オーストラリア海軍の補給&給油艦、「スタルワート」の艦橋から下を見ると
そこには紛れもなく駆逐艦らしき艦がいました。
HMAS「ホバート」HOBART DDG39
です。
イージスシステムを搭載していることは艦橋に装着された
8角形のAN/SPY-1Dレーダーを見れば一目瞭然。
艦橋前のMk41垂直発射機は海上自衛隊の護衛艦でお馴染みですが、
RANの駆逐艦でこれを搭載しているのは「ホバート」級だけになります。
あとは全てフリゲート艦ですが、よく言われる
フリゲート艦とデストロイヤーの違いは、一言で言ってサイズです。
フリゲート艦は駆逐艦より小型で、対潜水艦に使用され、
全てではありませんが駆逐艦は対艦・対空誘導弾向きです。
フリゲート艦は自衛隊には長年存在しなかった言葉で、
「くす」型護衛艦(アメリカ海軍のタコマ級フリゲート)の
「かや」以来ご縁がなかったわけですが、
もがみ型護衛艦、Mogami Class Frigate
「くす」型護衛艦(アメリカ海軍のタコマ級フリゲート)の
「かや」以来ご縁がなかったわけですが、
もがみ型護衛艦、Mogami Class Frigate
が建造されて、半世紀ぶりにフリゲートを持つことになりました。
艦種となるFFMはフリゲートを表す「FF」に機雷の「M」からきています。
少し前、掃海部隊の規模縮小と掃海艦の引退がありましたが、
従来型と違い、機雷戦能力を導入した「もがみ」型は
この部分を埋めるタイプとして機雷戦能力を搭載しています。
艦種となるFFMはフリゲートを表す「FF」に機雷の「M」からきています。
少し前、掃海部隊の規模縮小と掃海艦の引退がありましたが、
従来型と違い、機雷戦能力を導入した「もがみ」型は
この部分を埋めるタイプとして機雷戦能力を搭載しています。
「もがみ」と「くまの」
「もがみ」級の命名基準は一目瞭然、「河川」です。
今後続々と就役する予定の「もがみ」型護衛艦の名前は、
FFM-3「のしろ」
FFM-4「みくま」
FFM-5「やはぎ」
「もがみ」級の命名基準は一目瞭然、「河川」です。
今後続々と就役する予定の「もがみ」型護衛艦の名前は、
FFM-3「のしろ」
FFM-4「みくま」
FFM-5「やはぎ」
までが決まっており、さらにはFFM-10までが将来的に計画されています。
どんな名前が付くかも楽しみですね。
どんな名前が付くかも楽しみですね。
(個人的には『しなの』『くま』(球磨)『あぶくま』なんかが欲しい)
おっと、閑話休題、「ホバート」です。
名前が掲げられています。
とりあえず「ホバート」甲板に立ってみました。
赤いカンガルーが眩しい。
赤いカンガルーが眩しい。
これは「赤いカンガルー」シリーズから貰ってきた、
多分ファンネルのカンガルー。
カンガルーの向きが逆ですが、どっちに向けてもいいみたいですね。
この辺がおおらかというか、オージーらしい(単なるイメージ)というか。
「ホバート」はRANの航空戦艦の主力艦です。
前回も触れたように、隣の「スタルワート」と同じく、建造者は
ナバンシアNAVANCIAというスペインの会社で、
ナバンシアが「ホバート」のベースにしたのは、
「アルバロ・デ・バサン」級フリゲート艦
Fragatas clase Álvaro de Bazán
でした。
2番艦 F-102 アルミランテ・ファン・デ・ボルボーン
ナバンシアNAVANCIAというスペインの会社で、
ナバンシアが「ホバート」のベースにしたのは、
「アルバロ・デ・バサン」級フリゲート艦
Fragatas clase Álvaro de Bazán
でした。
2番艦 F-102 アルミランテ・ファン・デ・ボルボーン
ちなみに、バサン級一覧
F-101 アルバロ・デ・バサン
SPS Álvaro de Bazán
SPS Álvaro de Bazán
F-102 アルミランテ・ファン・デ・ボルボン
SPS Almirante Juan de Borbón
SPS Almirante Juan de Borbón
F-103 ブラス・デ・レソ
SPS Blas de Lezo
SPS Blas de Lezo
F-104 メンデス・ヌーニェス
SPS Méndez Núñez
SPS Méndez Núñez
