というわけで、当日いただいてきた東音特製カレンダーです。
月めくりカレンダーでないのが残念ですが、それはとりもなおさず、
年間通じておはようからおやすみまで、あなたの暮らしを
この樋口隊長の微笑みにに見守られて過ごすということでもあります。
三宅さんにならぜひ見守られたいが以下略という声も聞こえそうですが、
それはともかく、ここに新隊長をばーん!と持ってきたところに
樋口新体制での発進への意気込みが窺い知れるというものではありませんか。
さて、後半に入って2曲目は
ファッシネーション(魅惑のワルツ)〜映画「昼下がりの情事」より
「アリアーヌ巻き」がかわいかったヘプバーン主演映画の
あまりに有名な挿入曲のバンドアレンジです。
映画の原題は「Love in the Afternoon」。
LOVEを「情事」とは随分乱暴な翻訳だなと昔も今も思うのですが、
(実際に情事というようなことはなにもなかったわけですし)
このきわどい響きが日本における集客に繋がったんだろうなと思います。
後半はジャジーな雰囲気を取り入れて、ソリストがソロをとる曲が続きました。
ワルツから軽快なボサノバのリズムに変わってから、クラリネット、
フルート、トランペットなどがソロを取り、再びワルツに戻って終わります。
アメイジング・グレイス
フィーチャーされたのは新隊長と共に横須賀音楽隊から転勤してきた
フルート奏者の目黒渚2等海曹。
当ブログの熱心なファンの方に是非聞かせてあげたかったです(笑)
それにしても一つ残念だったのは、遠すぎてソリストの顔まで見えなかったこと。
すみだトリフォニーホールの三階はオペラグラス必携です。
ニカズ・ドリーム
ホレス・シルバーの曲で、バップの名曲です。
わたしもセッションではよく取り上げたものです。
ラテンのリズムで始まり、中間部で4ビートになる構成はドライブ感溢れ、
演奏していても快感で、それゆえミュージシャンに広く好まれています。
場内のアナウンスでは「ニカ」はミュージシャンたちのパトロンをしていた
「ニカ公爵夫人」といっていたようですが、正確には「ニカ」は彼女の
ニックネームで、本名は「パノニカ」。
結婚して「パノニカ・ド・ケーニヒスウォーター」(Koenigswater)
となりましたが、旧姓は
Kathleen Annie Pannonica Rothschild
はい、もうおわかりですね。
ロスチャイルド家のおぜうさまだったわけです。
おまけにこのようなお美しい方でしたので、名だたるミュージシャンが
彼女をディーバのように崇め、曲を献呈したというわけです。
これを見て全員の名前が分かる方は相当のジャズファンです。
右、マイルス・デイビス、ニカを挟んでクラリネットのシドニー・ベシェ、
そしてビッグ・ラッセル・ムーア(トロンボーン)。
ジャズの前田憲男氏が書いたスコアを日本では高校生が演奏しています。
アヴェ・マリア〜シューベルト
アベマリアというと思い出すのがリオオリンピックでの閉会式の「安倍マリオ」。
完璧に左派の政治発現の場と化した今年の流行語ですが、
問題となった「日本史ね」なんかより、こちらの「安倍マリオ」の方が
よっぽど認知度もあり、かつ「氏ね」みたいに不穏当でもないと思いません?
まあ、安倍マリオになったらなったで政治利用とか言い出す人が出るんだろうな。
それはともかく、この曲ではバスクラリネットがメロディを取りました。
バスクラというのは大きくて、立って演奏するときには床に
チェロのようにエンドピンを指して支えます。
一番有名なのは、「くるみ割り人形」の「金平糖の踊り」 。
チェレスタのキンコンカンコンとともに出てきます。
あとざっと思いつくのは音楽まつりでも最後に演奏された
「アッピア街道の松」の主題でしょうか。
バスクラリネットを演奏したのはプログラムによると清水恭子三曹でした。
Have Yourself A Merry Little Christmas
ポピュラー・ユールタイド・フェイバリッツ
今回はクリスマスが近いということもあって、前半にも「ロシアのクリスマス」、
そして後半は思いっきりクリスマスメロディで盛り上げました・
プログラムには「あなたにやさしいクリスマスを」と紹介されていた
「Have yourself〜」ですが、この翻訳は「どうぞ楽しいクリスマスを」
となっていることもあるようです。
ただ、この英語タイトルはそのまま歌の最初の
どーみーそーどーそふぁみれどーれー
という出だしにぴったりはまり、語呂もいいので
わたしはこの曲を邦題で呼んだことがありません。
メリーリトル、というのは「ささやかな」というニュアンスでしょうか。
この曲はすべてのクリスマスソングの中で
「クリスマス・ソング」と並んでもっとも好きな曲でもあります。
Here we’re are as in olden days
happy golden days of yore
Faithful friends who are dear to us
