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映画「潜水艦シータイガー」〜戦艦「ブランデンブルグ」を追え!

2023-09-04 | 映画

第二次世界大戦時のイギリスで公開された潜水艦映画、
「潜水艦シータイガー」続きです。

休暇が始まったその日に、極秘のミッションのため呼び戻された
乗組員の各々の思いとは全く無関係に、「シータイガー」は
全くどこに行くかもわからないまま、出港準備が整えられました。



艦隊司令官らに挨拶をして、テイラー艦長が乗艦し、
書類を片手に持ったままセイルを上るという、
実に本物っぽいけれどおそらく外部者には難易度高いシーン。

艦長を演じたジョン・ミルズは実地に潜水艦に乗り込み、
訓練を経験して演技に備えました。



” Let go, forward.”
” Let go of your forward spring.”

この号令とその復唱で、艦首側の舫が外されます。


” Slow astern, starboard.”
(右舷、微速後進)

「シータイガー」出港。

横のS-211と「シータイガー」は同じS級という設定なのに、
同じSでも配備された国が違うので、全く形が違います。
しかしそれは言わないお約束。



海軍協賛の潜水艦隊宣伝映画ですから、
任務の細部をこれでもかと再現してくれるのがうれしい。



潜航前に艦長から訓示が行われました。
総員が初めて聞く今回の任務内容は、

「ドイツ軍の新造戦艦『ブランデンブルグ』を沈没させること」



いざという時のパフォーマンスを確保するため、
日中も海上航走を行います。


危険ゾーンに入ったのに海上航走していることに対し、

「”サブ”はアンダー、”マリーン”は水なのになあ」

と屁理屈で文句を言う乗組員たち。



こちら結婚式を中止して戻ってきたCPOマイク・コリガン。

結婚式に出席していた機関室のタグが近づいてきて、

「結婚する気がないのなら、(自分の狙ってる)
タバコ屋のグラディスに渡すから指輪をくださいよ」


と厚かましいことをいいだし、マイク驚愕。



グラディスとは、マイクの婚約者の兄、CPOのディッキー・ダブスが
名前をついに聞き出せなかった「ミス・ハーコート」のことです。



そのとき見張りがドイツ軍の救命ブイを見つけました。

中は無線が打電できて避難できる空間になった浮きブイで、
赤十字がペイントされており、これを攻撃するのは国際法違反です。



ドイツ軍のパイロット3名が味方だと思って合図してきましたが、
敵だとわかると一人が内部から味方に打電を始めました。



そこで艦長はブイのアンテナの物理的破壊を命じました。



「あんたがたの国際法はどうなってる?
救命ブイで助けを求める飛行士を撃つってのはどうなんです?」

「違うだろ?無線で我々を知らせたのでは?
電波を遮断したのは申し訳なかったがね」

「判断が早いですね、ヘア・カピタン」

そこに彼らが呼び寄せたドイツ軍機のエンジン音が聞こえてきました。
ハンスというこの空軍飛行士は、ふてぶてしく、

「こっちも早かったでしょう?ヘア・カピタン」


急速潜航に伴い捕虜は艦内に引っ張り込まれましたが、
このパイロット、やはりただ者ではない。



机の上に出しっぱ(まさか見られるとは思わず)になっている
艦影表から、ブランデンブルグの名前を読み取りました。



さて、偶然恋敵となった操舵CPOと魚雷担当兵長ですが、
そうとは知らないCPOディッキーは、よりによってその恋敵に、
「ミス・ハーコート」と腕に刺青してくれ、と頼んでいます。

「ああ、グラ・・いやアラベラですね」

「アラベラって名前なのか!じゃそれで!」

翻訳ではタメ口で会話していますが、この二人、一応上司と部下なので、
ここではその関係性に配慮しておきます。


ところで刺青といえば、イギリス海軍の揚陸艦が晴海に来た時、
ロイヤルネイビーの皆さんが、士官下士官兵、階級に関わらず、
例外なく二の腕にびっしりと刺青を入れていたのを思い出しました。

それはもう、アメリカ海軍よりはるかにモンモン率高かったですが、
これってイギリス海賊の時代からの海の男の伝統かもしれん。



その会話を横で聞いていたマイク、

「タバコ店の人?それって確か・・グ」

「そうそう、マイク、彼女アラベラっていうんだ。
で、彫る値段だけど、6文字で1文字2シリングです」

ちなみに、年齢はだいぶ下ですが、こちらもマイクの方が階級が上で、
しかもおなじ魚雷担当ということなので、本来敬語で喋るべきところです。

ディッキーは『I LOVE MY NELLY』という元カノの名前の刺青を見せて、

「頭にARAをつけて、NをBに変えて、YをAに変えればいい」

いいのかそれで。っていうかYをAに変えるってどうやって?



