フィギュアスケート、ペア。
終わってみれば、金メダリストだけが良かったというのでもないけど。
フリーの演技を見てて、涙が出たのは、1位と3位のペアでした。
技術は勿論、芸術性とアスリート根性が突出していて。
ちゃんと見ればおもしろいものなのに、ショートの方は、1位のボロソジャール、トランコフだけみて、後は録画容量の問題もあって、消してしまったので、彼らの演技しかわからないのだけど。
【ペア ショート】
ボロソジャール、トランコフの「仮面舞踏会」。これはアンナ・カレーニナの話だと、今回はじめてしりました。
登場の瞬間から、青い軍服が長身に映えるトランコフが、白いドレスのボロソジャールに手を差し伸べてエスコートする仕草から、もう、場の空気の作られ方が違う。そこがアスリートの競う五輪会場でなく、大広間の舞踏会会場に。アンナとウロンスキー、ロシア社交界の花たる美男美女と、まぶしく目立つ二人を見守る舞踏会の客たち、と、私にはそう見えました。氷上には二人しかいない、でも、それ以外の物語の登場人物も感じられる、そんな舞台。(いちおう氷上の二人を見守る観覧席のお客さんの目線を、アンナとウロンスキーの周りの舞踏会客の目線になぞらえて、私はみてたわけですが。)
(そういえば、少し違うけど、以前2012年だったかの羽生選手の世界選手権「ロミオとジュリエット」(今のとは違う振付の)を見た時も、やっぱり、ロミオひとりだけではなくて、ロミオの周りの中世の人々を感じながら、見たなあ、と思い出したり・・・。)
舞踏会の目立つ男女の、恋のさやあて。恋の機微の演技も絶妙で、ショートと思えぬドラマの起伏が感じられる演技もいいし、それ以上に音楽性、周り、廻る舞踏が、めくるめく二人の運命の暗示のようにも、或いは、後先かまわぬ、恋の高揚の気分の表出なのか?とも思わせられたり。私は、最後のポーズは、男性が求愛して、女性が振る演技なのか?と、思ってみてたのですが。色々勝手な想像してしまえる楽しい演技でした。
超高度な技術を駆使しながら、これだけ演技が出来るのも凄いというか。
でも。男性のトランコフは、ウロンスキーの情熱はあるんだけど。トルストイの「アンナ・カレーニナ」のウロンスキーって、最初はかっこいい男性として出てくるけど、自分を偽らないアンナが、彼と本格的な不倫関係になったあと、ぐしゃぐしゃな状況になって、輝くばかりの美貌の人妻が、猜疑心やらネガティブシンキングで自滅していく中、アンナを持て余して、結局は投げ出してく。致し方のないこととはいえ、結果的には、美男子でんな、という以上の存在ではなかった。対してこの日のトランコフは、やや不安げなパートナーを、万全のサポートで支える頼りがいのあるパートナーであり、素の二人の関係性が、役の表現にも反映されて見えるので、ウロンスキーより、大人の包容力のある男に見えてしまいました。
さらに、ボロソジャール。ロシアの女子選手には、この人以上の美人さんもいますが、いつも役にあった衣装・小物で過不足なくそれぞれの役になりきれる彼女は、文字通りバランス感覚のある女性に見えて。
つまり、申し分のないこの上ない「アンナ・カレーニナ」であると同時に、エキセントリックな小説のアンナとは対照的な、理知的で大人の女性の優しさとバランス感覚のあるボロソジャールのアンナ、情熱に加えて包容力のあるトランコフのウロンスキーで、特に今回のSPの演技だと、ラストをハッピーエンドに書き換えたくなるような、そんなアンナ・カレーニナでもありました。今回、彼らの演じたキャラだと、なんか、万難を排して、最後は駆け落ちして上手くいくんじゃないかな~~~?みたいな。
ついでに、二人とも衣装の着こなしがとてもいい。ボロソジャールの衣装はよく出来てて、じっとりみちゃいました。彼らに限らないけど、ペアは、衣装も大事。
