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「ミートボールで着艦を」フライトデッキ雑景〜空母「ミッドウェイ」博物館

2019-06-19 | 軍艦

懸案だったアイランド・ツァー参加を果たし、ホッと一息。
朝一番のオープンと同時に飛び込み、さらに今回のサンディエゴはわたし一人旅、
時間をどう使おうが全くの自由で、時間はたっぷりあります。

前回見たところも、見落としたところもとにかくもう一度
新しくなったカメラで撮りまくろう、とハンガーデッキに降り立ちました。

アイランドのフライトデッキ階には、前にも買いたことがありますが、
フライトデッキ・コントロールルームがあります。

英語で「こっくりさん」を意味する「ウィジャボード」という名の
(フランス語のOuiとドイツ語のJa、はいという言葉の組み合わせ)
ハンガーデッキでの航空機の現在位置をミニチュアの模型で表します。

今ではウイジャボードの代わりにデジタルの画面が使用されているのでしょう。

PINOLOGYという言葉の意味がそもそもわからないのですが、
おそらくウィジャボードに使用する航空機以外のマークでしょう。

Jack spot なんて全く想像もつきませんが、ジャックポット(大当たり)
とかけているのかな。

「ファウルデッキ」は、デッキが航空機によって占有されているとき、
他の航空機が着陸するのを防ぐことを指す専門用語です。

さて、フライトデッキに出てきました。
まだあまり人がデッキに出てきていません。
A-6イントルーダーが鬼のように両側に吊っているミサイルが壮観です。

(これはミサイルではなくMk-82《250ポンド》爆弾というご指摘いただきました)

さすがは全天候型爆撃機、よく見たら胴体の下にもミサイルが。

イントルーダーの向こうでは、映像を交え元艦載機パイロットが
空母へのランディングについての薀蓄を語るイベント、
「ベテランズ・トーク」が始まっており、盛況です。

♫♪ 今は、もう、動かない〜おじいさんのカタパルト~🎵

というわけでカタパルトのレールは塞がれていますが、レールのあったところに
飛行機を打ち上げるためのカタパルトのクレイドルがポツンと置かれています。

空母の脇にある通路兼退避場所をキャットウォークといいます。
もともと高所にあるネコの通り道のような形状のものをこう呼び、
ファッションショーのランウェイのこともなぜかキャットウォークと言いますが、
こちらは高所だからというよりモデルさんが歩くからのような気がします。

何についていたか忘れましたが(ファントムIIだったかも)、
翼のAIM-9サイドワインダー空対空ミサイル

HEATSEEKERとありますが、サイドワインダー光波誘導型、
つまり赤外線誘導弾です。

甲羅を背負っているけど前から見たらスヌーピー。
E-2ホークアイは、プロペラ機です。

大きなレドームを乗っけている上、横方向の操縦を行う垂直尾翼の動翼が
左右非対称(4枚ある垂直尾翼のうち、左から2枚目にだけ動翼方向舵がない)
なので、操縦は大変難しく、「じゃじゃ馬」と呼ばれているそうです。

さて、ヘリの展示は昨年見たときと大幅に変わっている部分がありました。
このH-60シーホークのコクピットには・・・

去年はいなかった美人すぎるTACOが!
「ミッドウェイ」現役の頃も、アメリカ海軍には女性のパイロットが
(主に輸送機)少数とはいえ存在していました。

「空母ミッドウェイ」という回想録にも、綺麗なトレーダーのパイロットに
トイレに入っている間見張りを仰せつかるという話がありました。

シーホークの後部です。

内部のほとんどを占めるのが牽引のための巻き上げ機という感じですね。

こちらはUH-1ですが・・・、

このコクピットにも去年はいなかったイケメンすぎるパイロットとコパイが。
ちなみにヘリコプターの場合は固定翼機と違い、右席が種操縦士だそうです。

汎用ヘリで、艦載機としてはトンボ釣りなどが重要な任務だそうですが、
ガンシップのように見える武器も搭載しております。

エンジン部分を綺麗に塗装して見せてくれています。
これも去年には見られない展示方法でした。
「ミッドウェイ博物館」にいかに資金が潤沢に投入されているかがわかります。

去年中を見学しそこなったHH-46 シーナイト、中から人が出てきました。
入ってみることにします。

軽量化のためキャンバスを張っただけの椅子。
シーナイトはバートル社のCH-46です。
日本ではこの派生型川崎重工製品が陸海空すべてに導入されていました。

海自では対機雷戦用「しらさぎ」という名前で運用されています。

ベルのようなものがたくさんくっついた部分は
非常用の脱出口のようですが、上に「消火器」の表示もあり。

このベル、なんだろう。

まさかとは思うけど、いざとなったときドアを噴き飛ばす爆破装置とか?