F-105 クリストーバル・コロン
SPS Cristóbal Colón
SPS Cristóbal Colón
どれも名前長すぎ。
こちら「ホバート」
ちなみに今時の造船は全てそうなのかもしれませんが、
「ホバート」もプレハブモジュールを組み立てる方法で建造しました。
ただし、この工事でモジュール(ブロック)は建造が遅れたため、
結局三か所に分けて同時進行で工事を行い、艦首部分のブロックだけを
建造責任であるナバンティアが建造したという話です。
遅れた理由というのが、途中でキールブロックが歪んで着底したからで、
その原因は設計者ナバンティアの図面が間違っていたからでした。
結局「ホバート」の建造は予定より30ヶ月も遅れてしまいました。
もちろん予算も超・超過してしまったとか。
そしてオーストラリア海軍に引き渡されたのは2017年6月。
まだ就役して日の浅い艦なので、実績らしい実績はありませんが、
2019年に北部と東南アジアに展開する(つまり”対C国”ですな)
RAN機動部隊の旗艦を務めていますし、
2020年には、リムパックにRANから唯一の参加を果たしています。
目隠し加工にマスクを使ったらすごく不気味になってすみません
「ホバート」は乗艦はさせてもらえましたが、ラッタルを渡った瞬間、
回れ右して帰ってくるようなスペースしか公開していませんでした。
これは、海自の一個連隊がラッタルを通過するのを待っています。
この後、「ホバート」から「スタルワート」に戻った瞬間、
「ホバート」の乗員が何か呪文を唱え出したのでビクッとして振り向いたら、
ちょうど偉い人が下艦していくところでした。
サイドパイプが吹鳴されるはずなのですが、聞こえませんでした。
ロイヤル・オーストラリアンネイビーではやらんのか?
と思って調べたのですが、やらないということはないようです。
手のひらを立てるのがオージー風
回れ右して帰ってくるようなスペースしか公開していませんでした。
これは、海自の一個連隊がラッタルを通過するのを待っています。
この後、「ホバート」から「スタルワート」に戻った瞬間、
「ホバート」の乗員が何か呪文を唱え出したのでビクッとして振り向いたら、
ちょうど偉い人が下艦していくところでした。
サイドパイプが吹鳴されるはずなのですが、聞こえませんでした。
ロイヤル・オーストラリアンネイビーではやらんのか?
と思って調べたのですが、やらないということはないようです。
手のひらを立てるのがオージー風
ちなみにオーストラリアとニュージーランドでは、
∠( ̄^ ̄)はイギリス式だと思うのですが、
この写真を見る限り肘を横に張る陸軍式に見えます。
呪文が聞こえて立ち止まって見ていると、
いかにも偉そうな金ピカがやってきて通り過ぎたのですが、
あまりにも近くを通って行かれたので、カメラを向けるのは遠慮しました。
ちなみにわたしが聞いた乗員の「呪文」は、
「Piping the side」
に類することを言っていたはずですが、今回わかりませんでした。
さて、現在の「ホバート」は、RANにとって三番目の同名艦となります。
初代「ホバート」(I)は英国海軍のHMS「アポロ」を譲り受けたもので、
第二次世界大戦勃発後は地中海掃討作戦の支援に従事していましたが、
日本の参戦後は極東海域に移動し、日本軍の激しい爆撃に耐えました。
連合軍艦隊の一員として活動した際には、13回もの攻撃を受け、
当時の「ホバート」艦長は、その時のことを
「爆弾は、炸裂の赤い閃光が見えるほど近くに落ち、
爆発の熱を顔に感じることができた」
と書き遺しています。
「ホバート」はその後珊瑚海海戦に参加し、1942年5月7日には
日本軍の魚雷爆撃機8機と重爆撃機19機の標的にされましたが、
戦闘機の援護がない中、回避行動で3機を撃墜し、何とか被害を免れました。
1943年7月20日には、ついに日本軍の潜水艦による魚雷攻撃を受け、
13人の将校と水兵が死亡し、さらに7人が負傷しています。
その後終戦を迎えた時、唯一のオーストラリア艦船として
東京湾での歴史的な日本軍の降伏に立ち会いました。
そして1962年「ホバート」は退役してスクラップになりました。
売却され解体したのは何の皮肉か日本の企業だったそうです。
