼だったのね。

どの発言も酷い、というか時々まったく意味が分からないのですが特に最後・・・・。

日本は狭くて立て込んでいるので戦争はできない」

って、誰が誰に向かって言ってるの?
スポーツじゃないんだから狭いとか広いとかの問題ではない気が。

だいたい今時の戦争が市街戦で行われることを前提にするっていったい・・・・。



先日元ジャーナリストが、ツィッターで批判され「私にケンカを売るとは10年早い」
と論破されたのを認めようともしないで言い放ったのが話題になっていましたが、
どうしてこの年代の人たちって自分と異なる意見を持つ人たちに向かって

「勉強していない」「歴史認識がない」

とか決めつけますかね。
どこかで聞いたと思ったら、まるで「お隣の国」の言い分ではないですか。

この手の意見に共通するのは戦後、日本がいかに悪かったかを叩き込まれ、その後
どのような歴史関係の資料を見てもそのインプリンティングから「日本原罪論」
の視点からしかすべてを見られなくなってしまっているということでしょう


ジブリのプロデューサーの鈴木某という人物も同じ媒体にやはり論文を上梓していますが、
これがまた宮崎監督に輪をかけて・・・・・な人物。

「僕、憲法9条を持っているって、海外の人はほとんど知らないと思う。
だって自衛隊があるしね。そっちを知っているわけでしょう。
だから日本が世界にアピールするとしたら、9条ですよね。
これだけの平和は、9条が無ければありえなかったわけですから。

日本には美しい森林もある。

自分の国は自分で守るという考え方もあるでしょうが、
平和憲法を持ち、
森と水がきれいな国をね、みんな侵せますか。

そこへ侵略する国があったら、世界の非難を受ける時代でしょ。

現代って、一国の暴走に世論がブレーキをかける時代なんです」

いやはや。

いい歳のおっさんが、この少女のような夢見がちなお花畑発言。
あまりにもおめでたすぎて、頭がくらくらしてきそうです。

きりがないのでいちいちまともに取り合うのはやめますが、この鈴木さんによると

「『紅の豚』は国のために戦ってその虚しさから豚になった男がテーマ」

なんだそうで。
へー。道理で後味が悪いと思った(笑) 


さて、この映画公開に先立ち、韓国の記者会見で宮崎監督が同じようなことをに述べたところ、

韓国人たちは狂喜し、その時は宮崎を絶賛する意見が溢れたと言います。

なぜ、宮崎はわざわざ韓国に向かってこのような政治発言をする必要があったのでしょうか。

それはなんといっても、それが日ごろからの監督の政治信条であるという以上に、今回、
「風立ちぬ」が、韓国で日本に遅れること一か月後に公開される予定があったからでしょう。
どこの国でもやったことのないジブリ展も先駆けて催されました。

これは、今回の主人公が日本の戦闘機を設計した実在の人物である、ということで、
予め「反省する良心的日本人」としての自分の立ち位置を韓国人にアピールして 
映画の公開に好意的な感触を得ようという宮崎監督の「商業的戦略」だったと思われます。

ところが、案の定、日本のすることすべて憎く、なにに対しても「戦犯」という言葉を
ぶつけなくては最近収まらなくなっている態の韓国では、
宮崎監督の思惑に反して、盛大なバッシングと上映反対の声が起こり始めました。
このような内容です。


「どんなに美化しても堀越二郎は自分が作ったゼロ戦が日本軍の大勝に寄与したことに
自負心を持った人物という点には変わりなく、これに対する批判と反省が見られない」

戦争惨禍を扱う映画なのにその原因については徹底して沈黙する。
明白な日本自国民の自衛用右翼映画だ。
過去の謝罪発言をしたからといって宮崎のこういう欺瞞的態度への免罪符にはならない」

などなど。 

宮崎監督はさぞ面食らったでしょう。
韓国人というのがどういうメンタリティの国民か、あの年代ならよく御存じだと思うのですが、
ここまで政治的に歓心を買う発言をしたのに「右翼」呼ばわりされるとまでは
さすがの左巻き脳でもおそらく想像すらできなかったのかもしれません。

本当にざま・・・・いや、ご苦労様なことですが、とりあえずあわてて、
監督は再び記者会見を(わざわざ)開き、弁解にこれ努めました。

「戦争の時代を一生懸命に生きた人が断罪されてもいいのかと疑問を感じた」

そしてさらには

「堀越は軍の要求に抵抗して生きた人物だ」

などという我田引水の嘘八百な言い訳まで・・・。


韓国の人たちはね。
どう生きた人物であろうが、日本人である限り我々を、そして我々の父祖までもを断罪するんですよ。
過去も現在も、ついでに未来永劫、日本を否定し続けるつもりなんですよ。
知らなかったんですか監督?