ドイツ人捕虜に食事を持っていったホブソンは、捕虜のリーダー格、
ハンスから、君たちブランデンブルグを追ってるだろ、と聞かれます。

「何それチーズの名前?」

とホブソンがとぼけると、ドイツ人たちは笑って彼を馬鹿にしますが、
彼はあえて彼らのドイツ語がわからないフリを通しました。



そのとき「シータイガー」は機雷原に突入しました。
艦体が機雷のケーブルを擦る音がし始めます。

何の音だと訝るドイツ人たちに、ホブソンは

「機雷原だ。集中爆発が楽しめるぞ」

このとき、英語を通訳したハンスに、ドイツ語しかわからない捕虜Aが、

「Minen?(ミーネン、機雷の複数形)」

とパニクリ出しました。
彼らはドイツ語で口論を始めましたが、捕虜Bの、

「昨日クックスハーフェンで見た”あの戦艦”が・・」

という一言を聞きつけたホブソンの目が光りました。



すぐにマイクに見張りを代わらせます。

さっそく、機雷原の恐怖に騒ぐ捕虜Aに、
君らの機雷なのに何心配してるん?と皮肉を。



ホブソンは艦長に捕虜から聞いた
「ブランデンブルグ」らしい戦艦の位置情報を伝えました。


そこに、恐怖で錯乱した捕虜Aがかけこんできました。
艦長に機雷原を通るのをやめてほしいと叫んでいます。

そんな彼を殴り倒し、床に転がったところを何度も殴打したのは
なんと、同じドイツ人のハンスではないですか。

マイクが慌ててハンスを羽交い締めしましたが、
倒れた男はもう虫の息となってしまいました。

ハンスはなぜ捕虜Aを殺そうとしたのでしょうか。



ハンスに艦長はホブソンに通訳させて尋問を試みます。

「Was wollte er sagen?」(彼は何を言おうとした?)

ホブソンが話すドイツ語を聞いた途端、ハンスは顔色を変えました。
今までの会話を全部聞かれていたと知ったからです。

しかしハンスは質問に黙秘を貫こうとします。
彼がAへの暴行に及んだのは、軍機の漏洩を防ぐためでした。

「シータイガー」が、このままだと機雷原を突っ切ると知り、
それに恐れ慄いたAは、「ブランデンブルグ」がキールにいると伝えれば
作戦を諦めて機雷原を通らず引き返してくれると考えたのです。

これに対しハンスは、機雷でたとえ自分たちが死ぬことになるとしても、
情報を渡して国を売ることをよしとしない根っからのプロ軍人でした。

それでは、第3のドイツ人Bはどうでしょうか。



BはAと同じ考えでした。
彼もまた「シータイガー」の機雷原突入をやめさせたいので、
「ブランデンブルグ」をキールで見たと艦長たちにバラしてしまいます。

ハンスはドイツ語でBに囁きました。

”Du feiger Hund.”(この卑怯な犬め)



「ブランデンブルグ」がすでにキールに着いていたことはわかりました。

しかし艦長は諦めませんでした。
彼女がこれからキールからバルト海に向かうなら、
こちらもバルト海まで追いかければいいのです。

それには防御ネットを超えていかなくてはいけません。
艦長はそのためできるだけ海面を高速で航走することを指示しました。



航行中は基本乗組員は暇なので、思い思いに過ごしています。
こちらおっさん二人、刺青を彫ったり彫られたり。

方や名前も聞かせてくれない女の名前を刺青しようとする男。
方や自分の好きな女を取られまいと出鱈目な名前を他人の肌に彫る男。

どちらも潜水艦乗員としては優秀なはずだけど、いかんせんあほだ。



NELLYをARABELLAに変更する過程なので、
BELLY(お腹)になってますが、まあ気にすんなって。

そこにホブソンが通りかかり、

「女のために男がする愚かなこと・・」

と皮肉な一言。(でも正論)



そのホブソンですが、ゴードン中尉に

「前に模型作ってたけど、息子さんは気に入った?」

と聞かれて、

「いえ。あれは無くしてしまいまして」

と下を向いて答えます。
実は義兄と乱闘した時にはずみで壊れてしまったのでした。



潜水艦は暴風雨の中、海上航走を継続しており、
そこにいたメンバーが全員ワッチ増員に呼ばれて行ってしまいます。

「あー、陸軍に行けばよかった」

こんな時必ず乗組員がつぶやく決まり文句と共に皆が出ていくと、
ホッブスは一人になり、息子のために新しい模型を作り始めるのでした。


そのときマイクがタグを呼び止めました。

「刺青はどんな感じ?」

刺青のことは引き止める口実で、彼が気にしているのは
タグが指輪をねだった時に言った、

「式に出席していたピアノを弾く男(チャーリー)が彼女を気に入っている」

といういらん情報でした。

「エセルがあいつに興味あるって・・なにか知ってるの?」

「いやいや、ただ彼女は音楽が聴きたかっただけだと思うよ〜」

無責任な答えに、余計に心配そうなマイク。
タグっていうのは掻き回し屋っていうか、かなり性格悪いな。



「シータイガー」はバルト海に入ろうとしていました。
その途端、機雷のワイヤを艦体が引っかけた手応えが。



”Stop boat.
Full astern together.”
(機関停止 全速後進)