後部から見たシーナイトのコクピット。

丸窓上部の装備はほぼ新品に見えるので、多分再現されたものでしょう。

エンジンが小さいので陸軍からは敬遠されていたのを、エンジン換装して
海兵隊が採用したことで「シーナイト」として軍利用されるようになったそうです。

アポロ計画で活躍したことでも有名なSH-3シーキング。
期待には誇らしげにリカバーしたカプセルの数が5個マークされています。

この内部にも入ることができるようになっていました。

コクピットには侵入できないようにアクリルの衝立が全面的に張られ、
さらに「バリアーを越えないでください」とわざわざ断り書きがありました。

インスタ蝿が入り込んで写真をアップしたことでもあったんでしょうか。

アポロ計画で帰還した宇宙飛行士たちが乗り込んだシーキング機内。
ジム・ラベル船長もこの赤いキャンバスの椅子に座ったと思うと胸熱ですね。
おそらく本物は張り替えられてしまったと思いますが。

「シースプライト」という名前を爽やかな炭酸飲料のように思い込んでいたけど、
実は「海の小鬼」だと知ってちょっとびっくりした、と前にも書いたSH-2。

まあ、おそらく炭酸飲料の方は「妖精」という意味で採用したのだと思われます。

ここにも乗員がアサインされていました。

シースプライトの機体のスコードロンマークに採用されているのは、
海事用語で「ファウルド・アンカー」と呼ばれる意匠です。

先ほど「ファウル・デッキ」で調べた時に「ファウル(Foul)」という言葉が
海事の専門用語で、「難しい」とか「間違い」という時に使う単語、
ということがわかったばかりなのですが、もともとは
錨に鎖が絡みついた状態=「ファウル」から派生しています。

例えば、底質のよくない海底のことを「ファウルボトム」
帆船が目的の進路を維持できないくらいの風を「ファウルウィンド」
そして空母の甲板がビジー状態でもうこれ以上着艦できない状態を「ファウルデッキ」

あと、「ファウルホーズ」(Hawse-錨鎖孔)というのが

「二つの錨で舫がクロスするその上に船が横たわること」

という状態だそうです。
よくない事態であることはわかりますが、具体的にどんな状態か全くわかりません。

空母の航空機着艦に「ミートボール」が使われるということをご存知でしょうか。

ここには「フライング・ザ・ボール」とあり、さらに

「ランディング・ウィズ・ザ・ミートボール」(ミートボールで着艦)

としてこんな説明があります。

フレネルレンズ・オプティカル・ランディング・システム
(FLOLS、
日本語では光学着艦装置)は、
今日のハイスピードな航空機の着艦にも使われています。

着艦態勢に入ったパイロットは「コール・ザ・ボール」を行い
「ミートボール」と呼ばれる明るいオレンジの縦ライトを頼りにします。

パイロットから見て飛行機がグライドパスより高い位置にあるときは
ボールは基準ライトより上に、低いときは基準ライトより下に見えるのです。

飛行機が危険なほど低すぎる場合は、ボールは下端で赤く、
飛行機が高すぎる場合、ボールは上端で点灯し警告を与えます。

前にも紹介しましたが、「ミッドウェイ」アイランドのてっぺんで
(目もくらむような高所です)工事をしている人がいました。

ハーネスをつけているようですが、高所恐怖症にはとても務まりますまい。
このように、毎日どこかしらの補修・改修を行なっているのがミッドウェイ博物館です。

ミートボールの近くに、レディルーム、パイロットの控え室に続く階段を見つけました。
これも三年目にして初めてたどり着くことができた展示です。

早速階段を降りて行ってみることにしましょう。

 

続く。





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4 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
ハンドラーの矜持? (ロビ)
2019-06-19 23:55:43
エリス中尉

>>今ではウイジャボードの代わりにデジタルの画面が使用されているのでしょう。

2017年7月22日就役の最新鋭原子力空母CVN-78ジェラルドRフォードのフライトコントロールでも、
ウィジャ盤は現役で使用されているようです。
https://www.businessinsider.com.au/uss-gerald-r-ford-tour-largest-aircraft-carrier-2017-12