二代目となるHMAS「ホバート」(II)は、RANのために米国が建造した
「パース」級誘導ミサイル駆逐艦(DDG)3隻のうちの1隻でした。
1965年ボストン海軍工廠で就役し、母港シドニーに翌年係留されてからは
ベトナムに3回派遣され、米第7艦隊の「砲列」で艦砲射撃の支援や、
米空母打撃群の見張りや護衛を担当しました。
1967年7月29日、空母「フォレスタル」の火災事故が発生したとき、
「ホバート」は同艦の支援に向かっています。
また、同艦の2度目の配備となった1968年6月17日には、
米空軍機が誤って同艦に向けてミサイルを3発発射し、
乗員2名が死亡、他数名が負傷する事故が発生しています。
この時被害を受けた上部構造物と犠牲になった電気技師長ヘンリー・ハント
ちなみに、この事故の時、「ホバート」と一緒に行動しており、
航空発射ミサイルの被害を受けたと申告したアメリカ海軍艦がいました。
それがなんと、わたしがこの夏、ミシガン湖畔で見学した駆逐艦、
USS「エドソン」です。
まさかRANの記事で、実物見学したばかりの米軍艦の名前を見ようとは。
その後「ホバート」は改装と近代化を重ね、誘導ミサイル発射システム、
バルカンファランクス近接武器システムの搭載が行われ、
1999年には、就役以来100万海里の航海を達成し、
これはRANの艦船としては3番目の快挙となりました。
そして2000年、同艦は艦名の由来となった都市ホバートを最後に訪問し、
退役して南オーストラリア州のヤンカリラ湾に沈んでいます。
バルカンファランクス近接武器システムの搭載が行われ、
1999年には、就役以来100万海里の航海を達成し、
これはRANの艦船としては3番目の快挙となりました。
そして2000年、同艦は艦名の由来となった都市ホバートを最後に訪問し、
退役して南オーストラリア州のヤンカリラ湾に沈んでいます。
■ HMAS「ホバート」(III)
GROW WITH STRENGTH
現在の3代目HMAS「ホバート」(III)は、
「ホバート」級誘導ミサイル駆逐艦3隻の一番艦です。
姉妹艦は、
HMAS「ブリスベーン」 Brisbane (III)
HMAS 「シドニー」Sydney (V)
「ホバート」は、沿岸部の陸上部隊やインフラに加え、
随伴艦の護衛、ミサイルや航空機に対する自己防衛を行います。
最新鋭のフェーズドアレイレーダーAN/SPY 1D(V)を搭載した
イージス戦闘システムは、SM-2ミサイルとの組み合わせにより、
150km以上の距離から敵機やミサイルを交わすことができる
高度な防空システムを海軍に提供しています。
東オーストラリア演習場において、ハープーン爆破実験
「ホバート」には監視・対応用ヘリコプターが搭載されており、
水上戦では、長距離対艦ミサイルや、陸上部隊を支援するための
長距離弾薬を発射できる艦砲を今後搭載する予定です。
水中戦に対する備えとして、最新のソナーシステム、デコイ、地表発射魚雷、
効果的な近接防御兵器の数々を装備する予定です。
水上戦では、長距離対艦ミサイルや、陸上部隊を支援するための
長距離弾薬を発射できる艦砲を今後搭載する予定です。
水中戦に対する備えとして、最新のソナーシステム、デコイ、地表発射魚雷、
効果的な近接防御兵器の数々を装備する予定です。
マリナー・スキル評価期間への出発前、シドニー湾でのHMASホバート
「マリナースキル・エバリュエーション」
とは、安全な乗船作業に必要な能力を備えていることを証明するために
海軍のシー・トレーニング・グループから
数日間にわたって受ける厳しい評価試験のことです。
海上における船舶の安全維持に必要な様々な能力、
緊急事態を克服する能力を試すもので、最初は艦隊基地で、
その後出港して海上で実施されます。
評価対象は、乗艦するチームだけでなく、チームを送り出すボートクルー、
情報を提供するオペレーションスタッフ、
チームを支えるロジスティックスタッフ、チームが準備する武器、
ボディアーマー、無線を割り当てるその他のスタッフ全てとなります。
マリナースキル評価期間を終了しシドニー湾に入港する「ホバート」
海軍のシー・トレーニング・グループから
数日間にわたって受ける厳しい評価試験のことです。
