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サンフランシスコ 海洋哺乳類保護センター〜プラウシェアの剣

2020-03-18 | アメリカ

今日はアメリカの話なのでついでにご報告しておきますと、アメリカ人が
コービッド(COVID)-19と呼ぶところの新型コロナ肺炎の広がりに伴い、
非常事態宣言が出されると同時に、息子の大学でも学校閉鎖となり、
即刻寮から退出して23日から始まるインターネット授業に備えること、
というお達しが出ました。

家族でスカイプ会議した結果、カリフォルニア在住の彼の友人が
家に来るように誘ってくれたので、お言葉に甘えることになりました。

5月までの2ヶ月、試験もオンラインで行うそうですが、どうなることやら。

 

さて、今日はサンフランシスコで訪れた隠れた観光名所?をご紹介します。

その日わたしはアメリカ在住の友人とサンマテオで待ち合わせし、
まずお昼を食べることにしました。
中国系がやっているインチキジャパニーズの類ですが、ちょっと珍しい
しゃぶしゃぶの専門店です。

お店の名前は「SHABU-WAY(シャブウェイ)」

この日は私の車でゴールデンゲートまでいくことになりました。
途中でわたしが昔住んでいたタウンハウスが見えてきます。

広大な敷地に町一つが全部業者の管轄なので、
いつも絶え間なく入居者募集をしているのですが、
今回はまた一段と広告が派手になっていました。

わたしが住んでいた頃でも家族用が二千ドルだったのだから、
今はもっと値上がりしているだろうし、きっと入り手ないんだろうなあ。

今日の目的は、ゴールデンゲート国立保養地です。
以前ナイキサイトというナイキミサイルの基地跡をご紹介しましたが、
ナイキミサイルサイトはちょうど画面の上側に位置します。

この写真で橋のように見える部分は砂州で、ロデオビーチといいます。
ロデオ・ラグーンを望む山の上にやってきました。

今日の目的はここ、「マリーン・ママル・センター」。
海洋動物センターです。
インターネットで見て一度来てみたいと思っていたのです。

海洋動物センターは、ナイキミサイルサイトと違い、
基本的に休みなしで営業しています。
民間の非営利団体ですが、会員からの寄付とボランティアで成り立っており、
内部のツァーで得られるお金は運営のために不可欠なのです。

センター創立は1973年。
海洋哺乳類、およびその環境についての研究を行っていますが、
メインは負傷、病気、放棄された海洋哺乳類を保護し、手当てして
リハビリ、そしてリリースすることが大きな目的です。

入り口でお迎えしてくれるのは巨大なゾウあざらしの実物大模型。

寄贈される作品も海洋哺乳類の姿を象って。

鯨の背骨や、頭蓋骨、首の骨がさりげなく転がっています。

 

ツァーの案内をしてくれれるボランティアはローラさん。

案内ツァーが始まりました。
ここは水族館ではないので、入館する、イコールツァーなのです。

当センターの使命の一つに「教育」があり、海洋哺乳類と人間の関わりや
彼らの命を脅かすもの、そしてどのように傷ついた生物を確保し、
自然に返すかということについてのレクチャーを行うのです。

まずボランティアの解説員が皆を連れて行ったのが、漁網で作った
「ゴースト」でした。

ベイエリアのアーティストが作ったという「ゴーストネットモンスター」。
驚くなかれ、これらのネットやロープは、全てクジラが飲み込んでいたものです。

プロジェクト・カイセイ(Project KAISEI)=海星

という日本語を取った、海洋ゴミ対策をおこなう組織が、
鯨の体内から回収しました。

ボランティアは、アザラシの毛皮を持ち出しました。

子供を選んで持たせ、手触りや重さなどについて感想を言わせます。

ついで、通報を受けて海洋センターがかけつけ、
浜辺にいる傷ついた海洋哺乳類をどうやって確保するか、
ぬいぐるみを使って実演してくれました。

「レスキュー中」と書いたシールドのようなものをもって取り囲み、
何人かで追い詰め、ケージの中に逃げ込むようにするのだそうです。

その際、できるだけ人の姿を後ろに隠すのがポイントです。

捕獲すると、病棟に入院させるわけですが、
かならず彼らには識別のために名前がつけられます。

このイルカ「ベーカーB」は、回復後衛星トランスミッターを
装着されてリリースされました。
彼はその後ロスアンゼルス沖のチャンネル島付近で、
100頭以上のイルカの群れに混じって泳いでいるところを
確認されているのだそうです。(´;ω;`)

患者になった動物にはタグが装着されるのですが、
どの動物にはどんなタグをつけるのか、
ゲーム形式で学べるコーナーです。

単三電池そのものに見えますが、こんなの付けてだいじょぶなの?