まるで格闘技のように全身を使って操作。



ここからの一連のシーンには、頻繁にエンジンテレグラフが表示されます。
外界の状況を模型で表すしかない状況で、
艦長ー機関士ーテレグラフの繰り返しが緊迫感を高めます。



そのとき、防御網に突入してしまいました。



艦長は後退の後前進全速を指示しました。
正面から何度も突入して網を破ってしまう作戦です。

実際そんな方法で防御網って破れるようなものなんですかね。

現場が「次の突入で成功するか」で5シリング賭けて盛り上がる中、
あっさり2度めに潜水艦は防御網を突破。

そのままバルト海に突入し、しばらく平穏な海上航走が続きました。



しばしの平穏、乗組員たちは思い思いに過ごしています。

ホブソンは模型作りの続きを、マイクは指輪を眺めながら、
そしてタグはディッキーの刺青の「ARABELLA」を
「RABELLA」と後1文字というところまで完成させました。

「ブランデンブルグ」を追い続けてここまできましたが、
そろそろ燃料の残存にも心配が生じてきます。



総員配備は突然やってきました。
モールス信号が光ったところが発見されたのです。



潜望鏡深度にして艦長が突き止めようとしますが、
まだ日の出前で艦影を認識することができません。



当初見えたのは駆逐艦一隻だけでしたが、
ホブソンの聴音により、影にもう一隻いることがわかりました。
後ろにいる艦が見えてきたところで艦影図と見比べます。



「ブランデンブルグだ!」



全魚雷を総動員しての攻撃開始です。
艦長命令を放送しているのはフランキーというスチュワード。

男たちの一人が興奮して、

「発射管全部だって?ブラインド・オライリーだぜ!
ブランディボールをぶっ放せ!」

ブラインド・オライリーは、たとえばゲートが空いた時などに
一斉に皆が飛び出す様子、ブランディボール
チョコの粉をまぶした「トリュフ」(つまり砲弾)のことです。

どちらも「ブランデンブルグ」と似ているだけのダジャレですが、
日本人には全く伝わらないので、字幕ではただ、

「ブランデンブルグの登場だ!」

となっています。
翻訳と字数の限界でこれは仕方ないかもしれません。



魚雷深度に浮上させる操舵のディッキーに、
「ファースト」ブレース大尉が言うのは、直訳すると

「あまり上げすぎないようにな、コックスウェイン。君の義弟のために」

マイクが魚雷を撃ちやすいようにってことでしょうか。



攻撃開始。

艦長はナンバーワンに艦の位置を知らせながら、
ナビのゴードン中尉に逐一艦位を報告させます。

「グリーン4−0、サー」

えーと、グリーンって何かしら。



しかし狙いを定めるには見るたびに位置が変わっています。
翻訳されませんが、このとき艦長は、

「バカなフン族め、俺が見ている間くらいじっとしてろ!」

なんてことを、どさくさ紛れに言っています。

フン族は別にドイツ人の祖先でもなんでもないのですが、
少なくとも第一次&第二次世界大戦当時、
イギリスと連合国はドイツを「フン族」と呼ぶのを好みました。

1900年の義和団の乱の際、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の、

「敵に対してフン族のように容赦するな」

という演説から、ドイツ人の野蛮性を強調するあだ名となっていたのです。

しかし、揺れすぎでなかなか照準が合わず、一旦攻撃は様子見になりました。
深度10メートルのまま待機です。


そしていよいよ攻撃の準備開始。
字幕では「必ず成功させる」となっていますが、この部分実際は

”Looks as if we've got it on a plate.”
=「まるで皿に盛ったみたいだ」


大きな仕事に対処しなければならないと言う意味ですので、どちらかというと

「大仕事だぞ」

みたいなニュアンスかもしれません。


そのとき床からひょっこり頭を出したのは、
エンジンルームのおっさん。(役名なし)

「顔出さずに艦長と俺たちに任せてろ」

頭を抑えられてまた潜っていきました。



そして、ついに艦長が瞬間の好機を捕らえます。

「攻撃用潜望鏡をしまえ。グループダウン」



左「コントロールルーム、オールチューブス・レディ」

「キャプテン、サー、オールチューブス・レディ」



「スターンバーイ・・・」

「スタンバイ!」

「ファイア!(発射)」


続く。