海上における船舶の安全維持に必要な様々な能力、
緊急事態を克服する能力を試すもので、最初は艦隊基地で、
その後出港して海上で実施されます。
評価対象は、乗艦するチームだけでなく、チームを送り出すボートクルー、
情報を提供するオペレーションスタッフ、
チームを支えるロジスティックスタッフ、チームが準備する武器、
ボディアーマー、無線を割り当てるその他のスタッフ全てとなります。
マリナースキル評価期間を終了しシドニー湾に入港する「ホバート」
「ホバート」前方でローレベル・フライパストを行うリアジェット35。
HMAS Hobart's Combat System Ship Qualification Trials
HMAS Hobart's Combat System Ship Qualification Trials
イージスシステム、VLS発射の映像に
「THAT'S LETHALITY」(それが致命的)
「思考する海軍 戦う海軍 あなたのオーストラリア海軍」
というロゴが現れる「ホバート」のイメージビデオです。
というロゴが現れる「ホバート」のイメージビデオです。
立ち入り禁止だった「ホバート」の後甲板を見ると、
勤務をオフしているらしい乗員さんたちが、
Tシャツに短パンで甲板から海を眺めていました。
勤務をオフしているらしい乗員さんたちが、
Tシャツに短パンで甲板から海を眺めていました。
最後に、Kさんからいただいた写真から、
観艦式のために観音崎を通過する「ホバート」の美しい姿をどうぞ。
続く。
観艦式のために観音崎を通過する「ホバート」の美しい姿をどうぞ。
続く。
・オーストラリア艦は、カンガルーマークの上のステージ上の機器が未搭載になっているが、スペイン艦はこの位置に衛星通信?アンテナドームが装備されている。
・スペイン艦は、艦橋トップに電子戦アンテナが装備されているが、オーストラリア艦にはない。⇒ 電子戦装置がないのは、ちょっと不安ではあります。
・スペイン艦は艦橋の下に洋上補給装置があるが、オーストラリア艦にはない。 ⇒ スペイン艦の洋上補給装置は旧式で、自衛隊では「はつゆき」型(昭和52年から建造)以前の船にしかないタイプです。使い方がちょっと面倒なので、スペイン艦でも、実際にはもう使ってはいないのかもしれません。
「もがみ」型はいろいろな意味で新世代艦です。船が帰って来ると、乗員がパッケージとなって交代するクルー制を採用し、3隻隊に4クルーが発令されます。現時点では、船の戦力化が優先で、一隻あたり1クルーです。
試験の都合で、現時点では護衛艦隊ではなく、掃海隊群所属になっています。限定的な掃海任務(UUV(無人機)による機雷掃討)を行うので、護衛艦の乗員だけでなく、掃海マークの人も乗っています。
第二次世界大戦中に米軍が敷設した機雷を掃海する業務掃海がほぼ完了し、最近は警戒監視にも使える艦艇の必要性が高まっているので「掃海も出来る護衛艦」という位置づけで「もがみ」型が誕生しました。
今後、沿岸掃海しか出来ない掃海艇の建造は打ち切られ、深深度掃海が可能な掃海艦は増勢の見込みです。
フリゲートの大きさは小はロシアのステレグシュチイⅡの満載排水量2,500tからイギリス26型、アメリカのコンステレーション級の7,000t~8,000t、ドイツ計画中の126型10,000tまであります。
オーストラリアの「ホバート」級はオーストラリアで駆逐艦ですがベースのタイプシップの「アルバロ・デ・バサン」級はスペインでフリゲートの呼称です。
前コメントしましたがオーストラリアも「アンザック」級フリゲートの後継艦「ハンター」級はイギリスの26型をタイプシップとしますので、「ホバート」級駆逐艦を凌駕する満載排水量8,800tとなります。
イギリスは艦隊防空能力を持つものを駆逐艦、個艦防空能力しかないものをフリゲートと呼んでいます。
日本は護衛艦の区分でデストロイヤーもフリゲートもヘリコプターキャリア等を網羅しています。
インドは満載排水量3,150tの「カモルタ」級はコルベットと呼称しています。
中国は満載排水量13,000tの「055」型も駆逐艦の分類です。
各国によって恣意的になっているものと解釈されます。
参照海人社「世界の艦船」No867,941,969