ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

映画「海底軍艦」~帝国海軍認識番号八五六一番

2015-06-06 | 映画

どんなネタ映画でも1日で終われないというのは考えものですが、
いちいち細かいことにこだわっているとツッコミも含めてやることが多すぎ、
相変わらずこの「海底軍艦」も二日目だというのにまだ4分の1くらいしか進んでません。

ここまでのあらすじを三行で書くと、

海に沈んだムウ大陸にはムウ帝国人が高度な文明を持つ海中都市を作り上げていた
ムウ帝国はこのたび地上の世界を征服し、すべての国を植民地にすることにしたが、
なぜか戦後帝国海軍の残党が作り上げた潜水艦「轟天号」を廃棄させることと、
無条件でムウ帝国の支配下に下ることを地球人に要求してきた

4行になってしまいましたが細かいことはよろしい。
まず海に沈んだ大陸の人間がいつどうやって海中で生き延びることができたのか、
という根源的な大疑問を無視しないと話が進まないということなのですが、
それをスルーしたとしても、なぜその人間が体を発熱させたりできるのかとか、
普通に日本語を喋っているのかとか、何万年もそうやって暮らしていたのに
今になってどうして地上に出てきたがっているのかとか、せめてもう少し
言い訳というか説明が欲しかった気がしますが、まあそれはともかく。



見えにくくてすみませんが、これがムウ帝国所属の潜水艦。



ムウ帝国は世界侵略の手始めに、日本の商船を攻撃することにしました。
同時に世界では各名所旧跡がわかりやすく壊滅させられていきます。
パナマ運河爆破、ベニス海底に歿す、香港廃墟となる・・・・。

国連は統合防衛司令部を組織しました。
(が予算の関係で国際会議をするシーンは割愛)

 

空自基地から次々と飛び立つ・・・これはF-4?
いやまてよ、映画公開の昭和38年当時日本にファントムはまだ配備されていなかったはず。
しかし基地がどう見ても百里みたいなんだけど・・・。



この人工衛星は「地球防衛軍」「宇宙大戦争」の宇宙基地の映像を流用しています。
イラストっぽいですが、ぐるぐる回っています。



そして無謀にもムウ帝国潜水艦に戦いを挑む勇者が・・。

アメリカ海軍の世界最新鋭原子力潜水艦、「レッドサターン号」に
不審なものが発見された海域での索敵命令が下されました。



敵潜水艦を発見したレッドサターン号、攻撃をせず後をつけて基地をつきとめることに。



急速潜行~。
ムウ帝国の潜水艦はどんどん深度をとって潜行していきます。
レッドサターンはそれに追随するのですが、深度の限界に。

限界やと部下が言うておるのに艦長が浮上を命じるのが遅いせいで
運悪く最新鋭潜水艦の浮上弁が故障。



ついには水圧で最新鋭原子力潜水艦はぺちゃんこになってしまい、
いとも簡単に海洋ゴミになってしまいました。 

おいおいおいおい。

これ、ムウ帝国の人全く悪くないし。

ところで北極海にはソ連時代から原潜が投棄されているって話がありましたが、
あれって地球に何か影響を及ぼさないんでしょうか。



防衛庁幹部(高田稔)という役名ですが、これは空幕長ですね。
一番偉そうにしてるから統合幕僚長かな。

「レッドサターン号でダメなら手の打ちようがない」

って、あなた、そりゃどんな潜水艦も深度が深過ぎれば持ちませんて。
それにしてもムウ帝国の人たちはもともと地球人のはずなのに、どうしてそんな
深海に住むことができて、地表に上がってきてもアンコウみたいにならないんだろう。

「水爆を辺り構わず打ち込むわけにもいかないし、
・・・・・・そこで頭に浮かぶのは海底軍艦だ」

いやちょっとお待ちください統幕長。
海底軍艦って、ムウ帝国人がビデオで壊せと言っていたあれですか?
海底軍艦を作っていると言われる神宮寺大佐の生死すら定かではないのに、
今のところ噂にすぎない怪しげな潜水艦の話がなぜ唐突に出てくるんです?

「ムウは海底軍艦をマークしている。恐れるだけの何かを持っているはずだ」

なるほど。それならわかります。
オスプレイに反対派が特に執着するということは、相手はオスプレイに
恐れるだけの何かを認めているっていうのと同じですよね。



「少将、神宮寺大佐に急遽連絡をお願いします。
海底軍艦出撃は国連の要望なんです」


何を言っておるのかね海幕長まで。
そもそも自衛官がナチュラルに「少将」「大佐」とか使ってんじゃねー。

だいたい「そこで頭に浮かぶのは」って空幕長が今言ったばかりなのに
いつの間に国連に要望されたことになっているのか。

それに、ここにいる全員、戦後20年にもなって、海軍がまだ存在し、
旧海軍軍人がどこかで旧軍の階級のまま潜水艦を作っているということに

何の疑問も持っておりません。

ちなみに小野田さんが南方のジャングルから帰還したのは1974年、
この10年もあとですから、「終戦を知らなかった」という設定ではないはずですが。

とにかく、ここで皆に詰め寄られ、意を決して話し出す楠見少将。

「よろしい。大佐の名誉のために、わしが今まで胸に秘めていたことを話そう。
大佐は反乱を起こしたんだ」

「反乱!」

息を飲む統幕長と海幕長。
ちなみにここには陸幕長もおりますが、影が薄いのでアップにしてもらえません。
楠見少将、それに続けて、

「この話はこれまでです」(きっぱり)