gather near to us once more
Through the years we all will be together
If the fates allow
So hang a shining star upon the highest bough
And have yourself a merry little Christmas now
さあ、また昔のように 黄金に輝く幸福な昔がかえってくる
心からのともだちが昔のようにまた集まってくる
もし運命が許すなら これからもずっと一緒にいようね
輝く星をクリスマスツリーのてっぺんに飾って
そして、ささやかだけど楽しいクリスマスを祝おうね
と適当に翻訳してみましたが、この歌詞がいいんですよー。
わたくし、クリスマスというのはつまり「愛の日」だと思うのです。
世界のどこかにいる愛する人を(そんなに愛してなくてもいいけど)思う日。
あなたを思っている誰かがここにいるよ、と伝える日。
さて、自衛隊音楽隊の演奏会に行くと、いつも感じるのは
彼らの演奏には英語で言うところの「service」があることです。
この言葉には、日本語の「サービス」、
相手のために気を配って尽くすことであるとか、品物を売るとき、
値引きをしたり景品をつけたりして客の便宜を図ることというだけでなく、
たとえば兵役、そして礼拝のことを指すこともあります。
任務でありながら主体は奉仕であり、存在意義の第一が本来
「隊員の士気鼓舞」「儀式・式典における演奏」
である軍楽隊は、音楽家の自己発現とはある意味対極にある、
「service」精神のもとに演奏を行うプロ楽団であることを要求されています。
ですから、定例演奏会におけるそのservice(任務)にも、あくまでも
国民に向けて平易で親しみやすい音楽の世界への架け橋であろうとする
いい意味での「腰の低さ」を感じずにはいられませんでしたし、
この日のプログラムにもそれが現れていました。
本来音楽演奏とはそうあるべきだと思うのですが、もしかしたら
それは音大出ばかりの芸術家集団であるプロオケには
案外難しいところにあるのかもしれません。
さて、ここまで聴いてきて、わたしはたとえば「アメイジング・グレース」の
コーラス部分とか、最後のクリスマスメドレーのどこかで、
三宅由香莉三曹が今にもロングスカートの裾を翻して入場してくるのではないかと
心待ちにしていたのですが、ついに最後まで彼女が出演することはありませんでした。
歌手というのはそれだけで一座を圧して主役となってしまうので、
東京音楽隊の演奏を聴かせるということをコンサートの主眼にすえた場合、
いつどういう風に歌手を配するのかはなかなか難しい問題かもしれません。
が、この日彼女が初めて登場したのはなんとアンコール曲でした。
なんとも粋な登場というか、皆に「待ってました!」とばかりに迎えられ、
満を持して最高に効果的な登場となったのです。
Tommorow〜ミュージカル「アニー」より
いやー、とことん盛り上がりましたね。会場は。
わたしのところからは遠すぎてあまり見えませんでしたが、
彼女が満面の笑みで、あのいつもの「両手バイバイ」をしながら
袖に去る時には、前列近くのファンが熱狂的に手を振り、彼女もそれに答え、
そのやりとりを見ているだけでこちらも思わず微笑んでしまいました。
彼女の登場は、終わってから指揮台の上の樋口隊長と交わしたハイファイブにより、
さらにアンコールにふさわしい明るく楽しいエンディングとなりました。
それにしても、歌手とかトランペットソロというのは
少しの狂いも万人にわかってしまうので、本当にプレッシャーが
すごいだろうなあと、いつも聞く時には他人事ながらドキドキしてしまいます。
あ、あとエレキベースでのランニングもね><
さて、わたしは今まで新音楽隊長の樋口二佐のことをおりにふれて
書いてきたものの、実はご挨拶させていただいたのは今回初めてです。
「音楽まつりは樋口さんとお知り合いの方の隣で見まして、
その方が『ひぐちさーん』と手を振るのでわたしも一緒に手を振ったら
『ご存知なんですか』といわれたので
『いえ、向こうはこっちを知りません』といいました」
「はあ」
「また、観閲式ではやっぱり樋口さんをよくご存知の方の隣だったので、
その方と一緒になって『ひぐちさーん』と手を振ったらその方にも
『ご存知なんですか』といわれたので、『いえ向こうはこちらを(略)と」
「・・・これからは知り合いだと言えますね」
はい、そうさせていただきます。
そうそう、それからプログラムを見ていて気付いたのですが、
トロンボーンの「国防男子」が東京音楽隊に転勤してきていました。
全国のファンの皆様、ここに謹んでお伝えしておきます。
一層これからの東音から目が離せなくなりますね。
最後になりましたが、今回の演奏会参加にご配慮下さいました
皆様方にこの場をお借りしてお礼を申し上げます。