皆様の地域では雪はいかがでしたでしょうか。
退院して来た日、わたしの住む地域は大雪になりました。
金・土と降り続ける雪を部屋から眺めていましたが、不思議なもので、
都会の大雪というのは大変大変と口では言いながらも、どこか子供の頃のような
ワクワクする気持ちが沸き起こってくるものです。
いつもとは全く違う、まるでスキー場の宿から見るような外の景色に、
「一年に一度くらいならこの景色と引き換えに不便を耐え忍ぶのも悪くない」
などと、豪雪地帯の住人が聴いたらさぞ気を悪くしそうな考えも浮かんだりします。
しかしながら、今回の雪はわたしにとって痛恨の一撃ともいえる骨折への言わば追い打ちで、
おかげで大変重要なイベントを二つ逃すことになったのでした。
まず日曜日、つまり2月17日ですが、この日に
海上自衛隊東京音楽隊定期演奏会
が新宿で行なわれ、これにわたしはご招待をいただいていて、
聴きに行くのをそれはそれは楽しみにしていたのです。
何としてでもこの演奏会に行かねばならなかったそのわけとは、
音楽隊長である河邉一彦二等海佐が、 新曲を発表すると共に、この日の演奏をもって
自衛隊を退官されるという重要なコンサートであったからでした。
ゆえに、たとえギプスを装着していても、家からタクシーに乗ってでも、
何としてでも駆けつける意気でいたのですが・・・・この雪です。
当日はすっかり雪は止み、空はまるで河邉隊長の今後を祝福するかのように快晴でしたが、
いかんせん一歩外に出れば道路はガチンコに固まっていてギプスをした腕をかばいながら
歩くことはさすがのわたしも躊躇われました。
しかしコンサートホールにたどり着いたら今度はホールの階段という難関が待ち構えている。
かの佐村河内さんは杖を付きサングラスをかけてホールの階段をを鮮やかに降りていましたが、
あのコンサートホールの階段というのはどこのでも大抵急で、ハイヒールだと怖いくらい。
杖をついた人があんなにさっさかと降りられるわけがないのですが、まあその話はさておき。
そして二つ目は本日武道館で行なわれるエリッククラプトン来日公演。
ギプスも外れているので、こっちは何とか行けるかと思ったのですが、
一人で行くつもりをしていたので、付き添いを連れて行くこともできません。
「骨折して手術をした人が武道館のロックコンサートなんてとんでもない」
とTOには一蹴されてチケットを取り上げられてしまいました。
たしかにコンサートホール以上に武道館の階段は怖い。
「絶対に転んだりしないでくださいね」
先生に言われるまでもなく、そうなったときはわたしの音楽人生、ブロガー人生、
乗馬人生、ついでに益体もないその他色々な人生が終わります。
何としても転ぶわけにはいきません。
しかし馬から落ちたのも不可抗力だったように、どんなに注意をしていても
事故というのは起こるときには起こる。
つまりこれはどう考えても無理ゲーというやつです。
河邉二佐の現役最後の公演。
そしてクラプトンも日本に来るのは今回が最後になるだろうと言われており、
そのどちらをも聴きのがしたのが今回の事故でもっとも悔しく悲しかったことでした。(本人)
さて、前回「窓から覗かれていたら怖いと思う女性の髪型の一例」として
この写真を挙げたわけですが、月曜日の再診のあと、
ヘアサロンに立寄り、カットとシャンプー、ヘッドスパをしてきました。
やっとなんというか「人間らしい」気分になりました。
何しろ、事故発生以降、それどころではなかったとはいえわたしの風体は酷いもので、
ろくにブロウしていないザンバラ髪をまとめもせずに振り乱していたのでございます。
女性の皆様のためにお教えしておくと、片手が使えなくて地味に困ることは
「髪の毛をまとめることができない」
ってことです。
バレッタやピン、ゴムで留めることすらできないって知ってました?
おかげでこんな貞子さんヘアーに病院では時節柄着用必須のマスク、手には包帯。
不審人物過ぎる。
まだ曇りの日でサングラスが必要なかったのが幸いだったといえましょう。
着ている服だって、セレクトするもしないも、
●袖がギプスを通す程度に太い
●前が空いている
●自分で脱ぎ着できる
この条件を満たすものがこれしかなかったというだけのこと。
このカーディガンに去年買ったエトロのマフラーを合わせてみたら、
同じピスタチオグリーンの織り糸がぴったりマッチすることがわかったのは
嬉しい収穫と言えましたが。
明けて月曜、再診に出かけることになってクローゼットを開けたら、あらうれしや、
落ち着いて探せば、七分の筒袖のシャネルのセーターなどというアイテムが見つかりました。
診察のときにまくり上げる必要もなく、これに大判のスカーフの端を結び、
三角巾がわりにして腕ごと包帯を人の目から隠し、
さらに上からバーバリーのケープタイプのマントを羽織れば完璧。
怪我しているのに病院に行く服装にお洒落をするなんて、と思われた方、
そういうときだからこそまともな外見を整えるだけでかなり気分はよくなるものだと、
わたしは今回あらためて認識したような気がします。
たとえ男性の方でもおそらく同じだと思うんですけどいかがなものでしょうか。
(この部分ファッションタグ)
さて、手術は3時に終わり、部屋で夜を過ごしました。
iPhoneでHULUを観たり、ネットを見たり。
一昔前の入院なら本が読めない今回の入院はただ苦痛を耐えるだけの
不毛で無為なものとなったに違いありませんが、いい時代になったものです。
ただ、こういう袋に腕を入れて、ずっと腕を吊られているのがつらかったです。
麻酔が切れてくると同時にビリビリした痺れ、それに続く鈍痛。
見てもお分かりのように、指がパンパンに腫れています。
おまけに肘が回転しないようにがっつりとギプス固定され、
そのギプスの端が肉に食い込んで痛い・・・。
しかし。
手術中も考えていたことですが、麻酔もないのに手術を受けなくてはいけなかったり
そもそも手当も受けられず苦痛に耐えつつ亡くなっていった旧日本軍の将兵のことを思えば、
これしきの痛みでへこたれていては罰が当たる。
レイテのブラウエン挺進について調べ、彼らのカンキポットでの篭城における
壮烈な最後について知ったばかリだったので、どうしても考えはそちらにいってしまいます。
最先端の高度な治療を安全で清潔な環境で受けられるという、
いわば「平和の恩恵」を被ることのありがたさ。
それを思うだけで痛みはどこかに行ってしまったような気がしました。
と無理矢理ブログテーマに絡めたところで続く。
次回更新は明日、丹波哲郎主演の映画「パレンバン奇襲作戦」を取り上げます。