「いせ」が佐世保に出航した日、呉は晴天で暑くも寒くもなく、
まさに「護衛艦日和」、「クルーズ日和」というべきで、こんな日に
もともと計画していたわけでもないのに充実した艦船めぐりに参加することができ、
本当にラッキーだったと思っています。
ツァーに参加すると艦船めぐりのパンフレットがもらえるのですが、
これがちょっと気に入ったのでご紹介。
シンボルマークはキリッとした水兵さん。
ここにも書いてありますが、案内は海自OBです。
たった30分のツァーですが、それだけに解説は重要。
言ってはなんですが、横須賀軍港クルーズの茶髪青年のそれとは
はっきり言って当事者だけに桁違いに質の高い解説でした。
クルーズは自衛艦の繋留してある桟橋をみて30分で帰ってくるので、
船は実質二河川の河口を1ミリも出ることはありません。
当然音戸の瀬戸など、ちらっとも見えないのですが、一応呉アピールしてます。
で、この魚くんが、
「て〜っ 呉に泊まろうょ」
と言ってるのですが、この「て〜っ」って、ご存知のように護衛艦の魚雷発射の掛け声。
呉の魚は「て〜っ」と鳴く。てか?
意外とちゃんとした解説でわろた。
ここでも一番下のお魚が、
「対空ミサイル シースパロー て〜っ」
すわ、江田島の向こうから北朝鮮のミサイルがっ!?
この対潜ミサイルアスロック、どう見ても自衛隊基地に着弾するな。
かたや夕暮れにまるで花火のように上がっているのは、
「チャフロケット アルミ箔片だ〜」
魚たちが説明している哨戒機を搭載した護衛艦は「さみだれ」か「さざなみ」か・・。
「て〜っ(いちいち可愛いぞ〜)
いせ おおすみ ひびきだ〜っ」
おっと、今日を境にこのパンフレットは訂正してもらおうか。
「いせ」ではなく、そう、「かが」にね。
遊覧船は、アレイからすこじままで行って帰ってきます。
潜水艦桟橋を見るためですが、解説の方がここで
「潜水艦が海中でエンジンを動かすにはスノーケルで空気を取り入れますが、
この新型潜水艦にはAIPが搭載され・・・・」
と説明をしているのを聞いて、わたしたちは、
「いやいやいやいやw」
「それは(一般の人には)わからないw」
と失礼ながらこっそりツッコミをいれてしまいました。
昔、それこそ「いせ」の体験航海で古い写真を見せられ、
「山本五十六はどれかわかる?」
と聞かれてコンマの速さで指をさしてえらく驚かれたことがあり、
わたし自身は逆に、驚かれたことに驚いたという経験から、いわゆる
ヲタクの常識と一般人の常識の間にはとてつもない開きがあることを知っています。
しかしだからと言って、一般人に合わせた話ばかりをされてもね。
どのレベルに焦点を合わせて話をするかは案内の方にとっても難しいところでしょう。
右側がX舵で左が十字舵の潜水艦です。
ここでもう一度パンフを見ていただきたいのですが、まずパンフ全体に
白い煙がもくもくとあしらわれているのにご注意ください。
左のお魚くんがこの白い煙のことを、
「バッテリー充電中だ〜っ」
と説明してくれていますね。
また、左から順番に
「水中排水量4,200トン、動力潜水艦で世界最大よ〜っ」(女の子?)
「X舵だ〜っ」
「ハープーン級対艦ミサイル、搭載しているよ」
「定員65名、そうりゅう型潜水艦」
左には唯一タコがいて、潜水艦から曳航されているデコイに向かって
「デコイだ〜っ にげろ〜っ」
デコイとは、敵を欺瞞して本物の目標と誤認させる目装備の総称。
つまりデコイから逃げる必要はないんですが・・。
あ、タコだからか(笑)
「夕呉クルーズ」
では、日没時の自衛艦旗降納の際のラッパについて
「10秒まえ〜パンパパ〜ン じか〜ん〜っ
ラッパ譜 君が代 吹奏
日の入り時刻に合わせ、吹き手の唇や行きの強弱の調整だけで
ドソドミソの5音の組み合わせて吹かれます」
とこれもお魚さんが説明してくれています。
潜水艦救難艦「ちはや」。
先日進水式に立ち会った「ちよだ」は、やはり潜水艦基地のある横須賀に、
今の「ちよだ」と入れ替わりに就役する予定となっています。
案内の方は、「ちはや」が深海救難艇(DSRV)を搭載していることなど、
潜水艦が沈没した時の救難についても詳しく説明していましたが、
もしかしたら現役時代は潜水艦に乗っていたのかもしれません。
左舷側岸壁にはたくさんのキャプスタンが置いてありました。
「ちはや」の搭載品でしょうか。
幹部候補生学校の卒業式の日に見送った「ふゆづき」に再会しました。
「ふゆづき」には飛行学生出身士官が練習航海で乗り組んでいます。