・・・それだけかい。


しかもどこで誰に対してなんの反乱を起こしたのか一切説明なし。
一同、黙って納得しています。いや納得するなよそこは。



さて、そこにムウ帝国人を捕まえたという警察からのお知らせが。
行ってみると小太りのおじさんが。
神宮寺大佐の娘の真琴の近辺をうろうろしていた人物でした。

「我々を襲った工作員23号はもう少し痩せていたな」

痩せてるとか太ってるとかじゃなくて全く別人なんですけど。

「それで、証拠は?」

「何を聞いても番号しか言わんのです。8561ってね」

工作員8561番だと思われたんですね。
皆が逮捕拘留された人間の黙秘権を行使する権利を全く無視して、
檻越しにいろいろと尋問するのを尻目に、楠見少将、


「待て!8561というのは日本海軍の認識番号だろう」

ハッと驚く8561号。
というか、なぜこの男はこの番号を警察で口にしていたのか。
そしてこの番号だけでどうして楠見は認識番号だと思ったのか。

「靖国神社の予約番号、兵隊達はそう言っとったな・・・。
わしは元海軍少将、楠見だ」

緊張してさっと気をつけする8561号。
真琴をつけ回していたからには当然楠見少将の顔も知っていたはずなんだが。

「よし。官姓名!」

「ハイ!海軍一等兵曹、天野三郎であります!」

嗚呼軍人の悲しい性、上官に軍隊口調で声をかけられると、つい反応してしまうのね。

「うん、わしを知っとるか」

「ハイ、神宮寺大佐からいつもお聞きしておりました!・・ハッ!」

上官からの質問なので反射的に神宮寺の名を口に載せてしまううっかり者の天野兵曹。
しばらく頑張って否定するのですが、ついには

「場所は申し上げられません。私がご案内します」

ぜ場所が言えないのに連れていくことができるのかそれが知りたい。



提供はパンアメリカン航空でお送りしております。



飛行機に乗って現地に向かう一同。
これはニューギニアあたりですかね。
8561号、じゃなくて天野兵曹はスーツを着せてもらっています。
そしてどういうわけか一介の警視庁刑事と、一介のカメラマンと、一介のカメラマン助手、
そして神宮寺大佐のことを嗅ぎ回っていたムウ帝国人っぽい名前の週刊誌記者、
海野魚人の分まで国庫から高い飛行機代が出されることになったようです。

記者を連れてきた理由というのがまたすごくて


「連れてこなかったらじゃんじゃん書き立てられて秘密が漏れるから」

そんなことのために・・・?
このころ、1ドルは360円で海外旅行なんて高嶺の花だったんじゃなかったっけ。

ところでこのカメラマン旗中という男、何をするでもなくいつも真琴のそばにくっついて、
抱き寄せたり抱きしめたり支えたりばっかりなのよ。
で、ニヤニヤしながら天野兵曹にこんなことを聞くわけ。

「海底軍艦の根拠地がどこの島にあるのか、教えてくれたっていいじゃないですか」

いや、今からあんたがたは神宮寺大佐に会いに行く、つまりそこは根拠地なのでは?
しかし、天野兵曹もなぜか

「軍の機密だ」

いや、天野兵曹が今から皆を連れて行くのはその根拠地なのでは?
ところが旗中のツッコミどころはそこではなかった。

「軍の機密?日本は戦争を放棄したんですよ?憲法でね!」(得意げ)

なぜその話になる(笑)

戦争を放棄したということより、まず終戦を受け入れていないらしい海軍軍人たちが
どこかに存在しているらしいということをどうして誰も驚いたり疑問に思ったりしないのか。

映画を見ていて一番モヤっとするのがこれなのですが、製作者はそんなことは

わりとどうでもいいらしく、この旧海軍の残党の話が出ても、なぜか

「日本は戦争を放棄したのに」

ということを登場人物に言わせるにとどまります。
なんか全く話が噛み合っていない人と会話しているような気持ちにさせられます。

ところでこのころの映画を見ると、特に戦争ものでは軒並みこのような新憲法ヨイショを
なり露骨に行っているものが多く、こういうところもまた戦後映画人たちが
戦中とは180度思想信条を転換させた変わり身の早さをうかがわせますが、のみならず、
「戦争を放棄した国」という日本の新しいタイトルは、映画人のみならず戦後日本人に、
当時かなりの期待を持って受け入れられていたのかもしれない、と思わされます。



このころは確かにそうだったんでしょう。このころはね。


そして不思議な御一行様はパンナムに乗って、”どこか軍機で言えない島”に到着したのでした。


続く。(あー疲れてきた)