【ペア フリー】
まず、金メダルのボロソジャール、トランコフの「ジーザス・クライスト・スーパースター」。見られて良かった、成功してよかった。女性の衣装が金色に変わってた。
ただ、今回より、昨年日本のNHK杯か何かでの演技の方が、単品で見るには、芸術性はより充実してたかも。
今回のボロソジャール、トランコフの「仮面舞踏会」「ジーザス・クライスト・スーパースター」の2作品は、フィギュアスケートの振付としては例外的な位、芸術性に優れた、高度なものだと感じてます。独創性も抜群で。
「ジーザス・クライスト・スーパースター」は、マグダラのマリアとイエスに扮してるんだろうとは思うけど、私自身がキリスト教文化に疎く、彼らの描く世界、表現内容を100%分ってるわけでは全然ないんだけど。
この作品を最初見たときには、衝撃を受けました。キリスト教圏で、かつ現代人の彼らが、芸術性でも、娯楽性でも、何かインスパイアされるものがあって、触発される所から出発して作品を作っているから、新鮮なものを創れるのかしら?と想像しています。
(自分は、元作品の映画を見るよりも、彼らの演技を見るほうが、感動する気が。)
演技者が感動することも、まずは作品が生まれるにあたって、大事なのかなと。(羽生選手の前の「ロミオ」も、羽生選手自身が、ディカプリオの映画を見て湧いた感動がベースになって作品が生まれたことも、良かったのでは、と。)
最後は、ゴルゴダの丘でキリストが磔にされて終幕、というストーリー。この解釈が日本人の私には難しいんだけど。身は滅ぶとも、魂は飛翔する、その思想はあまねく世界に広まる、というのが、キリストのゴルゴダの丘の話の解釈という所なんでしょうか。西欧には、時々こういう考え方が出てくるな~とは思うけど。つい、痛そう、と思ってしまう自分。
(バレエのスパルタクスの幕切れも、まあ、こんな感じだけど、バレエのスパルタクスは、なぜか私にもすんなり入れる。元ネタはもちろん、このキリストの処刑なんだけど。)
ボロソジャール、トランコフ組の「ジーザス・クライスト・スーパースター」もまた、音楽の使い方が素晴らしく、最初の方とか、ちょっと宇宙的な感じがしますね。
★銅メダルのサフチェンコ・ゾルコビー組「くるみ割り人形」
最終滑走。SPでは2位だった。守りに入れば、銀メダル確実だったのに、最後まであきらめずにスロートリプルサルコー予定を、トリプルアクセルに変えてきたのには、圧倒された。最後の最後に感動のダメ押し。
も~、自分が審判なら、この人たち銀メダルにするんだけど。(彼らは金以外、いらないんでしょうけど。)攻めた演技で転倒し、その分のマイナスが1点、ということか。勝負の世界の残酷さで、3位。
ボロソジャール、トランコフ組が、現代劇に題材をとり、独創的な世界を展開し、こちらは対照的な正統派。
技術の高さもさることながら、全編を通じて、特に女性のサフチェンコが軟らかい笑顔、繊細な動きで、チャイコフスキーの「くるみ割り」の世界をあますことなく表現していることに感動した。これが出来る人って、そうそういるわけではないから。
前半で男性がジャンプで転倒し、いたいミスが出ても、後半の賭けに失敗しても、最後までチャイコフスキーの音楽を、表現していたことは、自分的には良かった。
チャイコフスキー曲は、一方で男子のシングルのコフトン選手が出てこれれば、フリーでチャイコ曲をよく表現した作品を滑ってくれる予定だったから、そこは残念でならなかっただけに、ここでサフチェンコ、ゾルコビー組の「くるみわり人形」を見られて、少しほっとしました。
★素人の個人感想の書きなぐりなので、雑で長くてすみませぬ。
放送に関わった、NHKのスタッフの人たち、観やすい番組でした。