私の定期購読書によると【デジタルモニター式の開発をしてるものの、盤上で瞬時に駒を動かし状況を把握するハンドラーの指捌きには敵わない】のだとか。
平面モニター式は未完成でも、ハンドラーが動かした状況をモニターに反映するシステムは実用されており、ニミッツ級にも装備されているそうです。
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Foul hawse (Unknown)
2019-06-20 06:00:09
Foul hawseとは、双錨泊する際に錨鎖が絡んでしまうことです。

最近の護衛艦は投錨時に艦首のソーナードームを傷付けないように、艦首を尖らして、艦首と左舷に錨を付けていることが多いですが、伝統的には、船首両舷に錨が付いているものがほとんどです。

なぜ怒りが二つもあるかというと、去年、台風の大風で錨が効かず、関西国際空港の連絡橋に衝突してしまった貨物船がいましたが、あのように大風が予想される場合、錨の効きをよくするため、一つではなく二つとも錨を入れることで、効きをよくしますが、これを双錨泊と言います。http://www.meiwakaiun.com/meiwaplus/tips/tips-vol25/

錨二つを入れながら、真っ直ぐに後進すれば、そうはなりませんが、真っ直ぐに後進せず、ふらついてしまった際に左右で絡んだ状態がFoul hawseになります。日本語では一語で表す言葉はないと思います。

飛行甲板のPINOLOGYはピンのTerminology(定義)という意味の造語でしょうね。Jack Spotは飛行機をジャッキアップする場所だと思います。

A-6がぶら下げているのは、Mk-82(250ポンド)爆弾で、ミサイルではありません。

SH-60の次の写真はUH-1でSH-2ではありません。
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みなさま (エリス中尉)
2019-06-20 08:59:42
ロビさん

本当だ!まさに昔のままのウィジャボードですね。
やっぱり軍艦というのはアナログな機構をいつまでも残すものなんだなと思います。
それにしても、トランプ、お札にサインするんじゃねー(笑)

unknownさん

ジャックスポット=ジャッキアップするスポット。
なるほど、これもちょっとシャレ入ってますかね。

ご指摘の間違い、前者は知識不足、後者はうっかりミスでした。
本文訂正させていただいております。
ご指摘ありがとうございます。
返信する
現代空母の着艦仕組み (お節介船屋)
2019-06-20 13:49:07
空母から60海里が航空管制圏でありCCAエリア、マーシャルと呼ばれこの空域に帰ってくるとマーシャル管制官から空母接近方法、上空待機位置、待機高度が指示、残燃料が少なければ空中給油を受けたりし、順番を待機位置で待ち、着艦許可が出たパイロットは主飛行管制所であるプライマリー・フライト・コントロールのエアボスとコンタクトし残燃料や機体状況を報告、決められた手順で着艦のアプローチを続けます。
1.2㎞手前からアングルド・デッキ左舷艦尾にいる着艦信号士官(Landing Signal Officer 白ベスト、エンジン音聴取のため唯一ノーヘルメット許可の士官)の指示で接近、この士官が機体の姿勢を正しい位置に来るよう指示します。
FLOLSの位置はLSOより前方にあり、黄色灯と赤灯で高さ、青色灯で左右のずれを表示します。
ミートボールのライトだけで接近、アングルドデッキのセンターラインと艦尾の垂直表示灯がTの字になるように機体修正しつつ降下、適正な降下率で降下すれば機体のフックがアレステング・ワイヤーを捉えます。
着艦寸前LSOが高度が低かったり、左右に振れ過ぎていると判断したならFLOLSの赤灯を全て点滅させ、ウェーブオフ着艦やり直しを命じます。
なおF/A-18戦闘攻撃機は手放しで着艦できるレーダーとデーターリンクを組み合わせた電子式の自動着艦装置で着艦も可能となっているそうです。
参照海人社「世界の艦船」No757
http://search.yahoo.co.jp/r/FOR=Ov.bAj5V3iiUPEplDOGYg26e.OKY5lulFiwpj39fdINDFlsmYzNYuf4_.KbNWP9jrKjQG9JBMmY_fSKS26sanTplzJri2rUqvJojhvBZFHkkcmTCxKJLJm4oM2J0atEUevHMV_sISbZKwxxC.T0w3GltMsKOi8dP9hBqoHixKqwD5Tm5xW8OalLMcnI_n0TSN1vPYuIIKWfIHN1u.72HUivl4iOE_4FVAQ--/_ylt=A2RC2UYCEAtdnGQA10ODTwx.;_ylu=X3oDMTBtdTY1Z3BjBHBvcwMyBHNlYwNzcgRzbGsDdGl0bGU-/SIG=121ofrl1i/EXP=1561106882/**https%3A//www.youtube.com/watch%3Fv=YEpO2GOsR2U
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