4種類のタグをそれぞれベルクロで正しく写真にくっつけましょう、というゲームです。
冗談のようですが、アザラシには頭の上につけます。
どうやってつけるんだろう・・・。

カリフォルニアアシカのフェアリーさん♂。
カメラ目線です。

サンタクルーズのヨットクラブで釣り針を口に引っ掛けているところを
見つかり、さらに肝臓にレプトスピラ菌が感染していました。

そこで捕獲され、入院となったそうです。

レプロスピラ菌にかかった動物は抗生剤を投与して治します。

また、水分補給と電解質の補充を助けるために
皮下注射なども行われます。
いちばん下は感染たアシカに新鮮な水を与えているところ。

また、このバクテリアは人にも感染するので、スタッフは
防護服を着たり、接触の前後に入念な消毒を行なっています。

頭の上に認識タグをつけられたアザラシが可愛すぎる。
彼らがここにくることになるきっかけは

「育児放棄された」「栄養失調」「いじめ」「犬に噛まれる」

などです。
カリフォルニアのハーバーシールだけが斑点を有しているとか。

また、育児放棄された子アザラシを見つけたら、決して触らずに
距離を保って24時間いつでもホットラインに電話してください、
と電話番号も書いてあります。

この向こうに「病棟」があるので、静かにしてください、という看板。

周りに、入院している患者の写真と、「VICTEM」(犠牲者)という文字、
そして「叫び声に対するトラウマ」「飢え」「迷った」「孤児」「怪我」など、
収容されるにいたった直接の原因とともに、

「アダプト・チッピー!」「アダプト・レオ!」「アダブト・ポピー!」

「アダプト」は普通に養子にすることですが、この場合は
指名制で寄付を募っているわけです。

病気の哺乳類を捕獲することもあります。
レプロスピラ菌の感染は治せますが、ガン(左から二番目)はどうでしょうか。
当センターの研究によると、動物のガンも遺伝からくるものや
あるいは環境汚染からくるものがあると考えられ、
カリフォルニアアシカの17%がこれで減少したと考えているそうです。

そしてヘルペスですが、ストレスがきっかけになることが多いので、
人との接触やその他のストレス要因をへらすことで、
ウイルスが健康に与える影響を減らすことができます。

そしていちばん右はドモイン酸中毒
海藻によって発生する中毒で、それを食べた魚を食べると
アシカの脳にダメージが起きるのだそうです。

「ヒューマンインパクト」も彼らの脅威です。
赤丸で囲まれたのはゴミが首に巻きついてしまったアザラシ。
紐やロープ、ネットなどが絡みついたら彼らは自分で取り外すことはできません。

また、真ん中のレントゲン写真は、散弾銃で撃たれたアシカです。
そんなひどいこと、とお思いになるでしょうが、かなりの頻度で起こっています。

また、排水から海に流される不法投棄の薬品やオイルなども
生態系に大きな悪影響を与えています。

 

ツァーは室内に案内されました。
ここは清潔な状態で患者のための餌を調合する「キッチン」です。

ときには自分で魚を捕まえることもできないくらい弱っている
患者のために、流動食を導入する方法も取られます。

人間と同じですね。

そして病棟を見学・・・なのですが、ここは動物園ではないので、
入院患者を近くで見ることはできません。

黄色くペイントされたプールのある病室一つにつき患者一頭。
空いている病室もたくさんあります。

たまたまいちばん手前に入院している患者がいましたが、
ご覧の通り、ネットのフェンスが邪魔で写真の撮りにくいこと。

もしかしたら顎の下を怪我しているのかもしれません。

寝ているだけかもしれませんが、病人?と思ってみれば
元気がなさそうにぐったりしているように思えてきます。

早く元気になれよ〜。

この展示は当センター管轄の手術室を再現したものです。

この展示で初めて知ったのですが、この手術室は、
「サラ・ハート・キンボールサージェリーセンター」といって、
以前ご紹介したナイキミサイルサイトのあった陸軍用地の
使われていないかつての兵舎の一角を利用しているのだそうです。

海洋生物に対する専門のスタッフは、ここで小型大型の
アザラシやオットセイなどの手術を臨機応変に行います。

右下の写真はアザラシが脳波測定をしていますが、しばしば
彼らに対する治療には人間のメソッドが使われます。

土産物ショップもあります。
ショップにラッコのぬいぐるみが、と思ったら剥製でした。

これらの剥製は、自然死した動物のものです、と断っています。

当センターのボランティアがどんなことをするのか、
それを知ってぜひ参加してください、という募集を兼ねています。

右側は、海洋哺乳類を捕獲する方法を実習で学んでいるところ。
病院に搬送したり、世話をしたりといった方法も教えてもらえます。
今日のガイドのように、解説をするという仕事もあります。

ボランティアにとっていちばん嬉しい瞬間は、快癒した動物を
リリースするときでしょう。
その瞬間を見ることができるだけでも、ボランティアに参加する
意義を感じる人は多くいるに違いありません。

現在ボランティアは800人が登録しているそうです。

出口にあった寄付金箱。

出口で手を振ってお見送りしてくれているポスター。
実物が可愛いの下手なイラストなんか必要ありませんよね。

さて、建物を出たところにあっと驚く情報がありました。
ここ海洋哺乳類センターの敷地は、かつてナイキミサイルサイトだったのです!