終わってみれば、金メダリストだけが良かったというのでもないけど。
フリーの演技を見てて、涙が出たのは、1位と3位のペアでした。
技術は勿論、芸術性とアスリート根性が突出していて。
ちゃんと見ればおもしろいものなのに、ショートの方は、1位のボロソジャール、トランコフだけみて、後は録画容量の問題もあって、消してしまったので、彼らの演技しかわからないのだけど。
【ペア ショート】
ボロソジャール、トランコフの「仮面舞踏会」。これはアンナ・カレーニナの話だと、今回はじめてしりました。
登場の瞬間から、青い軍服が長身に映えるトランコフが、白いドレスのボロソジャールに手を差し伸べてエスコートする仕草から、もう、場の空気の作られ方が違う。そこがアスリートの競う五輪会場でなく、大広間の舞踏会会場に。アンナとウロンスキー、ロシア社交界の花たる美男美女と、まぶしく目立つ二人を見守る舞踏会の客たち、と、私にはそう見えました。氷上には二人しかいない、でも、それ以外の物語の登場人物も感じられる、そんな舞台。(いちおう氷上の二人を見守る観覧席のお客さんの目線を、アンナとウロンスキーの周りの舞踏会客の目線になぞらえて、私はみてたわけですが。)
(そういえば、少し違うけど、以前2012年だったかの羽生選手の世界選手権「ロミオとジュリエット」(今のとは違う振付の)を見た時も、やっぱり、ロミオひとりだけではなくて、ロミオの周りの中世の人々を感じながら、見たなあ、と思い出したり・・・。)
舞踏会の目立つ男女の、恋のさやあて。恋の機微の演技も絶妙で、ショートと思えぬドラマの起伏が感じられる演技もいいし、それ以上に音楽性、周り、廻る舞踏が、めくるめく二人の運命の暗示のようにも、或いは、後先かまわぬ、恋の高揚の気分の表出なのか?とも思わせられたり。私は、最後のポーズは、男性が求愛して、女性が振る演技なのか?と、思ってみてたのですが。色々勝手な想像してしまえる楽しい演技でした。
超高度な技術を駆使しながら、これだけ演技が出来るのも凄いというか。
でも。男性のトランコフは、ウロンスキーの情熱はあるんだけど。トルストイの「アンナ・カレーニナ」のウロンスキーって、最初はかっこいい男性として出てくるけど、自分を偽らないアンナが、彼と本格的な不倫関係になったあと、ぐしゃぐしゃな状況になって、輝くばかりの美貌の人妻が、猜疑心やらネガティブシンキングで自滅していく中、アンナを持て余して、結局は投げ出してく。致し方のないこととはいえ、結果的には、美男子でんな、という以上の存在ではなかった。対してこの日のトランコフは、やや不安げなパートナーを、万全のサポートで支える頼りがいのあるパートナーであり、素の二人の関係性が、役の表現にも反映されて見えるので、ウロンスキーより、大人の包容力のある男に見えてしまいました。
さらに、ボロソジャール。ロシアの女子選手には、この人以上の美人さんもいますが、いつも役にあった衣装・小物で過不足なくそれぞれの役になりきれる彼女は、文字通りバランス感覚のある女性に見えて。
つまり、申し分のないこの上ない「アンナ・カレーニナ」であると同時に、エキセントリックな小説のアンナとは対照的な、理知的で大人の女性の優しさとバランス感覚のあるボロソジャールのアンナ、情熱に加えて包容力のあるトランコフのウロンスキーで、特に今回のSPの演技だと、ラストをハッピーエンドに書き換えたくなるような、そんなアンナ・カレーニナでもありました。今回、彼らの演じたキャラだと、なんか、万難を排して、最後は駆け落ちして上手くいくんじゃないかな~~~?みたいな。
ついでに、二人とも衣装の着こなしがとてもいい。ボロソジャールの衣装はよく出来てて、じっとりみちゃいました。彼らに限らないけど、ペアは、衣装も大事。