日本人には、決着済みの歴史問題に対し謝れとか領土を半分くれてやれなどと言って
嫌われ、韓国人にはそれでも右翼だ戦争美化だと弾劾され、
これが本当の”The Rock And The Hard Place"(板挟み)ってやつ?

「シンプソンズ」を観ていて、



ホーマー・シンプソンがこんな目に合っているシーンを観ていたら息子が
The Rock And The Hard Placeって成語なんだよ」と教えてくれ、
またもやどうでもいい英語のボキャブラリーだけが増えてしまったわけですが、
まさにこれが宮崎監督の今の状況だなあと微笑ましく思った次第です。


まあそもそも、煮しめたような団塊左翼のくせに兵器オタクというのが矛盾なんですよね。
この人の場合。

公開が始まる前、読者の方が、宮崎作品の「兵器へのこだわり」について、
こんな一文を寄せてくださっています。


子供の頃見た「あの」NHKアニメ「未来少年コナン」で表現される機銃・艦砲の発砲シーンに
発射される「弾」を、ちゃんと「弾」として表現しているのを見て「この人・・・出来る!!」
とこれが最初の宮崎さんへの記憶でした。
「ギガント」(解ります?)の機体各所銃座の射撃シーンなど、
「おぉー、WW2の爆撃機の銃座みたい!」と、更に氏への賞賛を高めた記憶が有ります。

わたしにはさっぱりわかりませんが、そうなのだそうです。
さらに、

ネット等で見かける映画のポスター、
主人公「次郎」と共に描かれている正面からの機影(逆ガル翼)は、
この映画の主役ともいえる?、十二試艦戦「零戦」の前の、
「96式艦戦」、の試作型「九試単戦(昭和9年度発注だったかな?)」ですね。
と言う事は、発注者は当然、「帝国日本海軍」。

なるほど。筋金入りですね。

兵器オタクの宮崎さんとしては、人生最後に自分の夢であった兵器が
(背景とはいえ)バンバン出てくる映画を作りたい。
しかし、それを作るには戦争を、そして結果として、兵器というものが
いつも自分が言っているところの「酷いこと」をするための道具であることを無視できない。

全くの二律背反なのですが、出発点ですでにこの人物は矛盾してたんですね。
マスコミはこのことに決して触れませんが、若いころは東映動画の労組の委員長。
筋金入りの左翼活動家であったというのですから。


そして本人には不本意でしょうが、堀越二郎の
「美しい飛行機を作りたい」「そんな重い飛行機じゃだめだ」という理想主義が、
零戦の、防備のない、搭乗員の命を失わせる仕様につながった、という矛盾と
宮崎監督の嗜好と思想の矛盾は、まるで同じ構図に思われるのです。

ところでタイトルの"The Rock And The Hard Place"が板挟みという意味なら
(四面楚歌)という訳はおかしくないか、と思ったあなた、あなたは正しい。

この映画、上映が始まってすぐに

「子供を連れて行ったら退屈して泣き出した。
トトロのようなキャラが出てこない」


という従来のジブリから勝手に「アニメだから子供向き」と思い込む人たちの
批判があがりました。

それが収まったと思ったら今度は思わぬところから矢が飛んできます。
なんと日本禁煙学界からの

教室での喫煙場面、職場で上司を含め職員の多くが喫煙している場面、
高級リゾートホテルのレストラン内での喫煙場面など、数え上げれば枚挙にいとまがない。
主人公が病室で結核患者の妻の横で喫煙するシーンや、
学生が“もらいタバコ”をするシーンは特に問題だ。
さまざまな場面での喫煙シーンがこども達に与える影響は無視できない。

というクレームで、良くも悪くもジブリ作品の持つ世間への影響の大きさを感じましたが、
まあ、こちらも「そういう時代だったから」「表現法の一つ」ってことにしないと、
画面が煙で真っ白な昔の映画など子供に見せられないってことになっちゃいますよね。

 
どちらも少しジブリにはご無体な批判ではあるのですが、ともかくこれで

前門の「従来の『トトロ』ファン」

後門の「日本禁煙学界」

右手の「保守派右派つまり団塊左翼以外」

左手の「韓国国民」

きれいな四面楚歌状態です。
いったいこの映画を評価するのはどういう人?
ってことになってしまいそうですが。

ついでに声優を嫌い、わざわざ素人の庵野監督を使って声優オタクにも嫌われ、
戦闘シーンもろくにないため飛行機オタクにも嫌われ・・・・。


さあどうする宮崎監督?



(答え:何もしない。どうせマスコミと信者の力で十年もたてば『名作』になっているから)