この後も、国内の公開には最後まで同行しますが、5月14日までとなっており、
練習艦隊が遠洋練習航海に出立するのと別れて舞鶴に帰港する予定です。
今「ふゆづき」はお食事中(油船がいる)ですね。
練習艦隊旗艦「かしま」。
練習艦隊は明日5月5日呉を出航し、鳥羽に向かいます。
伊勢神宮への参拝を行なった後、5月8日に晴海に到着。
5月22日に遠洋練習航海に向けて横須賀から出航する予定となっています。
輸送艦「おおすみ」のハッチが開くのか、それとも閉めているのか。
今wikiをみたところ、あの不幸だった事故のことは、
「広島県大竹市の阿多田島沖の瀬戸内海で、
無謀な航路横切りを試みた遊漁船に異常接近され、
おおすみは再三警告、減速したが衝突された」
とはっきり書かれています。
IHIの造船のためのブロックを乗せた台船の近くも通ります。
こういうのをブロック工法というのだという説明がありました。
ドックでほぼ建造中の大型船は「NYK スワン」。
NYKはニューヨークのこと?(多分違う)
調べたところ、「スワン」はコンテナ船のようです。
「スワン」はこの「ファルコン」の7番艦だそうです。
「戦艦大和と同じ”バルバス・バウ”を採用しています」
と案内の方。
バルバス・バウ( Bulbous Bow)とは「球根状船首」という意味で、
バルバスには「醜く膨れた」という意味もあります。
効果は造波抵抗を打ち消すためのもの。
今「ファルコン」には荷が空っぽなので船体が完全に浮き上がり、
球根が海上に出てしまっていますが、万が一このような状態で航行すると、
抵抗を抑えるという本来の目的は全く果たさなくなるのだそうです。
遊覧船はアレイからすこじままで行き、「さざなみ」の横まで行って、
そこから元来た航路を戻って行きます。
デッキのシートでは、乗り込んでいたテレビ局のクルーが何人かに、
ツァー中ずっとインタビューをしていました。
たった30分のクルーズで、しかもずっとその間解説の人がしゃべっているのに。
ケンケンさんによると、ツァー最初にすれ違った「くにさき」の作業艇は、
ここ!呉地方総監の桟橋に連絡のためにいるとのことでしたが、
用事は済んだらしく、作業艇の姿はもうありません。
その代わり「YF」、つまり交通船が一隻桟橋につけていました。
今から誰かを他の船に運ぶのか、それとも運んで来たのか・・。
交通船は日本の旗をつけています。
艦番号113の「さざなみ」を左舷に見ながら回り込んで行きました。
「たかなみ」型の護衛艦のシェイプは感動的なまでに美しい。ということが
わたしと鉄火お嬢さんの間での二議一決を見ました。
「さざなみ」インド洋をはじめソマリアにもなんども派遣されています。
わたしたちにはこの時想像すべくもありませんでしたが、「さざなみ」は
2017年5月2日、つまりこの写真を撮った5日あと、呉を出港し、
安全保障関連法に基づき、自衛隊の艦船が平時に米軍艦船を守る
「米艦防護」を初めて実施することになっていたのでした。
「さざなみ」は呉を出航した後、護衛艦「いずも」と共に房総半島沖周辺で
米海軍太平洋艦隊所属の補給艦と合流し、周辺の警戒、監視にあたりながら、
現在四国沖まで共同で航行をしているはずです。
その後、四国沖で補給艦と別行動をとり、5月15日に「いずも」とともに
「シンガポール共和国及び同国周辺海空域で実施される
シンガポール海軍主催国際観艦式及び多国間洋上訓練」
に参加することが決まっています。
わたしたちが「さざなみ」の横を航過したとき、ゴムボートの上で
10人くらいの隊員がなにやら整備関係らしいお仕事をしていました。
船の上から乗客たちは手を振り、わたしたちは自衛艦旗を降ったところ、
手の空いている何人かの隊員は手を振って答えてくれました。
何人かの表情には微笑みも浮かび、こうしてみる彼らの様子は
重大な任務を前にしているとは全くうかがいしれません。
コメント欄でも描いたことですが、今までなんどもソマリア海域に派出され、
時には実際に海賊と対峙したことのある(2009年3月)「さざなみ」乗員は、
たとえ自衛隊の歴史上初めての任務であろうと、
彼らにとっての日常の延長線上にある当然の任務として、
いつも通り、この派遣にも涼しい顔で臨んでいくのでしょう。
「いずも」と「さざなみ」の勇姿はこのトップの動画で見ることができます。
「さざなみ」が無事任務を全うして何事もなく呉に帰ってくることを、
あらためて心からお祈りします。
呉シリーズ、続く。