【ペア フリー】
まず、金メダルのボロソジャール、トランコフの「ジーザス・クライスト・スーパースター」。見られて良かった、成功してよかった。女性の衣装が金色に変わってた。
ただ、今回より、昨年日本のNHK杯か何かでの演技の方が、単品で見るには、芸術性はより充実してたかも。
今回のボロソジャール、トランコフの「仮面舞踏会」「ジーザス・クライスト・スーパースター」の2作品は、フィギュアスケートの振付としては例外的な位、芸術性に優れた、高度なものだと感じてます。独創性も抜群で。
「ジーザス・クライスト・スーパースター」は、マグダラのマリアとイエスに扮してるんだろうとは思うけど、私自身がキリスト教文化に疎く、彼らの描く世界、表現内容を100%分ってるわけでは全然ないんだけど。
この作品を最初見たときには、衝撃を受けました。キリスト教圏で、かつ現代人の彼らが、芸術性でも、娯楽性でも、何かインスパイアされるものがあって、触発される所から出発して作品を作っているから、新鮮なものを創れるのかしら?と想像しています。
(自分は、元作品の映画を見るよりも、彼らの演技を見るほうが、感動する気が。)
演技者が感動することも、まずは作品が生まれるにあたって、大事なのかなと。(羽生選手の前の「ロミオ」も、羽生選手自身が、ディカプリオの映画を見て湧いた感動がベースになって作品が生まれたことも、良かったのでは、と。)
最後は、ゴルゴダの丘でキリストが磔にされて終幕、というストーリー。この解釈が日本人の私には難しいんだけど。身は滅ぶとも、魂は飛翔する、その思想はあまねく世界に広まる、というのが、キリストのゴルゴダの丘の話の解釈という所なんでしょうか。西欧には、時々こういう考え方が出てくるな~とは思うけど。つい、痛そう、と思ってしまう自分。
(バレエのスパルタクスの幕切れも、まあ、こんな感じだけど、バレエのスパルタクスは、なぜか私にもすんなり入れる。元ネタはもちろん、このキリストの処刑なんだけど。)
ボロソジャール、トランコフ組の「ジーザス・クライスト・スーパースター」もまた、音楽の使い方が素晴らしく、最初の方とか、ちょっと宇宙的な感じがしますね。
★銅メダルのサフチェンコ・ゾルコビー組「くるみ割り人形」
最終滑走。SPでは2位だった。守りに入れば、銀メダル確実だったのに、最後まであきらめずにスロートリプルサルコー予定を、トリプルアクセルに変えてきたのには、圧倒された。最後の最後に感動のダメ押し。
も~、自分が審判なら、この人たち銀メダルにするんだけど。(彼らは金以外、いらないんでしょうけど。)攻めた演技で転倒し、その分のマイナスが1点、ということか。勝負の世界の残酷さで、3位。
ボロソジャール、トランコフ組が、現代劇に題材をとり、独創的な世界を展開し、こちらは対照的な正統派。
技術の高さもさることながら、全編を通じて、特に女性のサフチェンコが軟らかい笑顔、繊細な動きで、チャイコフスキーの「くるみ割り」の世界をあますことなく表現していることに感動した。これが出来る人って、そうそういるわけではないから。
前半で男性がジャンプで転倒し、いたいミスが出ても、後半の賭けに失敗しても、最後までチャイコフスキーの音楽を、表現していたことは、自分的には良かった。
チャイコフスキー曲は、一方で男子のシングルのコフトン選手が出てこれれば、フリーでチャイコ曲をよく表現した作品を滑ってくれる予定だったから、そこは残念でならなかっただけに、ここでサフチェンコ、ゾルコビー組の「くるみわり人形」を見られて、少しほっとしました。
★素人の個人感想の書きなぐりなので、雑で長くてすみませぬ。
放送に関わった、NHKのスタッフの人たち、観やすい番組でした。