対岸に今でも一つ残されているナイキミサイルサイトのご紹介をしたことがありますが、
ナイキミサイルは冷戦のために約20年間ここに設置されていました。

冷戦終了後の1972年、ミサイルサイトは稼働を終了し、
3年後に跡地にこのセンターを開設したというわけです。

本日タイトルにした、

「プラウシェアの剣」

という言葉は、ここから取りました。

「剣を叩いて鋤(プラウシェア)に変えよ」

という預言者イザヤの命令 (イザヤ書第2章4節)の言葉で、
兵器・技術の軍需が平和的な民間の用途に変換される軍民転換のことです。

ミサイル基地の跡地を転用して動物たちの命を守る、
究極の平和的な施設にしたということが言いたいようですね。

何度も訪れていながら、わたしも友人もこの存在を知りませんでした。
すっかり満足して、ポイント・ボニータをドライブして帰ろうとしたら、
週末ということでこの混雑です。
前の車は全く列が動かないのをいいことに外に出ています。

やっと渋滞を抜けると、サンフランシスコと反対方向はガラガラ。
夕暮れの道を走り、かつての戦跡に友人を連れて行って見せました。
日米間が緊張していた頃に作られた防空壕です。

誰もいないピクニックエリアを通り過ぎようとしたら、
みたことがないけだものが二匹遊んでいるのを見つけました。 

「なにあれ?」

「コヨーテかジャッカルかな・・・」

「イヌ科には違いなさそうだけど・・・・」

なんとなくコヨーテに違いない、ということになったのですが、
わたしと友人はその姿にうっとりとしてしまいました。

「綺麗だねえ・・・・」

わたしたちが車を止めて車窓から見ているのを知っているのに、
彼らは悠然として毛繕いなどしています。

後から、北アメリカにはジャッカルはいないことを知り、
これがコヨーテであることが確定しました。

彼らは肉食で、ネズミやウサギ、プレーリードッグ、そして
時々は魚も獲って食べ、雑食でもあります。

ピクニックエリアをうろうろしていたのは、もしかしたら
人間の残した食べ物を狙ってやってきたのかもしれません。

コヨーテは犬のように遠吠えするそうです。

海洋哺乳類センターのあとコヨーテとの遭遇。
野生動物についてなにかと縁があった一日でした。

 

この日の夕日が太平洋の水平線に沈んでいきます。

 



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3 Comments

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動物にはこんなによくして上げるのに (Unknown)
2020-03-18 12:27:44
動物にはこんなによくして上げるのに、無保険の国民が10%もいる。大都市にはどこでもホームレスのシェルターがありますが、軍隊みたいな二段ベッドのあそこの人達がコロナウイルスに感染し出したら、大変なことになると思います。世界一豊かな国であることは間違いないですが、どうなんでしょうね。
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Unknown (ロビ@鰭脚局アザラシ科)
2020-03-18 20:09:03
あざらしと言われて参上致しました。

ハーバーシールは銭形アザラシのことですね。
北海道にも海豹専門の保護センターがあり、保護したあざらしを海に返すときは発信器を付けたりしています。
発信器は毎年換毛の時期に毛と一緒に抜けるそうです。
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みなさま (エリス中尉)
2020-03-20 10:05:17
unknownさん
こういう施設はほぼ民間の非営利団体が主体でボランティアで成り立っていますからね。
アメリカ人がなにかボランティアをしたいと思えば、それこそ星の数ほど
そういう慈善団体があるわけで、その中にはホームレスの保護に関わるものも
当然ながらあるのですが、選ぶのは個人の自由なので・・・。
どうしてもどうせやるならホームレスより可愛い動物に行ってしまうのは
致し方ないのかもしれないと思います。
豊かと言っても人種問題や貧富の差など、日本より深刻な問題はいくらでもあって、
特に今直面している武漢ウィルス問題は
アメリカの泣き所である医療問題を直撃するので
おそらく上から下まで戦々恐々としているのではないかと思われます。
あっという間に渡航制限、あっという間に外出禁止のレベルに引き上げましたから。

あざらしロビさん
あー、そうだったんですか!発信器、毛を挟んでつけるんだ。
でもいっつも発信器が頭の毛を引っ張っているのって痛くないんでしょうか。
文中でも自分で絡まったゴミをなんとかすることができないという例を挙げましたが
それを利用するとは人間ってひどい(笑)
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